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S3:猫と盗聴器
27.オタクはボッチ
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俺達を出迎えた白砂サンは、一行に俺が混ざっているのに気付いたところで、廊下の照明を明るい物に切り替えてくれた。
だが、明るくなったら白砂サンの顔に派手なひっかき傷があることに気付いて違う意味で驚かされる。
「セイちゃん、その顔どしたん?」
「うむ、ちょっとトラブルがあってな。消毒と手当済みだから、問題無い。それより、何か用事かね?」
「帰省のおみやげ持って来たんよ」
シノさんが干物やら漬物やらが入った手提げの紙袋を差し出すと、白砂サンは黙ってジッと紙袋を見ている。
「どしたん? セイちゃんに買ってきたんじゃから、貰ってよ。それとも、干物キライじゃった?」
「お土産を貰うのは、初めてなので……。すまない、ありがとう」
「そ~う。セイちゃん、お土産貰ったコト無いんだ?」
「洋菓子店に勤めていた時に、同僚が職場用に買って来た温泉饅頭が、休憩時間に配られたことはある。だが個人的に貰ったのは初めてだ」
白砂サンは友達いなくて、ずっとテレビばっかり見てた……と以前にシノさんが言っていて、今も休みの日はイベントが無い時は部屋でテレビばっかり見てるらしいんだけど、その理由は俺みたいなコミュ障ってのとちょっと違う。
いや、コミュ障はコミュ障なんだけど、俺のように最初から対人恐怖みたいなモノを持っていて、人に声を掛けるのが苦手とかってのは、違うって意味だ。
コグマは日本生まれの日本育ちで、曾祖父さんが国際結婚をしたのが、隔世遺伝でああいうガイジンになったと言う履歴の持ち主なので、外見はああだけど血統的には八分の一になるから、もうほぼ日本人なんだけど。
白砂サンは両親ともに英国人で、父親が日本の教会に赴任してきてから母親が妊娠・出産をしたので、血統的には英国人なんだけど、やっぱり日本生まれ日本育ちで、バイリンガルだけど英語より日本語の方が得意なんだそうだ。
学校もずっとフツーの公立に通っていたんだそうだが、子供の頃に母親が亡くなり、それ以前からDVのケがあった父親は、暴力と威圧と束縛で散々白砂サンのことを虐待してきたので、ティーンエイジの頃に家出をしたらしい。
その後、家に連れ戻されては家出をするってことを繰り返していたので、友達なんか作ってるヒマは微塵も無く、心の友はテレビドラマになっちゃったらしい……ってことを、シノさんが教えてくれた。
つまり、俺みたいなビビリだから対人スキルを培えなかったんじゃなくて、対人スキルは全てテレビドラマの "理想" からシミュレートして、イメトレで構築されているから、本人の人格と態度にズレが生じているらしい。
ちなみに趣味や仕事の人脈ネットワークはかなり広いが、友人らしい友人はシノさんが初めて……なんだそうだ。
そんなんじゃ、確かにお土産なんてもらったことが無いってのも、ありえるのかもしれない。
「そんで? レンから聞いたけど、アマミーんトコに子供がいたんだって? 今どうしてるん?」
「うむ、あちらで遊んでいるよ」
白砂サンがLDKに入って行くので、俺達はぞろぞろとその後に続く。
メゾンのLDKは、奥側に作り付けのダイニングキッチンがあり、白砂サンは中央の作業台の手前部分にカウンターテーブルを置いて、そこにスツールを設置してある。
廊下や玄関の巧みな工作を考えると、LDKに殆ど手を加えず、それどころか家具らしい家具を殆ど置いてないのは、白砂サンのこだわる性格を考えるとちょっと意外な感じがするのだが。
そのことをカフェで話をしている時に訊ねたら、シノさんのペントハウスに置いてあるソファセットみたいなヤツが欲しいと思っているんだけど、手元不如意でなかなか揃えられないと言っていた。
じゃあ、作り付けの家具に含まれないカウンターテーブルとスツールはどうしたのかと訊ねたら、場末のリサイクルショップに行って、中古でオンボロのカウンターとスツールを購入し、綺麗にリフォームした物だと言う。
あんまりピッカピカでカッコイイので、とてもそんな風には見えないが、廊下と玄関の改造テクニックを見た後では、なるほどと思うだけだ。
だが、明るくなったら白砂サンの顔に派手なひっかき傷があることに気付いて違う意味で驚かされる。
「セイちゃん、その顔どしたん?」
「うむ、ちょっとトラブルがあってな。消毒と手当済みだから、問題無い。それより、何か用事かね?」
「帰省のおみやげ持って来たんよ」
シノさんが干物やら漬物やらが入った手提げの紙袋を差し出すと、白砂サンは黙ってジッと紙袋を見ている。
「どしたん? セイちゃんに買ってきたんじゃから、貰ってよ。それとも、干物キライじゃった?」
「お土産を貰うのは、初めてなので……。すまない、ありがとう」
「そ~う。セイちゃん、お土産貰ったコト無いんだ?」
「洋菓子店に勤めていた時に、同僚が職場用に買って来た温泉饅頭が、休憩時間に配られたことはある。だが個人的に貰ったのは初めてだ」
白砂サンは友達いなくて、ずっとテレビばっかり見てた……と以前にシノさんが言っていて、今も休みの日はイベントが無い時は部屋でテレビばっかり見てるらしいんだけど、その理由は俺みたいなコミュ障ってのとちょっと違う。
いや、コミュ障はコミュ障なんだけど、俺のように最初から対人恐怖みたいなモノを持っていて、人に声を掛けるのが苦手とかってのは、違うって意味だ。
コグマは日本生まれの日本育ちで、曾祖父さんが国際結婚をしたのが、隔世遺伝でああいうガイジンになったと言う履歴の持ち主なので、外見はああだけど血統的には八分の一になるから、もうほぼ日本人なんだけど。
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学校もずっとフツーの公立に通っていたんだそうだが、子供の頃に母親が亡くなり、それ以前からDVのケがあった父親は、暴力と威圧と束縛で散々白砂サンのことを虐待してきたので、ティーンエイジの頃に家出をしたらしい。
その後、家に連れ戻されては家出をするってことを繰り返していたので、友達なんか作ってるヒマは微塵も無く、心の友はテレビドラマになっちゃったらしい……ってことを、シノさんが教えてくれた。
つまり、俺みたいなビビリだから対人スキルを培えなかったんじゃなくて、対人スキルは全てテレビドラマの "理想" からシミュレートして、イメトレで構築されているから、本人の人格と態度にズレが生じているらしい。
ちなみに趣味や仕事の人脈ネットワークはかなり広いが、友人らしい友人はシノさんが初めて……なんだそうだ。
そんなんじゃ、確かにお土産なんてもらったことが無いってのも、ありえるのかもしれない。
「そんで? レンから聞いたけど、アマミーんトコに子供がいたんだって? 今どうしてるん?」
「うむ、あちらで遊んでいるよ」
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メゾンのLDKは、奥側に作り付けのダイニングキッチンがあり、白砂サンは中央の作業台の手前部分にカウンターテーブルを置いて、そこにスツールを設置してある。
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そのことをカフェで話をしている時に訊ねたら、シノさんのペントハウスに置いてあるソファセットみたいなヤツが欲しいと思っているんだけど、手元不如意でなかなか揃えられないと言っていた。
じゃあ、作り付けの家具に含まれないカウンターテーブルとスツールはどうしたのかと訊ねたら、場末のリサイクルショップに行って、中古でオンボロのカウンターとスツールを購入し、綺麗にリフォームした物だと言う。
あんまりピッカピカでカッコイイので、とてもそんな風には見えないが、廊下と玄関の改造テクニックを見た後では、なるほどと思うだけだ。
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