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S3:猫と盗聴器
21.白砂サンの気遣い
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「こちらがおもちで、こちらが豆大福だよ」
白砂サンは大量の猫の中からちゃんと自分の猫を見つけ出し、俺に差し出して見せてくれた。
あの時見たコネコと同じ柄……のような気もするが、おもちに至っては真っ白な猫だから、柄もヘッタクレも無い。
だがよく見ると首輪が付いていて、正面のタグに小さく名前が書いてある。
もちろん白砂サンはタグを確認せずとも区別が付くようだが、こんだけいたらやっぱり名前札は必要なんだなと思った。
「さあ、今日は何が出てくるかな?」
白砂サンは猫と遊ぶモードに入ったらしく、全く言葉通りの "猫撫で声" で話し掛けながら、そこで身を屈めた。
すると、猫達は白砂サンを囲みつつも、そこにちゃんと白砂サンがしゃがめるだけのスペースを開ける。
俺が歩み出そうとしても知らんぷりな猫達が、なんで白砂サンの時はちゃんと動くのか? と言えば、そうやって白砂サンがしゃがむと、その後に美味しいオヤツやら面白いオモチャやらが出てくると知っているからだろう。
白砂サンはまるでマジシャンのごとく、ポケットに忍ばせてあった猫のおやつを取り出し、おもちゃを投げ与え、小さな頭をクリクリなでまくっている。
リビングの真ん中には、猫だらけのソファが置いてあって、白砂サンはそこにゴロゴロしていた大きめの長毛種の猫を抱き上げた。
「多聞君、座るかね?」
「あ、どうも」
座ったら猫の毛だらけになってしまいそうな気がしたが、せっかく場所を作ってもらったので、俺は腰を下ろした。
そこにすかさず、白砂サンは抱いていた猫を乗せてくる。
「その仔はおとなしいので、初対面でも抱っこが出来るのだよ」
まぁ、最初から目的は猫と遊ぶことだから、猫が相手にしてくれなかったらつまらないだろうが。
長い毛はふわふわだし、そりゃまぁこういうものを撫でるのは、大概のヒトは "気持ちいい" と思うのかもしれないが。
それにしたって、乗せていると足が痺れそうなほど、結構な重さがある。
この猫が単に怠惰なのか、老齢なのかわからないが、白砂サンの言う通りおとなしく、俺に撫でられるがままだ。
猫好きなら、この猫接待に喜びもするだろうが、さほどの興味もない俺にしたら、なんだかなぁって気にもなる。
だけどきっと白砂サンは、コグマにも同じことをしたんだろうな……と、ふと思った。
猫が大好きオーラをダダ漏れさせながら、白砂サンは猫と散々戯れているが、遊びに夢中になって俺を無視したりはせず、ポケットのおやつを分けてくれたり、釣り竿の先にフワフワした毬がついているおもちゃを手渡してきて、このおもちゃが好きな猫はこれ……とか、教えてくれた。
そして "これこれこうすると、こういう反応をするから可愛い" といった具合に、細かく解説してくれる。
コグマにしてみれば、さほど好きでもない猫を相手に、まるでこちらが媚びるみたいにおもちゃを操り、猫の興味を引いて猫と遊ぶなんて、まるっきりバカバカしいと思ったに違いない。
だが白砂サンが猫と遊んでいる様子を見れば、本当なら全力で猫と戯れたいと思っているのに、連れに気遣いをしなきゃならない状況といえるだろう。
今日の場合は、俺を "招待" してしまったところはあるが、コグマの場合は向こうが付いてきている状況だ。
俺がお愛想程度に「可愛いですね」とか言っただけで、白砂サンはその可愛さを言葉を尽くして語りまくる様子から、すっかり俺が猫好きの同士で、猫談義を繰り広げて良い相手……と認識しているのだろう。
ってことは、猫がさほど好きじゃないコグマ相手には、もっと気を使っていたんじゃなかろうか? と思う。
白砂サンは大量の猫の中からちゃんと自分の猫を見つけ出し、俺に差し出して見せてくれた。
あの時見たコネコと同じ柄……のような気もするが、おもちに至っては真っ白な猫だから、柄もヘッタクレも無い。
だがよく見ると首輪が付いていて、正面のタグに小さく名前が書いてある。
もちろん白砂サンはタグを確認せずとも区別が付くようだが、こんだけいたらやっぱり名前札は必要なんだなと思った。
「さあ、今日は何が出てくるかな?」
白砂サンは猫と遊ぶモードに入ったらしく、全く言葉通りの "猫撫で声" で話し掛けながら、そこで身を屈めた。
すると、猫達は白砂サンを囲みつつも、そこにちゃんと白砂サンがしゃがめるだけのスペースを開ける。
俺が歩み出そうとしても知らんぷりな猫達が、なんで白砂サンの時はちゃんと動くのか? と言えば、そうやって白砂サンがしゃがむと、その後に美味しいオヤツやら面白いオモチャやらが出てくると知っているからだろう。
白砂サンはまるでマジシャンのごとく、ポケットに忍ばせてあった猫のおやつを取り出し、おもちゃを投げ与え、小さな頭をクリクリなでまくっている。
リビングの真ん中には、猫だらけのソファが置いてあって、白砂サンはそこにゴロゴロしていた大きめの長毛種の猫を抱き上げた。
「多聞君、座るかね?」
「あ、どうも」
座ったら猫の毛だらけになってしまいそうな気がしたが、せっかく場所を作ってもらったので、俺は腰を下ろした。
そこにすかさず、白砂サンは抱いていた猫を乗せてくる。
「その仔はおとなしいので、初対面でも抱っこが出来るのだよ」
まぁ、最初から目的は猫と遊ぶことだから、猫が相手にしてくれなかったらつまらないだろうが。
長い毛はふわふわだし、そりゃまぁこういうものを撫でるのは、大概のヒトは "気持ちいい" と思うのかもしれないが。
それにしたって、乗せていると足が痺れそうなほど、結構な重さがある。
この猫が単に怠惰なのか、老齢なのかわからないが、白砂サンの言う通りおとなしく、俺に撫でられるがままだ。
猫好きなら、この猫接待に喜びもするだろうが、さほどの興味もない俺にしたら、なんだかなぁって気にもなる。
だけどきっと白砂サンは、コグマにも同じことをしたんだろうな……と、ふと思った。
猫が大好きオーラをダダ漏れさせながら、白砂サンは猫と散々戯れているが、遊びに夢中になって俺を無視したりはせず、ポケットのおやつを分けてくれたり、釣り竿の先にフワフワした毬がついているおもちゃを手渡してきて、このおもちゃが好きな猫はこれ……とか、教えてくれた。
そして "これこれこうすると、こういう反応をするから可愛い" といった具合に、細かく解説してくれる。
コグマにしてみれば、さほど好きでもない猫を相手に、まるでこちらが媚びるみたいにおもちゃを操り、猫の興味を引いて猫と遊ぶなんて、まるっきりバカバカしいと思ったに違いない。
だが白砂サンが猫と遊んでいる様子を見れば、本当なら全力で猫と戯れたいと思っているのに、連れに気遣いをしなきゃならない状況といえるだろう。
今日の場合は、俺を "招待" してしまったところはあるが、コグマの場合は向こうが付いてきている状況だ。
俺がお愛想程度に「可愛いですね」とか言っただけで、白砂サンはその可愛さを言葉を尽くして語りまくる様子から、すっかり俺が猫好きの同士で、猫談義を繰り広げて良い相手……と認識しているのだろう。
ってことは、猫がさほど好きじゃないコグマ相手には、もっと気を使っていたんじゃなかろうか? と思う。
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