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未踏の大地へ(青年編)
女神様、露天風呂はいかがですか
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庭で露天風呂作りに精をだしていた。
魔法で穴を掘り、均してから清潔加工を施した石をタイル風に仕上げて張り付けた。
もちろん一人ではない。
我が親愛なる友人達に、無償で手伝ってもらった。
大事な事なのでもう一度言う。無償で、だ。
「ふう、思ったよりも早く終わったな。これもみんなのおかげだよ。ありがとな」
「はい。お役に立てて良かったです」
アンジュが代表して笑顔で返事をしてくれた。
うん。大人用の堀の深いお風呂と、子供用の浅いお風呂。我ながら良く出来たと思う。
何気に工作スキルが上がったように思っている。あの立体四目並べを作った時とは違うのだよ、俺は。
「悠太様、無償ってズルくないですか」
「シェリー、友人には無償で奉仕する事こそが美徳なんだ。なんでもかんでも見返りを得るようだと見捨てられるんだからな。気を付けた方がいいぞ」
「そうなんですか。見捨てられたくはないので気をつけます」
そう、俺は彼女達に奉仕の心得を説いたのだ。
最近やたら俗物的になってきた彼女達を正し、導くのも俺の役目だ。
まったく手の掛かる友人達だよ。
「あれ、下の方にゴブリンがいますけど倒してきますか」
「ん、シェリー、ゴブリンがいるのか」
俺はシェリーの教えてくれた方を見ると、浜辺近くの港町建設予定地をゴブリンが六体歩いていた。
これは領土侵犯だな。今後の為にも早速排除してこよう。
俺は神刀マルディールと聖剣クロノアール、通称クロノアソードを両手に持って下まで走って降りていった。
俺の接近に気付いたゴブリンが太い木の棒を構えた。
「あれ、なんかデカくないか。俺より一回りは大きいぞ」
間合いを詰めて袈裟斬りしようと刀を振り上げた時にそう気付いた。
まぁ、そんな事は後で考えるとして刀を振り下ろしたが、ゴブリンに見事に避けられた。
はやい。元々ゴブリンは俊敏なのだが更に速くなってる。
俺は横に避けたゴブリンに剣で追撃の突きを心臓を狙って放ったが、それも少し躱されて肩口に突きが入った。
チッ、侮れないな。さすが人類未踏の地ということか。
剣が刺さったゴブリンの背後から、仲間のゴブリンが左右別々に現れて木の棒を振り下ろしてきた。
俺は後方へ宙返りして避けるが着地した瞬間に石礫が飛んできた。それを落ち着いて刀で打ち払って難を逃れた。
おいおい、やけにいい連携プレイじゃないか。
これは真剣にやらないと、やられるな。
刀と剣にマナを流し、俺は力を解放した。
白金のオーラに包まれながら自身の力が向上していく事を実感した。
俺は先程よりスピードを上げて間合いを詰めると前に出ていたゴブリンを刹那に十字に斬り払い、そのまま足を止めずに後方の三体へ間合いを詰めた。
そしてすかさず炎を刀に纏わせ、更に炎で刀身を伸ばすと、一度に三体を薙ぎ払った。
しかしその間に、二体のゴブリンには逃げられてしまった。
うーん、賢すぎる。今のは本当にゴブリンだったのだろうか。
「悠太様、お見事です。同化せずに力の解放をよくここまで上達させましたね」
「ああ、アンジュ達の厳しい特訓の成果だな。けど、これ本当にゴブリンなのか」
死んでいる通常とは違うゴブリンを間近で見下ろして、その違いを確かめていた。
体も大きいし、顔つきもなんとなくだが少し賢そうな感じがした。
「この地だけの特殊な個体なのでしょう。過酷な生存競争により進化したのではありませんか」
なるほど。こんなヤバいのが増えて、俺達の大陸に渡って来たらとんでもないことになるな。
うーん。なにか対策した方がいいのかな。
「ユータ、会いたかったよ!」
真剣に考えていたところに突然上から年頃バージョンのクロノアが降ってきて抱きついた。
その衝撃で半歩後ろに下がったがなんとか無事に受け止めた。
「おお、クロノア。俺も会いたかったよ。でも、よくここが分かったな」
「そりゃあ、うちには悠太探索妖狐の幼女がいるからね。クオンの手に掛かれば迷わず来れるよ」
うむ、さすがはクオン。でも俺そんなに臭うのかな。
あ、みんなも来たんだ。よし、ロージーも来てるな。
「悠太様、このゴブリンみたいなのはなんすか」
ロータからロージーを受け取り、頬をスリスリして、その感触を楽しんでいると彼女から質問された。
「ああ、パパでちゅよ。ロージーは元気でちたか」
うん、今はそんな事よりロージーとのスキンシップが大事なのだ。後にしてくれ。
「ロータ、今は無理ですよ」
「姉様、でも私よりロージーに夢中なのもなんか……」
「それだけ貴方を愛しているという事ですよ。安心なさい」
「え、そうなんですか。そっか、へへへ」
俺はロージーと熱いスキンシップをしながら、ゴブリンを調べているヒルデ達を横目で見た。
「なんなんですか、これは」
「ロザミア、これはゴブリンの上位個体ですね。めったに進化する事はないのですけど」
「これ、佐藤くんが一人でやったの」
ロージーに頬をスリスリしている俺に凛子がそう問いかけてきた。うん、さすがにそろそろ答えないと怒られるな。
「うん、二体には逃げられたけどな。かなり俊敏で連携もとれてた。何度か剣も躱されたし、かなり強かったぞ」
「佐藤くんの攻撃が躱されたの、ゴブリンに」
「ほんとだよ。あまりにも強いから力も解放して、本気だして倒したから」
俺はロージーの頬にぴったんこしながら答えた。
ああ、この柔らかさと弾力は堪らん。
「ヒルデ、それってかなり危なくない。そんなのが群れごと襲ってきたら大変な事になるよ」
「そうですね。とりあえずコレを焼いてマルデル様の所へ行きましょう」
ヒルデはゴブリンを炎の魔法で焼いて消し去ると、俺は皆の先頭を歩いて軽く案内しながら小屋へ向かった。
「へえ、高台に小屋をかぁ。それに立派な胸壁まであるよ」
「だろ、結構自信作なんだ。それに豪華な露天風呂も用意してあるから楽しみにしてくれよな」
「ユータ、腕を上げたね」
「おう、なんせ俺も父親だからな。これくらいできないと皆に笑われちゃうからな」
「ところで悠太様、そろそろロージーを返してください」
「え、返すって。なんか違う気もするけどまあいいか」
何故か頬を膨らましているロータにロージーを渡した。
「悠太様は私達に会っても全然喜んではくれないのですね」
「ろ、ロータ。違うからな。ちゃんと喜んでるし嬉しいと心から思ってるからな。だから誤解しないでくれ」
周りの皆から白い目を向けられた。
よし、これからは子供をかまう前に、みんなとスキンシップしよう。うん、それがいいな。怖いし。
「ゆうた、クオンもかたぐるまして」
「あいよ。クオンはいい子だからな。ほら、おいで」
俺はクオンを肩車しながら小屋まで皆と会話しながら歩いた。
その賑やかな話し声にマルデルも小屋から出て笑顔で皆を出迎えた。
ん、エレシュキガルもアルヴィドもスルーズ達も来てたのか。これは今夜は盛大にバーベキューだな。
「よし、クオン。今夜はクオンの大好きな豚さんの焼肉にしような」
「やったあー! ゆうた、だいすきだよ」
かわいいおませさんだ。
もっと大きくなったら同じ事を言って欲しいものだよ。
「悠太様、クオンをあまり甘やかさないでください。最近はやっとお姉さんらしくなってきたのに」
「まあいいじゃないか、たまにはさ。それにスクルドの方が最近は甘やかしてると思うけどな」
「え、そんな、そうでしょうか。そんなつもりはないのですけど」
「スクルドとクオンは実の親子より仲良しだもんな。そりゃあ甘くもなるし、いい事だと思うよ」
「うん。クオン、スクルぅだいすきだよ」
「私もクオンが大好きですよ」
スクルドはそう言って嬉しそうに微笑んで、俺に肩車されているクオンの手を握ると、クオンは俺から飛び降りてスクルドの胸に飛び込んで甘えた。
ほんと、仲が良くて何よりだよ。
「悠太君、あのお風呂もう入れるの」
「うん。あとはお湯を入れるだけだから。セリーヌもゆっくり入って疲れを癒やしてくれよ」
「ええ、それはお風呂が楽しみですね」
皆は拠点の出来栄えに満足していた。が、皆が泊まれるほど広くはない事に気付いた俺は、慌てて改良して繋げれるようになった小屋を出して増設した。
ふう、改良しておいて良かった。
これで皆で一つの家のように泊まれるな。
うん、これで全員揃ったし、ますます楽しくなるな。
魔法で穴を掘り、均してから清潔加工を施した石をタイル風に仕上げて張り付けた。
もちろん一人ではない。
我が親愛なる友人達に、無償で手伝ってもらった。
大事な事なのでもう一度言う。無償で、だ。
「ふう、思ったよりも早く終わったな。これもみんなのおかげだよ。ありがとな」
「はい。お役に立てて良かったです」
アンジュが代表して笑顔で返事をしてくれた。
うん。大人用の堀の深いお風呂と、子供用の浅いお風呂。我ながら良く出来たと思う。
何気に工作スキルが上がったように思っている。あの立体四目並べを作った時とは違うのだよ、俺は。
「悠太様、無償ってズルくないですか」
「シェリー、友人には無償で奉仕する事こそが美徳なんだ。なんでもかんでも見返りを得るようだと見捨てられるんだからな。気を付けた方がいいぞ」
「そうなんですか。見捨てられたくはないので気をつけます」
そう、俺は彼女達に奉仕の心得を説いたのだ。
最近やたら俗物的になってきた彼女達を正し、導くのも俺の役目だ。
まったく手の掛かる友人達だよ。
「あれ、下の方にゴブリンがいますけど倒してきますか」
「ん、シェリー、ゴブリンがいるのか」
俺はシェリーの教えてくれた方を見ると、浜辺近くの港町建設予定地をゴブリンが六体歩いていた。
これは領土侵犯だな。今後の為にも早速排除してこよう。
俺は神刀マルディールと聖剣クロノアール、通称クロノアソードを両手に持って下まで走って降りていった。
俺の接近に気付いたゴブリンが太い木の棒を構えた。
「あれ、なんかデカくないか。俺より一回りは大きいぞ」
間合いを詰めて袈裟斬りしようと刀を振り上げた時にそう気付いた。
まぁ、そんな事は後で考えるとして刀を振り下ろしたが、ゴブリンに見事に避けられた。
はやい。元々ゴブリンは俊敏なのだが更に速くなってる。
俺は横に避けたゴブリンに剣で追撃の突きを心臓を狙って放ったが、それも少し躱されて肩口に突きが入った。
チッ、侮れないな。さすが人類未踏の地ということか。
剣が刺さったゴブリンの背後から、仲間のゴブリンが左右別々に現れて木の棒を振り下ろしてきた。
俺は後方へ宙返りして避けるが着地した瞬間に石礫が飛んできた。それを落ち着いて刀で打ち払って難を逃れた。
おいおい、やけにいい連携プレイじゃないか。
これは真剣にやらないと、やられるな。
刀と剣にマナを流し、俺は力を解放した。
白金のオーラに包まれながら自身の力が向上していく事を実感した。
俺は先程よりスピードを上げて間合いを詰めると前に出ていたゴブリンを刹那に十字に斬り払い、そのまま足を止めずに後方の三体へ間合いを詰めた。
そしてすかさず炎を刀に纏わせ、更に炎で刀身を伸ばすと、一度に三体を薙ぎ払った。
しかしその間に、二体のゴブリンには逃げられてしまった。
うーん、賢すぎる。今のは本当にゴブリンだったのだろうか。
「悠太様、お見事です。同化せずに力の解放をよくここまで上達させましたね」
「ああ、アンジュ達の厳しい特訓の成果だな。けど、これ本当にゴブリンなのか」
死んでいる通常とは違うゴブリンを間近で見下ろして、その違いを確かめていた。
体も大きいし、顔つきもなんとなくだが少し賢そうな感じがした。
「この地だけの特殊な個体なのでしょう。過酷な生存競争により進化したのではありませんか」
なるほど。こんなヤバいのが増えて、俺達の大陸に渡って来たらとんでもないことになるな。
うーん。なにか対策した方がいいのかな。
「ユータ、会いたかったよ!」
真剣に考えていたところに突然上から年頃バージョンのクロノアが降ってきて抱きついた。
その衝撃で半歩後ろに下がったがなんとか無事に受け止めた。
「おお、クロノア。俺も会いたかったよ。でも、よくここが分かったな」
「そりゃあ、うちには悠太探索妖狐の幼女がいるからね。クオンの手に掛かれば迷わず来れるよ」
うむ、さすがはクオン。でも俺そんなに臭うのかな。
あ、みんなも来たんだ。よし、ロージーも来てるな。
「悠太様、このゴブリンみたいなのはなんすか」
ロータからロージーを受け取り、頬をスリスリして、その感触を楽しんでいると彼女から質問された。
「ああ、パパでちゅよ。ロージーは元気でちたか」
うん、今はそんな事よりロージーとのスキンシップが大事なのだ。後にしてくれ。
「ロータ、今は無理ですよ」
「姉様、でも私よりロージーに夢中なのもなんか……」
「それだけ貴方を愛しているという事ですよ。安心なさい」
「え、そうなんですか。そっか、へへへ」
俺はロージーと熱いスキンシップをしながら、ゴブリンを調べているヒルデ達を横目で見た。
「なんなんですか、これは」
「ロザミア、これはゴブリンの上位個体ですね。めったに進化する事はないのですけど」
「これ、佐藤くんが一人でやったの」
ロージーに頬をスリスリしている俺に凛子がそう問いかけてきた。うん、さすがにそろそろ答えないと怒られるな。
「うん、二体には逃げられたけどな。かなり俊敏で連携もとれてた。何度か剣も躱されたし、かなり強かったぞ」
「佐藤くんの攻撃が躱されたの、ゴブリンに」
「ほんとだよ。あまりにも強いから力も解放して、本気だして倒したから」
俺はロージーの頬にぴったんこしながら答えた。
ああ、この柔らかさと弾力は堪らん。
「ヒルデ、それってかなり危なくない。そんなのが群れごと襲ってきたら大変な事になるよ」
「そうですね。とりあえずコレを焼いてマルデル様の所へ行きましょう」
ヒルデはゴブリンを炎の魔法で焼いて消し去ると、俺は皆の先頭を歩いて軽く案内しながら小屋へ向かった。
「へえ、高台に小屋をかぁ。それに立派な胸壁まであるよ」
「だろ、結構自信作なんだ。それに豪華な露天風呂も用意してあるから楽しみにしてくれよな」
「ユータ、腕を上げたね」
「おう、なんせ俺も父親だからな。これくらいできないと皆に笑われちゃうからな」
「ところで悠太様、そろそろロージーを返してください」
「え、返すって。なんか違う気もするけどまあいいか」
何故か頬を膨らましているロータにロージーを渡した。
「悠太様は私達に会っても全然喜んではくれないのですね」
「ろ、ロータ。違うからな。ちゃんと喜んでるし嬉しいと心から思ってるからな。だから誤解しないでくれ」
周りの皆から白い目を向けられた。
よし、これからは子供をかまう前に、みんなとスキンシップしよう。うん、それがいいな。怖いし。
「ゆうた、クオンもかたぐるまして」
「あいよ。クオンはいい子だからな。ほら、おいで」
俺はクオンを肩車しながら小屋まで皆と会話しながら歩いた。
その賑やかな話し声にマルデルも小屋から出て笑顔で皆を出迎えた。
ん、エレシュキガルもアルヴィドもスルーズ達も来てたのか。これは今夜は盛大にバーベキューだな。
「よし、クオン。今夜はクオンの大好きな豚さんの焼肉にしような」
「やったあー! ゆうた、だいすきだよ」
かわいいおませさんだ。
もっと大きくなったら同じ事を言って欲しいものだよ。
「悠太様、クオンをあまり甘やかさないでください。最近はやっとお姉さんらしくなってきたのに」
「まあいいじゃないか、たまにはさ。それにスクルドの方が最近は甘やかしてると思うけどな」
「え、そんな、そうでしょうか。そんなつもりはないのですけど」
「スクルドとクオンは実の親子より仲良しだもんな。そりゃあ甘くもなるし、いい事だと思うよ」
「うん。クオン、スクルぅだいすきだよ」
「私もクオンが大好きですよ」
スクルドはそう言って嬉しそうに微笑んで、俺に肩車されているクオンの手を握ると、クオンは俺から飛び降りてスクルドの胸に飛び込んで甘えた。
ほんと、仲が良くて何よりだよ。
「悠太君、あのお風呂もう入れるの」
「うん。あとはお湯を入れるだけだから。セリーヌもゆっくり入って疲れを癒やしてくれよ」
「ええ、それはお風呂が楽しみですね」
皆は拠点の出来栄えに満足していた。が、皆が泊まれるほど広くはない事に気付いた俺は、慌てて改良して繋げれるようになった小屋を出して増設した。
ふう、改良しておいて良かった。
これで皆で一つの家のように泊まれるな。
うん、これで全員揃ったし、ますます楽しくなるな。
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