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S5:ハトコとゴリラ
10.月に代わって
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ハロウィン向けのランタン作りは、白砂サンと子供達があれこれ話し合いながら、着々と進んでいた。
かぼちゃのランタンは "生モノ" なので、彫りつけ作業は十月後半から。
本体の調達だけを前倒しで決行し、子供たちを連れて敬一クンが車を出し、道の駅まで行った。
イマドキそんなもん、ネットで買えばと思ったが、「自分で選べる」と言ってしまった手前、現地に行くことになったのだ。
そして、いざ加工作業に入るとなったら。
白砂サンは「生のかぼちゃがいかに腐りやすいか?」の講義をしつつ、何気なく皮の硬い底に "くりっ" とまんまるな穴を開け、そこからまるでマンガみたいに "ワタ" をスポッと抜いてみせた。
正直、腐敗を防ぐための前処理方法なんて、普通に聞けば退屈きわまりない……はずなのに。
一連の動きがすごすぎて、ダルさを感じる暇もなく説明は終わった。
そして子供たちに「刃物の作業をする前には必ず大人に断りを入れてから始めること」をよっくよく言い含めてから、ピッカピカのアウトドアナイフとカービングのセットを二人に渡した。
それ以来スバルとミナトは、帰宅すると店の隅っこにシートを敷いて座り込み、ギザギザの口が笑っているのやら三角の目玉がタレ目になっているのやら、色々とかぼちゃの顔のデザインをしながら、連日楽しそうにランタンを作っている。
最初はスバルが前のめりで始めたのに、今ではミナトの方が熱心だ。
子供が店を散らかしていたら客からクレームが来るかと思ったが、意外にも好評な様子。
大概は「ほう」と面白そうに眺め、女性だと「楽しそうね」と声をかける客もいる。
なので、やっぱり俺がいつもの位置に立っていると、子供達の会話は筒抜けだった。
「そんで、どうすんだよ」
「どうって?」
「だから、コグマさ」
周囲にお客がいなくなったところで、声を潜めてスバルが言った。
「肝心な時に役に立たない奴なんか、居たってウザイだけじゃんか」
「そりゃそうだけど、だからってどうしろって言うのさ」
「ミナトが嫌だって言えば、聖一はコグマと一緒に住むの、やめるんじゃないの?」
かぼちゃ彫りはミナトの方が熱心になっているが、コグマ追放は正義感と思い込みの激しいスバルの方が熱心らしい。
「そりゃあ、聖一は最初はそう言ったし、頼めばやめてくれると思うケド……。でもそんなコト頼んだら、聖一がガッカリしちゃうよ。聖一はコグマが好きなんだから」
「ええ~? 聖一、コグマが好きなの?」
「あのさ、好きじゃなきゃ、恋人にならないんじゃないの」
ミナトのツッコミに、俺は思わず吹き出しそうになったが、なんとか堪えた。
「あー……そっか」
スバルは納得したように頷き、彫刻刀を使って細かい装飾を彫っているミナトの手元を見ている。
ミナトもスバルも、最初は単に三角の目と口といった、ポピュラーだけど大味なデザインの物を作っていたのだが、少し作業に慣れてきた辺りからそれぞれの個性が如実に現れた物を作っている。
スバルのかぼちゃはつり上がった目つきやらギザギザの口やらの、ひたすらインパクトのある顔のデザインで作っているが、ミナトのかぼちゃは全体にもっと繊細な感じだ。
穴を空けずに残す皮の厚みを変えることで、中に明かりを灯した時に濃淡が出ることに気付いてからは、大人が見ても感心するような綺麗な模様を、かぼちゃの表面に丁寧に彫りつけていた。
「でも聖一は、コグマのドコが好きなんだろ?」
「僕にだってワカンナイよ。……でも、毛かな?」
「毛ぇ? なにそれ?」
「だって、聖一は僕と自分のシャンプーとボディソープは、ドラッグストアの特売品を買うんだけど、コグマ用のヤツはネットでわざわざ、バーユって言うのを買ってるんだ」
「ばーゆって何?」
「知らない。でも、いつもわざわざそれを買ってる。コグマはお風呂から出るとパンイチでウロウロしてて、聖一はコグマに冷えたビールを出して、コグマがそれを飲んでる間、後ろに立って櫛で梳かしてるんだ」
「僕だってお風呂上がりは、ケイに髪拭いて貰うけど?」
「違う、頭の毛じゃなくて背中の毛! それに拭いてるんじゃなくて、梳かしてるの! てか、髪ぐらい自分で拭きなよ!」
コグマの体毛が臍も見えないほどフッサフサだということを、俺は知りたくもないが知っている。
なので、風呂上がりのコグマの背毛を、白砂サンが櫛で梳かしているというミナトの発言は、ものすごくシュールだが、簡単に目に浮かんだ。
「だってケイが拭いてくれるんだもん」
「僕も最初は聖一が拭きに来たけど、赤ちゃんじゃないから自分で拭けるって、断ったよ」
「だってケイに拭いてもらうと、すごくよく乾くし、それにケイってすごくイイ匂いがするんだもん。拭いてもらうの、気持ちいいんだ」
「じゃあ好きにしなよ、僕の頭じゃないし」
「そんな言い方しなくてもいいじゃんかー。それよっか、コグマよりもっと毛深くて、役に立つカレシを聖一に探したらどうかな?」
「恋人ってどうやって探すのさ?」
「ママはネットの出会い系ってゆうので、カレシ探してたよ」
「出会い系かぁ……」
子供の会話の雲行きがヒジョーに怪しくなってきたので、話に割って入るべきかと思ったところで、入口の扉が開いた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
振り返ると、先日のイケメンとおっさんの自衛官二人連れが入ってきていた。
「あ、そちらの席へどうぞ。今、白砂サン呼びますね」
「ありがとうございます」
厨房に声を掛けると、白砂サンはすぐにも表に出てきた。
なぜか、ユリオも若桐氏も、席には座っていない。
「やあ、わざわざ申し訳なかったね」
「いえ、こちらこそ無理を言いまして」
なんだか白砂サンとユリオの間では、なんらかの約束があったらしい。
三人はそのまま奥へと進み、上からシノさんが降りてきた。
「こりゃ~、はじめまして。大家の東雲柊一です」
「真壁です」
「若桐です」
奥の廊下から、そんな会話が聞こえ、それから白砂サンがこっちにやってくる。
「多聞君。真壁君たちはこれから部屋の内見をするので、しばし厨房が留守になる。調理が必要な客が来たら、声を掛けてくれたまえ」
「あ、はい。わかりました……。てか、あの二人、赤ビルに入居するんすか?」
「どうかな? 柊一が一度、顔を合わせてみたいと言ってくれたので、あちらに賃貸の打診をしたら、内見できる日を知らせてきたのでな」
「なるほど」
そこで白砂サンが去ったので、俺はかぼちゃに霧吹きで水を掛け、乾いた布で磨く作業に取り掛かった。
ランタンは完成品から順々に、白砂サンが更なる "腐敗防止処理" を施してから、店先に飾り付けされている。
先日の講義で "腐りやすい" と指導されたので、俺はてっきりコイツらはカラカラに天日干しにでもするんだろうと思っていた。
が、乾燥させるとしぼんでしまうのだという。
そのため、乾燥防止にワセリンを塗り、霧吹きで水を掛け、夜間は冷暗所に保存せねばならない。
しかも、水滴が残っているとそっから腐るので、こまめに水を掛けては拭き取らなきゃならない。
外国のハロウィンの様子を見ていると、屋外に放りっぱなしの印象があったので、よくもまあこんなクソ面倒なことをするもんだ……と感心したのだが。
白砂サン曰く「日本は湿度が高いから」だそうだ。
俺にしてみればとんだとばっちり事案である。
そうして、かぼちゃを拭き拭きしながら、俺はずっと自衛官カップルの住居問題について、薄らぼんやりと考えていた。
俺からしたら、おカタイ職業のおエライさんとなる、あのイケメン自衛官なユリオなら、一人でマンション契約して、そこに "黙って" 若桐氏と同居でもシェアでもすりゃいいのに……と思うが。
しかし一方で──。
もし、俺がシノさん達とバンドで成功して、シノさんと二人で暮らしたいと思った時に、同じことを言われたら嫌だなぁ……とも思う。
例えば、それで俺の名義で買ったマンションが、俺になにかがあった時、シノさんに渡せず姉ちゃんたちに渡っても、それはそれで業腹だ。
ユリオと若桐氏の家族との間柄がどうなってるのかは知らんけど。
§
店内のかぼちゃを一通り面倒見終わったところで、俺は自分が何かを忘れているような気がした。
そういえば、さっき子供らがヒジョーに不穏な会話をしていて、そこに割って入るべきかを考えていたことを思い出す。
だが、自衛官カップルの到来やら、かぼちゃ拭きやらしていたあとでは、あのあとの会話がどうなったのかなんて、分かるわけもない。
そうっと二人の様子を伺うと、並んで大人しくタブレットに向かっていた。
そこに話し声が聞こえて、内見チームが戻ってくる。
「そんじゃまぁ、こっちゃで茶でも飲んでってくださいよ」
と、シノさんが──年上相手とも思えぬざっくばらんな態度だが、シノさんにしたら最上級の猫かぶりで、二人をレコード店側の席へと案内した。
白砂サンがいないな……と思ったら、どうやら階段のところで別れて、厨房に寄ってきたらしい。
銀の盆に、子供らのおやつも取り混ぜて持ってきた。
「こちら、ハロウィン向けの季節限定商品だ。良かったら相伴してくれたまえ」
ユリオの前には、可愛いコウモリの柄が付いている器に入ったかぼちゃプリン。
シノさんの前には、マジパンで作ったおばけの乗ってるかぼちゃのケーキ。
そして若桐氏の前には、チョコで目と口が付けられたかぼちゃのモンブラン。
前回、菓子を出された時 "お愛想笑い" をしていた若桐氏は、今回ニコニコそれを受け取った。
先日のアップルパイ、食った途端にホクホクしてたから、たぶん白砂サンの菓子にかなりの信頼を寄せたのだろう。
「僕は、今日はモンブラン!」
「プリンにする」
子供らは、三種の菓子の中から好きなものを選んだ。
ハロウィンパーティー開催が決まったあと、ランタン制作の進行に合わせて、店内が少しずつハロウィンカラーに模様替えしている。
自室をどっかの博物館みたいに改装出来る手腕を持つ白砂サンは、今回もその能力を発揮して、店内の飾りはゴシック・ホラー調にかなりかっこいい。
それに合わせて、ハロウィン限定メニューなんかも出している。
俺は、ハロウィン限定メニューと言うと、ダジャレのような名称が付いたフツーの料理というイメージを持っていた。
しかし美観で生きている白砂サンは、どうやらダジャレの類を好まないらしい。
シノさんが次々に繰り出してくるお寒いオヤジギャグを、それのどこがどのように "面白い" のか? について、全部説明させるという逆襲に出ることで見事に撃退した。
ちなみにランチメニューは、ラタトゥイユをメインに、副菜にキノコとかぼちゃとれんこんのソテーか、かぼちゃのポタージュが選べる形になり。
あとは、野菜の切り方や器なんかにハロウィンモチーフを使って、雰囲気が上手に演出されることになった。
「そんで、どーだった?」
本人は猫をかぶりまくっているが、一般常識を持つ人間からしたらフランクすぎるシノさんの態度──だが。
内見してるあいだもそのスタンスを崩さなかったんだろう、自衛官カップルの方が既に押し負けているらしい。
「一つ、確認したいんだが……」
改まった真面目な顔で、若桐氏が口を開く。
「なんだろか?」
「……家賃12万って……本気なのか?」
まぁ、そこは確かに強く確認する案件だろうな……。
だが、彼らが賃貸しようとしている部屋より広い、俺の部屋の家賃は八万だ。
もっともそれには、ちょっとした事情がある。
俺が以前に暮らしていたアパートの家賃は、八万だった。
そして俺は、敬一クンに "シノさんの面倒を見るため" に、赤ビルに入居を「お願い」された……ことになっている。
が、今はタテマエとして、俺は "住み込み雇われ店長" ってポジになっている。
なぜなら同じ条件で白砂サンの家賃も八万にしたい……とシノさんが敬一クンに頼み込んだからだ。
しかし三階の部屋まで八万で貸す訳にはいかない。
とは言え、築50年の老朽ビルとなったら、この近隣の相場の家賃は取れない。
その折衝点が12万なのだ。
「うむ。間違いなくその金額だ」
数字の話にシノさんが爆発するより先に、白砂サンが頷いた。
「それで、半年も入居者がいないとか、あり得ないだろ?」
「つっても、エレベーターはアレじゃし。内側はリフォームしてあるけど、建物は古いしなぁ。あと、つまらんヤツには住まわせたくない」
きっぱりと、シノさんはぶっちゃけた。
「それって……俺たち、"面白い" 判定されたってこと?」
「そりゃ、セイちゃんのトモダチが、おもろくないワケないじゃん。それに、会って話したらマモちゃんもおもろいヒトっぽいし」
シノさんの "マモちゃん" 呼びに、若桐氏はぶふっと吹いた。
激しく咳き込む若桐氏の背中を、ユリオが「大丈夫ですか?」とか言いながらさすって、白砂サンは即座に綺麗なハンカチを差し出している。
「ま……まもちゃん?」
「あれ? まもるじゃなかったっけ?」
「いや、まもるだけど……。そんな呼び方されたの初めてだし」
「ええ~。そのぐらいの年頃なら、子供の頃はタキシード仮面だったんじゃないの?」
「はっ?」
「柊一。セーラームーンの流行は、若桐氏が高校生か、既に防大に入っている年代だ。その年頃の男性が視聴している可能性は低い」
「そんじゃあ、守兄さんのお年頃?」
「若桐氏がアニメを視聴する趣味があるなら、見ている可能性はあるが……」
シノさんと白砂サンに視線を向けられて、若桐氏は困惑顔だ。
「あの……、二人が言ってるのは "宇宙戦艦ヤマト" の古代守の話だと思いますよ」
俺は、こそっと後ろから補足した。
「ああ! えっ? ああ……はい。えーと……子供の頃に、キャラに当てはめられたことは、ないですね」
「んか~」
シノさんは、残念そうに頷いた。
「ま、防犯はガバガバじゃし、内装のリフォームはしてあるけど、建物自体はオンボロだからな~。国家公務員が暮らすには、見劣りするかもだが……」
「おじさんたち、メゾンに住むの?」
横から、スバルが問うた。
「あ、えーと、この子たちは……?」
「イロイロあって、赤ビルで暮らす仲間だナ」
大胆に端折りすぎな気もするが、しかしスバルとミナトがここで暮らす理由は、一言で説明出来ない案件でもある。
「住む……かどうか、考えてるところだな」
少々困惑顔だが、若桐氏は大人らしく、スバルに返事をした。
「そんなら、ハロウィンパーティーにくればいいよ!」
「え?」
「だって、メゾンがどんなところかわかんないなら、一番楽しいの見に来ればいいよ!」
唐突なスバルの発案に、自衛官カップルはますます困惑顔だ。
「そーじゃな。キングオブロックンロール神楽坂ビル恒例、ペントハウスパーティーに顔を出せば、まぁ、どーいう住人が暮らすどーいう場所か、一目瞭然……ではあるな」
うんうんと頷きながら、シノさんは大胆に二つに割ったケーキの一切れを、パクッと一口で食った。
かぼちゃのランタンは "生モノ" なので、彫りつけ作業は十月後半から。
本体の調達だけを前倒しで決行し、子供たちを連れて敬一クンが車を出し、道の駅まで行った。
イマドキそんなもん、ネットで買えばと思ったが、「自分で選べる」と言ってしまった手前、現地に行くことになったのだ。
そして、いざ加工作業に入るとなったら。
白砂サンは「生のかぼちゃがいかに腐りやすいか?」の講義をしつつ、何気なく皮の硬い底に "くりっ" とまんまるな穴を開け、そこからまるでマンガみたいに "ワタ" をスポッと抜いてみせた。
正直、腐敗を防ぐための前処理方法なんて、普通に聞けば退屈きわまりない……はずなのに。
一連の動きがすごすぎて、ダルさを感じる暇もなく説明は終わった。
そして子供たちに「刃物の作業をする前には必ず大人に断りを入れてから始めること」をよっくよく言い含めてから、ピッカピカのアウトドアナイフとカービングのセットを二人に渡した。
それ以来スバルとミナトは、帰宅すると店の隅っこにシートを敷いて座り込み、ギザギザの口が笑っているのやら三角の目玉がタレ目になっているのやら、色々とかぼちゃの顔のデザインをしながら、連日楽しそうにランタンを作っている。
最初はスバルが前のめりで始めたのに、今ではミナトの方が熱心だ。
子供が店を散らかしていたら客からクレームが来るかと思ったが、意外にも好評な様子。
大概は「ほう」と面白そうに眺め、女性だと「楽しそうね」と声をかける客もいる。
なので、やっぱり俺がいつもの位置に立っていると、子供達の会話は筒抜けだった。
「そんで、どうすんだよ」
「どうって?」
「だから、コグマさ」
周囲にお客がいなくなったところで、声を潜めてスバルが言った。
「肝心な時に役に立たない奴なんか、居たってウザイだけじゃんか」
「そりゃそうだけど、だからってどうしろって言うのさ」
「ミナトが嫌だって言えば、聖一はコグマと一緒に住むの、やめるんじゃないの?」
かぼちゃ彫りはミナトの方が熱心になっているが、コグマ追放は正義感と思い込みの激しいスバルの方が熱心らしい。
「そりゃあ、聖一は最初はそう言ったし、頼めばやめてくれると思うケド……。でもそんなコト頼んだら、聖一がガッカリしちゃうよ。聖一はコグマが好きなんだから」
「ええ~? 聖一、コグマが好きなの?」
「あのさ、好きじゃなきゃ、恋人にならないんじゃないの」
ミナトのツッコミに、俺は思わず吹き出しそうになったが、なんとか堪えた。
「あー……そっか」
スバルは納得したように頷き、彫刻刀を使って細かい装飾を彫っているミナトの手元を見ている。
ミナトもスバルも、最初は単に三角の目と口といった、ポピュラーだけど大味なデザインの物を作っていたのだが、少し作業に慣れてきた辺りからそれぞれの個性が如実に現れた物を作っている。
スバルのかぼちゃはつり上がった目つきやらギザギザの口やらの、ひたすらインパクトのある顔のデザインで作っているが、ミナトのかぼちゃは全体にもっと繊細な感じだ。
穴を空けずに残す皮の厚みを変えることで、中に明かりを灯した時に濃淡が出ることに気付いてからは、大人が見ても感心するような綺麗な模様を、かぼちゃの表面に丁寧に彫りつけていた。
「でも聖一は、コグマのドコが好きなんだろ?」
「僕にだってワカンナイよ。……でも、毛かな?」
「毛ぇ? なにそれ?」
「だって、聖一は僕と自分のシャンプーとボディソープは、ドラッグストアの特売品を買うんだけど、コグマ用のヤツはネットでわざわざ、バーユって言うのを買ってるんだ」
「ばーゆって何?」
「知らない。でも、いつもわざわざそれを買ってる。コグマはお風呂から出るとパンイチでウロウロしてて、聖一はコグマに冷えたビールを出して、コグマがそれを飲んでる間、後ろに立って櫛で梳かしてるんだ」
「僕だってお風呂上がりは、ケイに髪拭いて貰うけど?」
「違う、頭の毛じゃなくて背中の毛! それに拭いてるんじゃなくて、梳かしてるの! てか、髪ぐらい自分で拭きなよ!」
コグマの体毛が臍も見えないほどフッサフサだということを、俺は知りたくもないが知っている。
なので、風呂上がりのコグマの背毛を、白砂サンが櫛で梳かしているというミナトの発言は、ものすごくシュールだが、簡単に目に浮かんだ。
「だってケイが拭いてくれるんだもん」
「僕も最初は聖一が拭きに来たけど、赤ちゃんじゃないから自分で拭けるって、断ったよ」
「だってケイに拭いてもらうと、すごくよく乾くし、それにケイってすごくイイ匂いがするんだもん。拭いてもらうの、気持ちいいんだ」
「じゃあ好きにしなよ、僕の頭じゃないし」
「そんな言い方しなくてもいいじゃんかー。それよっか、コグマよりもっと毛深くて、役に立つカレシを聖一に探したらどうかな?」
「恋人ってどうやって探すのさ?」
「ママはネットの出会い系ってゆうので、カレシ探してたよ」
「出会い系かぁ……」
子供の会話の雲行きがヒジョーに怪しくなってきたので、話に割って入るべきかと思ったところで、入口の扉が開いた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
振り返ると、先日のイケメンとおっさんの自衛官二人連れが入ってきていた。
「あ、そちらの席へどうぞ。今、白砂サン呼びますね」
「ありがとうございます」
厨房に声を掛けると、白砂サンはすぐにも表に出てきた。
なぜか、ユリオも若桐氏も、席には座っていない。
「やあ、わざわざ申し訳なかったね」
「いえ、こちらこそ無理を言いまして」
なんだか白砂サンとユリオの間では、なんらかの約束があったらしい。
三人はそのまま奥へと進み、上からシノさんが降りてきた。
「こりゃ~、はじめまして。大家の東雲柊一です」
「真壁です」
「若桐です」
奥の廊下から、そんな会話が聞こえ、それから白砂サンがこっちにやってくる。
「多聞君。真壁君たちはこれから部屋の内見をするので、しばし厨房が留守になる。調理が必要な客が来たら、声を掛けてくれたまえ」
「あ、はい。わかりました……。てか、あの二人、赤ビルに入居するんすか?」
「どうかな? 柊一が一度、顔を合わせてみたいと言ってくれたので、あちらに賃貸の打診をしたら、内見できる日を知らせてきたのでな」
「なるほど」
そこで白砂サンが去ったので、俺はかぼちゃに霧吹きで水を掛け、乾いた布で磨く作業に取り掛かった。
ランタンは完成品から順々に、白砂サンが更なる "腐敗防止処理" を施してから、店先に飾り付けされている。
先日の講義で "腐りやすい" と指導されたので、俺はてっきりコイツらはカラカラに天日干しにでもするんだろうと思っていた。
が、乾燥させるとしぼんでしまうのだという。
そのため、乾燥防止にワセリンを塗り、霧吹きで水を掛け、夜間は冷暗所に保存せねばならない。
しかも、水滴が残っているとそっから腐るので、こまめに水を掛けては拭き取らなきゃならない。
外国のハロウィンの様子を見ていると、屋外に放りっぱなしの印象があったので、よくもまあこんなクソ面倒なことをするもんだ……と感心したのだが。
白砂サン曰く「日本は湿度が高いから」だそうだ。
俺にしてみればとんだとばっちり事案である。
そうして、かぼちゃを拭き拭きしながら、俺はずっと自衛官カップルの住居問題について、薄らぼんやりと考えていた。
俺からしたら、おカタイ職業のおエライさんとなる、あのイケメン自衛官なユリオなら、一人でマンション契約して、そこに "黙って" 若桐氏と同居でもシェアでもすりゃいいのに……と思うが。
しかし一方で──。
もし、俺がシノさん達とバンドで成功して、シノさんと二人で暮らしたいと思った時に、同じことを言われたら嫌だなぁ……とも思う。
例えば、それで俺の名義で買ったマンションが、俺になにかがあった時、シノさんに渡せず姉ちゃんたちに渡っても、それはそれで業腹だ。
ユリオと若桐氏の家族との間柄がどうなってるのかは知らんけど。
§
店内のかぼちゃを一通り面倒見終わったところで、俺は自分が何かを忘れているような気がした。
そういえば、さっき子供らがヒジョーに不穏な会話をしていて、そこに割って入るべきかを考えていたことを思い出す。
だが、自衛官カップルの到来やら、かぼちゃ拭きやらしていたあとでは、あのあとの会話がどうなったのかなんて、分かるわけもない。
そうっと二人の様子を伺うと、並んで大人しくタブレットに向かっていた。
そこに話し声が聞こえて、内見チームが戻ってくる。
「そんじゃまぁ、こっちゃで茶でも飲んでってくださいよ」
と、シノさんが──年上相手とも思えぬざっくばらんな態度だが、シノさんにしたら最上級の猫かぶりで、二人をレコード店側の席へと案内した。
白砂サンがいないな……と思ったら、どうやら階段のところで別れて、厨房に寄ってきたらしい。
銀の盆に、子供らのおやつも取り混ぜて持ってきた。
「こちら、ハロウィン向けの季節限定商品だ。良かったら相伴してくれたまえ」
ユリオの前には、可愛いコウモリの柄が付いている器に入ったかぼちゃプリン。
シノさんの前には、マジパンで作ったおばけの乗ってるかぼちゃのケーキ。
そして若桐氏の前には、チョコで目と口が付けられたかぼちゃのモンブラン。
前回、菓子を出された時 "お愛想笑い" をしていた若桐氏は、今回ニコニコそれを受け取った。
先日のアップルパイ、食った途端にホクホクしてたから、たぶん白砂サンの菓子にかなりの信頼を寄せたのだろう。
「僕は、今日はモンブラン!」
「プリンにする」
子供らは、三種の菓子の中から好きなものを選んだ。
ハロウィンパーティー開催が決まったあと、ランタン制作の進行に合わせて、店内が少しずつハロウィンカラーに模様替えしている。
自室をどっかの博物館みたいに改装出来る手腕を持つ白砂サンは、今回もその能力を発揮して、店内の飾りはゴシック・ホラー調にかなりかっこいい。
それに合わせて、ハロウィン限定メニューなんかも出している。
俺は、ハロウィン限定メニューと言うと、ダジャレのような名称が付いたフツーの料理というイメージを持っていた。
しかし美観で生きている白砂サンは、どうやらダジャレの類を好まないらしい。
シノさんが次々に繰り出してくるお寒いオヤジギャグを、それのどこがどのように "面白い" のか? について、全部説明させるという逆襲に出ることで見事に撃退した。
ちなみにランチメニューは、ラタトゥイユをメインに、副菜にキノコとかぼちゃとれんこんのソテーか、かぼちゃのポタージュが選べる形になり。
あとは、野菜の切り方や器なんかにハロウィンモチーフを使って、雰囲気が上手に演出されることになった。
「そんで、どーだった?」
本人は猫をかぶりまくっているが、一般常識を持つ人間からしたらフランクすぎるシノさんの態度──だが。
内見してるあいだもそのスタンスを崩さなかったんだろう、自衛官カップルの方が既に押し負けているらしい。
「一つ、確認したいんだが……」
改まった真面目な顔で、若桐氏が口を開く。
「なんだろか?」
「……家賃12万って……本気なのか?」
まぁ、そこは確かに強く確認する案件だろうな……。
だが、彼らが賃貸しようとしている部屋より広い、俺の部屋の家賃は八万だ。
もっともそれには、ちょっとした事情がある。
俺が以前に暮らしていたアパートの家賃は、八万だった。
そして俺は、敬一クンに "シノさんの面倒を見るため" に、赤ビルに入居を「お願い」された……ことになっている。
が、今はタテマエとして、俺は "住み込み雇われ店長" ってポジになっている。
なぜなら同じ条件で白砂サンの家賃も八万にしたい……とシノさんが敬一クンに頼み込んだからだ。
しかし三階の部屋まで八万で貸す訳にはいかない。
とは言え、築50年の老朽ビルとなったら、この近隣の相場の家賃は取れない。
その折衝点が12万なのだ。
「うむ。間違いなくその金額だ」
数字の話にシノさんが爆発するより先に、白砂サンが頷いた。
「それで、半年も入居者がいないとか、あり得ないだろ?」
「つっても、エレベーターはアレじゃし。内側はリフォームしてあるけど、建物は古いしなぁ。あと、つまらんヤツには住まわせたくない」
きっぱりと、シノさんはぶっちゃけた。
「それって……俺たち、"面白い" 判定されたってこと?」
「そりゃ、セイちゃんのトモダチが、おもろくないワケないじゃん。それに、会って話したらマモちゃんもおもろいヒトっぽいし」
シノさんの "マモちゃん" 呼びに、若桐氏はぶふっと吹いた。
激しく咳き込む若桐氏の背中を、ユリオが「大丈夫ですか?」とか言いながらさすって、白砂サンは即座に綺麗なハンカチを差し出している。
「ま……まもちゃん?」
「あれ? まもるじゃなかったっけ?」
「いや、まもるだけど……。そんな呼び方されたの初めてだし」
「ええ~。そのぐらいの年頃なら、子供の頃はタキシード仮面だったんじゃないの?」
「はっ?」
「柊一。セーラームーンの流行は、若桐氏が高校生か、既に防大に入っている年代だ。その年頃の男性が視聴している可能性は低い」
「そんじゃあ、守兄さんのお年頃?」
「若桐氏がアニメを視聴する趣味があるなら、見ている可能性はあるが……」
シノさんと白砂サンに視線を向けられて、若桐氏は困惑顔だ。
「あの……、二人が言ってるのは "宇宙戦艦ヤマト" の古代守の話だと思いますよ」
俺は、こそっと後ろから補足した。
「ああ! えっ? ああ……はい。えーと……子供の頃に、キャラに当てはめられたことは、ないですね」
「んか~」
シノさんは、残念そうに頷いた。
「ま、防犯はガバガバじゃし、内装のリフォームはしてあるけど、建物自体はオンボロだからな~。国家公務員が暮らすには、見劣りするかもだが……」
「おじさんたち、メゾンに住むの?」
横から、スバルが問うた。
「あ、えーと、この子たちは……?」
「イロイロあって、赤ビルで暮らす仲間だナ」
大胆に端折りすぎな気もするが、しかしスバルとミナトがここで暮らす理由は、一言で説明出来ない案件でもある。
「住む……かどうか、考えてるところだな」
少々困惑顔だが、若桐氏は大人らしく、スバルに返事をした。
「そんなら、ハロウィンパーティーにくればいいよ!」
「え?」
「だって、メゾンがどんなところかわかんないなら、一番楽しいの見に来ればいいよ!」
唐突なスバルの発案に、自衛官カップルはますます困惑顔だ。
「そーじゃな。キングオブロックンロール神楽坂ビル恒例、ペントハウスパーティーに顔を出せば、まぁ、どーいう住人が暮らすどーいう場所か、一目瞭然……ではあるな」
うんうんと頷きながら、シノさんは大胆に二つに割ったケーキの一切れを、パクッと一口で食った。
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