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第二章 新生活、はじめるよ!
冥界へ
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レンジ様とロータがついに突破した。
「本陣を上げます。休息のもの以外は第二軍と合流し敵殲滅。そして入口を占拠し冥界の門への足掛かりとします」
副官のアルヴィトにそう命令を下す。
「やっとですね」
「ええ。でもここからが本番です」
そう会話をしながらも側に立つセリーヌ殿と互いに少しだけ安心した表情で笑みを交わす。
そんな時、穴へ小さな光の集団が入っていった。
「あれは精霊ですよね」
「おそらく。けれどなぜ精霊が冥界へ繋がる穴へ……」
上位精霊以上の存在でなければ冥界では活動できない。なのに、どう見ても下位の精霊もあの集団に存在していた。
「妖精王でもあるレンジ様の後を追いかけていったのでしょうね」
セリーヌ殿は微笑ましい光景だと言わんばかりの表情でそう考察した。
「何故に、でしょうか」
「精霊のする事なんて考えても無駄でしょう。あの子達の気ままさは、時には神さえも困惑させるのですから」
たしかにそうですね。
私もそんな気まぐれ大精霊をよく知っていますから納得です。
「では私たちも参りましょうか」
私はセリーヌ殿の後を追うように歩きだした。
◇
(ようやっと来ましたね)
アンジュはそう言って様々な輝きを放つ精霊の集団に視線を移した。
その精霊達が進んだ後には今までとは様子が違い、ごく普通の洞穴のように感じる。
「なんか雰囲気が変わったな」
(はい。冥界から切り離しました)
(王が歩めば後は自然と元に戻ります)
ほう。やるな、おまえ達。でかした。
「ということだ。ロータ、敵は前方からしか現れない。安心して進めるぞ」
「ということだと言われましても。レンジ様が何を話していたのか私には聞こえませんでした。ちゃんと説明してください」
なに。こんな時だけ読心スキルが役に立たないなんて、ほんと色々と残念なやつだな。
「色々と残念ってなんですか、失礼な。それに大精霊とレンジ様の秘密の会話なんてフレイヤ様しか聞けませんよ!」
(いや、女王にも無理ですね)
「だそうだ」
「だから、だそうだって言われても分かりませんよ!」
地団駄を踏みながら怒っているロータはとりあえず無視して先へ進むことにした。
「まだ先は長い。そんなに興奮してたら保たないぞ」
ロータは何かを叫んでいるが無視すると決めた俺の耳には入らない。
集中とはこうするものだ。と、見せつけてやった。
そして如何にもボス部屋のような大きく開けた場所に着いた。
ワルキューレ達は誰からも指示されることなく素早く隊列を組む。
「嫌な気配がブンブンしますね」
「なんだよ、そのブンブンんて。カナブンか」
「ちっがいますよ!」
「あまりの死語に目眩しそうになったぞ」
そんな時、突然地面が揺れた。
奥からスケルトンドラゴンが姿をゆっくりと現す。その巨大さに目を見張る。
「気のせいかもしれんが、あの黒竜より強いような気がする」
「そうなんですか。けれど、相手にとって不足なし、ですよ!」
ロータは淡く赤く輝くマナを纏い、一気に間合いを詰めると槍版のロータの一閃をスケルトンドラゴンの頭に繰り出した。
だが、少し顔を逸らしただけでダメージを殆ど与えられなかった。
「ちっ、骨の分際で硬過ぎなんですよ!」
さらに追撃の一撃を頭を目掛けて槍を振り下ろした。
その衝撃にさすがのスケルトンドラゴンも顎から地面に叩きつけられた。
俺はチャンスとばかりに刀を抜いて間合いを詰めると、スケルトンドラゴンに刀を振り下ろし、頭を真っ二つに斬り裂き、さらに横に一閃した。
奴の頭が塵となり風に舞うように消えた。しかし、頭を無くしても尾を振いスケルトンドラゴンは反撃してくる。それを俺とロータは飛び退いて躱し、また間合いをとり直した。
「しぶといな。しかもご丁寧にちゃんと援軍まで用意してるとはな」
スケルトンドラゴンの背後から悪魔が大勢現れた。
数的不利に陥りながらも、そこからは乱戦覚悟の勝負にでる。
そして案の定、乱戦となり死闘が繰り広げられた。
やや優勢な状況でスケルトンドラゴンを相手にしていたロータの背に向けて何かが飛んでくる。その脅威に気付かないロータを庇うために瞬間移動でロータの側まで移動し、彼女の背を押した。
咄嗟の事すぎて移動位置を誤ってしまった。そのお陰で飛んできた三又の矛が俺の体を貫いた。
口から大量の血を吹きだす。その貫かれた痛みは一度味わった致命傷と同じ。いや、それ以上の痛みだった。
そんな激痛の中で俺は何かに捕まり、矛を引き抜かれる。その痛みで意識を手放しそうになる。
「貴様ならそうすると思っていたぞ。他者を救うために命を張るなど、本当に愚かな男だ。だがそんな愚かな望みを我が叶えてやろう。今度こそ確実に貴様を殺してやる」
「離せ! その薄汚い手でレンジ様に触れるな!」
ロータが必死に俺を助けだそうと飛び込んでくるが、奴の手にしている三又の矛を振るわれ激しく叩き落とされる。
血塗れになりながらも片膝をついて、それでもロータは必死に立ちあがろうとしていた。
「貴様らワルキューレなどに興味はない。弱者は弱者らしくそこで指を咥えていろ」
ロータを助けようと回復に全力を尽くすが一向に回復しない。
「回復しようとしても無駄だ。我の矛に冥界で貫かれたその傷は癒えない」
「ハデス!」
紅蓮の炎を纏ったルージュが槍を片手に飛び込んでくる。
だがそれも相打ちに終わる。
互いの肩を貫くが深手を負ったのはルージュの方だった。
「久しいな。あの跳ねっ返りの戦乙女よ。貴様とはこの場で戦いたい気分ではあるが、今はこいつの方が先だ」
不敵にそう笑いルージュの肩を貫いたまま振り払った。
「こいつは貰っていく」
その奴の言葉と共に俺は意識を手放した。
「本陣を上げます。休息のもの以外は第二軍と合流し敵殲滅。そして入口を占拠し冥界の門への足掛かりとします」
副官のアルヴィトにそう命令を下す。
「やっとですね」
「ええ。でもここからが本番です」
そう会話をしながらも側に立つセリーヌ殿と互いに少しだけ安心した表情で笑みを交わす。
そんな時、穴へ小さな光の集団が入っていった。
「あれは精霊ですよね」
「おそらく。けれどなぜ精霊が冥界へ繋がる穴へ……」
上位精霊以上の存在でなければ冥界では活動できない。なのに、どう見ても下位の精霊もあの集団に存在していた。
「妖精王でもあるレンジ様の後を追いかけていったのでしょうね」
セリーヌ殿は微笑ましい光景だと言わんばかりの表情でそう考察した。
「何故に、でしょうか」
「精霊のする事なんて考えても無駄でしょう。あの子達の気ままさは、時には神さえも困惑させるのですから」
たしかにそうですね。
私もそんな気まぐれ大精霊をよく知っていますから納得です。
「では私たちも参りましょうか」
私はセリーヌ殿の後を追うように歩きだした。
◇
(ようやっと来ましたね)
アンジュはそう言って様々な輝きを放つ精霊の集団に視線を移した。
その精霊達が進んだ後には今までとは様子が違い、ごく普通の洞穴のように感じる。
「なんか雰囲気が変わったな」
(はい。冥界から切り離しました)
(王が歩めば後は自然と元に戻ります)
ほう。やるな、おまえ達。でかした。
「ということだ。ロータ、敵は前方からしか現れない。安心して進めるぞ」
「ということだと言われましても。レンジ様が何を話していたのか私には聞こえませんでした。ちゃんと説明してください」
なに。こんな時だけ読心スキルが役に立たないなんて、ほんと色々と残念なやつだな。
「色々と残念ってなんですか、失礼な。それに大精霊とレンジ様の秘密の会話なんてフレイヤ様しか聞けませんよ!」
(いや、女王にも無理ですね)
「だそうだ」
「だから、だそうだって言われても分かりませんよ!」
地団駄を踏みながら怒っているロータはとりあえず無視して先へ進むことにした。
「まだ先は長い。そんなに興奮してたら保たないぞ」
ロータは何かを叫んでいるが無視すると決めた俺の耳には入らない。
集中とはこうするものだ。と、見せつけてやった。
そして如何にもボス部屋のような大きく開けた場所に着いた。
ワルキューレ達は誰からも指示されることなく素早く隊列を組む。
「嫌な気配がブンブンしますね」
「なんだよ、そのブンブンんて。カナブンか」
「ちっがいますよ!」
「あまりの死語に目眩しそうになったぞ」
そんな時、突然地面が揺れた。
奥からスケルトンドラゴンが姿をゆっくりと現す。その巨大さに目を見張る。
「気のせいかもしれんが、あの黒竜より強いような気がする」
「そうなんですか。けれど、相手にとって不足なし、ですよ!」
ロータは淡く赤く輝くマナを纏い、一気に間合いを詰めると槍版のロータの一閃をスケルトンドラゴンの頭に繰り出した。
だが、少し顔を逸らしただけでダメージを殆ど与えられなかった。
「ちっ、骨の分際で硬過ぎなんですよ!」
さらに追撃の一撃を頭を目掛けて槍を振り下ろした。
その衝撃にさすがのスケルトンドラゴンも顎から地面に叩きつけられた。
俺はチャンスとばかりに刀を抜いて間合いを詰めると、スケルトンドラゴンに刀を振り下ろし、頭を真っ二つに斬り裂き、さらに横に一閃した。
奴の頭が塵となり風に舞うように消えた。しかし、頭を無くしても尾を振いスケルトンドラゴンは反撃してくる。それを俺とロータは飛び退いて躱し、また間合いをとり直した。
「しぶといな。しかもご丁寧にちゃんと援軍まで用意してるとはな」
スケルトンドラゴンの背後から悪魔が大勢現れた。
数的不利に陥りながらも、そこからは乱戦覚悟の勝負にでる。
そして案の定、乱戦となり死闘が繰り広げられた。
やや優勢な状況でスケルトンドラゴンを相手にしていたロータの背に向けて何かが飛んでくる。その脅威に気付かないロータを庇うために瞬間移動でロータの側まで移動し、彼女の背を押した。
咄嗟の事すぎて移動位置を誤ってしまった。そのお陰で飛んできた三又の矛が俺の体を貫いた。
口から大量の血を吹きだす。その貫かれた痛みは一度味わった致命傷と同じ。いや、それ以上の痛みだった。
そんな激痛の中で俺は何かに捕まり、矛を引き抜かれる。その痛みで意識を手放しそうになる。
「貴様ならそうすると思っていたぞ。他者を救うために命を張るなど、本当に愚かな男だ。だがそんな愚かな望みを我が叶えてやろう。今度こそ確実に貴様を殺してやる」
「離せ! その薄汚い手でレンジ様に触れるな!」
ロータが必死に俺を助けだそうと飛び込んでくるが、奴の手にしている三又の矛を振るわれ激しく叩き落とされる。
血塗れになりながらも片膝をついて、それでもロータは必死に立ちあがろうとしていた。
「貴様らワルキューレなどに興味はない。弱者は弱者らしくそこで指を咥えていろ」
ロータを助けようと回復に全力を尽くすが一向に回復しない。
「回復しようとしても無駄だ。我の矛に冥界で貫かれたその傷は癒えない」
「ハデス!」
紅蓮の炎を纏ったルージュが槍を片手に飛び込んでくる。
だがそれも相打ちに終わる。
互いの肩を貫くが深手を負ったのはルージュの方だった。
「久しいな。あの跳ねっ返りの戦乙女よ。貴様とはこの場で戦いたい気分ではあるが、今はこいつの方が先だ」
不敵にそう笑いルージュの肩を貫いたまま振り払った。
「こいつは貰っていく」
その奴の言葉と共に俺は意識を手放した。
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