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邂逅
邪神様、眷属が願ってもいいですか
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「ロータの報告では、悠太くんが盗賊団を全滅させたそうです。……しかも、元光の勇者ですか」
マルデル様がロータの報告書を読み終えると、私に内容を教えてくれた。
少し、お怒りになられているようだ。
「戦えたのですね、悠太は」
「村の住民が傷付けられていたら、悠太くんは見過ごせないでしょうね」
「元勇者なんて、ユータのリハビリにもならないよ。相手が弱すぎて今頃後悔してんじゃないの」
「そうね、ロータの報告通りなら。怒りに身を任せてしまったと、悔いているそうよ」
この口調はかなりお怒りのようです。
「それで何故、ロータは戻って来ないのですか」
「悠太くんの護衛の任に就くと書いてあるわ。ロータ、羨ましすぎです。しかも、悠太くんが弱っている時に!」
ああ、そっちでしたか。悠太の事だと相変わらずのポンコツぶりで安心しました。
「でもさ。なんでロータが討伐なんて行ったの。領主代行なのに」
「人手が足りないと自ら行きました。もっともストレス解消の方がメインでしょうけど。こんな事なら私が行けばよかった……」
「なに言ってるの、スクルド。あなた計画の責任者よ」
スクルドも最近、悠太の事になるとダメですね。
「で、ですが、」
「ですがも何もないでしょ。あなたはあなたの仕事をなさい」
女神らしいです、マルデル様。最近はたまにですが。
「なので、わたしが行きます!」
ええー!
「なにを馬鹿な事を言っておられるのですか。だいたい悠太を今から見つける方が大変です。諦めてください」
「悠太くんなら精霊を目印に探せばいいだけでしょ。簡単じゃない」
「ヴェールの街ならともかく、街の外でなんて無理だよ。探せるとしたらクオンだけだよ」
「チッ、クロも役に立ちませんね。がっかりですよ」
マルデル様、お口が悪いですよ、下品です。
「そんな事を言うなら、フーが見つければいいじゃん。あっちで覗いてた時みたいにさ」
「結界の外に出たのに、そんなストーカーの様な真似はできないでしょ」
ストーカーの意味が分かりませんが、なんとなく察せます。
「でも、なんでクオンは悠太くんの居場所がわかるのかしら」
「なんでも匂いでわかるそうです。まあ子供の言うことですから本当かは知りませんが」
まさに悠太探知妖狐ですね。私が欲しいです。
「でも、クオンは離れているのに、悠太くんが戦場で危ないのを察知して、大騒ぎしてたのよね。その時は私も誰も信じてなかったけど」
「やっぱり名付けも関係してるんじゃない。それにユータを追ってこっちまで渡って来たくらいだしさ。なにか深い絆があるのよ、きっと」
「クロ、だから深い絆があるって前にわたしが言ったでしょ。クオンを今のうちに、もっと手懐けておかないと駄目ね」
なんという女神らしさのない、狡猾さなのでしょう。
「そこら辺はスクルドが上手くやったよね」
「なんの事ですか、クロノア」
「惚けてもダメだからね。わたしの目はごまかせないよ」
貴方の目は節穴だらけですけどね。
「ああそうだ。盗賊被害のあった村々を庇護下に置いて欲しいと悠太くんがお願いしてるらしいから、そうしてあげて。詳しくはこの報告書にあるから、エイルにやらせておいて。それと同時に、ロータを領主代行の任を解いて、エイルを領主代行に任命するわ」
「マルデル様、急に何故ですか。今回の件での罰なのですか」
「違うわよ、ヒルデ。これはロータの希望よ」
「そうですか。でもこれからロータは」
「もう、最後まで話を聞いて。ロータは本人の希望により、悠太くんの専属護衛とします。スクルド、不満そうな顔をしても駄目よ、異議は認めませんからね」
「なんでロータをそんなに甘やかすのですか、マルデル様」
「別に甘やかしてないわ。ロータは数少ない悠太くんの友人だからね。伴侶の友人を無碍にはできないでしょ」
それって、実質甘やかしてませんか。
「なら、私も悠太様の補佐をさせて頂けませんか」
スクルドがこんなに引き下がらないのは初めてですね。
「スクルド、あなた本気で言ってるの。悠太くんの恋人になりたいんじゃないの」
「私は身の程を知っています。そこまで欲深くは求めません。悠太様のお力に成れればそれで充分です」
「……そう。なら、あなたを悠太くんの補佐兼専属メイドに任命します」
おはようから、おやすみまでですか。本当にお優しいですね。
「マルデル様、ありがとうございます」
「悠太くんのお世話をお願いしますね。けど、いつでも恋人になりたかったら、なっていいからね」
「はい、マルデル様」
「ねえヒルデ。わたし達ユータにやる事がなくなっちゃうね」
「貴方はまだ戦闘のサポートがあるでしょう。私は、もう何も役目はありませんが」
「ヒルデ。あなたは私と一緒で、悠太くんの帰る場所という大事な役目がありますよ」
そうですね、そう在りたいものです。
◇
盗賊を倒した次の日、俺達は村の片付けや家屋の修復を手伝った。
だが一日では終わらず、四日程滞在して手伝いを続けた。
その間にこの辺りの村の状況などを聞き、風の公国からの支援や援助がほぼ無い事を知った。
風の公国から離れ、ヴェールの庇護下に入りたいと願われた俺は、ロータにお願いした。
俺の友人てあるロータは快く涙を流しながらヴェールに報告書と一緒に嘆願書を添えてくれた。
相変わらずの頼りになる友人だ。
かくして村を離れて、また冒険にでる。
なぜかロータも護衛をするとついてくる。
俺は一生懸命帰るよう説得したが、足にしがみついてお願いされ、ミツキの援護もあり渋々了承した。
まあ、少し騒がしくなったが良しとしよう。
だが、ロータだけ馬に乗ろうとしたので、引き摺り下ろしてミツキとクオンを乗せた。
また嬉し泣きをしていた。
俺と並んで歩くのがそんなに嬉しいとは思わなかったよ。
「悠太様は意地悪だ。私の馬なのに……」と、言っていたのは聞かなかった事にしよう。
まさか俺の友人が、年下の女の子を歩かせて、自分だけ馬に乗るようなサイテーな人間だとは思いたくないからね。
マルデル様がロータの報告書を読み終えると、私に内容を教えてくれた。
少し、お怒りになられているようだ。
「戦えたのですね、悠太は」
「村の住民が傷付けられていたら、悠太くんは見過ごせないでしょうね」
「元勇者なんて、ユータのリハビリにもならないよ。相手が弱すぎて今頃後悔してんじゃないの」
「そうね、ロータの報告通りなら。怒りに身を任せてしまったと、悔いているそうよ」
この口調はかなりお怒りのようです。
「それで何故、ロータは戻って来ないのですか」
「悠太くんの護衛の任に就くと書いてあるわ。ロータ、羨ましすぎです。しかも、悠太くんが弱っている時に!」
ああ、そっちでしたか。悠太の事だと相変わらずのポンコツぶりで安心しました。
「でもさ。なんでロータが討伐なんて行ったの。領主代行なのに」
「人手が足りないと自ら行きました。もっともストレス解消の方がメインでしょうけど。こんな事なら私が行けばよかった……」
「なに言ってるの、スクルド。あなた計画の責任者よ」
スクルドも最近、悠太の事になるとダメですね。
「で、ですが、」
「ですがも何もないでしょ。あなたはあなたの仕事をなさい」
女神らしいです、マルデル様。最近はたまにですが。
「なので、わたしが行きます!」
ええー!
「なにを馬鹿な事を言っておられるのですか。だいたい悠太を今から見つける方が大変です。諦めてください」
「悠太くんなら精霊を目印に探せばいいだけでしょ。簡単じゃない」
「ヴェールの街ならともかく、街の外でなんて無理だよ。探せるとしたらクオンだけだよ」
「チッ、クロも役に立ちませんね。がっかりですよ」
マルデル様、お口が悪いですよ、下品です。
「そんな事を言うなら、フーが見つければいいじゃん。あっちで覗いてた時みたいにさ」
「結界の外に出たのに、そんなストーカーの様な真似はできないでしょ」
ストーカーの意味が分かりませんが、なんとなく察せます。
「でも、なんでクオンは悠太くんの居場所がわかるのかしら」
「なんでも匂いでわかるそうです。まあ子供の言うことですから本当かは知りませんが」
まさに悠太探知妖狐ですね。私が欲しいです。
「でも、クオンは離れているのに、悠太くんが戦場で危ないのを察知して、大騒ぎしてたのよね。その時は私も誰も信じてなかったけど」
「やっぱり名付けも関係してるんじゃない。それにユータを追ってこっちまで渡って来たくらいだしさ。なにか深い絆があるのよ、きっと」
「クロ、だから深い絆があるって前にわたしが言ったでしょ。クオンを今のうちに、もっと手懐けておかないと駄目ね」
なんという女神らしさのない、狡猾さなのでしょう。
「そこら辺はスクルドが上手くやったよね」
「なんの事ですか、クロノア」
「惚けてもダメだからね。わたしの目はごまかせないよ」
貴方の目は節穴だらけですけどね。
「ああそうだ。盗賊被害のあった村々を庇護下に置いて欲しいと悠太くんがお願いしてるらしいから、そうしてあげて。詳しくはこの報告書にあるから、エイルにやらせておいて。それと同時に、ロータを領主代行の任を解いて、エイルを領主代行に任命するわ」
「マルデル様、急に何故ですか。今回の件での罰なのですか」
「違うわよ、ヒルデ。これはロータの希望よ」
「そうですか。でもこれからロータは」
「もう、最後まで話を聞いて。ロータは本人の希望により、悠太くんの専属護衛とします。スクルド、不満そうな顔をしても駄目よ、異議は認めませんからね」
「なんでロータをそんなに甘やかすのですか、マルデル様」
「別に甘やかしてないわ。ロータは数少ない悠太くんの友人だからね。伴侶の友人を無碍にはできないでしょ」
それって、実質甘やかしてませんか。
「なら、私も悠太様の補佐をさせて頂けませんか」
スクルドがこんなに引き下がらないのは初めてですね。
「スクルド、あなた本気で言ってるの。悠太くんの恋人になりたいんじゃないの」
「私は身の程を知っています。そこまで欲深くは求めません。悠太様のお力に成れればそれで充分です」
「……そう。なら、あなたを悠太くんの補佐兼専属メイドに任命します」
おはようから、おやすみまでですか。本当にお優しいですね。
「マルデル様、ありがとうございます」
「悠太くんのお世話をお願いしますね。けど、いつでも恋人になりたかったら、なっていいからね」
「はい、マルデル様」
「ねえヒルデ。わたし達ユータにやる事がなくなっちゃうね」
「貴方はまだ戦闘のサポートがあるでしょう。私は、もう何も役目はありませんが」
「ヒルデ。あなたは私と一緒で、悠太くんの帰る場所という大事な役目がありますよ」
そうですね、そう在りたいものです。
◇
盗賊を倒した次の日、俺達は村の片付けや家屋の修復を手伝った。
だが一日では終わらず、四日程滞在して手伝いを続けた。
その間にこの辺りの村の状況などを聞き、風の公国からの支援や援助がほぼ無い事を知った。
風の公国から離れ、ヴェールの庇護下に入りたいと願われた俺は、ロータにお願いした。
俺の友人てあるロータは快く涙を流しながらヴェールに報告書と一緒に嘆願書を添えてくれた。
相変わらずの頼りになる友人だ。
かくして村を離れて、また冒険にでる。
なぜかロータも護衛をするとついてくる。
俺は一生懸命帰るよう説得したが、足にしがみついてお願いされ、ミツキの援護もあり渋々了承した。
まあ、少し騒がしくなったが良しとしよう。
だが、ロータだけ馬に乗ろうとしたので、引き摺り下ろしてミツキとクオンを乗せた。
また嬉し泣きをしていた。
俺と並んで歩くのがそんなに嬉しいとは思わなかったよ。
「悠太様は意地悪だ。私の馬なのに……」と、言っていたのは聞かなかった事にしよう。
まさか俺の友人が、年下の女の子を歩かせて、自分だけ馬に乗るようなサイテーな人間だとは思いたくないからね。
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