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(え……? 体が、動かないわ)

 意識はあるのに、目を開けることができない。
 体をほんの少しも動かすことができない。

(私の体にいったい何が起きているの?)

 落ち着いて思い出す。
 覚えていることといえば、今日の午後、王妃様とティータイムを楽しんだこと。
 そこで私はグランディア様に会えなくて寂しいこと、これからが不安なこと、愛してもらえないことへの悲しさを話してしまった。

 王妃様は「私に任せなさい」と仰っていたけれど……。

 夜になり、なぜか王妃様から必ず飲むようにすすめられたお茶を飲んで眠りについた。

 そして気が付くとこのような状態になっていた。

(まさかあのお茶に何か入っていたのかしら……? でも王妃様がなぜそのようなことを?)

 動かすことのできない体に不安を感じていると、外が急に騒がしくなった。

 勢いよくドアが開けられた音がした。

「ティナ!」

 その声はグランディア様……?
 久しぶりに聞いたグランディア様の声はとても焦っているように聞こえた。

「これはどういうことだ!」

(あの、グランディア様。私もどうしてこのようなことになっているのかよく分からないのです。体が動かないので困りました……)

「なぜだ、ティナ……どうして私を置いて死んでしまったんだ……」

(うん……? え、グランディア様、今なんと……)

「母上、どうしてティナがこのようなことに!? 今朝はあんなに元気だったではないですか!」

(今朝、グランディア様とお会いした記憶はないのですが……)

「それが……毒を飲んでしまったようです」

(ちょ、ちょっとお待ち下さい。グランディア様、今なんと仰いましたか!? 誰が死んだと……!?)

(それに王妃様もここにいらっしゃったのですか!? 全然気が付かなかったです……ではなく、今毒と聞こえたのですが!?)

「グランディア、落ち着きなさい。私もなぜこのような悲しいことが起こってしまったのか分からないのです」

「私はティナの警備も厳重にし、ティナが口にするもの、触るもの全てを管理しておりました! 毒などありえません!」

(す、全てのものですか……?)

「ですが実際こうして悲しいことが起きてしまったのです」

「ティナ……あぁ、どうしてこんなに手が冷たいんだ……。お願いだ、目を開けてくれ……」

 グランディア様は私の手を握っているのだろう。
 けれど、私には感覚がないので分からない。

 グランディア様、どうしてそのような悲しい声を出されるのですか?
 私の死を悲しんでくれているのですか?

 いえ、まだ死んではおりませんが……。

 手が冷たいということは……もしかするとこれは仮死状態というものでしょうか。
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