邪神様に恋をして

そらまめ

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新婚編

邪神様、初披露です

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 はぁ、なんだよ、この大所帯は。
 マルデルと悪ノリしたのはいいけど、なんか新婚旅行が台無しにされたよな。
 しかし、マルデル監修の旅芸人は見応えあるな。

「ヒルデ、もっと色っぽくだよ! あ、ロータもっと艶っぽく踊って!」

 中々に厳しい稽古が続いている。おかげで新婚旅行は中断中だ。

「凛ちゃん、恥ずかしがらずにもっと足を高くだよ! マチルダ、もっと表現を豊かに! セリーヌも照れないで!」

 うむ、厳しい。だが、かなりの目の保養だ。

「スクルドとロザミアはその調子だよ、いいよ二人とも!」

 あの二人はたしかに筋がいい。踊りが上手いのもあるが、とてもエッチだ。
 しかし、それよりも護衛兼、演奏隊のあの三人は上手すぎるだろ。それにミツキも歌がとても上手い。

 そして、俺とクロノアは料理係となっていた。
 おかげでクロノアも料理がメキメキと上達してきた。

 たが、そんな事はこの一座にとって些細な事なのだ。

 うちの花形スターはなんと、クオンなのだ!
 とにかく、ミツキとデュエットしながら舞い踊る様は、なんとも言えないほどに尊いのである。
 皆、クオンに夢中になり釘付けだった。



 そんな厳しい特訓を経て、俺たちの旅は再開した。

 最初に目指していた村に着いたが思っていたよりは小さな村だった。しかも、魔族の外見が人と違いがないのに驚いた。
 てっきりツノとか、キバとかが生えてると思っていたので少しだけがっかりした。
 その事をマルデルに話したらガイドブックにもそう書いてあるよ、と言われて恥ずかしくなったりもしたが。
 けど、獣魔族というのも中にはいるらしい。この村にはいなかった。


「みんな、夜の舞台に向けて、ちゃんと準備してね」

 俺達は村の外れの空き地で舞台の準備をした。
 といっても、馬車が舞台に様変わりする仕様になっているので、そんなに手間ではなかった。
 それより大変だったのは馬車の裏にテントを設営してるのだが、それを見えない様に隠す為、布を張り巡らせることだ。
 等間隔に木の棒を打ち付けて、それに布を張ってと本当に辛かった。
 別に見えてもいいだろうと、マルデルに言ったのだが、やたらこだわりがあるようで却下されるなど、マルデル舞台監督は妥協を一切許さない、厳しい舞台監督だった。

 ああ、なにやってんのかな、俺。
 そんな事を思いながら、準備を進めた。


 そして初公演が行われた。
 なんとお年寄りから子供まで大勢の村人が見に来てくれた。たぶん料金はチップのみなので、気に入らなければ払わなくてもいいという事が理由なのだろう。とにかく大盛況だった。

 俺はというと、クロノアと一緒にお酒や飲み物、串焼きを販売していた。
 それはもう大忙しで、おそらく俺たち二人が一番忙しかったと思われる。なにせ、舞台など見る暇なんてなかったのだから。

「ユータ、もうわたし限界だよ」
「よし、クロノア、いま最強の助っ人を召喚しよう」
「え、そんな人いるの」

 こういうこともあろうかと事前に打ち合わせ済みだった。

「ああ、ケンカすんなよ。アンジュ、シェリー頼む手伝ってくれ」
「はい、我が王よ。お手伝いいたします」

 アンジュとシェリーはテキパキと働いて、次々と売りさばいていく。おお、これは逸材だ。
 しかも、小さい時は分からなかったが、大人バージョンになるとスタイルも良くて美しいのが判明した。
 まあ、顔はきれいなだって思ってましたよ、もちろん。

「さすがユータ、これで一気に楽になったよ」

 二人はクロノアと共に大人気看板娘となって、ゆうたぁーずバーは売り切れ御免の大盛況で早々に早仕舞いとなった。

 俺たち四人は心地よい疲れの中、明日のミーティングを行い、軽く食事をしながら酒を飲んだ。
 すっかり舞台の事など忘れて四人で盛り上がっていた。

「なあ、その王とか王様とか禁止な。ユータでも悠太でも好きなように名前を呼んでくれよな」
「はい。では悠太、でよろしいでしょうか」
「おお、なんでもいいぞ、渾名でもいいしな」

 とまあ、二人はクロノアともすっかり仲良くなったし、ほんと良かったよ。
 俺は綺麗な女性に囲まれて飲みすぎたせいなのか、疲れも溜まっていたのか途中で酔って寝てしまった。


 ふと目が覚めると、月明かりの下、マルデルが歌を口ずさみながら膝枕をしてくれていた。
 俺は起きた事を悟られないように彼女の歌を聴いた。

 ほんと、いい声だよな。癒されるなぁ。

 思わず彼女にスリスリしてしまった。
 くすぐったかったのか、彼女は少し声を出して驚いた。

「もう、悠太くんのエッチ」
「だって、マルデルがとても可愛いからしょうがないよ」
「そんな事を言ってもダメだよ。騙されないんだからね」

 そう言いながらも、俺の頭を優しく撫でてくれた。

「ねえ、また歌ってくれないかな。俺、マルデルの歌が大好きなんだ」
「なんか、そうしてリクエストされると子守唄みたいだね」
「そうかな。でもこんなに癒されるなら子供でもいいかな」

 彼女はまた歌いはじめた。
 とても優しくて、温かい歌を。
 ああ、ほんと、マルデルの歌声は最高に素敵だ。

 そしてまた、いつの間にか眠ってしまった。
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