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さんにんめは、
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「あんたたちってどうなってるの? あれだけの会話じゃあたしには全然わかんないんですけど」
「親友の会話ってヤツだよ」
「……あ、そ……」
納得がいったようないかないような。坂本の表情を見たかったが、あいにくと背中しか見えない。追い抜くだけの体力は結珂にはなかった。
坂本がやっと止まった場所は電話ボックスだった。
「携帯なら、あたしの貸したのに」
少しは役に立ちたいと思う結珂だったが、坂本は短く、
「お前の携帯に形跡残したくない」
と、やんわりと、けれどうむを言わさぬ口調だ。
小銭を入れ、手早くプッシュボタンを押す坂本を、開いた扉にもたれかかりながら結珂は見つめる。そして次に出た名前に仰天した。
「ああ、賀久? おれ。坂本」
「はあっ?」
結珂のすっとんきょうな声には構わず、坂本は続ける。
「お前高村のことは知ってる? ああ、もちろん知ってるよな。じゃあ天神林は? あいつ今一緒にいる?」
ちょいちょいと手招きした坂本に、思い切り不審そうに結珂は近寄る。すると坂本は、今度は自分が持っている受話器を指差した。どうやら耳をつけろということらしい。
言うとおりにすると、賀久の声が聞こえてきた。
『天神林ならこっちも昨日から捜してるんだ。志輝チャンまさか知ってんの?』
雑音がすごい。よく聞くと背後の音が微妙に入れ替わって行くのが分かる。どうやら移動中の賀久の携帯にかけているらしい。
「 ─── 天神林、誰かに呼び出されたとかそんなこと言ってなかったか」
『お前、何を知ってる? おれの携帯にかけてくるなんてよっぽどじゃなきゃやんねぇよなあ、志輝チャン』
相変わらずのふざけた口調だ。くすくす笑い声が聞こえたあと、ガラリと扉を開ける音。
『しっかしここの床はなんだ? 腐りかけてんじゃねえのか』
坂本はふと息を呑んだ。
「そこ、どこだ。賀久、お前今どこにいる?」
『どこにいようが勝手だろ。うわ、黴くせえ。たまには掃除しろよ』
「賀久! 答えろ。天神林も殺されたんだ!」
向こうが黙り込む気配。一転して声色が真剣なものになる。
『お前の学校の旧校舎だ。三階の音楽室。天神林も殺されたって? どういうことだ』
「待ってろ、今行く。すぐそこを出て校門まで出てろ、いいな!」
『それまでにおれも殺されてるかも、だな』
坂本に言われたことだけで、大抵の状況が呑み込めたらしい。頭の回転は早いようだ。笑みを含んだ余裕のある声で、賀久は言う。
『もう足音が聞こえてる。おれを呼んだヤツの足音だ。志輝、おれは自力でなんとかするぜ。……もしおれが死んだときのためにひとつお前に教えておく』
「お前みたいな根性悪が死ぬもんかよ、いいから言うとおりにしろ!」
『黙って聞け。おれを呼び出したヤツは、……… ─── 』
そこで電話は切れた。電波が届かなくなったか充電が切れたか、それとも……誰かに、妨害されたか。
「畜生!」
受話器を置き、もう一度、今度は凪に電話する。
「親友の会話ってヤツだよ」
「……あ、そ……」
納得がいったようないかないような。坂本の表情を見たかったが、あいにくと背中しか見えない。追い抜くだけの体力は結珂にはなかった。
坂本がやっと止まった場所は電話ボックスだった。
「携帯なら、あたしの貸したのに」
少しは役に立ちたいと思う結珂だったが、坂本は短く、
「お前の携帯に形跡残したくない」
と、やんわりと、けれどうむを言わさぬ口調だ。
小銭を入れ、手早くプッシュボタンを押す坂本を、開いた扉にもたれかかりながら結珂は見つめる。そして次に出た名前に仰天した。
「ああ、賀久? おれ。坂本」
「はあっ?」
結珂のすっとんきょうな声には構わず、坂本は続ける。
「お前高村のことは知ってる? ああ、もちろん知ってるよな。じゃあ天神林は? あいつ今一緒にいる?」
ちょいちょいと手招きした坂本に、思い切り不審そうに結珂は近寄る。すると坂本は、今度は自分が持っている受話器を指差した。どうやら耳をつけろということらしい。
言うとおりにすると、賀久の声が聞こえてきた。
『天神林ならこっちも昨日から捜してるんだ。志輝チャンまさか知ってんの?』
雑音がすごい。よく聞くと背後の音が微妙に入れ替わって行くのが分かる。どうやら移動中の賀久の携帯にかけているらしい。
「 ─── 天神林、誰かに呼び出されたとかそんなこと言ってなかったか」
『お前、何を知ってる? おれの携帯にかけてくるなんてよっぽどじゃなきゃやんねぇよなあ、志輝チャン』
相変わらずのふざけた口調だ。くすくす笑い声が聞こえたあと、ガラリと扉を開ける音。
『しっかしここの床はなんだ? 腐りかけてんじゃねえのか』
坂本はふと息を呑んだ。
「そこ、どこだ。賀久、お前今どこにいる?」
『どこにいようが勝手だろ。うわ、黴くせえ。たまには掃除しろよ』
「賀久! 答えろ。天神林も殺されたんだ!」
向こうが黙り込む気配。一転して声色が真剣なものになる。
『お前の学校の旧校舎だ。三階の音楽室。天神林も殺されたって? どういうことだ』
「待ってろ、今行く。すぐそこを出て校門まで出てろ、いいな!」
『それまでにおれも殺されてるかも、だな』
坂本に言われたことだけで、大抵の状況が呑み込めたらしい。頭の回転は早いようだ。笑みを含んだ余裕のある声で、賀久は言う。
『もう足音が聞こえてる。おれを呼んだヤツの足音だ。志輝、おれは自力でなんとかするぜ。……もしおれが死んだときのためにひとつお前に教えておく』
「お前みたいな根性悪が死ぬもんかよ、いいから言うとおりにしろ!」
『黙って聞け。おれを呼び出したヤツは、……… ─── 』
そこで電話は切れた。電波が届かなくなったか充電が切れたか、それとも……誰かに、妨害されたか。
「畜生!」
受話器を置き、もう一度、今度は凪に電話する。
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