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新婚編
邪神様、朝の目覚めは穏やかに
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「悠太様、そろそろ起きてください」
う、うう、まだ眠いよ。
「アンジュ、そんな優しく言ってもダメだよ。こうするんだよ!」
イテッ、な、なにすんだよ、シェリー!
「いつまで寝てるんですか。さっさと起きてくださいよ」
あ、ああ、でも寝てろと言ったり、起きろと言ったり、いい加減すぎるぞ。
「ダメ、まだ寝ぼけてる。言動がいつもに増しておかしい」
「フレア、回復してる間に頭がおかしくなったのかな」
「メア、それはさすがにないでしょう」
「なら、あれですね。刺されたショックで、あほになったんですよ」
「あははは、マナリア、それは言い過ぎだよ」
「ではあれでは、お漏らしし過ぎて現実逃避してるとか」
「なにそれ、ウェンリィおもしろすぎでしょ、あははは」
おい、お前たち、俺を馬鹿にするのもいい加減にしろよ。
だいたいなんだ、あほとか、現実逃避とか、失礼すぎるだろ。
「嫌なら早く起きてください。女王も寂しがっていましたよ」
なに、それは緊急事態だな。よし、起きるぞ!
「待ってください。これだけは覚えていてください。絶対にまだあれに触れてはいけませんよ」
ああ、アンジュ。忠告ありがとな。
◇
目を開けると、なぜか俺の部屋だった。
そして、何気に腕が痺れる。
ふと、その痺れる腕に目をやると、マルデルの小さな頭らしきものが布団の隙間から見えた。
ん、これはどういう状況なんだ。
俺ってたしか治療中だったよな。
まぁいいか。マルデルだし、寂しかったんだな。
俺は彼女を起こさないように、静かにこっそり布団をめくって、彼女の寝顔を眺めた。
はぁ、長いまつ毛。なんてかわいい、ふつくしい寝顔なんだ。これはいつまでも眺めていられるな。
しかも、いい匂いだな。寝起きにご褒美かよ。
俺がそうしてマルデルをしばらく眺めていると、彼女は薄目を開けて、俺を見るなり勢いよく飛び起きた。
「悠太くん!」
そして勢いよく抱きついてきた。もちろん、体力ゼロの俺はそのまま倒れた。
彼女に頬をスリスリされて、もみくちゃにされた。
寝起きにしては過剰なスキンシップだった。
「マルデル、そんなに激しく動いたらお腹の子供がびっくりしちゃうよ」
彼女は一瞬キョトンとしてから思い出したようにベッドに座り直して、お腹を優しく撫でた。
「ごめんね。ママ、嬉しくてつい、はしゃぎ過ぎたよ」
ほんと、はしゃぎ過ぎだよ。
「悠太くん、もう大丈夫なの。痛くないの」
「うん、みんなのおかげで、もう痛くないよ」
そう言って元気なところをアピールしようとベッドから立ち上がった瞬間、すぐに転んでベッドから落ちた。
おい、何回このくだりを繰り返すんだ。しつこいぞ。
「ちょ、っと、悠太くん大丈夫!」
マルデルは俺を抱き起こして、ベッドに座らせてくれた。
「もう、いい加減、学習してよね。ずっと寝てたんだから体も弱ってるんだよ」
「はい、ごめんなさい。もうしません」
「もうしません、じゃありません。二度とあんな深手は負わないでください」
「はい、約束します」
「悠太くんの約束は、この世でいちばん信用ないからね。ちゃんと信用を取り戻してください」
「はい、がんばります」
ご褒美から一転、怒られた。
でもまあ、仕方ないよね。
「悠太くん、お腹空いてない。なにか食べられそうかな」
「うーん、お肉入りのスープが良いかな」
「うん、じゃあ今すぐ用意するね」
彼女は身重と思えないほど軽快に部屋から出ていった。
なんであんなに元気なんだ。
やっぱり女神パワーなのか、あれも。
そうだ、考えたらダメだ、感じるんだ、俺。
「悠太、思ったより元気そうで良かった」
「佐藤くん、心配したんだから」
ぞろぞろとヒルデと凛子を先頭に部屋に入ってきては、俺に笑顔で小言を言ってきた。
ベッドを皆に取り囲まれて賑やかに談笑した。
「はい、みなさん。悠太様のお食事をお待ちしましたので、どいてください」
スクルドがたくさんの種類の食事を運んできてくれた。
そしてなぜか後ろでマルデルが誇っていた。
「悠太くん、わたしの特製スープを召し上がれ、だよ」
フッ、そっか、そっか。マルデルの手料理か。
「うん、有り難くいただくよ」
俺はヒルデの肩に掴まりながらテーブルまで歩いて椅子に座った。
もうすでにマルデルはスープをスプーンですくい、ふーふーしてくれていた。
「はい、悠太くん、あーん」
一口サイズのお肉とスープを口に入れた。
あ、熱いけど、美味しい。
「どお、美味しいかな」
少し不安そうな彼女に満面の笑みで答えた。
「うん、とても美味しいよ!」
彼女は一転、花が咲いたような笑顔になって喜んだ。
「良かったぁ、特訓した甲斐があったよ」
「そうですよ、悠太様。マルデル様は妊娠してからずっと、お料理の勉強に励んでいたんです。もっと褒めてあげてください」
「もう、スクルド。そういう事は内緒の方がよくない。急に覚醒したとかの方がいいんじゃないかな」
「え、フレイヤ、自分で特訓したって言ったじゃん。なに言ってんの」
「あ、そっか。ならダメか」
そのマルデルの一言で笑いがおこった。
皆が笑顔になり、次々と俺の口に食べ物を運んでくる。
俺は一生懸命、よく噛んで、よく食べた。
ああ、みんなの笑顔に囲まれて賑やかな食事は格別だ。
俺がこんなに幸せでいいのかな。
愛する家族に囲まれて、そして愛されて。
こんな幸せが、ずっと続きますように。
俺は、そう願った。
◇
食事の後、無理矢理裸にされて風呂に入れられた。
恥ずかしい、また辱められた。
しかも、全員一緒にだ。
なぜこうも、うちの女性陣には奥ゆかしさというか、なんというか、そういったものに欠けるのだろうか。
ほんと、ミツキぐらい照れて布を体に巻いて欲しいよ。
ん、えええええ!
「な、なあ、なんでミツキもいるんだ。だ、ダメだろ」
俺は思わず顔を両手で隠してうつむいた。
「ははん、ユータ。さてはあんた、照れてるね」
「ば、ばっかやろう、違うよ。だってノア、ミツキだって好きでもない男と一緒に、なんて嫌だろうが」
やばい、激しく動揺してきた。
というか、なんでこんな事になるんだよ。
俺は無慈悲な神に文句を言った。
俺はそんなにスケベじゃねえー!
「佐藤くん、今、好きでもない男と言った」
「はい、ミツキ。あなたは悠太くんの事は嫌いなの」
ミツキは顔を赤らめて、一度大きく息を吸って吐いた。
「私は、ゆうたが大好きです!」
え、えええええ!
なにそれ、っていうか、こんな流れでそんな事を言っていいの。
俺は考える事をやめて、感じてみた。
結果、俺は急に目眩がして辺りが暗くなった。
「あ、ちょっと悠太くん大丈夫!」
「だから、回復直後にはやめた方がいいと」
「と、とにかく、みんなで悠太くんをベッドまで」
「ああ、ユータが白目をむいてるよ!」
「え、エイルを、誰かエイルを呼んでぇー!」
う、うう、まだ眠いよ。
「アンジュ、そんな優しく言ってもダメだよ。こうするんだよ!」
イテッ、な、なにすんだよ、シェリー!
「いつまで寝てるんですか。さっさと起きてくださいよ」
あ、ああ、でも寝てろと言ったり、起きろと言ったり、いい加減すぎるぞ。
「ダメ、まだ寝ぼけてる。言動がいつもに増しておかしい」
「フレア、回復してる間に頭がおかしくなったのかな」
「メア、それはさすがにないでしょう」
「なら、あれですね。刺されたショックで、あほになったんですよ」
「あははは、マナリア、それは言い過ぎだよ」
「ではあれでは、お漏らしし過ぎて現実逃避してるとか」
「なにそれ、ウェンリィおもしろすぎでしょ、あははは」
おい、お前たち、俺を馬鹿にするのもいい加減にしろよ。
だいたいなんだ、あほとか、現実逃避とか、失礼すぎるだろ。
「嫌なら早く起きてください。女王も寂しがっていましたよ」
なに、それは緊急事態だな。よし、起きるぞ!
「待ってください。これだけは覚えていてください。絶対にまだあれに触れてはいけませんよ」
ああ、アンジュ。忠告ありがとな。
◇
目を開けると、なぜか俺の部屋だった。
そして、何気に腕が痺れる。
ふと、その痺れる腕に目をやると、マルデルの小さな頭らしきものが布団の隙間から見えた。
ん、これはどういう状況なんだ。
俺ってたしか治療中だったよな。
まぁいいか。マルデルだし、寂しかったんだな。
俺は彼女を起こさないように、静かにこっそり布団をめくって、彼女の寝顔を眺めた。
はぁ、長いまつ毛。なんてかわいい、ふつくしい寝顔なんだ。これはいつまでも眺めていられるな。
しかも、いい匂いだな。寝起きにご褒美かよ。
俺がそうしてマルデルをしばらく眺めていると、彼女は薄目を開けて、俺を見るなり勢いよく飛び起きた。
「悠太くん!」
そして勢いよく抱きついてきた。もちろん、体力ゼロの俺はそのまま倒れた。
彼女に頬をスリスリされて、もみくちゃにされた。
寝起きにしては過剰なスキンシップだった。
「マルデル、そんなに激しく動いたらお腹の子供がびっくりしちゃうよ」
彼女は一瞬キョトンとしてから思い出したようにベッドに座り直して、お腹を優しく撫でた。
「ごめんね。ママ、嬉しくてつい、はしゃぎ過ぎたよ」
ほんと、はしゃぎ過ぎだよ。
「悠太くん、もう大丈夫なの。痛くないの」
「うん、みんなのおかげで、もう痛くないよ」
そう言って元気なところをアピールしようとベッドから立ち上がった瞬間、すぐに転んでベッドから落ちた。
おい、何回このくだりを繰り返すんだ。しつこいぞ。
「ちょ、っと、悠太くん大丈夫!」
マルデルは俺を抱き起こして、ベッドに座らせてくれた。
「もう、いい加減、学習してよね。ずっと寝てたんだから体も弱ってるんだよ」
「はい、ごめんなさい。もうしません」
「もうしません、じゃありません。二度とあんな深手は負わないでください」
「はい、約束します」
「悠太くんの約束は、この世でいちばん信用ないからね。ちゃんと信用を取り戻してください」
「はい、がんばります」
ご褒美から一転、怒られた。
でもまあ、仕方ないよね。
「悠太くん、お腹空いてない。なにか食べられそうかな」
「うーん、お肉入りのスープが良いかな」
「うん、じゃあ今すぐ用意するね」
彼女は身重と思えないほど軽快に部屋から出ていった。
なんであんなに元気なんだ。
やっぱり女神パワーなのか、あれも。
そうだ、考えたらダメだ、感じるんだ、俺。
「悠太、思ったより元気そうで良かった」
「佐藤くん、心配したんだから」
ぞろぞろとヒルデと凛子を先頭に部屋に入ってきては、俺に笑顔で小言を言ってきた。
ベッドを皆に取り囲まれて賑やかに談笑した。
「はい、みなさん。悠太様のお食事をお待ちしましたので、どいてください」
スクルドがたくさんの種類の食事を運んできてくれた。
そしてなぜか後ろでマルデルが誇っていた。
「悠太くん、わたしの特製スープを召し上がれ、だよ」
フッ、そっか、そっか。マルデルの手料理か。
「うん、有り難くいただくよ」
俺はヒルデの肩に掴まりながらテーブルまで歩いて椅子に座った。
もうすでにマルデルはスープをスプーンですくい、ふーふーしてくれていた。
「はい、悠太くん、あーん」
一口サイズのお肉とスープを口に入れた。
あ、熱いけど、美味しい。
「どお、美味しいかな」
少し不安そうな彼女に満面の笑みで答えた。
「うん、とても美味しいよ!」
彼女は一転、花が咲いたような笑顔になって喜んだ。
「良かったぁ、特訓した甲斐があったよ」
「そうですよ、悠太様。マルデル様は妊娠してからずっと、お料理の勉強に励んでいたんです。もっと褒めてあげてください」
「もう、スクルド。そういう事は内緒の方がよくない。急に覚醒したとかの方がいいんじゃないかな」
「え、フレイヤ、自分で特訓したって言ったじゃん。なに言ってんの」
「あ、そっか。ならダメか」
そのマルデルの一言で笑いがおこった。
皆が笑顔になり、次々と俺の口に食べ物を運んでくる。
俺は一生懸命、よく噛んで、よく食べた。
ああ、みんなの笑顔に囲まれて賑やかな食事は格別だ。
俺がこんなに幸せでいいのかな。
愛する家族に囲まれて、そして愛されて。
こんな幸せが、ずっと続きますように。
俺は、そう願った。
◇
食事の後、無理矢理裸にされて風呂に入れられた。
恥ずかしい、また辱められた。
しかも、全員一緒にだ。
なぜこうも、うちの女性陣には奥ゆかしさというか、なんというか、そういったものに欠けるのだろうか。
ほんと、ミツキぐらい照れて布を体に巻いて欲しいよ。
ん、えええええ!
「な、なあ、なんでミツキもいるんだ。だ、ダメだろ」
俺は思わず顔を両手で隠してうつむいた。
「ははん、ユータ。さてはあんた、照れてるね」
「ば、ばっかやろう、違うよ。だってノア、ミツキだって好きでもない男と一緒に、なんて嫌だろうが」
やばい、激しく動揺してきた。
というか、なんでこんな事になるんだよ。
俺は無慈悲な神に文句を言った。
俺はそんなにスケベじゃねえー!
「佐藤くん、今、好きでもない男と言った」
「はい、ミツキ。あなたは悠太くんの事は嫌いなの」
ミツキは顔を赤らめて、一度大きく息を吸って吐いた。
「私は、ゆうたが大好きです!」
え、えええええ!
なにそれ、っていうか、こんな流れでそんな事を言っていいの。
俺は考える事をやめて、感じてみた。
結果、俺は急に目眩がして辺りが暗くなった。
「あ、ちょっと悠太くん大丈夫!」
「だから、回復直後にはやめた方がいいと」
「と、とにかく、みんなで悠太くんをベッドまで」
「ああ、ユータが白目をむいてるよ!」
「え、エイルを、誰かエイルを呼んでぇー!」
応援ありがとうございます!
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