鬼精王

希彗まゆ

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気持ち、重なって

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「……そろそろ、苺の中の【鬼精虫】も成長しきるな」


禾牙魅さんがそう口火を切ったのは、プールに行った日から間もなくの昼のリビングでのことだった。


「退治のしどきだな」


相槌を打つ霞の言葉に、わたしは自分のお腹に手を当ててみる。こうしていても、特に変わったところはないのに……鬼精王にはそれが分かるんだ。


「あの、退治って……どういうことするの?」


そういえばそのことを今まで聞いたことがなかった、と思って尋ねてみると、架鞍くんが口を開いた。


「【鬼精王】が強い快感を与えて、虫を消滅させるんだけど」

「強い快感……って、え?」


それって……まさか。


「【鬼精虫】の力が弱まる時期っていうのが、成長しきる時なんだよね」

「まあ、愛し愛された仲なら、尚のこと虫は消滅しやすいわけだけど」


架鞍くんの言葉に、霞が補足する。


「そんな……それって」


口ごもるわたしを、禾牙魅さんと霞が見つめてくる。


「最初からお前にそのことを言うと、警戒されると思った。だから言わなかった」

「今夜、苺ちゃんを一番好きな【鬼精王】の誰かが苺ちゃんの部屋に行く。それまで待っててくれ、心の準備もあるだろうし」


愛し愛された仲……ということは……。


「あなた達の中に、わたしを好きになってくれた人がいる、っていうの……?」


ちらりと架鞍くんの顔を見やる。

架鞍くんはいつもの冷たい表情で、わたしを見つめているだけで……今何を考えているのか分からない。


「多分ね。そうじゃなくても退治は誰かがしなくちゃならねえから。そうしたら、【鬼精虫】の消滅も完全にうまくはいかないかもしれねえ。それは覚悟しといてくれ」


霞が、いつになく真顔で言った。


「わ、かった……」


とたとたと、わたしは自室に戻った。





あれから何時間が経ったんだろう。もう、とっぷりと日は暮れて夜になっている。

成長しきっているという、わたしの中の【鬼精虫】。

わたしは……わたしは、どうなっちゃうんだろう……。


その時、ノックの音がしてわたしは飛び上がった。


「は、はいどうぞっ」


誰だろう、誰が来てくれたんだろう……。

架鞍くんだったらいいとずっと考えていた。でも、いざこの段階になると、自信がない。


扉が開いて──


「心の準備とか、出来てる?」


そう聞いてきたのは、架鞍くんだった。


「架鞍くん、なんだ……」


嬉しさに、感極まる。


「俺の気持ちはもう知ってたでしょ?」

「は……はっきり聞いてないし、わかんないよ」

「……俺、今まであんたにたくさんひどいこと言ったりしたりしてきたよね」


架鞍くんは、わたしをじっと見つめた。


「だからせめて今夜だけは自分に素直になることと、」


そして立ち尽くしているわたしを抱きしめる。


「あんたに優しくすることを決めた」

「架鞍くん……」

「強い結界は張っておいたし、しばらくは【鬼精鬼】も邪魔してはこれない。あとは何が恐い? やっぱり俺が恐い?」


言いながら、優しくわたしをベッドに横たえる。
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