ウィザードの転職活動日記

ヒグマボーイ

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第一章 ウィザード、無職になる。

第一話 勇者パーティー、魔王を倒したのでもう必要ないです。

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はるか昔、勇者パーティは実在した。

魔王を倒すために。

勇者パーティは苦闘の末、見事に魔王を倒し、成し遂げた。

一時は城下町の人々に祝福され、宴の毎日だった。

本当に、本当に一時だけだった。

その向こうには急激な経済成長が待ち受けていたから。

世の中は、工業、ITなど。

現代で言うような、スマートフォンのように。

今現在、君たちが過ごしている社会と同じように、

凄まじいスピーとで産業等が発達した。

バスや電車、公共交通機関は当たり前。

ここまで言えばわかるだろう。

そう、もう勇者パーティーは必要ないのだ。

ヒーラーも、タンクも、ウィザードも。

そしてファイター、いわゆる勇者自身も。

どこに行っても、言われることは一緒。

「はあ?まだ勇者パーティーなんてやっているのか?

 ファンタジーごっこはもう終わりだよ。

 魔王がいなくなった今、もうどこに行っても魔物すらいない。

 あんたらの仕事なんてないし、技術なんていらないんだよ。

 もうあんたらが遊んでいるうちに、他の勇者パーティーは、

 職業訓練を受けていたり、就職活動をして、もうとっくに働いている。

 職業訓練を受けていた連中ですら、もう就職して働いているよ。

 君たちだけだよ。今頃そんな勇者ごっこなんてしているのは。

 もう馬鹿なことはやめて、真面目に働いて、堅実に貯金をした方が良い。

 そのほうが身のためだぞ?あんたら若いんだから、悪いことは言わない。

 俺の指示に従った方が良いのは言わなくてもわかる。今の時代、

 年がら年中、そんなコスプレみたいな格好をしている若者なんて、

 恥ずかしいだけだろ。もうやめとけ。」

と言って、ガハハと笑われるだけだった。

その通りである。

仕事がないんだから。

無一文なんだから。

無職なんだから。

ニートなんだから。

そこで、勇者パーティーは状況を打開すべく、

作戦会議を開くことにした。

もう戦うこともないのに、作戦会議とは変なのはわかっている。

ただ、これは俺たちにとって、

戦いである。言わずもがな。

俺たちは本気だ。

魔王がいた頃のように宿屋はないので、街の外れの公園で。

ベンチに向かい合って座った。子供達が学校終わりに、

スマホゲームをしている子供、

サッカーをしている子供。その迎えに来た保護者が

ヒソヒソと勇者パーティーの方を見て、

「まだ勇者パーティーなんてやっているの?

 流石に頭おかしいんじゃないんかしら?

 恥ずかしくないのかしらね?

 見ているこっちが恥ずかしいわ。」

クスクス笑われる始末。

俯いている三人を見て、金太郎が口を開いた。

「さて、どうしたものか・・・。」

ウィザードのチアキが顔をしかめて立ち上がり、

怒鳴るように声を張り上げて金太郎に物申す。

「はあっ!?アンタねえ!!ケンカ売ってるの!?
 
 私がいっちばんそれを言いたいの!!
 
 いいじゃない、アンタは社長の弟の会社に行けばいいんだし!!

 ヒーラーのコウキは医療従事者、

 ガーディアンのダイスケは教員免許を持っているし、

 柔道有段者で大学生の時に全国ベスト8だし、

 みんなは今すぐ働けるし!!

 私は何にも持っていないのよ!!
 
 中卒で働いたけど、仕事ができないし、

 続かないから転職ばかりだし!!

 ウィザードとしてこれから食べていこうと決意したのに!!

 魔王を倒してもぜんっぜんお金ももらえないかったし!!

 おかしいでしょ!!この国の政治はどうなっているのよ!!

 そもそも住人の依頼を聞いて聞いて、

 何でも屋みたいなことをしていても、

 毎日毎日、食べるのにも困ったし!!

 食べられない日もたくさんあった!!

 それなのにも関わらずアンタたちは・・・」

チアキのマシンガントークが止まらない。

保護者たちも、やっぱり頭がおかしいようねとまたもやクスクス笑い出す。

ダイスケとコウキはなだめようとしたが、

大変説得力に欠けるので俯いてチアキの十八番、

マシンガントークが終わるのを待つことにした。

金太郎はそれを見て、

(いや、チアキ。君の話をしているんだよ。

 頼むから落ち着いて話を聞いてくれよ。頼むから。)

やれやれと困った金太郎だった。

チアキの息が上がり、マシンガントークが終わった頃、
 
ぺたんとベンチに座り込んだ時だった。

保護者たちはでは、また。と言い、

子供達はまたね、バイバイ。

さようならをした。

親子は手を繋いで、

今日の夕飯のことや学校で起こった楽しいこと、友達と公園で
 
遊んだ楽しい日々を親子で話したまま、

夕焼けに向かって歩いて、夕日に沈んでいった。

もう勇者パーティーは相手にされないのだ。

金太郎がまた口を開く。

「もうご飯を食べて寝よう。

 今日も公園で野宿だ。

 持ち物、特に貴重品、盗まれないように気をつけてな。

 飯はまたカンパンだ。明日から俺ら三人は決まった就職先に働きに行く。
 
 だから、チアキもグッドワークで良い仕事、見つかると良いな。

 では、寝る支度をしようか。」

 そうして寝るまでの間、チアキは考えていた。

 (容姿も特別良いわけではなく、勉強も部活も普通だった。

 モテなかったし、好きな男の子ができても、
 
 自信がなくて、アプローチできなかった。

 ウィザードで大成して、やっと自信がついたと思ったら、

 今度はニート。どうすれば良いのよ。)

三人が寝る支度を済ませても、

三人が寝てからも、チアキはずっと考えていた。

(また置いてかれるのか。三人から。やっと追いついたと思ったのに。)

と不安な気持ちのまま、チアキは眠りについた。

浅い睡眠だった。朝日が昇り、次の日の天気は晴れだった。

だが、チアキの心は晴れないままだった。
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