6 / 8
●第五話 チョコの実ジュース
しおりを挟む
「えっと、チョコの実ジュースの作り方は、っと……」
気を取り直してレシピ本を開く。
●チョコの実ジュース(一人分)
※食材
・チョコの実──一個
・水──200ml
・ククレエッセンス──適量
※作り方
① チョコの実をまるごと湯せんする。
② 湯せんしたチョコにククレエッセンスを練り込むようによく混ぜる。
③ 壺に②と水を入れ、とろっとしたら完成。
☆お好みではちみつを混ぜると植物に寄ってくる蜂の声もたまに聞こえることもあります。
レシピ本には「作り方」のところに細かく絵や注意点なども書き込んであり、初心者でもわかりやすい。
チョコの実なら両親の代から自給自足している。
リーシアも錬金術はからっきしだったが、そういった食材などの栽培ならできていた。
ノーラが留守のあいだも、ずっと食材の栽培は続けていた。
今朝も開店前に、畑の植物たちの手入れをしてきたばかりだ。
「チョコの実なら確か、収穫できる状態だったはず!」
リーシアはさっそく軍手をし、長靴を履いてアトリエの裏手に向かった。
広々としたそこはまるまる畑になっており、さまざまな植物が栽培されている。
チョコの実を植えているスペースに行くと、ちょうどおいしそうに実が成っていた。
チョコの実はホタルブクロのように花が地面を向いて垂れ下がるものなのだが、花が枯れるとやがてそこに手のひらより少し大きめのサイズの、しずく型のチョコレート色の実が成る。
この国ではチョコレートはそういうふうに作られるのだが、この畑のチョコの実もちょうどいいころあいに熟れていた。
チョコレート色の実がまるまるとしずく型に太り、つやつやと太陽の光を反射している。
「うーん、いいにおい!」
すぅっと息を吸うと、胸いっぱいにチョコレートの甘いにおいが入ってきた。
リーシアはチョコの実をひとつ、軍手をした手でもぎ取ると、アトリエに戻る。
そして軍手を取り、手をよく洗うと、工房のキッチンテーブルを使って調理を始めた。
チョコの実に皮や殻といったものはないが、外側二ミリほどの厚さのぶんだけ、少し濃厚な部分だ。
その部分だけは火にかけると普通にとけるのではなく、とろりとチョコレートだけでできた水分が多めのお餅のような食感になる。これだけ食べても、もっちりとしていてとても濃厚でおいしい。
まずチョコの実を、まるごとそのまま湯せんする。
使用するのは、深めの鍋がいい。
そこに水を入れて鍋に入るくらいの大きさのボウルを入れ、その中にチョコの実を入れる。
お湯がゆだってくるにつれチョコの実もじわじわと溶けてくる。
すっかり溶けたら、お箸で溶けたチョコレートを探る。
外側二ミリの厚さ部分がお箸にひっかかってくるので、それは大事に保管しておく。
この部分は通常、「濃厚チョコ」と呼ばれる。
濃厚チョコはにおいがつかないガラスタッパーに入れ、冷やす効果のある貯蔵庫に保管しておくのがいちばんいい。
使うときは必要なぶんだけ取り出し、レシピどおりに料理すればさまざまなスイーツに生まれ変わる。
リーシアは濃厚チョコを保管し終わると、湯せんが終わったチョコレートのほうに移った。
ここにククレエッセンスを入れ、混ぜる。
ククレエッセンスはバニラエッセンスのククレ版だ。
ククレとははちみつの香りのする木の実で、エッセンスにしたものを料理に適量混ぜるとはちみつの香りが漂い、芳醇な味にもなる。
こちらは調味料が陳列された棚にあったので、それを使う。
練り込むように混ぜ終わったチョコレートを、ノーラ壺に分量どおりの水とともに入れた。
今回は植物の気持ちをということだったので、はちみつは入れない。
蜂の気持ちも知りたいというのであれば、あとからそれ用にまたはちみつ入りのジュースを作るつもりだ。
あとは「植物の気持ちがわかりますように」とひたすら念じる。
壺の中からぐつぐつと音が立っていたが、まもなくチン、とできあがりの合図が鳴った。
ノーラ壺の中央部分が開いたので、覗いてみる。
ボウルごと入れたので、中まではよく見えない。
パーラーを使ってボウルを取り出してみると、中に入っていたチョコレートはいい感じにとろっとなっている。
入れる前よりもつやつやとしていて、はちみつの香りもする。
錬金術は失敗作だとどんなものでも真っ黒に焦げるので、これは失敗作ではないとわかる。
リーシアは、ほっとした。
初めての依頼の品を、ちゃんとうまく作ることができた!
「うまくいったみたいね」
ノーラの声色もうれしそうだ。
「うん!」
リーシアは元気よくうなずいた。
ボウルから粗熱が取れるのを待ち、ガラス瓶の中に入れ替える。
ジュースの瓶や普通の瓶など、こういった容器は昔から雑貨屋さんから仕入れている。常に在庫を確認して注文しているので、不便はない。
ちょうどジュース瓶一本ぶんの容量のチョコの実ジュースが完成した。
ノーラをひとり?にしておくのは心配だったので、チョコの実ジュースと一緒にノーラ壺もバッグに入れて歩いていく。
郵便配達のお兄さん、ナナヤ・シオットの家は王都アレクシアの中でもはずれのほうにあった。
すぐ裏には野原と花畑が広がっており、向こうのほうには山々が連なっているのが見える。
家の脇にはちょろちょろと小川が流れており、まるで田舎にきたようでほっと心が落ち着く場所だった。
ナナヤの家自体もこぢんまりとしており、童話に出てくる小人の家のようなかわいらしさだ。
赤い屋根にレンガの塀、けれどその広々とした庭にはナナヤが言っていたとおり、鬱蒼と植物がはびこっている。
これは確かに災難だろう。
地面を這う蔦をよけて歩きながら、リーシアは木の扉までたどり着き、コンコンとノックをした。
時刻は夕方にさしかかるところ。郵便配達の仕事は一段落しているだろうと考えてすぐに訪問したのだが、はたしてすぐに「はい」とナナヤが扉を開けて顔を出した。
リーシアの姿を認めると驚いたように目を見開く。
「リーシアさん? もう品物ができあがったんですか?」
「はい。無事に完成しました。簡単なものだったので……。たぶん効果も問題ないとは思うんですが、一応飲んでみていただけませんか? もし効果がない場合、すぐに作り直しますので」
「わかりました。ありがとうございます」
ではどうぞこちらへ、とナナヤに言われて家の中に入ると、彼が言ったとおり床の上にも植物の蔦が這っている。
つまずかないように注意を促しつつ、ナナヤはリーシアによく冷えたオレンジジュースを出してくれた。
「では、飲みます」
「はい!」
ナナヤはリーシアがバッグから出して渡したジュースの瓶を持つと、ぐいっと一息に飲み干した。
自分が作った品物をこうして実際に誰かが使用するのを見るのは、これが初めてだ。
リーシアも緊張し、手に汗を握る。
ナナヤはぷはっと息をつくと、ほう、とため息をついた。
「これものすごくおいしいですね! 効果がなくても売り物にしてほしいくらいです」
「ありがとうございます! それで……どうですか?」
リーシアに尋ねられ、ナナヤはしばし耳を澄ませた。
そして「あっ」と声を上げた。
「なんだか声が聞こえてきました」
「どんな声でしょう?」
思わず身を乗り出すリーシア。
「女性のように高い声、男の子のような声……男性のような声。さまざまですが……どれも聞き覚えのない声です」
「なんてしゃべってますか?」
「水を根っこのほうではなく葉っぱに霧吹きでかけてくれとか……蔦は芽のうちに間引いてくれとか……内容から言ってこれは植物の声ですよね……! ほんとにすごい!」
嘘を言っているようには聞こえない。
そのあとリーシアも手伝って葉っぱに霧吹きで水をかけたり、余分な蔦を「植物の言うとおり」に丁寧に処分したりすると、その短時間のうちに植物たちは見る間に元気を取り戻した。
来た時よりもどの植物も葉っぱの艶がつやつやと明らかによくなっている。
ナナヤも満足そうに微笑んだ。
「植物たちがそれぞれに『ありがとう』と言っています。ぼくにだけではなく、リーシアさん。あなたにも」
「わたしもうれしいです……!」
リーシアも笑顔になった。
ナナヤはとても感謝してくれ、依頼料を通常よりも多く払ってくれた。
チョコの実ジュースの効果は一週間。値段は一本百リル。オレンジジュースと値段はほぼ変わらない。
その安さにもナナヤは感動し、「それでほんとにやっていけるんですか」「アトリエがつぶれてしまったりはしませんか」などと心配してくれたりもした。
結局ナナヤは追加注文でとりあえず一ヵ月ぶん購入してくれた。
そのぶんはリーシアが追加で作り、アトリエまでついてきたナナヤがそのまま購入し、自宅に持って行った。
もう夜になるからと、わざわざアトリエまで出向いてくれたのだ。
一ヵ月ぶんというのも、一気に作るとリーシアが疲れるだろうと配慮してくれてのことだ。
本当は半年分ほど買い置きが欲しかったらしい。
これからも少しずつ作り置きしておくからと約束すると、ナナヤは「ありがとうございます」ともう一度、うれしそうに笑ってくれた。
その夜、リーシアは夕飯をちょっと奮発してミニステーキにコーンポタージュ、ポテトサラダにデザートにはヨーグルトつきのフルーツパンケーキを作り、ノーラとお祝いをした。
さすがに未成年なのでお酒は飲めないから、フルーツジュースで乾杯だ。
ノーラ壺の前にもフルーツジュースを置き、ふたりのつもりで祝杯を挙げた。
「リーシア、改めて初の依頼成功おめでとう!」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
初日でたくさんお客さんもきてくれ、品物も完売した。
そのうえ依頼人まできてリーシアひとりでこなすことができた。
なによりお客さんたちが満足そうにしていたこと、そして初の依頼人であるナナヤのうれしそうな姿が忘れられない。
「お客さんの笑顔って、励みになるね!」
「そうなのよそうなのよ、ようやくリーシアとそういう話ができてお姉ちゃんうれしいわ!」
この調子でまた明日もお客さんがきてくれるといいね、とふたりで話に花が咲いた。
★チョコの実ジュース──ひと瓶100リル。
のどごし豊かなチョコレートのお飲み物です。
※効果:植物の気持ちが一週間のあいだわかります。
気を取り直してレシピ本を開く。
●チョコの実ジュース(一人分)
※食材
・チョコの実──一個
・水──200ml
・ククレエッセンス──適量
※作り方
① チョコの実をまるごと湯せんする。
② 湯せんしたチョコにククレエッセンスを練り込むようによく混ぜる。
③ 壺に②と水を入れ、とろっとしたら完成。
☆お好みではちみつを混ぜると植物に寄ってくる蜂の声もたまに聞こえることもあります。
レシピ本には「作り方」のところに細かく絵や注意点なども書き込んであり、初心者でもわかりやすい。
チョコの実なら両親の代から自給自足している。
リーシアも錬金術はからっきしだったが、そういった食材などの栽培ならできていた。
ノーラが留守のあいだも、ずっと食材の栽培は続けていた。
今朝も開店前に、畑の植物たちの手入れをしてきたばかりだ。
「チョコの実なら確か、収穫できる状態だったはず!」
リーシアはさっそく軍手をし、長靴を履いてアトリエの裏手に向かった。
広々としたそこはまるまる畑になっており、さまざまな植物が栽培されている。
チョコの実を植えているスペースに行くと、ちょうどおいしそうに実が成っていた。
チョコの実はホタルブクロのように花が地面を向いて垂れ下がるものなのだが、花が枯れるとやがてそこに手のひらより少し大きめのサイズの、しずく型のチョコレート色の実が成る。
この国ではチョコレートはそういうふうに作られるのだが、この畑のチョコの実もちょうどいいころあいに熟れていた。
チョコレート色の実がまるまるとしずく型に太り、つやつやと太陽の光を反射している。
「うーん、いいにおい!」
すぅっと息を吸うと、胸いっぱいにチョコレートの甘いにおいが入ってきた。
リーシアはチョコの実をひとつ、軍手をした手でもぎ取ると、アトリエに戻る。
そして軍手を取り、手をよく洗うと、工房のキッチンテーブルを使って調理を始めた。
チョコの実に皮や殻といったものはないが、外側二ミリほどの厚さのぶんだけ、少し濃厚な部分だ。
その部分だけは火にかけると普通にとけるのではなく、とろりとチョコレートだけでできた水分が多めのお餅のような食感になる。これだけ食べても、もっちりとしていてとても濃厚でおいしい。
まずチョコの実を、まるごとそのまま湯せんする。
使用するのは、深めの鍋がいい。
そこに水を入れて鍋に入るくらいの大きさのボウルを入れ、その中にチョコの実を入れる。
お湯がゆだってくるにつれチョコの実もじわじわと溶けてくる。
すっかり溶けたら、お箸で溶けたチョコレートを探る。
外側二ミリの厚さ部分がお箸にひっかかってくるので、それは大事に保管しておく。
この部分は通常、「濃厚チョコ」と呼ばれる。
濃厚チョコはにおいがつかないガラスタッパーに入れ、冷やす効果のある貯蔵庫に保管しておくのがいちばんいい。
使うときは必要なぶんだけ取り出し、レシピどおりに料理すればさまざまなスイーツに生まれ変わる。
リーシアは濃厚チョコを保管し終わると、湯せんが終わったチョコレートのほうに移った。
ここにククレエッセンスを入れ、混ぜる。
ククレエッセンスはバニラエッセンスのククレ版だ。
ククレとははちみつの香りのする木の実で、エッセンスにしたものを料理に適量混ぜるとはちみつの香りが漂い、芳醇な味にもなる。
こちらは調味料が陳列された棚にあったので、それを使う。
練り込むように混ぜ終わったチョコレートを、ノーラ壺に分量どおりの水とともに入れた。
今回は植物の気持ちをということだったので、はちみつは入れない。
蜂の気持ちも知りたいというのであれば、あとからそれ用にまたはちみつ入りのジュースを作るつもりだ。
あとは「植物の気持ちがわかりますように」とひたすら念じる。
壺の中からぐつぐつと音が立っていたが、まもなくチン、とできあがりの合図が鳴った。
ノーラ壺の中央部分が開いたので、覗いてみる。
ボウルごと入れたので、中まではよく見えない。
パーラーを使ってボウルを取り出してみると、中に入っていたチョコレートはいい感じにとろっとなっている。
入れる前よりもつやつやとしていて、はちみつの香りもする。
錬金術は失敗作だとどんなものでも真っ黒に焦げるので、これは失敗作ではないとわかる。
リーシアは、ほっとした。
初めての依頼の品を、ちゃんとうまく作ることができた!
「うまくいったみたいね」
ノーラの声色もうれしそうだ。
「うん!」
リーシアは元気よくうなずいた。
ボウルから粗熱が取れるのを待ち、ガラス瓶の中に入れ替える。
ジュースの瓶や普通の瓶など、こういった容器は昔から雑貨屋さんから仕入れている。常に在庫を確認して注文しているので、不便はない。
ちょうどジュース瓶一本ぶんの容量のチョコの実ジュースが完成した。
ノーラをひとり?にしておくのは心配だったので、チョコの実ジュースと一緒にノーラ壺もバッグに入れて歩いていく。
郵便配達のお兄さん、ナナヤ・シオットの家は王都アレクシアの中でもはずれのほうにあった。
すぐ裏には野原と花畑が広がっており、向こうのほうには山々が連なっているのが見える。
家の脇にはちょろちょろと小川が流れており、まるで田舎にきたようでほっと心が落ち着く場所だった。
ナナヤの家自体もこぢんまりとしており、童話に出てくる小人の家のようなかわいらしさだ。
赤い屋根にレンガの塀、けれどその広々とした庭にはナナヤが言っていたとおり、鬱蒼と植物がはびこっている。
これは確かに災難だろう。
地面を這う蔦をよけて歩きながら、リーシアは木の扉までたどり着き、コンコンとノックをした。
時刻は夕方にさしかかるところ。郵便配達の仕事は一段落しているだろうと考えてすぐに訪問したのだが、はたしてすぐに「はい」とナナヤが扉を開けて顔を出した。
リーシアの姿を認めると驚いたように目を見開く。
「リーシアさん? もう品物ができあがったんですか?」
「はい。無事に完成しました。簡単なものだったので……。たぶん効果も問題ないとは思うんですが、一応飲んでみていただけませんか? もし効果がない場合、すぐに作り直しますので」
「わかりました。ありがとうございます」
ではどうぞこちらへ、とナナヤに言われて家の中に入ると、彼が言ったとおり床の上にも植物の蔦が這っている。
つまずかないように注意を促しつつ、ナナヤはリーシアによく冷えたオレンジジュースを出してくれた。
「では、飲みます」
「はい!」
ナナヤはリーシアがバッグから出して渡したジュースの瓶を持つと、ぐいっと一息に飲み干した。
自分が作った品物をこうして実際に誰かが使用するのを見るのは、これが初めてだ。
リーシアも緊張し、手に汗を握る。
ナナヤはぷはっと息をつくと、ほう、とため息をついた。
「これものすごくおいしいですね! 効果がなくても売り物にしてほしいくらいです」
「ありがとうございます! それで……どうですか?」
リーシアに尋ねられ、ナナヤはしばし耳を澄ませた。
そして「あっ」と声を上げた。
「なんだか声が聞こえてきました」
「どんな声でしょう?」
思わず身を乗り出すリーシア。
「女性のように高い声、男の子のような声……男性のような声。さまざまですが……どれも聞き覚えのない声です」
「なんてしゃべってますか?」
「水を根っこのほうではなく葉っぱに霧吹きでかけてくれとか……蔦は芽のうちに間引いてくれとか……内容から言ってこれは植物の声ですよね……! ほんとにすごい!」
嘘を言っているようには聞こえない。
そのあとリーシアも手伝って葉っぱに霧吹きで水をかけたり、余分な蔦を「植物の言うとおり」に丁寧に処分したりすると、その短時間のうちに植物たちは見る間に元気を取り戻した。
来た時よりもどの植物も葉っぱの艶がつやつやと明らかによくなっている。
ナナヤも満足そうに微笑んだ。
「植物たちがそれぞれに『ありがとう』と言っています。ぼくにだけではなく、リーシアさん。あなたにも」
「わたしもうれしいです……!」
リーシアも笑顔になった。
ナナヤはとても感謝してくれ、依頼料を通常よりも多く払ってくれた。
チョコの実ジュースの効果は一週間。値段は一本百リル。オレンジジュースと値段はほぼ変わらない。
その安さにもナナヤは感動し、「それでほんとにやっていけるんですか」「アトリエがつぶれてしまったりはしませんか」などと心配してくれたりもした。
結局ナナヤは追加注文でとりあえず一ヵ月ぶん購入してくれた。
そのぶんはリーシアが追加で作り、アトリエまでついてきたナナヤがそのまま購入し、自宅に持って行った。
もう夜になるからと、わざわざアトリエまで出向いてくれたのだ。
一ヵ月ぶんというのも、一気に作るとリーシアが疲れるだろうと配慮してくれてのことだ。
本当は半年分ほど買い置きが欲しかったらしい。
これからも少しずつ作り置きしておくからと約束すると、ナナヤは「ありがとうございます」ともう一度、うれしそうに笑ってくれた。
その夜、リーシアは夕飯をちょっと奮発してミニステーキにコーンポタージュ、ポテトサラダにデザートにはヨーグルトつきのフルーツパンケーキを作り、ノーラとお祝いをした。
さすがに未成年なのでお酒は飲めないから、フルーツジュースで乾杯だ。
ノーラ壺の前にもフルーツジュースを置き、ふたりのつもりで祝杯を挙げた。
「リーシア、改めて初の依頼成功おめでとう!」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
初日でたくさんお客さんもきてくれ、品物も完売した。
そのうえ依頼人まできてリーシアひとりでこなすことができた。
なによりお客さんたちが満足そうにしていたこと、そして初の依頼人であるナナヤのうれしそうな姿が忘れられない。
「お客さんの笑顔って、励みになるね!」
「そうなのよそうなのよ、ようやくリーシアとそういう話ができてお姉ちゃんうれしいわ!」
この調子でまた明日もお客さんがきてくれるといいね、とふたりで話に花が咲いた。
★チョコの実ジュース──ひと瓶100リル。
のどごし豊かなチョコレートのお飲み物です。
※効果:植物の気持ちが一週間のあいだわかります。
0
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる