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03-迦陵頻伽の足元で
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大量の退部者を出した入部説明会から数日。
新たに迎えたコーチの指導は、口の割には生ぬるいものだと2年の多くが口にした。見に来もしないコーチがメニューボードに掲げた練習メニューをダラダラと繰り返すだけで正直だれるね、なんて言いながら身体を動かし、ある程度こなしたらあとはスマホをいじっているような状態だった。
そんな彼らに長谷川直次とトヨは罪悪感を感じていた。彼らは何も解っていない。何も知らない。知らせてはいけないと固く口留めしているのはトヨ自身。
今日もしばらく3年と2年でのんびりパスの練習をした後、3年が「自主練してくる」と断って体育館を後にした。直次とトヨも一緒に行くと言い募って彼らについて出る。
向かった先には室内練習に参加していなかったは新1年生5人と瑠璃がいた。
瑠璃は3年のほかにトヨと直次が付いてきたのを見て片眉を上げる。
「あんたらも飽きないねぇ?」
「強くなるためですから」
「同じく」
直次に同調する。瑠璃は不快を隠しもせず吐き捨てた。
「怪我すんじゃないよ」
言い放ちはしたものの、トヨと直次が練習に参加するのを拒まなかった。
そこからはまさに地獄の一言。
トヨだって小学校から運動してきたのだから体力くらいあると思っていた。しかしトヨも直次も、3年はともかく、1年の練習にすらついてくのがやっとだという事実を突きつけられる。
さらにトヨと直次を追い詰めたのは瑠璃の言動だった。
「もっと早く走れ!」
「足上がってねぇぞ!」
「声出せ!!」
「もっとフォーム意識して!!」
瑠璃が声をかける。大きい訳じゃないのに、なぜか彼女の声はよく聞こえた。
初めの頃はちゃんと全員を指導してくれているのだと思っていた。
だが、練習に参加するにつれ違和感を覚える。1週間も経つ頃には瑠璃の声が「誰に」向けられているのかがハッキリと解ってしまった。
瑠璃の目にはトヨと直次がいない。無理をしようが手を抜こうが、2人に対してかける言葉は「いいんじゃない」の一言だけだった。
対して、3年と1年5人には熱心な指導を飛ばしている。手を抜けば発破をかけ、無理をすればすぐに止める。瑠璃の指導はこれ以上なく的確だった。
(どうして……)
彼らと同じようにメニューをこなしているのにどうして自分は指導してもらえないのか。
どうすれば自分もバスケ部員と認めてもらえるのか。
トヨは瑠璃を見ながら、必死に歯を食いしばって練習に食らいついた。
外での基礎練を終え、瑠璃の認めたバスケ部員とおまけのトヨと直次が体育館に入る。瑠璃が来たのに気づいた体育館組が整列した。
「アップは終わってる?」
瑠璃が聞く。見せかけの笑顔にほだされて体育館組が首肯すると瑠璃は愛らしい笑顔で白々しく言った。
「じゃあ、練習始めよっか」
美人なコーチの指導の元、バスケ部員が体育館での練習を始める。
喜び勇んで参加する体育館組は自分たちも練習を見てもらえているものと信じて疑わない。
(言えない)
彼らは何も知らない。
知らせてはいけない。
知らないほうが幸せなのだ。
コーチが指導するのは3年と1年だけで、自分たちは対象外なのだという事実など。
新たに迎えたコーチの指導は、口の割には生ぬるいものだと2年の多くが口にした。見に来もしないコーチがメニューボードに掲げた練習メニューをダラダラと繰り返すだけで正直だれるね、なんて言いながら身体を動かし、ある程度こなしたらあとはスマホをいじっているような状態だった。
そんな彼らに長谷川直次とトヨは罪悪感を感じていた。彼らは何も解っていない。何も知らない。知らせてはいけないと固く口留めしているのはトヨ自身。
今日もしばらく3年と2年でのんびりパスの練習をした後、3年が「自主練してくる」と断って体育館を後にした。直次とトヨも一緒に行くと言い募って彼らについて出る。
向かった先には室内練習に参加していなかったは新1年生5人と瑠璃がいた。
瑠璃は3年のほかにトヨと直次が付いてきたのを見て片眉を上げる。
「あんたらも飽きないねぇ?」
「強くなるためですから」
「同じく」
直次に同調する。瑠璃は不快を隠しもせず吐き捨てた。
「怪我すんじゃないよ」
言い放ちはしたものの、トヨと直次が練習に参加するのを拒まなかった。
そこからはまさに地獄の一言。
トヨだって小学校から運動してきたのだから体力くらいあると思っていた。しかしトヨも直次も、3年はともかく、1年の練習にすらついてくのがやっとだという事実を突きつけられる。
さらにトヨと直次を追い詰めたのは瑠璃の言動だった。
「もっと早く走れ!」
「足上がってねぇぞ!」
「声出せ!!」
「もっとフォーム意識して!!」
瑠璃が声をかける。大きい訳じゃないのに、なぜか彼女の声はよく聞こえた。
初めの頃はちゃんと全員を指導してくれているのだと思っていた。
だが、練習に参加するにつれ違和感を覚える。1週間も経つ頃には瑠璃の声が「誰に」向けられているのかがハッキリと解ってしまった。
瑠璃の目にはトヨと直次がいない。無理をしようが手を抜こうが、2人に対してかける言葉は「いいんじゃない」の一言だけだった。
対して、3年と1年5人には熱心な指導を飛ばしている。手を抜けば発破をかけ、無理をすればすぐに止める。瑠璃の指導はこれ以上なく的確だった。
(どうして……)
彼らと同じようにメニューをこなしているのにどうして自分は指導してもらえないのか。
どうすれば自分もバスケ部員と認めてもらえるのか。
トヨは瑠璃を見ながら、必死に歯を食いしばって練習に食らいついた。
外での基礎練を終え、瑠璃の認めたバスケ部員とおまけのトヨと直次が体育館に入る。瑠璃が来たのに気づいた体育館組が整列した。
「アップは終わってる?」
瑠璃が聞く。見せかけの笑顔にほだされて体育館組が首肯すると瑠璃は愛らしい笑顔で白々しく言った。
「じゃあ、練習始めよっか」
美人なコーチの指導の元、バスケ部員が体育館での練習を始める。
喜び勇んで参加する体育館組は自分たちも練習を見てもらえているものと信じて疑わない。
(言えない)
彼らは何も知らない。
知らせてはいけない。
知らないほうが幸せなのだ。
コーチが指導するのは3年と1年だけで、自分たちは対象外なのだという事実など。
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