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12話
しおりを挟む早朝──
太陽が上り、部屋に光が差し込んでくる。
この時間ならば余裕で逃げられる。
「よし…帰るか」
「何処に帰るのですか?」
「げっ…セバーヌ──。」
「それでカイ、何処に帰るのですか?」
セバーヌはもう一度同じことを聞いてくる。
口元は微笑んでいるのに目は笑っていない…
「いつから居た。」
「さぁ…いつからでしょうね?それで何処に帰るのですか?」
「いや…その…そう!執務室に戻ろうと思ってな!」
やばい…汗が滝のように出てくる─
心臓もバクバクと鼓動を打つのが分かるくらだ
そうして見守っているとしばらく止まっていたセバーヌの口が開く。
「窓から出ようとするので逃げると思っていたのですが、執務室に行くために窓から出ようとしてたなんて思いませんでしたよ」
「あっ…あぁ…まッ真下だからな!こっちの方が早く着くんだ!」
「では、其方に朝食を頼んできますので呉々も逃げるなどと考えないでくださいね」
では─とセバーヌは言い残し出ていった。
執務室──
「仕方が無い─暫くは大人しくしているか…。」
ここで逃げても直ぐに戻されるだけだしな…
はぁ……と溜息をつく。
「昨日も思ったがすごい量だな…」
と床やまた積み上げられている机の上の書類の山を見る。
しかし今までにこんなに書類の山がある所を見たことが無いのだが…
まさか──セバーヌが殆どをこなしていた?
それならば俺が押していたものは俺の判子でしか通らない書類になる。
いや─有り得る──あいつは俺よりも遥かに仕事効率も高いし知識もある。
しかしこれほどの量をこなすとなれば相当体力が必要なはずだ
だがあいつはそんな素振りを一度も見せたことがあったか?いや無いな…
と独り思考の海に浸かる
「思い返してみれば、今まで逃亡して帰ってきてもいつもと変わらん量の書類の整理しかしてこなかったな───。」
俺は記憶を思い返し、罪悪感に駆られる。
「失礼します─朝食をお持ちしました。」
とノックをしてセバーヌが入ってきた。
「セバーヌ」
「なんです?魔王様」
「お前に三日間の休暇を与える。その間は魔王城に近づくな。そして仕事もするな。」
「何故私が休まないといけないのです?まさか逃げる気ですか?」
「逃げはしない─これは命令だ」
「もう魔王でない貴方からの?」
「確かにターメリに受け継いだがそれを知っているのは極わずかな者だけだ。よってまだ民の中では魔王は俺だ。」
「なるほど─命令とあらば逆らう事は出来ませんね─ではお言葉に甘えて休暇を取らせていただきます。」
とセバーヌはいい持ってきた朝食を机に置くと一礼をして部屋を出ていった。
「さて……」
俺はセバーヌの直属の部下を呼んだ。
「ご機嫌麗しゅうございます─魔王様 」
とヴィオラは言い、ドレスを少しつまみ上げお辞儀をする。
「久しいな、ヴィオラ。仕事の方はどうだ?」
「はい─興味深い文献や魔法文字、魔術式も多く嬉しゅうございます。私は魔王様に拾われ、とても深謝致します─」
「それは連れてきたかいがあった─。それにあれ以来暴走は起こってないようだな。」
「定期的に血を頂いています故、狂酔は生じておりません─。」
とヴィオラは俺の質問に返事を返す。
それは良かった─。
「話は変わるが、セバーヌはいつもどのくらい仕事をしている?ここにあるくらいか?」
「他の幹部の仕事も請負っていますが、この量では無かったかと──。しかしそれは私が見ている範囲での話ですので……勤務外の事は分かりかねます─。」
「ふむ……その他の幹部の仕事を見せてくれるか?」
「はい、少々お待ち下さい──」
と言ってヴィオラは部屋を出て書類を持ちに行った。
あいつ時間外に仕事をするなとあれ程言ったのだがな……やはり命令でなければするのか……
難儀なものだな……。
─────
───
──
「お待たせ致しました─こちらがその書類になります。」
とヴィオラは言い、書類がぎっしり詰まった箱を机の上に数箱置く。
「すごい量だな…」
「これは期限が近いものをお持ちしましたので、これだけではありません。あと数箱はあります……。」
「あいつはどれ程仕事をしているんだ……。」
はぁ…と溜息を吐き、デコに手を当て首を振る。
「ヴィオラ、ここにある物は俺がするから、他の幹部の書類は各幹部に送り返しておけ。それと今後セバーヌにしか解決する事が出来ない書類呑み頼ってもいいと幹部連中に言っておけ…これは命令だとな。」
「かしこまりました──。早急に対応致します。」
とヴィオラは言い残し部屋を後にした。
「さて……ヴィレの事も心配出しな。サクッと終わらせて帰るか!」
と気合いを入れ直し、椅子に座り仕事を開始した。
頼むぞ【魔王の魔力吸いまくってお仕事する君】しかし長いな名前…笑
よし─今からお前は【魔王の手】と呼ぼう。
一応俺の代わりに判子を押すからな!
────あれから三日
「ここにあるのは全て片付けたし、今日の分の書類も全て捌いた。帰るか!」
と言い、俺は部屋を眺め達成感に心を踊らせている。
コンコン…とノックの音が聞こえ、入る許可を出す。
入ってきたのはセバーヌだ──。
「魔王様、三日間の休暇をありがとうございました。」
「存分に休暇を楽しめたか?」
「そうですね……楽しめたのではないでしょうかね。」
「曖昧な返事だな。それと俺は帰るぞ。」
「逃げないとの約束では?」
「あれはお前の休暇中の話だ。今は違うからな。ではな──セバーヌ」
と俺は転移の魔法でヴィレが待っている街、アンブラに戻った。
「ほんとあの馬鹿は……何故自由気ままなんでしょうか。私でも一週間は掛かる仕事を三日で終わらし、今日の分までも終わらしているとは…はぁ…天才とは彼の様な人を言うのでしょうかね。」
とセバーヌは細く微笑み呆れ顔をしながら窓の外を眺めた。
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