視聴の払霧師

秋長 豊

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24、橋本南薺

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 自動ドアをくぐると、龍太郎は真っ先にエレベーターホールへ向かった。到着したエレベーターの中から、高そうなスーツを着たおじさんたちがなだれ出る。龍太郎は最上階の20階を押した。

 5階を通り過ぎるころには同乗していた人が全員はけ、具視と龍太郎だけになった。チン、と音がして目的フロアに出ると、しんとした空気が2人を包んだ。窓一つない閉鎖的な廊下を進んでいくと、青白い光で満たされたドーム状の空間にたどり着いた。中央にあるモニターに近づくと「ヒュン」と謎の音がしてAIの女性キャラクターが浮かび上がった。

「払霧師協会の会議室へようこそ。受付はお済みですか?」

「地獄谷龍太郎だ。波戸場と約束をしてる」

 龍太郎がパスポートを提示しながら言うと、AI女性は「しばらくお待ちください」と言ってお辞儀をした。チャラチャラ~ン、チャラララ~という音楽が流れ、2人は数分待たされることになった。突然音楽が止まり、

「今行くわ」

 とだけ生身の女性の声がした。すぐに奥のドアが開き、180センチはあろうスタイル抜群の美女が2人を出迎えた。ヒールの音が響く。ブラウンのシックなスカートスタイル。腰まで伸びたコバルトブルーの爽やかな髪に、夏の空みたいに涼しげな水色の瞳。豊満なバストのせいでブラウスのボタンは今にも弾け飛びそうだ。ごく普通の13歳である具視の感性では追いつかないほど、美という言葉が似合う女性った。

「時間ピッタリ」

 具視はパーカーとジーンズという中学生っぽい服装だったので、この場にいるのが恥ずかしくなった。

「連れてき――」

「まぁ! かわいい!」

 龍太郎が言い終わる前に、女はキャンキャン甲高い声で具視の前に走り出た。そしていきなりの抱擁。なにか柔らかいものに当たり、具視はどうしたらよいのか分からずに目をしばたかせた。通りすがりに頭をなでられる犬にでもなった気分だ。

「うんうん、いいよ。おとなしそうなんだけど、やってやるぞ! って奥底で闘志に燃える感じ。将来は有望なリーダータイプね。私は好きよ」

「お前、まじで直せよ。若い男の子好きなの」

「どうして? だって、かわいいじゃん!」

「最近そういうのうるさいんだから。セクハラだとか……」

 龍太郎はあきれ顔で言った。

「私は払霧師協会所属の波戸場 青藍(せいらん)」

 青藍は名刺を渡してにっこり笑った。この人、笑顔で男をイチコロ☆にできそうなタイプだ。名前の上には「払霧師協会 北島流大田区五座」と書いてある。六座の龍太郎より偉い役職者ということだ。

「ついてきて。頭首が待ってる」

 青藍を先頭に、具視たちは会議室の前までやってきた。

「この扉の向こうに、今回お前を呼んだ南薺がいる。話が終わったら声をかけてくれ。俺はここで待ってる。しっかりあいさつしてこい」

(1人?)

 ポツンと扉の前に取り残された具視。

 橋本南薺は也信が所属していた米沢流の頭首だ。東京23区を守る座長、さらにはその下で働く払霧師を取りまとめ、払霧師協会の現トップに相当する男。具視に払霧師としての資質があると言ってくれた人だ。

 恐る恐る、ノックをする。

 返事はない。

 もう一度、ノックをする。

 返事はない。

 どうやらこのドア、分厚過ぎて音が一切中に聞こえないらしい。

(入っていいって、ことだよな)

 扉をゆっくり開けると、何十席もある大きな議場が現れた。誰もいない。いや――いた。窓際に、長い赤毛を高い位置で1本に結んだ背の高い男が。
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