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未踏の大地へ(青年編)
女神様、いつも側にいます
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こちらに来てから四年の歳月が過ぎた。
俺も二十歳となり、四児の父親となっていた。
まず長女のレイ、長男のレン、次女メイはもうすぐ二歳になり、三女のロージーは一歳になる。
皆、元気にすくすくと育ち、とても嬉しい限りだ。
俺はマルデルとレイ、レン、メイの三人と猫バ、いや、猫の戦車で人類未踏の大地と呼ばれる大陸を上空から下見をしていた。
「なんか日本を太っちょにした感じがする」
「それって似てるのは逆くの字型ってだけじゃないのかな」
俺の呟きにマルデルがすぐに反応して軽く否定された。
その彼女の様子からして俺を揶揄っていることは分かった。
「もう、あまり揶揄わないでくれよ。どうせ俺は発想が貧困ですよ」
「あは、もう、悠太くん拗ねちゃったの。かわいい」
「パパ、かわいい!」
おませなレイにまで追撃をくらった。
うちの子供達は周りに比べて少し成長が早い気がする。やはり女神様の子供だからなのだろうか。神様パワーはほんと侮れないな。
「ほら、マルデルが変なことを言うからレイが真似したじゃないか。俺は益々肩身が狭いよ。未だにヒモだし」
「あははは、パパ、ヒモ、ヒモだね!」
レン、お前まで意味も分からずに、そんな事を言うのか。
男同士の絆はどこにいったんだ。
「レン、パパにそんな事を言っちゃダメだよ。パパも頑張ってるんだからね」
「うん、ママ!」
やはり俺の味方は甘えん坊のメイだけだ。
そのメイは俺の膝の上で大人しくしている。いや、頭がコックリコックリしているので寝ているのか。
「悠太くん、スタート地点というか、拠点はちょうど真ん中辺りがいいよね。どっちにもいけるし」
そう言ってマルデルは沿岸にある平野を指差した。
たしかに拠点を構えるのも楽そうだし、港として船も接岸できそうだった。
「うん、いいかも。さすがはマルデルだね」
「じゃあ、あそこに降りてみようか」
「だね。下見してみないとね」
猫の戦車はなだらかに旋回しながら、ゆっくりと目的地に降りた。
俺はメイを抱きながら一足先に猫の戦車から降りて、人類未踏の大地を踏みしめた。
「よし、一番乗りだ!」
「もう、そんな急いで降りなくてもいいのに」
マルデルは二人の子供を抱えて降りようとしていたので、レンを彼女から受け取って抱っこした。
「ありがと、悠太くん。準備するからメイとレンをおろして」
俺はメイとレンをおろすとマルデルは紐を三本出して自分の腰に巻くと子供達の腰にそれぞれ巻いていった。
ん、なんだそれは。なんか犬の散歩みたいだな。
「悠太くんに似て、この子達はすぐに居なくなるからね。こうしないとダメなんだよ」
「ねえ、俺ってそんなにすぐに居なくなるかな。いつも側に居ると思うんだけど」
「自分の胸に手を当てて、よーく考えてみてください」
マルデルはそう言って口を隠してクスクスと笑った。
ああ、ほんとかわいい。
ああ、マルデル、かわいいよ。
俺はつい見惚れて揶揄われていることを忘れてしまった。
そう、何年経ってもバカップルなのだ。
いいんです。いつまでも気分は新婚なのだから。
「悠太くん、ここなら港も作れそうだし、あそこには屋敷とか建てられるんじゃないかな」
少し小高い場所を彼女は指差すと、そちらの方へ歩きだした。子供達も彼女の後を追って歩く。
なんか後ろから見ると、カルガモの親子みたいだな。
そう思いながら子供達の後ろを歩いた。
「あ、悠太くん、小屋は持ってきてる。もしあるなら設置していこうよ」
「うん。じゃあ、秘密のアジトを作ろうか」
「うん、作ろう!」
もはや俺たちはノリノリでワクワクしていた。
その場所に着くと、マルデルの見立て通り、大きな屋敷も建てられそうな開けた平地になっていた。
俺は魔法でちゃんと地面を平にすると、そこに小屋を設置した。また、小屋の周りも整地し、魔物除けの結界を張り巡らせた。
マルデルも女神様パワーなのか、魔法なのか不明だが、整地した場所に芝を敷いていた。
「はぁ、マルデルはそんな事も出来るんだ。すごいな」
「え、悠太くんにも出来るよ。こんなのは精霊にお願いすればいいだけなんだから」
そうなの、かな。
精霊って、そんな便利アイテム扱いなの。
「ママ、これいらないよ。あそびたいよ」
「はいはい。今ほどいてあげるよ。でもママから離れたらダメだからね」
「うん!」
マルデルは子供達の腰紐をほどいて解放すると、何やら半透明の結界を張った。
「マルデル、それは」
「うん。この外には出られないようにしたの。すぐどっかにいなくなるからね。パパみたいに」
「だから、いなくならないってば」
本当に信用ないな。そろそろ挽回しないとな。
俺はマルデルの為にテーブルと椅子を出して、子供達の遊びに少しでも快適に付き合えるようにした。
「マルデル。俺、柵を作ってくるね」
「うん。ケガしないように気を付けてね」
俺は土の魔法で胸壁を周りに張り巡らせていった。
一見簡単そうに思うかもしれないが、意外と難しい、というか集中力がいる。気を抜くとすぐに胸壁の高さが上下してしまうし強度も落ちてしまうのだ。
俺は額に汗を垂らしながら集中して胸壁を作っていった。
「悠太くん。小屋の中の遊び場は出来てるのかな」
「うん、ちゃんとリクエスト通りにしておいたよ!」
「そっか。ありがとう!」
おっといけない、集中が乱れた。
あと少しだ、がんばれ俺。
小屋の中には子供達の遊び場として転んでもケガをしないようにふかふかのカーペットと、大量のぬいぐるみやオモチャなど、そしてボールのプールをリクエスト通り用意していた。
「ふう、やっと終わった。けど、まだ門を作らないダメなのか。これはどうすればいいんだ」
「悠太様、私がやりましょうか」
マナリアが俺の肩の上に現れて、そう申し出てくれた。
「でも、どうするんだ」
「鉄を縦格子にするのであれば簡単に出来ますよ」
「ほう、それはすごいな。お願いします、マナリア様」
「悠太様、任せてください。おしゃれに仕上げてみせます」
彼女は門として開けていた所に行くと両手を突き出した。
すると、お洒落な、でも頑丈そうな、上部がアーチ状の美しい紋様を施した縦格子の門が一瞬で設置された。
「おお、なんか高級そうでお洒落な感じだな。さすがマナリア、見事なセンスだ」
「ふふふ、気に入ってもらえて良かったです。では、後ほど報酬を頂きますね」
ん、報酬ってなんだ。そんな決まりあったか。
「悠太様をお守りする事以外は別報酬ですから。ちゃんと後でキスしてもらいますからね」
「そんなルールいつ出来たんだよ。勝手に決めるな」
「もうお忘れになったのですか。約束はちゃんと守ってくださいね」
うーん。そんな約束した覚えはないが、俺が率先して約束を破るような事はできないよな。
「分かった。約束はちゃんと守るよ」
「はい。楽しみにしてますね」
そう言い残してマナリアは消えた。
最近の彼女達の要求は止まる事を知らない。
そのうち、俺は丸ごと食べられてしまうかも……
そんな危機意識を覚えながら、小屋の中にいるマルデルのもとへ向かった。
マルデルに出来栄えを見てもらうと、彼女は満足そうに喜んでくれた。その彼女の笑顔を見れただけで頑張った甲斐があった。
また、子供達が楽しそうに小屋の中で走り回って遊んでいる姿を眺めているだけで幸せに思えた。
うん、ロージーも連れてくれば良かったな。
でもまだ小さいからな。もう少し大きくなったらだな。
「悠太くん。今日はここでお泊まりしようか」
「うん。そうしようか。なら、夕食の準備するよ」
「私も手伝うよ。一緒につくろう」
俺は彼女とメニューを話し合いながら、仲良く楽しく料理をはじめた。
何気ない、こんな幸せが、とても大切なのだと思った。
うん。パパ、頑張るぞー!
俺も二十歳となり、四児の父親となっていた。
まず長女のレイ、長男のレン、次女メイはもうすぐ二歳になり、三女のロージーは一歳になる。
皆、元気にすくすくと育ち、とても嬉しい限りだ。
俺はマルデルとレイ、レン、メイの三人と猫バ、いや、猫の戦車で人類未踏の大地と呼ばれる大陸を上空から下見をしていた。
「なんか日本を太っちょにした感じがする」
「それって似てるのは逆くの字型ってだけじゃないのかな」
俺の呟きにマルデルがすぐに反応して軽く否定された。
その彼女の様子からして俺を揶揄っていることは分かった。
「もう、あまり揶揄わないでくれよ。どうせ俺は発想が貧困ですよ」
「あは、もう、悠太くん拗ねちゃったの。かわいい」
「パパ、かわいい!」
おませなレイにまで追撃をくらった。
うちの子供達は周りに比べて少し成長が早い気がする。やはり女神様の子供だからなのだろうか。神様パワーはほんと侮れないな。
「ほら、マルデルが変なことを言うからレイが真似したじゃないか。俺は益々肩身が狭いよ。未だにヒモだし」
「あははは、パパ、ヒモ、ヒモだね!」
レン、お前まで意味も分からずに、そんな事を言うのか。
男同士の絆はどこにいったんだ。
「レン、パパにそんな事を言っちゃダメだよ。パパも頑張ってるんだからね」
「うん、ママ!」
やはり俺の味方は甘えん坊のメイだけだ。
そのメイは俺の膝の上で大人しくしている。いや、頭がコックリコックリしているので寝ているのか。
「悠太くん、スタート地点というか、拠点はちょうど真ん中辺りがいいよね。どっちにもいけるし」
そう言ってマルデルは沿岸にある平野を指差した。
たしかに拠点を構えるのも楽そうだし、港として船も接岸できそうだった。
「うん、いいかも。さすがはマルデルだね」
「じゃあ、あそこに降りてみようか」
「だね。下見してみないとね」
猫の戦車はなだらかに旋回しながら、ゆっくりと目的地に降りた。
俺はメイを抱きながら一足先に猫の戦車から降りて、人類未踏の大地を踏みしめた。
「よし、一番乗りだ!」
「もう、そんな急いで降りなくてもいいのに」
マルデルは二人の子供を抱えて降りようとしていたので、レンを彼女から受け取って抱っこした。
「ありがと、悠太くん。準備するからメイとレンをおろして」
俺はメイとレンをおろすとマルデルは紐を三本出して自分の腰に巻くと子供達の腰にそれぞれ巻いていった。
ん、なんだそれは。なんか犬の散歩みたいだな。
「悠太くんに似て、この子達はすぐに居なくなるからね。こうしないとダメなんだよ」
「ねえ、俺ってそんなにすぐに居なくなるかな。いつも側に居ると思うんだけど」
「自分の胸に手を当てて、よーく考えてみてください」
マルデルはそう言って口を隠してクスクスと笑った。
ああ、ほんとかわいい。
ああ、マルデル、かわいいよ。
俺はつい見惚れて揶揄われていることを忘れてしまった。
そう、何年経ってもバカップルなのだ。
いいんです。いつまでも気分は新婚なのだから。
「悠太くん、ここなら港も作れそうだし、あそこには屋敷とか建てられるんじゃないかな」
少し小高い場所を彼女は指差すと、そちらの方へ歩きだした。子供達も彼女の後を追って歩く。
なんか後ろから見ると、カルガモの親子みたいだな。
そう思いながら子供達の後ろを歩いた。
「あ、悠太くん、小屋は持ってきてる。もしあるなら設置していこうよ」
「うん。じゃあ、秘密のアジトを作ろうか」
「うん、作ろう!」
もはや俺たちはノリノリでワクワクしていた。
その場所に着くと、マルデルの見立て通り、大きな屋敷も建てられそうな開けた平地になっていた。
俺は魔法でちゃんと地面を平にすると、そこに小屋を設置した。また、小屋の周りも整地し、魔物除けの結界を張り巡らせた。
マルデルも女神様パワーなのか、魔法なのか不明だが、整地した場所に芝を敷いていた。
「はぁ、マルデルはそんな事も出来るんだ。すごいな」
「え、悠太くんにも出来るよ。こんなのは精霊にお願いすればいいだけなんだから」
そうなの、かな。
精霊って、そんな便利アイテム扱いなの。
「ママ、これいらないよ。あそびたいよ」
「はいはい。今ほどいてあげるよ。でもママから離れたらダメだからね」
「うん!」
マルデルは子供達の腰紐をほどいて解放すると、何やら半透明の結界を張った。
「マルデル、それは」
「うん。この外には出られないようにしたの。すぐどっかにいなくなるからね。パパみたいに」
「だから、いなくならないってば」
本当に信用ないな。そろそろ挽回しないとな。
俺はマルデルの為にテーブルと椅子を出して、子供達の遊びに少しでも快適に付き合えるようにした。
「マルデル。俺、柵を作ってくるね」
「うん。ケガしないように気を付けてね」
俺は土の魔法で胸壁を周りに張り巡らせていった。
一見簡単そうに思うかもしれないが、意外と難しい、というか集中力がいる。気を抜くとすぐに胸壁の高さが上下してしまうし強度も落ちてしまうのだ。
俺は額に汗を垂らしながら集中して胸壁を作っていった。
「悠太くん。小屋の中の遊び場は出来てるのかな」
「うん、ちゃんとリクエスト通りにしておいたよ!」
「そっか。ありがとう!」
おっといけない、集中が乱れた。
あと少しだ、がんばれ俺。
小屋の中には子供達の遊び場として転んでもケガをしないようにふかふかのカーペットと、大量のぬいぐるみやオモチャなど、そしてボールのプールをリクエスト通り用意していた。
「ふう、やっと終わった。けど、まだ門を作らないダメなのか。これはどうすればいいんだ」
「悠太様、私がやりましょうか」
マナリアが俺の肩の上に現れて、そう申し出てくれた。
「でも、どうするんだ」
「鉄を縦格子にするのであれば簡単に出来ますよ」
「ほう、それはすごいな。お願いします、マナリア様」
「悠太様、任せてください。おしゃれに仕上げてみせます」
彼女は門として開けていた所に行くと両手を突き出した。
すると、お洒落な、でも頑丈そうな、上部がアーチ状の美しい紋様を施した縦格子の門が一瞬で設置された。
「おお、なんか高級そうでお洒落な感じだな。さすがマナリア、見事なセンスだ」
「ふふふ、気に入ってもらえて良かったです。では、後ほど報酬を頂きますね」
ん、報酬ってなんだ。そんな決まりあったか。
「悠太様をお守りする事以外は別報酬ですから。ちゃんと後でキスしてもらいますからね」
「そんなルールいつ出来たんだよ。勝手に決めるな」
「もうお忘れになったのですか。約束はちゃんと守ってくださいね」
うーん。そんな約束した覚えはないが、俺が率先して約束を破るような事はできないよな。
「分かった。約束はちゃんと守るよ」
「はい。楽しみにしてますね」
そう言い残してマナリアは消えた。
最近の彼女達の要求は止まる事を知らない。
そのうち、俺は丸ごと食べられてしまうかも……
そんな危機意識を覚えながら、小屋の中にいるマルデルのもとへ向かった。
マルデルに出来栄えを見てもらうと、彼女は満足そうに喜んでくれた。その彼女の笑顔を見れただけで頑張った甲斐があった。
また、子供達が楽しそうに小屋の中で走り回って遊んでいる姿を眺めているだけで幸せに思えた。
うん、ロージーも連れてくれば良かったな。
でもまだ小さいからな。もう少し大きくなったらだな。
「悠太くん。今日はここでお泊まりしようか」
「うん。そうしようか。なら、夕食の準備するよ」
「私も手伝うよ。一緒につくろう」
俺は彼女とメニューを話し合いながら、仲良く楽しく料理をはじめた。
何気ない、こんな幸せが、とても大切なのだと思った。
うん。パパ、頑張るぞー!
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