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七話
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目印になるアイテムとはいっても。僕等だけ使えても意味はない。それに冒険者全員に配る訳にもいかない。
あれ、方位磁石ならギルドで販売できるよね。原価もそんなに掛からなそうだしさ。
「あほか僕は。磁石がないだろ」
いきなり頓挫した。
「階段の脇の壁に光のビームは」
そんな明るい光線を一日中着けてたらお金が掛かり過ぎる。またもや頓挫した。
「あれだよな。絶対目印的な柱を立てても次の日には消えそうだよな」
……何も良い案が思いつかない。僕は一人途方に暮れた。
そんな無意識下で僕はミスリルの小板に凄く小さな魔法陣を二枚描いた。そのサイズは一センチ四方にも満たない。そしてその対となる違う魔法陣を二枚描く。
僕は部屋から直接エルフの里のアクセサリー店に転移すると適当な男性用のネックレスと女性用のイヤリングを購入してまた部屋に戻った。
少し大きめの紅い宝石を縦に二等分するようにカットしてミスリル小板を二枚その間に挟んで薄いミスリル版を巻いて繋ぎ止めた。
そしてネックレスに付いている淡い緑色の宝石も同じようにしてミスリル小板を仕込んだ。
「うん。即席にしては上出来だ」
その出来栄えに満足してアルトリアを探していると桟橋で湖を眺めていた。
「なにしてるの」
「ん、少し湖を眺めながら考えごとかな」
「え、天馬の島を眺めてたんじゃないの」
「まあ、どっちもかな」
「そっか。はい、アルトリアにあげる」
僕はさっき作ったイヤリングを手渡した。そして僕もネックレスを着けた。
「ほんとにくれるの」
「うん、君が気に入るならだけどね」
「ううん。とても嬉しいよ」
そういうとアルトリアは左耳にイヤリングを着けた。
「ちょっとここで待ってて」
僕はそう言って彼女から離れていった。普通に話しても声の届かない場所まで来ると僕は立ち止まってネックレスの宝石を握ってマナを少し流すと、アルトリアに話し掛けた。
「もしもし聞こえるかな。アルトリア僕の声が聞こえますか。聞こえたならばイヤリングの宝石を触って少しマナを流して返事をください」
「な、透。なにこれ!」
「驚いた? 離れていても話せる魔道具だよ。僕と君だけのね」
「そんな魔道具を作っていたの!……でも二人だけというのは嬉しいかも」
「嬉しく思ってくれるなら良かった。これは君と僕だけの秘密だからね。これで少し離れていても君と話せるね」
「そうだね。ありがとう透。大好きだよ」
ああ、その言葉に僕は胸がいっぱいになる。
「うん、僕も大好きだよ」
「ねえ、ちなみにどれくらい離れても聞こえるのか試してみない」
「いいよ。ならまずはウーサの里に転移してみるね」
僕はウーサの里に転移をしてアルトリアに話しかけてみると意外なことに繋がった。次にルド村まで転移しても繋がる。ならばと思い。ニャーニャの里に転移して話し掛けても繋がった。そして僕の転移魔法で行ける最大距離でもあるルキア王都に転移してアルトリアに話し掛けた。
「もしもし。アルトリア、聞こえますか」
「うん、聞こえるよ。今どこに居るの」
「驚かないでね。ルキア王都だよ」
「うそっ、ほんとに!」
「ほんとほんと。嘘をついても仕方がないじゃん」
「すごいね。これ、こんなに小さいのに」
「うん、僕も驚いたよ」
そしてアルトリアのいる桟橋まで転移をすると彼女は驚いた。
「急に現れるとびっくりするでしょ!」
「あはは、ごめんごめん」
「こんな凄いものをどうして作ったの」
「いやぁ、アイテム作りに頓挫してさ。ぼんやりアルトリアの声を聞きたいなって小さく魔法陣を描いたらできたんだ。まさか実際に繋がるとは思わなかったけどね」
ほんと、自分でもびっくりだよ。
「ちなみになんて描いたの」
「風の精霊よ。愛しい人に声を届けて。と、風の精霊よ。愛しい人の声を聞かせて。かな」
「……それだけ」
「うん、それだけ」
「なんでそんな簡単な言葉で繋がるのよ、あっははは。ほんとおかしい」
「だよね。だから自分でも驚いたよ」
僕とアルトリアは二人で肩を寄せ合い笑っていた。
「なんか案外簡単なのかもね」
「かもしれないね」
桟橋で互いの温もりを確かめ合うように僕はアルトリアの腰を抱き寄せた。
こうして、二人だけの時間はいつ振りだろうかと思い返しながら。二人で遠くの島を眺めた。
「ねぇ、たまに怖くなるの。透が私を残して死んだ後のことを。だって、透はノーマルだから必ず私より先に居なくなるでしょ。そうなったらさ、私は寂しくて生きていけそうにないなって」
「僕は君を残して死なないから安心して。必ず君より長生きするよ」
「そっか。でもそれはそれで嫌かも。できれば一緒がいいな」
「それは僕も同じだよ」
僕とアルトリアは自然とキスをした。まるでその約束を誓うように優しく唇を重ねあった。
「なんか日中からイチャイチャしている人たちが居るのだわ」
「ほんとだなあ。こんな真昼間から破廉恥極まりない」
「別に羨ましいとかおもいませんけどぉ、なんか妬けちゃいますねぇ」
「旦那様の独占はルール違反です」
その声に僕等は慌てて少し離れた。
「アルトリア、逃げるぞ」
僕はアルトリアの手を取ってこの場から転移した。行き先はあの島の拠点だ。
「逃げたら余計に……」
僕は彼女の言葉を遮るようにキスをした。
彼女との時を今は心から大切にしたかった。
だって、声をかける前の君の横顔がとても悲しそうな表情をしていたから。
だから、今日この時だけは君を一人にだけは絶対にしなくなかったんだ。
僕は君との愛を永遠に誓うよ。たとえ、死が二人を分つとも僕は必ず君の傍にいるよ
あれ、方位磁石ならギルドで販売できるよね。原価もそんなに掛からなそうだしさ。
「あほか僕は。磁石がないだろ」
いきなり頓挫した。
「階段の脇の壁に光のビームは」
そんな明るい光線を一日中着けてたらお金が掛かり過ぎる。またもや頓挫した。
「あれだよな。絶対目印的な柱を立てても次の日には消えそうだよな」
……何も良い案が思いつかない。僕は一人途方に暮れた。
そんな無意識下で僕はミスリルの小板に凄く小さな魔法陣を二枚描いた。そのサイズは一センチ四方にも満たない。そしてその対となる違う魔法陣を二枚描く。
僕は部屋から直接エルフの里のアクセサリー店に転移すると適当な男性用のネックレスと女性用のイヤリングを購入してまた部屋に戻った。
少し大きめの紅い宝石を縦に二等分するようにカットしてミスリル小板を二枚その間に挟んで薄いミスリル版を巻いて繋ぎ止めた。
そしてネックレスに付いている淡い緑色の宝石も同じようにしてミスリル小板を仕込んだ。
「うん。即席にしては上出来だ」
その出来栄えに満足してアルトリアを探していると桟橋で湖を眺めていた。
「なにしてるの」
「ん、少し湖を眺めながら考えごとかな」
「え、天馬の島を眺めてたんじゃないの」
「まあ、どっちもかな」
「そっか。はい、アルトリアにあげる」
僕はさっき作ったイヤリングを手渡した。そして僕もネックレスを着けた。
「ほんとにくれるの」
「うん、君が気に入るならだけどね」
「ううん。とても嬉しいよ」
そういうとアルトリアは左耳にイヤリングを着けた。
「ちょっとここで待ってて」
僕はそう言って彼女から離れていった。普通に話しても声の届かない場所まで来ると僕は立ち止まってネックレスの宝石を握ってマナを少し流すと、アルトリアに話し掛けた。
「もしもし聞こえるかな。アルトリア僕の声が聞こえますか。聞こえたならばイヤリングの宝石を触って少しマナを流して返事をください」
「な、透。なにこれ!」
「驚いた? 離れていても話せる魔道具だよ。僕と君だけのね」
「そんな魔道具を作っていたの!……でも二人だけというのは嬉しいかも」
「嬉しく思ってくれるなら良かった。これは君と僕だけの秘密だからね。これで少し離れていても君と話せるね」
「そうだね。ありがとう透。大好きだよ」
ああ、その言葉に僕は胸がいっぱいになる。
「うん、僕も大好きだよ」
「ねえ、ちなみにどれくらい離れても聞こえるのか試してみない」
「いいよ。ならまずはウーサの里に転移してみるね」
僕はウーサの里に転移をしてアルトリアに話しかけてみると意外なことに繋がった。次にルド村まで転移しても繋がる。ならばと思い。ニャーニャの里に転移して話し掛けても繋がった。そして僕の転移魔法で行ける最大距離でもあるルキア王都に転移してアルトリアに話し掛けた。
「もしもし。アルトリア、聞こえますか」
「うん、聞こえるよ。今どこに居るの」
「驚かないでね。ルキア王都だよ」
「うそっ、ほんとに!」
「ほんとほんと。嘘をついても仕方がないじゃん」
「すごいね。これ、こんなに小さいのに」
「うん、僕も驚いたよ」
そしてアルトリアのいる桟橋まで転移をすると彼女は驚いた。
「急に現れるとびっくりするでしょ!」
「あはは、ごめんごめん」
「こんな凄いものをどうして作ったの」
「いやぁ、アイテム作りに頓挫してさ。ぼんやりアルトリアの声を聞きたいなって小さく魔法陣を描いたらできたんだ。まさか実際に繋がるとは思わなかったけどね」
ほんと、自分でもびっくりだよ。
「ちなみになんて描いたの」
「風の精霊よ。愛しい人に声を届けて。と、風の精霊よ。愛しい人の声を聞かせて。かな」
「……それだけ」
「うん、それだけ」
「なんでそんな簡単な言葉で繋がるのよ、あっははは。ほんとおかしい」
「だよね。だから自分でも驚いたよ」
僕とアルトリアは二人で肩を寄せ合い笑っていた。
「なんか案外簡単なのかもね」
「かもしれないね」
桟橋で互いの温もりを確かめ合うように僕はアルトリアの腰を抱き寄せた。
こうして、二人だけの時間はいつ振りだろうかと思い返しながら。二人で遠くの島を眺めた。
「ねぇ、たまに怖くなるの。透が私を残して死んだ後のことを。だって、透はノーマルだから必ず私より先に居なくなるでしょ。そうなったらさ、私は寂しくて生きていけそうにないなって」
「僕は君を残して死なないから安心して。必ず君より長生きするよ」
「そっか。でもそれはそれで嫌かも。できれば一緒がいいな」
「それは僕も同じだよ」
僕とアルトリアは自然とキスをした。まるでその約束を誓うように優しく唇を重ねあった。
「なんか日中からイチャイチャしている人たちが居るのだわ」
「ほんとだなあ。こんな真昼間から破廉恥極まりない」
「別に羨ましいとかおもいませんけどぉ、なんか妬けちゃいますねぇ」
「旦那様の独占はルール違反です」
その声に僕等は慌てて少し離れた。
「アルトリア、逃げるぞ」
僕はアルトリアの手を取ってこの場から転移した。行き先はあの島の拠点だ。
「逃げたら余計に……」
僕は彼女の言葉を遮るようにキスをした。
彼女との時を今は心から大切にしたかった。
だって、声をかける前の君の横顔がとても悲しそうな表情をしていたから。
だから、今日この時だけは君を一人にだけは絶対にしなくなかったんだ。
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