邪神様に恋をして

そらまめ

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邂逅

邪神様、眷属は思い出します

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 私はロータが抜けた第三軍をスルーズに任せて、近衞を含む精鋭二十騎でヴェールを立とうとした。
 ところが、何処から聞きつけたのかは分からないが、ロザミアが一緒に同行させて欲しいと頼みにきた。
 私の一存で決めてはならないとは思ったのだが、遠くから来たのに悠太には会えずヴェールに居るのは可哀想だと思い同行を許可した。


 レイヴが指揮する新たな城塞都市ラヴィックまでは馬で二日、馬車だと三日かかる。
 今回はマルデル様の泊まる天幕などを運ぶ関係から、馬車を含めた移動となった。
 また、今回の土の公国へは、マルデル様と先に同行したアルヴィドを除いた近衛隊十騎と、第一軍の精鋭十騎で向かう。
 ちなみにアルヴィドを筆頭として、屋敷で働くワルキューレを含むメイド五十人程が近衛隊に所属している。

 悠太と会えるのも、一緒にまた遠出をできるのも嬉しいのだが、マルデル様の身の安全の事などを考えると胸中は複雑であった。
 あまり私の勘は鋭い方ではないが、どうしても両手を上げて行く気にはなれないでいた。



 三日の移動を経てラヴィックに到着した。

 レイヴの執務室が何やら騒がしかったが、ドアを開けて中に入る。

「ですから、マルデル様。お考え直しください。レイアーの所へなんて、行くのはおやめ下さい」

 はあ、まだ言ってるのか。エイルも本当にあきらめが悪い。

「行くと、わたしが決めたのです。エイル。あなた達は、わたしの後を黙って着いてくればいいだけなのです」
「しかし、マルデル様、」
「しかしもでももありません。いいですか、わたしは豊穣を司る女神。わたしが先に立って歩かなければ、誰が先に歩くというの。これ以上駄々を捏ねるなら、お仕置きしますよ」


 ああ、この御方は本当に変わられていない。
 以前の世界の事を思い出します。

『わたしがこの枯れ果てた大地を歩く事で、大地にまた草花が芽吹き豊かになるのよ。ならば、誰よりも先に歩かなくてはいけない。わたしは飢える子らを豊穣の大地に導かなければならないのだから』

 わたし達にそう言って、御身は汚れた大地を躊躇なく先に歩かれていかれましたね。
 御身が大地を一歩踏みしめるたびに草花が芽吹いていく。
 その素晴らしき光景を思い出します。


「は、はい。御身の御心のままに」

「ヒルデ、やっと来たのね。もうほんと待ちくたびれたわ。エイル達がうるさくてうるさくて」
「そうでしたか。お待たせして申し訳ありませんでした」

 マルデル様は口を尖らせて不満を口にした。
 けど本当は、微塵も不満には思っていないのでしょう。

「ヒルデ、明後日にはここを出立します。エイルとレイヴが口煩いので」
「はい、マルデル様の仰せのままに」

 そう言って無邪気に微笑み、席を立った。

「ではわたしは部屋に戻るわ。ヒルデ、後の事はお願いしますね」

 あ、ロザミアの件を伝えるのを忘れていました。



 ◇



 俺とエドガーは狩に出ようと準備をしていると、突然不意に後ろから抱きつかれた。

「やっと会えましたね、ゆう」

 その声は、まさか、ロザミアか。その慎ましい胸にも覚えがある。

「よくここまで来たな。会えて嬉しいよ。でも、すぐにまた土の公国に行くんだよな、ちょっと残念だな」
「私も一緒に同行しますから大丈夫です」

 はい? 言ってる意味がよく分かりませんね。
 なんでマルデルのお仕事にロザミアが一緒に来るの。
 そんな全員集合はちょっと困るなあ。俺の手には余る。

「何を心配してるのか分からないけど大丈夫、順番は決めてあるから安心して」

 だっは、ロザミアのウインクが眩しい。
 でも、順番ってなんだ。ひょっとして俺はたらい回しにされるのか。すごく不安でしかない。

「悠太、なんでロザミアがここにいるんだ!」
「ん、だって俺の恋人だもん。そりゃあ居るよ」
「お前って奴は、魔族にも手を出して、ほんと見境ない奴だな。絶対に妹はお前の毒牙には、イテッ!」
「兄さん、へんな事は言わないで。想像しないで」

 シスコンエドガーはマチルダに頭を剣の鞘で叩かれた。
 頭を抱えて蹲りながら、エドガーはマチルダを見た。

「俺はお前の為にだな、イタッ!」

 先程より強く鞘で叩かれた。
 あっ、これは益々お馬鹿になりますな。
 まあとっくに馬鹿ですけど。

「君、狩は中止。マルデル様が呼んでるよ」
「え、ほんと。ならロザミア一緒にいこうか」

 二人で歩きだすと、ロザミアが腕を組んでもたれ掛かる。
 すると後ろからエドガーの悲鳴が聞こえてきた。


「や、やめろ! 俺に八つ当たりをするなっ!」

 なんの事かは分からない、分かりたくはないが、本当に仲の良い兄妹だ。
 うん、俺は一人っ子だから、ほんと羨ましいよ。
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