邪神様に恋をして

そらまめ

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未踏の大地へ(青年編)

prologue

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 我が王が亡くなった……
 いや、憎き神によって殺されたのだ。
 しかも魂を奪われ、その亡骸さえも奪われた。
 けれど、一人の少女が自らの犠牲も顧みず、一片の魂の欠片を奇跡的に取り戻してくれた。
 その命を賭した尊き献身が、王にも我々にも一縷の望みを残した。


 だが王が殺され、怒りと悲しみに染まった精霊達は、荒れ狂う厄災となり、世界に終焉をもたらす。


「王の友よ。貴方達もこの場所を護ると」
「ああ。約束したんだ。ここには彼が生きた証もあるしな」
「ええ。それに今世に限らず、来世でも必ず彼に付き従う、とね」
「だな。だから頼む。俺たち三人を彼等と共に、この地の護り人にしてくれ」
「お願い。何もかも奪われても尚、もし彼が転生出来たのならば、彼が決して迷わぬように届けてあげたいの。だから、」


「この世界が滅び、世界が生まれ変わった時、私たちがこの地を失わずにいられる可能性は限りなく低い。いえ、それこそ奇跡でも起こらぬ限り無理でしょう。それでも私たちと共に在ると、貴方達は願うのですか」

「ええ。それでも私は、彼との誓いを守りたいの。たとえそれが叶わないと分かっていてもね」
「ああ、その通りだ。やるだけやって駄目なら素直に諦めるさ」
「だな、足掻くだけ足掻いて、それでも駄目なら、その時は後悔なんてしないだろうしな。それにあの少女が命を賭けて望みを繋いでくれたんだ。俺たちがそれに応えずにどうする」

 この者達からは、我が王との強い絆や縁。そして神の強い加護を感じる。
 おそらく、この地に留まらなくとも、来世でも確実に我が王と巡り逢うのだろう。
 しかも、人ではなく、神として。
 それでも……


「わかりました。では共に、この地で王の帰還を待ちましょう」


 こうして私以外のものは、この地を守護すべく、長き眠りについた。
 私は我が王が帰還し、彼等が目覚めるまで、この地を護る。

 
 終焉の炎が激しくこの身を焼き尽くす……
 慈愛に満ちた再生の明かりが魂を照らし導く……

 そして新たな世界で私は復活し、皆の無事を知る。

 我が創世の神よ。
 この奇跡に、深く感謝致します。
 
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