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第一章 未知なる世界でスローライフを!
カニって美味しいよね、たぶん
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食事は静かに楽しく戴くものだと教わらなかったのか。
そう言いたくなるほど俺はリィーナを始めとした神官衆三人娘に責められていた。
「カニの味がしなくなる。少し黙れ」
「あん、レンジ。自分のやった事の重大さが分からないの。ばかなの、あほなの、マヌケなの」
なんだその怒涛の悪口オンパレードは。
「そうですよ。単身で魔族の王都に行って。さらには女王を脅すなんて危険過ぎます。命は大切にしてください!」
「そうだよ。行くなら僕も連れてかないと駄目なんだからね。今後もし同じことがあったらレンジに首輪着けるからね!」
おい、俺は犬じゃないんだぞ。
それにそれは人権侵害だぞ。
「まあまあ、皆さん少し落ち着いてください」
オースティンさんが両手を出して宥めてくれた。ほんと良い人だよな。
「部外者は黙っていてください!」
おい、エルルーン。おまえも部外者だろ。
「私はフレイヤ神殿の神官です。いわば、私はレンジ様とリィーナ様をお守りする。いえ、お世話をする立場にあります。決して部外者などではありません」
「「あ、必要ありませんのでお引き取りください」」
珍しく俺とリィーナが一致し、声を揃えて反論した。
その言葉にエルルーン達三人は胸に手を当てて苦しんでいる。
「とにかくだ。俺は脅したりなんかしていない。友好的に挨拶して友達になっただけだ」
あ、まずい。口が滑った……
「ともだちぃーー?」
やばっ、リィーナはもちろんだが、神官衆三人にまで睨まれてる。
チラッとオースティンさんを見ると深い溜息をついて項垂れていた。
「まあ、あれだよ。言葉の綾ってやつだ。魔族の女王陛下と一般人の俺が友達になれる訳がないだろ、あっははは」
誤魔化すようにリィーナの肩を軽く何度か叩いた。
まずい、この流れはとてもまずい。
そう思った瞬間、俺以外の時が止まった。
「はぁぁ、ほんとあほだね」
俺の肩にあの暴力妖精が座っていた。
しかも少し機嫌が悪そうな感じだ。
「今回の件、フーはあんたに感謝してたよ。私的には少し甘い対処だったとは思うけどね。まぁフーは、あんたには限りなく甘いし、しょうがないか」
「光栄であります」
やばっ、まだリィーナに責められてる方が百倍マシだ。
すげぇ緊張するんだけど。
「なに縮こまってるのさ。陰で散々私の悪口を言ってたくせに」
「は、ひょひょん、ひょんなことはありません!」
「知ってるの。フーは大笑いしてたけどね。まぁ今回だけは不問にしてあげるから感謝なさい」
「はい、感謝いたします!」
俺は胸に手を当てて敬礼した。
「はぁ、ほんとあきれるわ。まぁ今回だけは私がみんなに言ってあげる。いい、今回だけだからね」
そう言った瞬間、また時が動き始めた。
そして俺たちの真ん中で銀色に美しく輝くクロノア様が降臨なされていた。
「私は時の大精霊クロノア。今回の勇者の件は、女神フレイヤからの内密な依頼によるものです。これ以上騒ぎを大きくしないこと。また、この事を他言した者には女神フレイヤ直々に天罰が下されると知れ。いい、そこのばか聖女。これ以上なにか文句があるなら私が相手になるけど」
クロノア様の輝きが増し、視線も鋭くなった。
あの綺麗な紅い瞳がさらに恐怖を煽る。
「はい、文句はありません!」
リィーナはとても素直だった。
「なら良し。で、そこの神官。あなた達に言ったわよね。必要以上に接触するなと。死にたいの、殺されたいの、どっちなの」
あの、それってどちらにしても死ぬんですよね……
「「「申し訳ありません!」」」
それは息のあった見事な土下座だった。
「今回だけよ。いい、今回だけ不問にしてあげる。うちのレンジのお世話だとか、守るとか、そんなふざけた事は二度と言わないように」
土下座したまま、声を揃えて返事をしていた。なんか息ピッタリだな。
「で、レンジ。世話になるなら、そこの男にしておきなさい」
「はい、かしこまりました」
「うん。じゃあ私は行くから、後はよろしくね」
両手で抱えきらない程のカニを抱えてクロノア様は消えた。
なんか食いしん坊だな。意外と親しみやすいかも……
「ちょっとレンジ。反則だよ、卑怯過ぎるよ」
リィーナは顔を近づけて小声でそう言った。
「小声でも無駄だぞ。クロノア様の目は、耳はごまかせないぞ」
リィーナは辺りをキョロキョロと見回した。
そして安心したのか深く息を吐いた後、気を紛らわすようにエールを流し込んでいた。
「もう、エルルーンのせいで死ぬところだったよ」
「ほんとだよ」
「……ごめんなさい」
ありがとう、女神フレイヤ様。そしてクロノア様。
◇
「あははは、クロ、おもしろ過ぎ!」
「ちょっとフー。そんなに笑ってるとカニあげないよ」
「あはは、ごめんごめん。ほんと、ありがとね」
まったく無理して降臨しようとしないでよね。
ほんと目が離せないんだから。
「はい、カニ。美味しそうなところ持ってきたよ。はい、あーん」
フーの口にカニを押し込んだ。少し嫌がらせを込めて。
「もう、食べさせるならもっと優しくしてよ。ほんとガサツなんだから」
「ガサツって。私のどこがガサツなのよ」
「ほら、過去を見られる鏡で自分の事をよく見てください。私の言葉が真実だとクロは知るでしょうから」
く、この笑顔で煽られるとキツイわ。
もう、フーのお使いなんてしてあげないから。
ふん、フーのばーか。
そう言いたくなるほど俺はリィーナを始めとした神官衆三人娘に責められていた。
「カニの味がしなくなる。少し黙れ」
「あん、レンジ。自分のやった事の重大さが分からないの。ばかなの、あほなの、マヌケなの」
なんだその怒涛の悪口オンパレードは。
「そうですよ。単身で魔族の王都に行って。さらには女王を脅すなんて危険過ぎます。命は大切にしてください!」
「そうだよ。行くなら僕も連れてかないと駄目なんだからね。今後もし同じことがあったらレンジに首輪着けるからね!」
おい、俺は犬じゃないんだぞ。
それにそれは人権侵害だぞ。
「まあまあ、皆さん少し落ち着いてください」
オースティンさんが両手を出して宥めてくれた。ほんと良い人だよな。
「部外者は黙っていてください!」
おい、エルルーン。おまえも部外者だろ。
「私はフレイヤ神殿の神官です。いわば、私はレンジ様とリィーナ様をお守りする。いえ、お世話をする立場にあります。決して部外者などではありません」
「「あ、必要ありませんのでお引き取りください」」
珍しく俺とリィーナが一致し、声を揃えて反論した。
その言葉にエルルーン達三人は胸に手を当てて苦しんでいる。
「とにかくだ。俺は脅したりなんかしていない。友好的に挨拶して友達になっただけだ」
あ、まずい。口が滑った……
「ともだちぃーー?」
やばっ、リィーナはもちろんだが、神官衆三人にまで睨まれてる。
チラッとオースティンさんを見ると深い溜息をついて項垂れていた。
「まあ、あれだよ。言葉の綾ってやつだ。魔族の女王陛下と一般人の俺が友達になれる訳がないだろ、あっははは」
誤魔化すようにリィーナの肩を軽く何度か叩いた。
まずい、この流れはとてもまずい。
そう思った瞬間、俺以外の時が止まった。
「はぁぁ、ほんとあほだね」
俺の肩にあの暴力妖精が座っていた。
しかも少し機嫌が悪そうな感じだ。
「今回の件、フーはあんたに感謝してたよ。私的には少し甘い対処だったとは思うけどね。まぁフーは、あんたには限りなく甘いし、しょうがないか」
「光栄であります」
やばっ、まだリィーナに責められてる方が百倍マシだ。
すげぇ緊張するんだけど。
「なに縮こまってるのさ。陰で散々私の悪口を言ってたくせに」
「は、ひょひょん、ひょんなことはありません!」
「知ってるの。フーは大笑いしてたけどね。まぁ今回だけは不問にしてあげるから感謝なさい」
「はい、感謝いたします!」
俺は胸に手を当てて敬礼した。
「はぁ、ほんとあきれるわ。まぁ今回だけは私がみんなに言ってあげる。いい、今回だけだからね」
そう言った瞬間、また時が動き始めた。
そして俺たちの真ん中で銀色に美しく輝くクロノア様が降臨なされていた。
「私は時の大精霊クロノア。今回の勇者の件は、女神フレイヤからの内密な依頼によるものです。これ以上騒ぎを大きくしないこと。また、この事を他言した者には女神フレイヤ直々に天罰が下されると知れ。いい、そこのばか聖女。これ以上なにか文句があるなら私が相手になるけど」
クロノア様の輝きが増し、視線も鋭くなった。
あの綺麗な紅い瞳がさらに恐怖を煽る。
「はい、文句はありません!」
リィーナはとても素直だった。
「なら良し。で、そこの神官。あなた達に言ったわよね。必要以上に接触するなと。死にたいの、殺されたいの、どっちなの」
あの、それってどちらにしても死ぬんですよね……
「「「申し訳ありません!」」」
それは息のあった見事な土下座だった。
「今回だけよ。いい、今回だけ不問にしてあげる。うちのレンジのお世話だとか、守るとか、そんなふざけた事は二度と言わないように」
土下座したまま、声を揃えて返事をしていた。なんか息ピッタリだな。
「で、レンジ。世話になるなら、そこの男にしておきなさい」
「はい、かしこまりました」
「うん。じゃあ私は行くから、後はよろしくね」
両手で抱えきらない程のカニを抱えてクロノア様は消えた。
なんか食いしん坊だな。意外と親しみやすいかも……
「ちょっとレンジ。反則だよ、卑怯過ぎるよ」
リィーナは顔を近づけて小声でそう言った。
「小声でも無駄だぞ。クロノア様の目は、耳はごまかせないぞ」
リィーナは辺りをキョロキョロと見回した。
そして安心したのか深く息を吐いた後、気を紛らわすようにエールを流し込んでいた。
「もう、エルルーンのせいで死ぬところだったよ」
「ほんとだよ」
「……ごめんなさい」
ありがとう、女神フレイヤ様。そしてクロノア様。
◇
「あははは、クロ、おもしろ過ぎ!」
「ちょっとフー。そんなに笑ってるとカニあげないよ」
「あはは、ごめんごめん。ほんと、ありがとね」
まったく無理して降臨しようとしないでよね。
ほんと目が離せないんだから。
「はい、カニ。美味しそうなところ持ってきたよ。はい、あーん」
フーの口にカニを押し込んだ。少し嫌がらせを込めて。
「もう、食べさせるならもっと優しくしてよ。ほんとガサツなんだから」
「ガサツって。私のどこがガサツなのよ」
「ほら、過去を見られる鏡で自分の事をよく見てください。私の言葉が真実だとクロは知るでしょうから」
く、この笑顔で煽られるとキツイわ。
もう、フーのお使いなんてしてあげないから。
ふん、フーのばーか。
応援ありがとうございます!
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