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第二章 新生活、はじめるよ!
うーん?
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おかしい。なにがおかしいのかというと常ならすぐ帰るクロノア様が堂々とパーティーに参加しているのだ。
しかもあっちこっちの屋台をしらみつぶしに食していた。
その後を神官達がついていきクロノア様を過剰に持ちあげている。
それに気を良くしたクロノア様がさらに上機嫌で飛びまわっていた。
「なんかお世辞じゃないよな。心からクロノア様を褒めてる」
「だね。ある一部を除いては」
遠くではしゃぐクロノア様を眺めながらリィーナとそんな会話をしていた。
で、リィーナが言っていたある一部は俺達を盾のようにしてクロノア様から距離をとっていた。
「おい、そこの神官三人娘はいつまで隠れてるつもりだ」
「お構いなく。それに私達は隠れてません」
「そうです。失礼なことは言わないでください。変に誤解されたらどうするのですか」
カーラの言葉にミストが続くがその肩が一瞬震えていた。
そんな三人とスクルド、エイル、ルージュは一緒の席に着いている。どうやらあの三人も同じだった。
「まさかスーたん達までクロたんを恐れているなんて思わなかったよ」
「恐れていません。迂闊な事を言って怒られるのを危惧しているだけです」
なんか今、焦ってなかったか。スクルドにしては珍しいな。
「そ、それより。セリーヌ様のご両親がレンジ様とセリーヌ様の仲を誤解していたようですが」
「え、誤解は解けましたから。普段から好きな人はとか、孫はいつ抱かせてくれるのかなどしつこかったのです。そのせいで誤解したのだと思います」
「願望が強すぎてそんな風に思ったのでしょうね」
スクルドが話を逸らす為にそんな事を言ったが余計な被弾をしたセリーヌが少しだけ不憫に思えた。
「ただいま戻りました。クオンちゃんが今夜はレンジ様のお部屋で三人で寝ると言いましたのでその様にしましたが宜しかったでしょうか」
クオンをはじめとした子供達三人を寝かしつけてきてくれた凛子とロザミアが戻ってきた。
「ああ、構わない。ありがとう」
「はい、どういたしまして」
まぁ今夜はというか、昨日もそうだったしな。せっかくそれぞれに部屋を用意したのに少し残念な気もするがまだ幼いししょうがないか。
「遅くなりましたが、新築祝いをお持ちしました」
ロザミアから割と大きな布に包まれた物を俺とリィーナは受け取った。
「我が国の服。着物をお二人に。それとリィーナ様には飾りもご用意致しました」
最高級品と思われる飾りなどを仕舞う箱をテーブルに置いた。
「うわっ、きれい。こんなキラキラした箱も貰っていいの」
「はい。我が国最高の職人の手によってリィーナ様の為だけに作られた物です。それとこちらはレンジ様に」
細長い箱をロザミアから手渡された。
「これは」
「開けてみてください。以前、欲しいと仰っていたものです」
箱を開けるとそこには二本の煙管が入っていた。それもかなり上品でいて主張し過ぎない大人の逸品といった感じの。
「キセルか。すげえな。こんな上等な物を見たことないぞ。爺様のより立派だな」
やばい、かっこいい。すごく気に入った。
「あれ、レンジ煙草吸うの」
「ああ。たまにだがな。手巻きでクルクル撒くのが好きなんだ。もちろんキセルも。まあこれは爺様の影響だな」
「葉もご用意しておりますので後でゆるりとお楽しみください」
「ああ。ほんとありがとな」
なんか見てるだけでも良いんだよな。
すごく魅入ってしまう。
なんか今夜は爺様の夢を見そうだ。
渋くて格好いい爺様の夢をさ。
◇
「ただまぁー」
「ちょっと、遅かったじゃない。それになにその膨れたお腹は」
満足そうな顔でクロが帰ってきた。
しかも大量のお土産を手にして。
「はい。これフー達の」
大きな籠の中にはステーキやら串焼き。大量のスィーツがこれでもかと山盛りで入っている。しかもその籠は一つじゃない。五つもある。
「ずいぶん楽しんできたようだけど」
「そんなに見つめないでよ」
見つめていない。白い目を向けているだけですから。
「あんなに最初は下界に降りるのもコンタクトを取るのも嫌がっていたくせに、今じゃなにかと用事をつけては下界にいくよね。どうせ、食いしん坊のクロの事だからすっかりあちらの食べ物が気に入ったんだろうけどさ」
「え、最初から嫌がってないけど。ふーの勘違いじゃない。それに私がフーのお願いを嫌がる訳がないじゃん」
なに。このあからさまな嘘は。
嫌がってたじゃない。その証拠に初めて彼と会った時にこれが最後だって言ってたよね!
「ああ、あれは言葉の綾だよ。ああでも言わないと甘えちゃうでしょ」
「嘘つき。あんなに嫌そうな顔してたよね。それも嘘だって言うの」
「私の迫真の演技にフーも騙されるなんて、まだまだだよね」
うっさいわ! なにが迫真の演技って。あなたほど下手な演技しか出来ない役者はいないからね!
「もういい。クロにはあきれたよ」
「ローゼンちゃんにビビってる彼をほっとけないでしょ。嫌々仕方がなく助けてあげたんだから感謝してよね」
「都合のいい時だけ嫌々なんて言わないで。クロのそういうところはほんとダメダメだよ」
ほんと精霊の気ままさ。わがままさにはあきれるよ。
これが時の大神様の唯一の眷属だなんてさ。ほんと信じたくないよ。
「でもクオンも時の大神様の眷属の可能性もあるし、クロが唯一だなんて言ってられるのもあと僅かかもね」
「だっ! そ、それは」
「クオンの方がかわいいし、きれいだし、性格もいいしさ。クロよりずっと時の大神様の眷属に相応しいよね」
どうだ。私の寝ないで考えたこの攻撃。まいったか。
「フーなんて。フーのばぁかぁー!
一日絶交だからね!」
そう言い残してクロは自分の部屋へ飛んでいった。その目に涙を浮かべながら。
ふふふ、久々にやり返したよ。
いやぁ、今夜はぐっすり眠れそうだね。寝ないで考えた甲斐があったよ。
あああ、でも私も下に降りて会いにいきたいな。
しかもあっちこっちの屋台をしらみつぶしに食していた。
その後を神官達がついていきクロノア様を過剰に持ちあげている。
それに気を良くしたクロノア様がさらに上機嫌で飛びまわっていた。
「なんかお世辞じゃないよな。心からクロノア様を褒めてる」
「だね。ある一部を除いては」
遠くではしゃぐクロノア様を眺めながらリィーナとそんな会話をしていた。
で、リィーナが言っていたある一部は俺達を盾のようにしてクロノア様から距離をとっていた。
「おい、そこの神官三人娘はいつまで隠れてるつもりだ」
「お構いなく。それに私達は隠れてません」
「そうです。失礼なことは言わないでください。変に誤解されたらどうするのですか」
カーラの言葉にミストが続くがその肩が一瞬震えていた。
そんな三人とスクルド、エイル、ルージュは一緒の席に着いている。どうやらあの三人も同じだった。
「まさかスーたん達までクロたんを恐れているなんて思わなかったよ」
「恐れていません。迂闊な事を言って怒られるのを危惧しているだけです」
なんか今、焦ってなかったか。スクルドにしては珍しいな。
「そ、それより。セリーヌ様のご両親がレンジ様とセリーヌ様の仲を誤解していたようですが」
「え、誤解は解けましたから。普段から好きな人はとか、孫はいつ抱かせてくれるのかなどしつこかったのです。そのせいで誤解したのだと思います」
「願望が強すぎてそんな風に思ったのでしょうね」
スクルドが話を逸らす為にそんな事を言ったが余計な被弾をしたセリーヌが少しだけ不憫に思えた。
「ただいま戻りました。クオンちゃんが今夜はレンジ様のお部屋で三人で寝ると言いましたのでその様にしましたが宜しかったでしょうか」
クオンをはじめとした子供達三人を寝かしつけてきてくれた凛子とロザミアが戻ってきた。
「ああ、構わない。ありがとう」
「はい、どういたしまして」
まぁ今夜はというか、昨日もそうだったしな。せっかくそれぞれに部屋を用意したのに少し残念な気もするがまだ幼いししょうがないか。
「遅くなりましたが、新築祝いをお持ちしました」
ロザミアから割と大きな布に包まれた物を俺とリィーナは受け取った。
「我が国の服。着物をお二人に。それとリィーナ様には飾りもご用意致しました」
最高級品と思われる飾りなどを仕舞う箱をテーブルに置いた。
「うわっ、きれい。こんなキラキラした箱も貰っていいの」
「はい。我が国最高の職人の手によってリィーナ様の為だけに作られた物です。それとこちらはレンジ様に」
細長い箱をロザミアから手渡された。
「これは」
「開けてみてください。以前、欲しいと仰っていたものです」
箱を開けるとそこには二本の煙管が入っていた。それもかなり上品でいて主張し過ぎない大人の逸品といった感じの。
「キセルか。すげえな。こんな上等な物を見たことないぞ。爺様のより立派だな」
やばい、かっこいい。すごく気に入った。
「あれ、レンジ煙草吸うの」
「ああ。たまにだがな。手巻きでクルクル撒くのが好きなんだ。もちろんキセルも。まあこれは爺様の影響だな」
「葉もご用意しておりますので後でゆるりとお楽しみください」
「ああ。ほんとありがとな」
なんか見てるだけでも良いんだよな。
すごく魅入ってしまう。
なんか今夜は爺様の夢を見そうだ。
渋くて格好いい爺様の夢をさ。
◇
「ただまぁー」
「ちょっと、遅かったじゃない。それになにその膨れたお腹は」
満足そうな顔でクロが帰ってきた。
しかも大量のお土産を手にして。
「はい。これフー達の」
大きな籠の中にはステーキやら串焼き。大量のスィーツがこれでもかと山盛りで入っている。しかもその籠は一つじゃない。五つもある。
「ずいぶん楽しんできたようだけど」
「そんなに見つめないでよ」
見つめていない。白い目を向けているだけですから。
「あんなに最初は下界に降りるのもコンタクトを取るのも嫌がっていたくせに、今じゃなにかと用事をつけては下界にいくよね。どうせ、食いしん坊のクロの事だからすっかりあちらの食べ物が気に入ったんだろうけどさ」
「え、最初から嫌がってないけど。ふーの勘違いじゃない。それに私がフーのお願いを嫌がる訳がないじゃん」
なに。このあからさまな嘘は。
嫌がってたじゃない。その証拠に初めて彼と会った時にこれが最後だって言ってたよね!
「ああ、あれは言葉の綾だよ。ああでも言わないと甘えちゃうでしょ」
「嘘つき。あんなに嫌そうな顔してたよね。それも嘘だって言うの」
「私の迫真の演技にフーも騙されるなんて、まだまだだよね」
うっさいわ! なにが迫真の演技って。あなたほど下手な演技しか出来ない役者はいないからね!
「もういい。クロにはあきれたよ」
「ローゼンちゃんにビビってる彼をほっとけないでしょ。嫌々仕方がなく助けてあげたんだから感謝してよね」
「都合のいい時だけ嫌々なんて言わないで。クロのそういうところはほんとダメダメだよ」
ほんと精霊の気ままさ。わがままさにはあきれるよ。
これが時の大神様の唯一の眷属だなんてさ。ほんと信じたくないよ。
「でもクオンも時の大神様の眷属の可能性もあるし、クロが唯一だなんて言ってられるのもあと僅かかもね」
「だっ! そ、それは」
「クオンの方がかわいいし、きれいだし、性格もいいしさ。クロよりずっと時の大神様の眷属に相応しいよね」
どうだ。私の寝ないで考えたこの攻撃。まいったか。
「フーなんて。フーのばぁかぁー!
一日絶交だからね!」
そう言い残してクロは自分の部屋へ飛んでいった。その目に涙を浮かべながら。
ふふふ、久々にやり返したよ。
いやぁ、今夜はぐっすり眠れそうだね。寝ないで考えた甲斐があったよ。
あああ、でも私も下に降りて会いにいきたいな。
応援ありがとうございます!
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