REALIZER

希彗まゆ

文字の大きさ
5 / 15

●第五話

しおりを挟む
「だけどきみは、人の感情にすごく敏感だろう。今のところ負の感情に対してが、とりわけすごく。それはね、能力が潜在されていたっていう証拠なんだよ」

 望が口を挟む。

「そんな──」

「と、いうわけでっ」

 和妃の言葉を無理矢理に区切って、ほのかは話を進める。

「林和妃さん、あなたにはあたし達の仲間になってもらうわ。これはあたし達にとって必然で、あなたにとってもそうよ。潜在者だった時と違って、もう目醒めて能力者になっちゃったんだからそうなのよ」

 強引な気がするけど、言葉の裏には確かな真実が感じられる。

「おれは反対」

 ふい、と神也が立ち上がる。形のいい眉が心底不機嫌そうに歪んでいた。

「どうしてよ?」

 ほのかが驚く。

「味方は多いほうがいいってあんたも分かってるんでしょ? あたし達だってその分楽になるのよ?」

「決定的にいやだ。この女は」

 神也は鋭い視線を和妃に向ける。胸の奥まで突き刺すように、それは痛かった。

「和妃って、名前がいやだ」

 それだけ言うと、部屋を出て行く。まるで子供の理由だ。

 でも、和妃には感じられた。何故かは分からないけど、彼は「和妃」という名前が本当にいやなのだと。和妃の中に入り込んできた彼の負の感情が、それを語っていた。

「いい名前じゃないの、何が気に入らないのよ」

 ほのかが眉を吊り上げる。章地が軽いため息をついた。

「まだナギサを引きずっているんだ、あいつは」
 その言葉に、ほのかはハッとした。

 黙り込んでしまう彼女の代わりに、望が立ち上がる。

「あんなガキのことは、あとでぼく達だけで話し合えばいいでしょう。とりあえず味方は本当に必要なんだから」

 微笑んで、和妃を見下ろした。

「ぼくは藤久保望。十六歳、きみと同じく高一」

 同い年、と聞いて和妃は軽くショックを受けた。ひとつかふたつは絶対に年上だと思ったのに。

「あたしは白宮ほのか。十六歳、高二よ。よろしくね」

 続いて、ほのか。差し出された手を、和妃は慌てて握る。

 最後に章地が歩み寄った。

 近くで見ると──和妃がベッドにいることを除いても──本当に、背が高かった。百八十センチ以上は絶対にあるだろう。

「さっきのあれは、伊総神也。きみや望と同い年だよ。それからおれがリーダーの、一山章地。十八歳で高三、本当はこんな時期にのんびりしてられないんだけどね」

 すっきりと清潔感のある美貌に、優しい伏し目がちの瞳。

 見ているうちに、頭がぼうっとしてくる。見惚れているのだろうか?

 違った。

 どっと緊張が襲ってきて体が耐えられなくなったのだった。

「きゃあ、和妃ちゃん!」

布団に突っ伏しながら和妃は、ほのかの悲鳴をおぼろげに聞いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

6年前の私へ~その6年は無駄になる~

夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。 テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...