アトリエ「ファルム」、開業いたします

希彗まゆ

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●第四話 初めての依頼人

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 リーシアが初めて錬金術を成功させてからアトリエ「ファルム」を開業させるまでのあいだ、一晩のあいだだけでやることはたくさんあった。
 ノーラがてきぱきと指示を出した。

「まずパンケーキを作り置きしておいて。もちろん錬金術で作るのよ。錬金術で作ったパンケーキには、心身ともに疲れをとってくれる効果があるから。いわゆる回復アイテムね。ほかの食べ物でもかまわないけれど、いちばん効き目がいいのがパンケーキだから、おすすめよ。パンケーキで作れば一週間は腐らないようにできあがるしね」

 一週間ぶんというと、けっこうな量だ。疲労回復アイテムは、多めに用意しておいたほうがいいだろう。
 リーシアは目玉焼きを完成させたあと、即座にパンケーキを作った。
 おなじ味ばかりでは飽きちゃうかな、と思っていたら、

「あ、パンケーキならどんな種類でもおなじ効果が出るからいろんなパンケーキを作って大丈夫よ」

 と助け船を出してくれた。
 パンケーキはさすが疲労回復アイテムというだけあり、錬金術で作るとき、それほど疲れを感じない。目玉焼きよりも短い時間でできるので、わりとすぐに量産することができた。
 たくさん作り置いたパンケーキは、両親やノーラも使っていた「パンケーキ棚」に入れておく。
 次に、依頼が多くくる品物を作り置きしておくことをすすめられた。

「目玉焼きなんかはもちろん、日常の便利アイテムなんかも依頼が多いのよ。へたをしたら行列ができることもあるから、依頼をさばけなくなるとお客さんたちもがっかりするでしょう? だから、ケーキ屋さんとかパン屋さんがしているように、そういうものはあらかじめ作り置きしておくの」

 まず、目玉焼きは必須。
それに、料理がうまくできる効果のある肉じゃが。一日の疲れをとってくれるごま大福。子どもたちの滋養強壮の効果が抜群な肉まんも欠かせない。
 そして簡単な怪我を治すための薬草スープ、毒消しの効果があるアップルタルトなんかも。
 怪我人や毒消しが必要な人間は食べることが不可能な状態な場合もあるので、おなじ効果のある塗り薬も用意しておく。
塗り薬は食材よりも素材が手に入りにくいものなので、少々高値になってしまうが仕方がない。
 医者ももちろんいることはいるが、錬金術で作ったこういったもののほうが、圧倒的に治るのが早いし確実だから、人々はいままでまず怪我をしたりすると真っ先にアトリエ「ファルム」を訪ねていた。

 そしていざリーシアが雑貨屋さんから購入してきた看板に「店主 ノーラ・ウィンストン、お手伝い リーシア・ウィンストン」と書こうとすると、ノーラがそれを止めた。

「心配してくれている近所の人には申し訳ないけれど、わたしがこうして生きているかもしれないということは、しばらく内緒にしていてほしいの。でないと、犯人が警戒して来店してこないかもしれないし、隙を見てこの壺を割るかして今度こそ本当にこの世から魂まで抹殺されてしまうかもしれないもの」
「あ……それもそうだよね。でも、わたしが店主で大丈夫かな? ぜんぜん経験もないのに受け入れられるかな」

 不安に思うリーシアだったが、ノーラが胸を張って(そのように感じた)言い切った。

「大丈夫よ! これだけたくさん錬金術でものが作れたんだもの。あなたの力は本物よ! 胸を張って店主だって言っていいわ!」
「うん……そうだね! お姉ちゃんがそう言ってくれるならそうするよ!」

 でもお姉ちゃんがちゃんと元の姿に戻ることができたら、いままでどおりお姉ちゃんが店主になってね! お姉ちゃんのほうが優秀なのには変わりないし、信頼関係もたくさん築いてると思うから!
 そう約束し、リーシアは「新店主 リーシア・ウィンストン」と書き換えたのだった。

 さて、アトリエ「ファルム」が営業を再開したと知った人々は、当日から殺到した。
 ただでさえノーラが旅に出ているあいだ、お店は閉店状態だったのだ。
 人々は、便利アイテムに飢えていた。

「目玉焼き十個くれ! もう一ヵ月も力比べに負け続けて名誉挽回したいところだったんだ! ごま大福も十個な!」
「こっちには肉じゃがを十日ぶんください! 料理上手っていうことで結婚できたのに、ノーラさんに作ってもらっていた肉じゃがで料理が一時的にうまくなっていたってばれてもう三年。いくら料理を練習してもうまくならないし、うまくなるまでこの肉じゃがは欠かせないわ! もう旦那がマズい料理に耐えられそうにないの!」
「二年前にうちの子が生まれてから、一度でもいいから滋養強壮が確実なこのアトリエの肉まんを食べさせてあげたかったの。っていうわけで、肉まん五個ちょうだい!」

 アトリエの建物内にはショーケースがあり、そこに作り置きの商品をケーキ屋さんのように並べていたのだが、あっという間に完売した。
 ひとりにつきひとつというわけではなく、来客数も多かったからなおさらだ。
 おそらく、またいつアトリエ「ファルム」が閉店するかわからないとみな危機感を持っているのだろう。
 両親に続いてノーラも亡くなったことになっているのだから、彼らのその不安は当然のものだと言えた。

 おかげで開店して一時間も経たずに、ショーケースは空っぽになった。
 ひとりで売り子をやっていたリーシアは、もうへとへとである。
 疲労回復のためにチョコレートパンケーキを一枚食べ、ようやく元気を取り戻したほどだ。
 両親とノーラが遺した貯金で土地代を賄っていたのだが、今日だけでリーシアもだいぶ稼ぐことができた。
 いままで自分でお金を稼ぐことがなかったリーシアには、新鮮な経験だった。

「パンケーキのおかげで疲れも取れたし、なんだか感動しちゃうなぁ。商売って大変だけど楽しいね!」
「そうなのよ。錬金術は大変だけど、そのぶん楽しいのよ!」

 誰もいなくなったのを確かめて、ショーケースの内側、その片隅に置いてある椅子の上に載せられていた壺──ノーラがうんうんとうなずく。

「疲れが取れたなら、いまのうちに商品を補充しておきなさいね。たぶんさっきのがピークだと思うから、今後はそれほど大変じゃないと思うわ」
「うん! まだまだ商品が欲しい人もたくさんいるだろうしね!」
「リーシアが作った錬金術の効果が確かだと知ったら、また客足も増えるでしょうけどね。毎日続けてお店を開いていれば、お客さんたちも安心してくれると思うわ」
「そうだね! そしたら買いだめする人もあんまりいなくなるかもしれないよね!」

 よーし、はりきっちゃうぞ!
 リーシアは腕まくりをし、ノーラ壺を取り上げて工房へと戻る。
 ある程度おなじものを何度も作っていくと、だんだん慣れてくる。
 昨日よりもはるかに手際よく目玉焼きやごま大福、肉じゃがなんかを作っていると、お店の入り口のほうから誰かの声がした。
 二十個目のごま大福を作り上げたところだったリーシアは、「ん?」と耳をすませてみる。
 すると確かに、「すみませーん」と頼りなさげな男の声が聞こえてくる。
 声の感じからして、困り果てているようだった。
 ノーラが声をひそめて尋ねる。

「リーシア、お店開けっ放しできたんじゃない?」
「あっ、そういえば……!」

 言われてみれば、看板は出しっぱなし、カーテンも扉の鍵も開けたままだ。
 これでは営業中だと勘違いされても無理はない。
 慌てて販売スペースに出ていくと、郵便配達のお兄さんが眉をハの字にして申し訳なさそうに立っている。

「あ、郵便ですか?」

 思わずそう聞いてしまったが、

「いいえ、依頼をしたいのですが……」

 と返ってきた。
 そこで郵便配達のお兄さんは、ショーケースが空っぽだということに気がついたようだ。

「あ、もしかしていま休憩中でしたか?」
「いえいえ、大丈夫です! とりあえず依頼内容をお聞きしますので、そちらにお座りください!」
「なんだかすみません」

 郵便配達のお兄さんはぺこぺこしながら、すすめられた椅子に座る。
 販売スペースの隣に、テーブルと椅子が何脚か置いてある。いずれ余裕ができたらイートインスペースにしたいわね、とノーラが言っていた場所だ。

 お兄さんの向かい側に、リーシアはメモ帳を用意して座った。
 看板は下げ、扉のこちら側にあるカーテンも閉じてきたから、間違って依頼を持ってくるお客さんももういないだろう。

 こうして見ると、郵便配達のお兄さんはきれいな顔立ちをしていた。女顔とでも言うのだろうか、細面で顔が小さい。身長と肩幅はさすがにリーシアよりもあるが、身体つきもほっそりとしていて華奢な印象を受けた。
 郵便配達のお兄さんは、郵便配達員の証である制服と鞄を身に着けているからそれとわかる。
 いま郵便配達のお兄さんは、その制服とおそろいになっている帽子を脱いでいて、だから顔立ちもはっきりとわかった。
 いままでこのお兄さんの顔をまともに観察することのなかったリーシアは、ちょっとお得な気分である。

「実は、つねづね庭が淋しいと思っていたところ、近所の方に『お花を植えたらどうか』とアドバイスを受けまして」
「はい」

 変わらず困った口調で、お兄さんが口を開いた。
 リーシアは慌てて背筋を伸ばす。
 リーシアにとって、このお兄さんが初めての依頼人だ。
 ちょっとドキドキしながら、話の続きを聞いた。

「それで、お花屋さんで適当に何種類か花の種を買ってきて植えてみたんです。そしたら、ある花はいくらお水をあげても枯れかかってしまうし、ある花なんかは蔦がびっくりするくらい伸びて、家の中にまではびこってしまって──」
「ふむふむ」
「こう、お花の気持ちがわかるものとか、作れないでしょうか。お花の気持ちがわかれば、ああ、いまお花はこうしてもらいたいんだなとかわかって、正しい育て方ができると思うんです」
「お花屋さんからアドバイスをもらうのはだめなんですか?」
「すでに試してみました。でも、その花の種はお花屋さんでも育て方がわからない類のものだったようで──」
「なるほど」

 そういうことであれば、引き受けるしかないだろう。
 リーシアは、とん、と自分の胸をたたいてみせた。

「わかりました! なんとか作ってみます! 任せてください!」
「ほんとですか!? ありがとうございます!」

 お兄さんはようやくほっとした笑顔を見せ、リーシアの手を取りぶんぶん振った。
 よほど困っていたに違いない。
 確か植物の気持ちがわかる飲み物かなにかがあった気がする。
 お兄さんに「ちょっと待っててください」と言い置いて工房に行き、山のように積まれた書物の中から一冊の本を見つけ、お兄さんの元に戻る。

「うん、ありますね、植物の気持ちがわかるアイテム。二種類あるみたいです」
「二種類?」
「ひとつは、そのアイテムを飲んだ人にしかわからないもの。もうひとつは魔法のじょうろで、このじょうろに水を入れて植物にかけると、その植物の声が自分だけでなく周囲の人にも聞こえるというものです」
「うーん、周囲の人にも聞こえるとなると、お花の声がうるさいとか苦情がくるかもしれませんよね」
「そうですね、お花の声がどの程度の大きさかにもよると思いますが、その可能性はありますね」
「それなら自分にだけ聞こえるほうがいいかな。自分だけがうるさいなら自分が望んだことですし納得もできます。それにぼく、昔から植物が好きなんです。郵便配達の仕事をしていなかったら、お花屋さんになっていたかもって思います。それには絶対的に知識が足りないんですけど」

 あはは、と頼りなげではあるが笑う余裕も生まれてきている。
 リーシアもうれしくなって、うなずいた。

「じゃ、こっちのアイテムにしましょう。チョコの実を利用したジュースなんですが、アレルギーとかありますか?」
「大丈夫です。幸い身体は丈夫なほうなので。アレルギーもありません」

 そのほっそりした身体で丈夫と言われてもあまり説得力はないとは思ったが、本人が言うのなら信じることにしよう。
 なにしろ初めての依頼人なのだ!
 それ以前に、お客さまは大事にしなくてはいけない。
 リーシアはちいさなころから、そうたたきこまれてきた。
 お金のためではなく、商売をするにあたって信頼関係が必要だという点で、だ。

 信頼関係を築くことは、人と接することの基本なのだと。
 人を大切にすること。命を大切に思うこと。
 それは錬金術師にとって、欠かせないものなのだと。

 郵便配達のお兄さんは、名前を教えてくれた。ナナヤ・シオットというのだそうだ。今年の冬に二十二歳になるのだそう。
 住所も教えてもらい、お兄さん──ナナヤが「よろしくお願いします」と頭を下げて店を出ていくと、リーシアはすぐに工房に戻ってノーラにこのことを話した。

「おめでとう、リーシア。初めての依頼人ね!」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「植物の気持ちがわかるアイテムがあるっていうこと、よく覚えてたわね。リーシア、昔からすごく勉強してたものね。感心感心」
「えへへ、ありがとう」
「それに、二種類のうち依頼人の希望に添うものを選択したのもえらかったわね。依頼人の要望とアイテムの特性を考え、照らし合わせるのはとても重要なことだからね」
「お姉ちゃん、ほめ過ぎだよー」

 昔からリーシアには甘かったノーラだが、ここまで手放しに褒められるとなんだかくすぐったい。

「そうねぇ」

 とノーラはひとつダメ出しをした。

「ひとつ注意点を上げるのなら、依頼人にお飲み物をお出ししなかったことね。コーヒーでも紅茶でも、なにかしら飲み物があるのとないのとではお客さまが抱く印象もだいぶ違うわ」
「あっ……そうか、そうだよね。気づかなかった……!」

 依頼内容を聞くことに夢中で、そこまで配慮が足りなかった。

「中には焦ったり精神的に疲れているお客さまもいらっしゃるわ。だから、お飲み物をお出しするのは落ち着かせる面でも重要な意味を持つの。次から気をつければ問題ないわ」
「うん、そうする!」

 リーシアは反省しつつ、次こそはと勢いよく返事をした。
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