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4-1:セオドア・アシュワース
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テオは、外のロケットストーブで沸かした湯を湯冷ましに注いだ。
「僕は、トキオミさんが "追放" 処分にされた時に、王宮騎士を辞しました」
「うえっ?」
包丁が滑り、指を切った。
「あいたっ!」
「大丈夫ですか?」
テオが指先を両手で包む。
体温よりわずかに高いなにかが滲み、彼が手を離すと傷は消えていた。
「あ……、すまん」
「いいえ。聖騎士として学んだことが、トキオミさんのお役に立って嬉しいです」
ふっと笑う声まで艶っぽい。
──全く、目のやり場に困る美青年になったもんだ……。
思わず心のなかで嘆息した。
セオドア・アシュワース・守護の騎士。
それが、初めて出会った頃の彼の名乗りだった。
騎士爵は本来一代限りの恩賞だが、この国では "性別は問わず、家の子が騎士になれば継げる" ってことになっている。
アシュワース家は、代々 "イージス" の騎士爵を守ってきた家だ。
最初に紹介された時、背丈はともかく、顔があんまり子供みたいだったから年齡を聞いたら「14だ」と言う。
黒髪にりんごのような頬、ガラス玉みたいな青い目をしていて、小鳥のような声で喋る。
14と言ったら、中学三年生。
如月よりも1つ年上だが、ほぼ同年代。
日本とこちらで時間の感覚が同じかどうかは分からない。
なんせ時計は壊れたし、月は3つある。
惑星の公転スピードの話をしたら、通じる奴は一人もいなかった……どころか、王宮の学者は "天動説" を頑なに信じていた。
とはいえ、りんごの頬の護衛騎士は、14歳らしい少年の顔をしていたし、佇まいはティーンエイジャー特有の快活さと儚さを併せ持っていた。
正直、14歳で護衛騎士? とは思ったが。
あの頃はこちらの常識がどんなもんかワカランかったので、俺はそこには触れなかった。
今から考えると、あのハラグロすっとこどっこいのレオン王子が、聖女のガードを下げるためにした人選だってのが、透け透けに透けて見えるのだが……。
もっとも、今の彼にその儚さはない。
同じ黒髪も、同じ蒼も、熱を帯びて俺を見る。
「僕は、トキオミさんが "追放" 処分にされた時に、王宮騎士を辞しました」
「うえっ?」
包丁が滑り、指を切った。
「あいたっ!」
「大丈夫ですか?」
テオが指先を両手で包む。
体温よりわずかに高いなにかが滲み、彼が手を離すと傷は消えていた。
「あ……、すまん」
「いいえ。聖騎士として学んだことが、トキオミさんのお役に立って嬉しいです」
ふっと笑う声まで艶っぽい。
──全く、目のやり場に困る美青年になったもんだ……。
思わず心のなかで嘆息した。
セオドア・アシュワース・守護の騎士。
それが、初めて出会った頃の彼の名乗りだった。
騎士爵は本来一代限りの恩賞だが、この国では "性別は問わず、家の子が騎士になれば継げる" ってことになっている。
アシュワース家は、代々 "イージス" の騎士爵を守ってきた家だ。
最初に紹介された時、背丈はともかく、顔があんまり子供みたいだったから年齡を聞いたら「14だ」と言う。
黒髪にりんごのような頬、ガラス玉みたいな青い目をしていて、小鳥のような声で喋る。
14と言ったら、中学三年生。
如月よりも1つ年上だが、ほぼ同年代。
日本とこちらで時間の感覚が同じかどうかは分からない。
なんせ時計は壊れたし、月は3つある。
惑星の公転スピードの話をしたら、通じる奴は一人もいなかった……どころか、王宮の学者は "天動説" を頑なに信じていた。
とはいえ、りんごの頬の護衛騎士は、14歳らしい少年の顔をしていたし、佇まいはティーンエイジャー特有の快活さと儚さを併せ持っていた。
正直、14歳で護衛騎士? とは思ったが。
あの頃はこちらの常識がどんなもんかワカランかったので、俺はそこには触れなかった。
今から考えると、あのハラグロすっとこどっこいのレオン王子が、聖女のガードを下げるためにした人選だってのが、透け透けに透けて見えるのだが……。
もっとも、今の彼にその儚さはない。
同じ黒髪も、同じ蒼も、熱を帯びて俺を見る。
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