23 / 59
気持ち、重なって
しおりを挟む「……そろそろ、苺の中の【鬼精虫】も成長しきるな」
禾牙魅さんがそう口火を切ったのは、プールに行った日から間もなくの昼のリビングでのことだった。
「退治のしどきだな」
相槌を打つ霞の言葉に、わたしは自分のお腹に手を当ててみる。こうしていても、特に変わったところはないのに……鬼精王にはそれが分かるんだ。
「あの、退治って……どういうことするの?」
そういえばそのことを今まで聞いたことがなかった、と思って尋ねてみると、架鞍くんが口を開いた。
「【鬼精王】が強い快感を与えて、虫を消滅させるんだけど」
「強い快感……って、え?」
それって……まさか。
「【鬼精虫】の力が弱まる時期っていうのが、成長しきる時なんだよね」
「まあ、愛し愛された仲なら、尚のこと虫は消滅しやすいわけだけど」
架鞍くんの言葉に、霞が補足する。
「そんな……それって」
口ごもるわたしを、禾牙魅さんと霞が見つめてくる。
「最初からお前にそのことを言うと、警戒されると思った。だから言わなかった」
「今夜、苺ちゃんを一番好きな【鬼精王】の誰かが苺ちゃんの部屋に行く。それまで待っててくれ、心の準備もあるだろうし」
愛し愛された仲……ということは……。
「あなた達の中に、わたしを好きになってくれた人がいる、っていうの……?」
ちらりと架鞍くんの顔を見やる。
架鞍くんはいつもの冷たい表情で、わたしを見つめているだけで……今何を考えているのか分からない。
「多分ね。そうじゃなくても退治は誰かがしなくちゃならねえから。そうしたら、【鬼精虫】の消滅も完全にうまくはいかないかもしれねえ。それは覚悟しといてくれ」
霞が、いつになく真顔で言った。
「わ、かった……」
とたとたと、わたしは自室に戻った。
◇
あれから何時間が経ったんだろう。もう、とっぷりと日は暮れて夜になっている。
成長しきっているという、わたしの中の【鬼精虫】。
わたしは……わたしは、どうなっちゃうんだろう……。
その時、ノックの音がしてわたしは飛び上がった。
「は、はいどうぞっ」
誰だろう、誰が来てくれたんだろう……。
架鞍くんだったらいいとずっと考えていた。でも、いざこの段階になると、自信がない。
扉が開いて──
「心の準備とか、出来てる?」
そう聞いてきたのは、架鞍くんだった。
「架鞍くん、なんだ……」
嬉しさに、感極まる。
「俺の気持ちはもう知ってたでしょ?」
「は……はっきり聞いてないし、わかんないよ」
「……俺、今まであんたにたくさんひどいこと言ったりしたりしてきたよね」
架鞍くんは、わたしをじっと見つめた。
「だからせめて今夜だけは自分に素直になることと、」
そして立ち尽くしているわたしを抱きしめる。
「あんたに優しくすることを決めた」
「架鞍くん……」
「強い結界は張っておいたし、しばらくは【鬼精鬼】も邪魔してはこれない。あとは何が恐い? やっぱり俺が恐い?」
言いながら、優しくわたしをベッドに横たえる。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる