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第一章

第一章13「中央王国『リグナム・セントラル』」

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 ようやくちゃんとした旅路に乗った二人は、道中、沢山という言葉では収まりきらない量のモンスターに絡まれるが自慢の魔法を駆使し、乗り越える。

 しかし、そんなに簡単に乗り換えないようなモンスターも現れる。
 そんなことに遭遇するなんて1ミリも思っていないリアと、そんなことを常に警戒しているセイナでは、日々の精神的疲労が天と地の差である。

 たまには楽観的に生きてみたいものだ。
 そう自虐する。自虐とは限らないが。
 楽観的の方が良い場合も大いにある。

 例えば、挫折した時だ。言い換えればテストで赤点を取ってしまった感覚に近いだろうか。
 そんな時、俺、セイナだったら数日間落ち込むだろう。下手したら勉強を諦めてしまうかもしれない。
 しかし、こういう時楽観的な人間だったらどうだろう。
 すぐに気持ちを切り替え、次のするべきことを考え、行動に移すだろう。
 そんな場面で楽観的という性質が役に立つ。

 逆に、考えてみよう。
 楽観的だと良い方向に進まないような場面。
 俺は少し考えてみたが思いつかない。
 あったら教えてもらいたいほどだ。

 これらから、楽観的というものにものすごく価値を感じるようになる。
 その価値をリアと出会い、入手することができた。
 中には手に入れないほうが良かったという人がいるかもしれない。
 だが、それは現実逃避の一つだと俺は思う。
 正しくは逃避ではないが、本質は間違ってはいないと思う。

 そんなくだらないような、意味のあるようなことを考えるのが好きだ。

「何?こっち見て。」

「あ?いや、何でもない。」

「怪しすぎるでしょ。何?」

「リアが案外すごいやつってこと気づいてた途中。」

「案外って何?!」

 そんな会話をしながら、歩き続ける。

 ふと、太陽を見てみた。
 良かった、動いている。ここで動いていなかったら、またループ地獄に巻き込まれていることになるからだ。
 あいつらゴブリンは太陽があるうちは縛りがなく、太陽が沈み始めると縛りが発生するだろう。

 そんな中、また、朝からあの時と同じ北東に進んでいるのは正気かと疑われそうだが、正直なぜいけると思ったのか。それはリアに聞いてほしい。

 今、ゴブリンに遭遇したら死ぬだろう。
 あの時より魔法に関してはかなり成長しているが、肝心の杖が壊れてしまった。
 護身用に木の杖でも買っておけばよかったな。

 

 案の定、
 みたいな展開はなかった。
 夕暮れの頃、俺達はゴブリンと遭遇せずに中央王国の城壁が見えるところまで来れた。
 水分不足とかは大丈夫なのか心配されそうだが、前に炎を消すときに使った、氷と炎を合わせて水を作るということを何回もして、水分を補給していた。
 食料はそこらへんの動物を炎で燃やして食べていた。

 話を戻そう、
 休戦しているとはいっても外部の人間を中に入れるだろうか。
 そんな危険な行為しないのが普通だが。

「おいリア。中に入れると思うか?」

「行けるでしょ。」

 どうせ適当だろう。
 物は試しだ。見た瞬間殺される、みたいなことはないだろう。
 あのおじいさんもそんなに物騒ではないと言っていたし。



 おそらく、西門についた。
 おそらく、というのはこの王国は多分四方に門がある。で、俺達は王国視点で西側から来たから西門だろう。
 という予想だ。

 恐る恐る門番の傭兵らしき人に話しかける。

「すみません。俺達は冒険者なんですけど。中に入ってもいいですかね。」

「どうぞー。」

「は?」

「え。どうされました?中に入りたいんですよね?」

「そうですけど。そんなに簡単に外部の人間を通していいんですか?休戦中とはいえ油断しすぎじゃないですか?」

「いやいや、人間とは戦争していないですから。しかも亜人どもは人間とは交流をしないという噂がある。もしあんたらがそのスパイならこの王国は終わりだが、みりゃ分かる。お前らは冒険者だ。だから通す。」

「そうなんですか。戦争相手は亜人なんですね。ところで亜人っていうのは例えば?」

「たくさんいるが、有名なのはゴブリン、ハーピー、エルフだな。」

「なるほど。親切にありがとうございました。」

「頑張れよ。」

 フランクな感じの人で良かった。
 リアは相変わらず人見知りを発動していたが、逆に良かったかもしれない。

 中に入ると、 デンテイルズとは比べ物にないくらい栄えていて、例えると、スクランブル交差点と言うとわかりやすいだろうか。
 見た感じ中には人間しかない。
 当たり前か、休戦中とはいえ、対立しているのだから。

 王国中を回るには1週間くらいかかるほどだろう。そんな中宿を探すのは至難の業だろう。
 いっそ風魔法で飛んで上から見下ろしたいものだ。
 そんなことしたら追放間違いないと思うが。

 果てしないと思いながら二人は宿を探す。手分けして探すともう会えないと言っていいほどの人の量なので一緒に行動せざるを得なかった。

 ようやく宿を見つけた頃には、二人はもうヘトヘトだった。
 今日はもう寝ようといわんばかりの目をこちらに向けてくる。
 それに対して俺も賛成し、二人は眠りにつく。
 今回も違うベッドで寝ているので問題ない。

 明日には杖を買い、スライムについての情報を聞き、その後はリアに任せよう。
 この国のえらいさんに会いに行ってゴブリンについての情報を何らかの条件のもと話すのもいい稼ぎになるだろう。
 もしかしたら時魔法について、何か知れるかもしれない。 
 それを条件にしてもいいなと思った。

 ループさせる、というのは時魔法で間違いないだろう。
 もし、亜人族共通の能力として、いやゴブリン特有の能力として、なら仕方ないと思えるが、人間にも使えるなら使ってみたい。
 俺が読んできたラノベでは時魔法なんてものなかったからな。
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