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第一章 未知なる世界でスローライフを!
バトンタッチ
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食堂を開ける前のほんの僅かな貴重な時間をシェフリーさん達に割いてもらった。
シーフレアで拠点を構えることや牧場のこと。そしてサンライズガーデンのことを包み隠さず正直に話した。
「お願いします。俺に力を貸してください!」
断られる覚悟で俺は二人に頭を下げた。
僅かな沈黙の時が流れる。
「レンジさんに頼まれたら断れないねぇ。ましてや頭を下げてもらったんだ。私達に出来ることなら喜んで手伝うさ」
「だよな。すっかり歳はとったがまだまだやれるしな。それにクレアももう立派な大人だ。俺達があいつにしてやる事はもうないしな」
「え、本当にいいんですか。てっきり断られるかと」
「そりゃあ、レンジさん以外に頼まれたら断るさ。な、母ちゃん」
「そうだね。それで私達はどうすればいいんだい」
二人に宿の修繕の事や、その間の休業などを相談した上で、できれば少しでも早くに来て欲しいとお願いした。
「サンライズガーデンっていったら大陸一の宿だよ。私にそんな所を切り盛り出来るか少し不安だけど、やるしかないさね」
「母ちゃんなら出来るさ。俺が保証してやるよ」
「ありがとう。でもそっちに行くとしても一月は掛かるね。こっちを閉めなくちゃいけないし」
「そうですよね。その位は掛かりますよね。わかりました。その間はお二人に相談しながら頑張ります」
その後も二人に色々と相談してシーフレアに戻った。
宿の部屋に戻り、長椅子に寝転んで考えているとクオンがお腹の上に乗った。
「おかえり、れんじ」
そんな可愛いクオンの頭を撫でていると、レンやレイも側に来ておかえりをしてくれた。クオンにしたように二人の頭を撫でてあげた。
「レンジ、どうだった」
「ん、どうだった、て?」
「ポプラのお宿に行って頼んできたんでしょ」
なんだやけに勘が鋭いな。
「ああ、シェフリーさん達にサンライズガーデンを任せる事にした。というか、まだ二人には言ってないけど将来的には譲渡するつもりだ」
「そっか、良かったね」
「なんだ。なんも文句はないのか」
「え、ないけど。別にここの買収だってレンジにしたら端金でしょ。それに宿の経営も、牧場の件も最初からスポンサーになるつもりだったんでしょ。わかってるよ、それくらいは」
こんな僅かな間にリィーナがこんなにも俺の事を理解してくれるようになるなんて。なんと成長著しいのだろうか。
「ここの料理美味しいけど、シェフリーさんの料理の方が美味しいし、僕はこっちに来てくれて嬉しいな。女将さんの入れてくれたエールも格別だしね」
床に直に座り長椅子にもたれ掛かっていたリィーナが嬉しそうに微笑んでいた。
なんかこいつのこういった笑顔には癒されるな。
絶対に面と向かっては言わないけど。
◇
その夜、忙しいキッチンリーダーを除き、各リーダー達を部屋に招いて今後の方針を説明した。
「修繕箇所も大小合わせるとかなりの数になります。工事を急がせたとしても一ヶ月は掛かるかと思われます」
副支配人を務めている女性がそう報告してくれた。
「繁忙期迄には修繕を終えたい。今入っている予約をキャンセル又は延期にしてもらえないか」
「幸いなことに現状繁忙期までの予約は少なく、遅くても一ヶ月後には工事に取り掛かれるかと」
今が四月半ばだからかなり余裕を持って進められるな。
「よし。予約を入れてくれていたお客様方には迷惑料を支払った上で今回の予約分を次回無料にすると案内してくれ。それで少しは不満も減るだろうしな」
「はい、それならお客様も満足かと思われます」
「それで今回の修繕中は休館になっても全スタッフにきちんと給与を支払いするので安心してくれ。そしてその間に足りない人員を補充しよう。新人の教育はまぁ、新しくここを任せる支配人と相談して欲しい」
この場にいるリーダー達は皆やる気に溢れていて真面目で好感が持てる。
きっともっと良い宿になるだろう。
「明日の午前中にオーナーを皆に紹介したいのですが宜しいでしょうか」
へっ、まじ、ですか。
俺あんまり人前は得意じゃないんだけど。
「よし、リィーナ。俺の相方のおまえに任せる。これからここのオーナーはリィーナ、君だ」
「えええ、ちょっとレンジ。いくら人前に出るのが嫌だからってさあ、いきなり振らないでよ」
儲けは八・二でいいぞ。もちろん八がおまえの取り分だ。と、リィーナに小声で囁いた。
「みんな、今からこの僕がオーナーだよ。頑張って盛り上げていこうね!」
さすが二条グループのお嬢様だ。
この人前での度胸には流石に舌を巻くな。
それに妙なカリスマもあるしな。リィーナに任せていれば大丈夫だろ。
そしてリーダー達が帰った後、俺は一人であの東屋へ向かった。
もちろん日本酒に合う肴を手に。
暇な時に七輪を作っておいて良かったな。日本酒片手に肴をあぶる。
なんて風情があるのだろうか。
人魚よ。もし目の前に現れたら炙り魚と、炙り肉をあげよう。飲めるなら日本酒もな。
陽気なって鼻歌混じりに俺は歩いた。
シーフレアで拠点を構えることや牧場のこと。そしてサンライズガーデンのことを包み隠さず正直に話した。
「お願いします。俺に力を貸してください!」
断られる覚悟で俺は二人に頭を下げた。
僅かな沈黙の時が流れる。
「レンジさんに頼まれたら断れないねぇ。ましてや頭を下げてもらったんだ。私達に出来ることなら喜んで手伝うさ」
「だよな。すっかり歳はとったがまだまだやれるしな。それにクレアももう立派な大人だ。俺達があいつにしてやる事はもうないしな」
「え、本当にいいんですか。てっきり断られるかと」
「そりゃあ、レンジさん以外に頼まれたら断るさ。な、母ちゃん」
「そうだね。それで私達はどうすればいいんだい」
二人に宿の修繕の事や、その間の休業などを相談した上で、できれば少しでも早くに来て欲しいとお願いした。
「サンライズガーデンっていったら大陸一の宿だよ。私にそんな所を切り盛り出来るか少し不安だけど、やるしかないさね」
「母ちゃんなら出来るさ。俺が保証してやるよ」
「ありがとう。でもそっちに行くとしても一月は掛かるね。こっちを閉めなくちゃいけないし」
「そうですよね。その位は掛かりますよね。わかりました。その間はお二人に相談しながら頑張ります」
その後も二人に色々と相談してシーフレアに戻った。
宿の部屋に戻り、長椅子に寝転んで考えているとクオンがお腹の上に乗った。
「おかえり、れんじ」
そんな可愛いクオンの頭を撫でていると、レンやレイも側に来ておかえりをしてくれた。クオンにしたように二人の頭を撫でてあげた。
「レンジ、どうだった」
「ん、どうだった、て?」
「ポプラのお宿に行って頼んできたんでしょ」
なんだやけに勘が鋭いな。
「ああ、シェフリーさん達にサンライズガーデンを任せる事にした。というか、まだ二人には言ってないけど将来的には譲渡するつもりだ」
「そっか、良かったね」
「なんだ。なんも文句はないのか」
「え、ないけど。別にここの買収だってレンジにしたら端金でしょ。それに宿の経営も、牧場の件も最初からスポンサーになるつもりだったんでしょ。わかってるよ、それくらいは」
こんな僅かな間にリィーナがこんなにも俺の事を理解してくれるようになるなんて。なんと成長著しいのだろうか。
「ここの料理美味しいけど、シェフリーさんの料理の方が美味しいし、僕はこっちに来てくれて嬉しいな。女将さんの入れてくれたエールも格別だしね」
床に直に座り長椅子にもたれ掛かっていたリィーナが嬉しそうに微笑んでいた。
なんかこいつのこういった笑顔には癒されるな。
絶対に面と向かっては言わないけど。
◇
その夜、忙しいキッチンリーダーを除き、各リーダー達を部屋に招いて今後の方針を説明した。
「修繕箇所も大小合わせるとかなりの数になります。工事を急がせたとしても一ヶ月は掛かるかと思われます」
副支配人を務めている女性がそう報告してくれた。
「繁忙期迄には修繕を終えたい。今入っている予約をキャンセル又は延期にしてもらえないか」
「幸いなことに現状繁忙期までの予約は少なく、遅くても一ヶ月後には工事に取り掛かれるかと」
今が四月半ばだからかなり余裕を持って進められるな。
「よし。予約を入れてくれていたお客様方には迷惑料を支払った上で今回の予約分を次回無料にすると案内してくれ。それで少しは不満も減るだろうしな」
「はい、それならお客様も満足かと思われます」
「それで今回の修繕中は休館になっても全スタッフにきちんと給与を支払いするので安心してくれ。そしてその間に足りない人員を補充しよう。新人の教育はまぁ、新しくここを任せる支配人と相談して欲しい」
この場にいるリーダー達は皆やる気に溢れていて真面目で好感が持てる。
きっともっと良い宿になるだろう。
「明日の午前中にオーナーを皆に紹介したいのですが宜しいでしょうか」
へっ、まじ、ですか。
俺あんまり人前は得意じゃないんだけど。
「よし、リィーナ。俺の相方のおまえに任せる。これからここのオーナーはリィーナ、君だ」
「えええ、ちょっとレンジ。いくら人前に出るのが嫌だからってさあ、いきなり振らないでよ」
儲けは八・二でいいぞ。もちろん八がおまえの取り分だ。と、リィーナに小声で囁いた。
「みんな、今からこの僕がオーナーだよ。頑張って盛り上げていこうね!」
さすが二条グループのお嬢様だ。
この人前での度胸には流石に舌を巻くな。
それに妙なカリスマもあるしな。リィーナに任せていれば大丈夫だろ。
そしてリーダー達が帰った後、俺は一人であの東屋へ向かった。
もちろん日本酒に合う肴を手に。
暇な時に七輪を作っておいて良かったな。日本酒片手に肴をあぶる。
なんて風情があるのだろうか。
人魚よ。もし目の前に現れたら炙り魚と、炙り肉をあげよう。飲めるなら日本酒もな。
陽気なって鼻歌混じりに俺は歩いた。
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