邪神様に恋をして

そらまめ

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新婚編

秘密戦隊、あかつき、始動します!

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 話が横道に逸れすぎて忘れているかもしれないが、現在、野盗の調査中なのを思い出して欲しい。
 俺達はスクルドを中心に対策と作戦の立案をしていたが、ひょんな事から野盗の本拠地を探せるのではないかと気付いた。

「なあ、シェリー。おまえ野盗を探せないか」
「楽勝ですよ、悠太様。でも、マナリアにも協力してもらってもいいですか」

 話しかけるとすぐに現れたシェリーは簡単に請け負ってくれた。おい、そんな気軽に散歩でも行くかのように言ってるけど大丈夫なのか、ほんとに。

「風と土の元大精霊を甘くみないでください。わたし達から隠れることなんて、悠太様と女王様以外いませんよ」

 ロザミアに劣らずとも言える慎ましい胸をポンと軽く叩いてアピールした。
 うむ、これは信用できるな。

「なら、シェリー、マナリア、頼んだぞ」

 二人はそう言ってどこかへ消えた。
 だが、夜のゆうたぁーずバーの仕事にはちゃんと来ていた。

「もう悠太様、わたし達がわざわざ探すなんて事はありませんよ。他の子たちに任せるに決まってるじゃないですか、もうやだなぁ」

 と、軽く肘鉄を喰らった。
 やっぱりこいつらは基本いい加減なんだな。全くもって真剣味にかける。
 しかし、公演が終わる頃には野盗の本拠地も判明した。

 やっぱり俺の見立てに間違いはないな。
 俺は得意げに皆を集めて作戦会議を始めた。



 深夜、俺達は天馬で空を駆ける。
 なぜ禁止されている天馬を召喚したかというと、村から二日ほど離れた場所に野盗の本拠地があるからだった。
 その為、マルデルは苦渋の決断の末に使用を許可した。

 いえ、あっさりマルデルが自分から言いだしました。
 彼女のこういった柔軟さには恐れ入る。だがクロノア曰く、これが女神の気ままさだよ、と、呆れていた。

 気ままでもいいじゃないか、かわいければ。


「ここって、まだ残ってたんですね」
「ええ、随分と傷んでますが、懐かしいですね」

 ロータとスクルドがこの場所を知っているようだった。
 というか、マルデル始め、ワルキューレ達は知っていた。

「え、ここ知ってるの」
「ええ、私達の拠点の一つでしたから」
「でもあまり大きくはない方ですけどね」

 はあ、だから洞窟にしてはちゃんと人の手が入ってるのか。それに頑丈そうだし。

「ここなら内部の事は分りますからラクっすね」
「おい、ロータ。あれからかなりの時が経ってるんだ。油断は禁物だぞ」

 俺はビシッとリーダーらしくロータに注意した。
 あ、もう副リーダーでした。

 逃げ道としての隠し通路があるらしく、俺達は三つに分かれる事にした。
 正面から堂々と入るのは、俺とマルデル、クロノア、クオン、マチルダ、スクルド、アルヴィド、そしてロータだ。
 ロータはなんと駄々を捏ねてヒルデと変わってもらった。

 そしてヒルデ、凛子、ロザミア、レイヴは隠れ通路から潜入し、残りのエイル、ミツキ、セリーヌは入り口で待機してもらう事にした。



 そして俺達は三班に分かれて行動を開始した。
 華麗に見張りを一撃で気絶させると入り口の頑丈そうな門を刀で斬り刻んだ。そう、神刀マルディールだ。
 やつには最近浮気の疑惑も掛かっているが、今はちゃんと俺の手元にある。

 そしてそのまま中に踏み込んで、俺とクオン、マチルダは特訓の成果を披露する。

 俺は華麗に右手を斜め上にピンと伸ばしポーズをとる。それに続いてマチルダが俺と並んで対称のポーズをする。
 そこにクオンがクルリと一回転して、俺とマチルダの肩の上に立った。

「正義の味方、秘密戦隊あかつき参上!」
「くらえ、せいぎのてっつい。ようこちゃん、どろっーぷきっく!」

 クオンが必殺技を野党の顔にお見舞いした。
 続いて俺が必殺技を繰り出す!

「喰らえ、佐藤百烈拳!」

 華麗な高速パンチを連続して野盗へ叩き込んだ。
 そしてマチルダが俺に続いて必殺技を披露する!

「いけ、旋風斬!」

 マチルダの振り下ろした剣から凄まじい旋風が放たれると、野盗の武器を持つ手が切断された。

「悪党共、観念しやがれ!」

 そこでまたさっきと同じヒーローポーズをとった。
 ふふふ、決まったぜ、格好いいぜ!

「ねえ、ユータ。みんなもう先に行ったよ」

 振り返ると、マルデルの肩に座っているクロノアからのツッコミだった。

「悠太くん、あまり遊んでちゃダメだよ。それに秘密戦隊じゃなくて秘密結社だからね」

 マルデルにも無表情で叱られた。
 あれれ、時代は俺に追いついたんじゃなかったのか!

「えええ、マルぅ、クオンがんばったのに」
「クオンの妖狐ちゃんドロップキックはカッコよかったよ」

 クオンは嬉しそうにしっぽを振ってマルデルに抱きついた。
 その光景に俺とマチルダは顔を見合わせて、しょんぼりした。


 なぜだ! あんなにも好評だったじゃないか!

 俺の心の叫びは、心の内にちゃんと秘められた。
 気を取り直して、スクルド達に合流すべく走りだした。
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