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6.理不尽な嫉妬
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公演が終了して、興奮冷めやらぬお客さん達が三々五々と引き上げた後、俺とコーキ君とホクトで店内の片付けをした。
シノさんはこういう事は適当にサボタージュをしてしまうし、敬一クンはスバルとミナトを伴ってペントハウスに引き上げ、エビセンは白砂サンの厨房の片付けを手伝いに行ったので、そういうメンツになったのだ。
ふと気が付くと、着替えを済ませたセイ君もコーキ君と一緒になって、ピアノ周りの片付けに参加している。
ヨウ君の方はまだ控室にいるっぽいけど、あっちはあっちでヴァイオリンを片付けたりしてるんだろう。
俺は水差しとかコップなんかを持って厨房に向かうついでに、セイ君に声を掛けた。
「あ、あのあの、ちょっといい…かな?」
ホント言うと、彼に睨まれた事でまだビビっていたし、声を掛けやすいのはコーキ君だったのだけど、話の内容がお金に関する事だったので、演者である双子のどっちかに話さざるをえなかったのだ。
「なんですか?」
「あの、あの、帰る前にですね、チケットの売上代金を必ず受け取りに来てくださいって、白砂サンから伝言です」
「はい、ありがとうございます。必ず伺います」
セイ君は今まで通りの態度でハキハキ答えてくれて、正直リサイタルの前のあの突き刺さるような視線はなんだったの? と聞きたくなったくらいなのだが。
ふと見ると、通路に行くための仕切りの影から、ヨウ君が俺をジッと睨んでいるのだ。
セイ君ソックリの眉目秀麗なあの顔で、セイ君ソックリのあの超コワイ威嚇光線を俺に浴びせてきている。
一体俺が何をしたというのか? と、猛烈な疑問を抱いていても、ビビりな俺にそんな質問を口にする勇気などなく。
あのそのそれじゃあどうも、とかなんとか、適当な言葉を吐きながら、俺はその場から逃げた。
出来れば傍にも寄りたくない気分だったけど、通路を通らねば厨房に行けないので、俺は平静を装いつつ、ソロソロとヨウ君の横を抜けて、スササササッと厨房に駆け込んだ。
でもホントになんなんだ、あの二人……?
すっかり空恐ろしくなってしまった俺はコソコソと店の表に避難して、双子の事は白砂サンに任せる事にした。
§
「いや~、なかなか盛況だったの~」
ペントハウスで夕食時に、シノさんが言った。
「そうですね。とても高校生とは思えないほど素晴らしい演奏でした」
一緒に店で給仕をしていた敬一クンが、感心したように言う。
「うむ。だからまた機会があったら是非にと、お願いしておいたよ」
「えっ、またやるのっ?!」
イミフにオソロシイ視線で睨まれた事を思い出し、俺は思わずそう言ってしまった。
「なんじゃい? レンはあの企画、なんか不服だったんか?」
シノさんに聞かれても「双子に睨まれたのがコワかったから」なんて言えなくて、俺はなんとなく口の中でボショボショ音を出すだけだったのだが。
「うむ。多聞君には災難があったようだね」
「なになに、タモンレンタロウ君、ナニをやらかしたん?」
興味津々の顔でシノさんに迫られても、双子に恐怖光線を浴びせられるココロアタリなんて、俺にはミジンコも無い。
「いや、彼らには私がゲイで、カミングアウト済だと言う話をして、そこから多聞君が柊一とお付き合いしている事も、つい話してしまったのだよ」
「あ~、なるへそ! タモンレンタロウ君は、美形の双子に手ェ出そうとしてる危険人物と思われて、双子が互いの貞操を心配して、睨みを効かしてきたんだな!」
「いや、それもただの心配ではないね。あの二人は、たぶん付き合っているよ」
「そうなん?」
「カミングアウトはされなかったが、態度を見ればあからさまだ、彼らは相思相愛のカップルだよ」
白砂サンの説明に、シノさんはふむふむと頷いているけど、俺は全然納得いかなかった。
「なにそれちょっと待ってよ! そんな全方位を敵認定するカップルだっていうなら、ゲイのカミングアウトしてる白砂サンだって危険人物なんじゃないの?」
「いや、なぜか、それはなかった。私がイタルの写真を見せたところ、すんなり納得してくれて、以来なんとなく憐れみの視線を向けられるだけなのだよ」
ふう~っと、白砂サンは不満そうな溜息を吐いている。
だけど俺は、納得が出来なかった。
それって要するに、俺の好みがほっそりとした色白の美形のシノさんで、白砂サンの好みはコグマ…つまりはゴリマッチョのムッキムキな男だという理由で、双子は俺だけを敵認定してきたって事だ。
白砂サンの説明の途中から、シノさんはもう吹き出している。
そりゃあ、自分の想ってる相手に危険人物が近付いたら、睨みつけたくなる気持ちは判らなくもないけど。
それにしたって、俺が好きなのはシノさんだけなのに、いきなり敵認定はあんまりだ。
最初からおっさん呼ばわりされたりなんかしてたりもして、今回のリサイタルは、俺にばかり災難な企画だったようだ。
*マエストロ神楽坂 de リサイタル:おわり*
シノさんはこういう事は適当にサボタージュをしてしまうし、敬一クンはスバルとミナトを伴ってペントハウスに引き上げ、エビセンは白砂サンの厨房の片付けを手伝いに行ったので、そういうメンツになったのだ。
ふと気が付くと、着替えを済ませたセイ君もコーキ君と一緒になって、ピアノ周りの片付けに参加している。
ヨウ君の方はまだ控室にいるっぽいけど、あっちはあっちでヴァイオリンを片付けたりしてるんだろう。
俺は水差しとかコップなんかを持って厨房に向かうついでに、セイ君に声を掛けた。
「あ、あのあの、ちょっといい…かな?」
ホント言うと、彼に睨まれた事でまだビビっていたし、声を掛けやすいのはコーキ君だったのだけど、話の内容がお金に関する事だったので、演者である双子のどっちかに話さざるをえなかったのだ。
「なんですか?」
「あの、あの、帰る前にですね、チケットの売上代金を必ず受け取りに来てくださいって、白砂サンから伝言です」
「はい、ありがとうございます。必ず伺います」
セイ君は今まで通りの態度でハキハキ答えてくれて、正直リサイタルの前のあの突き刺さるような視線はなんだったの? と聞きたくなったくらいなのだが。
ふと見ると、通路に行くための仕切りの影から、ヨウ君が俺をジッと睨んでいるのだ。
セイ君ソックリの眉目秀麗なあの顔で、セイ君ソックリのあの超コワイ威嚇光線を俺に浴びせてきている。
一体俺が何をしたというのか? と、猛烈な疑問を抱いていても、ビビりな俺にそんな質問を口にする勇気などなく。
あのそのそれじゃあどうも、とかなんとか、適当な言葉を吐きながら、俺はその場から逃げた。
出来れば傍にも寄りたくない気分だったけど、通路を通らねば厨房に行けないので、俺は平静を装いつつ、ソロソロとヨウ君の横を抜けて、スササササッと厨房に駆け込んだ。
でもホントになんなんだ、あの二人……?
すっかり空恐ろしくなってしまった俺はコソコソと店の表に避難して、双子の事は白砂サンに任せる事にした。
§
「いや~、なかなか盛況だったの~」
ペントハウスで夕食時に、シノさんが言った。
「そうですね。とても高校生とは思えないほど素晴らしい演奏でした」
一緒に店で給仕をしていた敬一クンが、感心したように言う。
「うむ。だからまた機会があったら是非にと、お願いしておいたよ」
「えっ、またやるのっ?!」
イミフにオソロシイ視線で睨まれた事を思い出し、俺は思わずそう言ってしまった。
「なんじゃい? レンはあの企画、なんか不服だったんか?」
シノさんに聞かれても「双子に睨まれたのがコワかったから」なんて言えなくて、俺はなんとなく口の中でボショボショ音を出すだけだったのだが。
「うむ。多聞君には災難があったようだね」
「なになに、タモンレンタロウ君、ナニをやらかしたん?」
興味津々の顔でシノさんに迫られても、双子に恐怖光線を浴びせられるココロアタリなんて、俺にはミジンコも無い。
「いや、彼らには私がゲイで、カミングアウト済だと言う話をして、そこから多聞君が柊一とお付き合いしている事も、つい話してしまったのだよ」
「あ~、なるへそ! タモンレンタロウ君は、美形の双子に手ェ出そうとしてる危険人物と思われて、双子が互いの貞操を心配して、睨みを効かしてきたんだな!」
「いや、それもただの心配ではないね。あの二人は、たぶん付き合っているよ」
「そうなん?」
「カミングアウトはされなかったが、態度を見ればあからさまだ、彼らは相思相愛のカップルだよ」
白砂サンの説明に、シノさんはふむふむと頷いているけど、俺は全然納得いかなかった。
「なにそれちょっと待ってよ! そんな全方位を敵認定するカップルだっていうなら、ゲイのカミングアウトしてる白砂サンだって危険人物なんじゃないの?」
「いや、なぜか、それはなかった。私がイタルの写真を見せたところ、すんなり納得してくれて、以来なんとなく憐れみの視線を向けられるだけなのだよ」
ふう~っと、白砂サンは不満そうな溜息を吐いている。
だけど俺は、納得が出来なかった。
それって要するに、俺の好みがほっそりとした色白の美形のシノさんで、白砂サンの好みはコグマ…つまりはゴリマッチョのムッキムキな男だという理由で、双子は俺だけを敵認定してきたって事だ。
白砂サンの説明の途中から、シノさんはもう吹き出している。
そりゃあ、自分の想ってる相手に危険人物が近付いたら、睨みつけたくなる気持ちは判らなくもないけど。
それにしたって、俺が好きなのはシノさんだけなのに、いきなり敵認定はあんまりだ。
最初からおっさん呼ばわりされたりなんかしてたりもして、今回のリサイタルは、俺にばかり災難な企画だったようだ。
*マエストロ神楽坂 de リサイタル:おわり*
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