邪神様に恋をして

そらまめ

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邂逅

邪神様、潜入前夜です

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 マルデルからの指示で、水の愛し子を救出するべく、入れる範囲で神殿の中や、周囲などを隈なく調べた。
 救出作戦決行前日、入念な打ち合わせをすることとなった。


「悠太様の外套には認識阻害効果、更に外套のフードを被れば隠密効果が発動されます。なので潜入は悠太様単独で行って頂きます。ターゲットは神殿地下二階の牢に囚われていますので、出来るだけ戦闘を避けて慎重に事を進めるのが一番でしょう。救出後は神殿南門の外で私と合流し、首都東門前でエイルと合流、そのまま馬車で首都を離れます。気を付けて頂きたいのは、神殿の中では魔法阻害と精霊や妖精避けの結界が張られています。魔法は使えませんので注意して下さい。深夜なので人の出入りも少なく、神殿内にもそんなにはいませんが、戦闘になったら躊躇なく相手を排除すること。くれぐれも手加減をして相手を生かし、自分から窮地に陥いらないようにして下さい」

「はい、分かりました。しかし排除とは殺すしか方法はありませんか」

「魔法を使えれば眠らせたりできるのですが、中途半端に気絶させて早く目を覚まされて応援を呼ばれたら厄介です。やり過ごせない様でしたら躊躇なく殺して下さい。でなければ、悠太様が殺されます」

 こちらに来た時に覚悟はしていたが、本当に殺せるのか自信がない。けどやるしかない。

「それと救出する愛し子は、悠太様と同じ年頃の女性で水色の髪をしています。また警備兵などに遭遇した場合は悠太様の外套の中に入れて、やり過ごしてから移動するのもいいかもしれません」

 それからも注意点などを確認した。


 ◇


 打ち合わせが終わり、ベッドの上で横になり寝ようとするが、初めての対人戦への緊張と、失敗した時の恐怖で寝付けなかった。

 深夜になる頃、ドアをノックする音がして、ドアを開けるとヒルデが立っていた。

「少しお話しませんか」

 俺はヒルデを部屋の中に招き入れ、椅子に座るよう促し、自分はベッドに座った。

「師匠、こんな時間にどうしたんですか」
「久しぶりの師匠呼びですね。明日の事で緊張でもしていますか」

 俺が安心できるように優しい表情で、優しく語り掛けてくれる。

「少し考えちゃって。ダメですよね、俺」
「ちっともダメなんかじゃありませんよ。初めての対人戦で、緊張や恐怖で眠れなくなる事なんて、よくある事ですから」

 いつもとは違う口調で親しみを込めて話してくれた。
 そして俺の隣に座って手を優しく包んでくれた。

「師匠。俺、人を殺せるでしょうか。自分でも自信がありません」
「私だって未だに戦うのも命を奪うのも怖いですよ。ただ、守りたいもの、守るべきものの為に、自身を鼓舞し剣を握り、振るっているだけなんです。人を、命あるものの命を奪うことに慣れる必要なんてありません。むしろ慣れてはいけないのです」

 ゆっくりと、優しく言い聞かせるように話してくれた。

「殺す、殺せるのではなく、貴方が相手を殺さないと、殺されるということ。敵を前にして説得や情けが通用すると思わないで下さい。敵は確実に貴方の隙を狙って、命を奪いにきます。その事だけは忘れずに肝に銘じて下さい」

「……はい。肝に銘じます」

 頭で分かっているつもりでも心は違う。
 鼓動が跳ね上がり、体が小刻みに震える。

 不意に師匠に抱き寄せられた。優しく俺の背を撫でながら震えが止まるよう撫で続けてくれた。
 師匠の胸の鼓動が伝わり、その穏やかなリズムに安心感を覚えた。

「怖い時、辛い時、泣きたい時は、声にだしていいのです。我慢なんてしないでください。私が、私達が、貴方の側にいて、必ず貴方を支えます」

 誰にも面と向かって言われた事のない、その優しい言葉に涙が勝手に溢れてくる。

 自分でも気付かないうちに声を出して泣いていた


 散々泣いた後、疲れて少し眠った。

 人の温もりを感じて目を覚ますと、俺は彼女の腕に抱かれていた。

 彼女はずっと優しく俺を見守っていてくれた。



「まだ寝ていて大丈夫ですよ。安心しておやすみなさい」



 優しく、とても優しいキスを、額にしてくれた。

 少しびっくりして顔を上げると

 彼女は唇を重ねてくる、今度は長いキスを。

 流れのままに、二人は抱き合い、身も心も重ね、そのまま朝を迎えた。

 そして、二人抱き合いながら、いつしか眠りについていた。
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