邪神様に恋をして

そらまめ

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邂逅

邪神様、それでも

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 夕方近くに、やっと村の近くまでやってきた。
 しかし、村の方から多くの煙が立ち上っているのが見えた。村に何かあったのかもしれないと思い、ミツキにクオンの事を頼むと、俺は全速力で村へ向かった。


 村が何者かに襲われていた。
いや、略奪されている。
 村の住民と思われる大人から子供まで、商人や衛兵までもが見境なしに略奪者の刃にかかっていた。

 更に加速して走り、村の中へ向かう。

 略奪者が笑いながら、逃げる子供を背後から斬ろうとしていた。
 俺は一気に間合いつめて、その略奪者の顔を殴り飛ばす。殴られた顔は胴体を離れて吹き飛んでいった。
 顔に拳に返り血を浴びる。だが何も気にならない。

「はやく逃げて!」

 怯えている子供に逃げるようにわざと強く言う。
 周囲を見渡して略奪者共の姿を捉える。
 俺は近くの略奪者から順番に、次々と殴り倒した。


「ほう。一人で素手でとは、大したもんだな」

 不快な声がする方を振り向くと、金髪の男が幅広の両手剣を片手に、愉しそうに嗤っている。
 目だけで周囲を窺うと、すでに二十人以上に囲まれていた。

「やっと殺しがいのあるヤツと会ったぜ。やっぱりヴェールに向かって、正解だったな」

 俺は無言でその不快な男を睨む。

「なんだ、なんか言えよ少年。それとも、囲まれてビビっちまったか」
「……外道如きが、気安く話しかけんな」
「はっ、俺が光の勇者だって知ってて言ってんのか、小僧!」
「だからなんだよ、うるせえなあ!」
「小僧! 殺すぞ!」

 金髪の男が両手剣で胴を薙ぎ払おうと間合いを詰めてくる。
 遅い、こんなのが光の勇者だと。クロノアのサポートがなくても遅すぎる。
 俺は水平に払われた両手剣を飛び越えて、そのまま拳で男の顔面を強打する。金髪の男の顔は吹き飛び、顔を失った男の体が前のめりで倒れていった。

 取り囲んでいた奴らが、一瞬呆けた後に怒声をあげて、一斉に斬り掛かってくる。
 俺は刀を抜くと体を回転させながら風の斬撃を放った。
 斬り掛かってきた者達はその一撃で絶命する。


 強者が弄ぶように弱者を殺し奪う。
 こんなのが弱肉強食だというのなら、俺はそんなのは絶対に認めないし、絶対に許さない。


 不意に何かが背中の肩口に刺さり激痛が走る。
 矢が飛んできた方へ振り向くと、更に矢が放たれた。
 左手を突き出し、魔法でシールドを展開し矢を防ぐと同時に火球魔法を放って敵を倒した。

 俺は矢が刺さった痛みで、膝から崩れ落ちたところを、誰かに支えられた。

「悠太様、もう大丈夫です」

 俺はその声に安心して気を失った。


 ◇


 気付くとテントの中だった。
 俺の横にはクオンが寝ていた。
 クオンを起こさないようにそっとテントから出ると、ミツキとロータが焚き火を囲んでいた。

「ゆうた、起きて大丈夫ですか」
「あれ、悠太様。まだ寝てなくちゃダメっすよ」

 ああやっぱりロータだったのか。俺の友人は頼りになる。

「ロータ、村はどうなった」
「悠太様がすぐ駆けつけてくれたお陰で、半数以上の住民が助かりました。無事だった住民が、村の片付けをしてますので、私達はここで野営中であります」

 ロータが敬礼をしてニッコリ笑った。なんかムカつく。

「あのそれでですね。寝起きで悪いんですけど、あそこに小屋を出してくれませんか」

 今度はテヘペロかよ。相変わらずのウザさだ。
 俺はロータの指定した所に小屋を出して、テントの中に戻った。クオンで癒されようと思ったからだ。

「悠太様も小屋で休みましょうよ。なんなら、私とミツキちゃんで添い寝してあげますから」
「ろ、ロータさん、わたしはしませんからっ!」

 騒がしい、とっても騒がしい。たぶんわざとだろうけど。


 今更ながらに自分の行いを振り返って悔いる。

 怒りに身を任せてしまった……

 どうしようもなく許せなかった。

 笑いながら、愉しんで人を殺めるような者たちを、俺は許せなかった。

 でも、もっと違う良い方法は無かったのだろうか……

「いいんですよ、悠太様。あんな畜生ども殺されて当然です。私ならたっぷり甚振って、泣くほど後悔させてから殺してましたからね。だから悠太様は、あんな奴らの為に悔いる必要なんてありませんから」

 寝ている俺の頭を撫でながらロータは言う。

「村の住民達も、悠太様には本当に感謝してましたよ」
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