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11話

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外が赤くなり太陽が沈み始めた。
”ガァ~ガァ~“とコルヴォの鳴き声も外から響いてくる。
「ぁ…あと……半分…」
と机の上に乗る書類の山を見て絶句する。
しかも魔力が凄い勢いで減っていく…謀ったなセバーヌ!
───コンコンッ
「……いいぞセバーヌ」
「失礼します……おや?まだ半分ですか。」
「何が半分だと!この魔道具が馬鹿に魔力吸うから進まないんだぞ!」
「あ~その事ですか。以前から魔王専用の魔道具の開発を部下のものとしてましてね…つい最近それが完成したんですよ。どこかの魔王は隙あらば逃げようとしますから、魔力が無ければ逃げきれないと思いましてね。名ずけて【魔王の魔力吸いまくってお仕事する君】です。」
と眼鏡をかけ直しながら自慢げにセバーヌは魔道具名を言う。
しかし…セバーヌの名付けセンスは何百年経っても悪いな。
「……«麻痺»」
「うぉっ!?«防御!»いきなり何する!?」
「いぇ……何か悪口を言われたような気がしたので」
あたかも自分は悪くないと装うセバーヌ。
こいつ!俺の心が読めるのか!?悪魔か!
「…«雷の矢»」
「«防御!»何も言ってないだろ!」
「何故でしょうね…凄く不快に感じたんです」
「だからって何故俺に放つ!」
「ぁ…無意識的にしてましたね…いつもの癖で」
と言いながらも申し訳ないとは思ってない顔のセバーヌ。
はぁ……次来たら終わる……悪口は心の中でも言わないでおこうと誓う俺だった。
「ふむ…流石に魔力の消費が大きいようですね……これでは残りの書類はこの魔道具を使ってはできません…仕方が無いので腕だけ使える様にしますか。」
とセバーヌは何故か残念オーラを放ちながら両腕の蔦の拘束だけとく。
「もう魔力も残ってないし全て解いてくれてもいいんじゃないか?」
「それもそうですね…とでも言うと思いましたか?それで何回貴方は逃げましたか?カイヴァ・グラン・デビルデイズ」
「たく……分かったやればいいんだろ!やれば!」
俺は椅子に座り直して残りの書類の山に目を通し片付け始める。
しかし久しぶりに聞いたな…自分の名前
最近では魔王様か陛下しか呼ばれてなかったもんな…(笑)
まぁ…セバーヌにはカイと略して呼ばれる時もあるな
昔から人間に変装している時もカイと名乗っていたからな馴染んだんだろうな(多分)


「……終わったぞ…」
まじで…やばい…魔力は吸われて殆ど無いわ、ハンコを押しすぎて手が痛いわ…もう…やりたくないぞ。
「やっとですか…それでは書類は預かっていきますね。お疲れ様です…」
とセバーヌは書く手を止めて眼鏡をかけ直す。
やっと一息つける…早く寝よ
するとセバーヌは異空間からティーセットを取り出し、魔法でお湯を作り、手馴れた様子で紅茶を作っていく。
出来上がったのかコトンッ…とティーカップを俺の前に置く。
俺の好きなメーラティーだ、いい匂いだ。
「それではおやすみなさいカイ」
と書類の山を抱えてセバーヌは用事は済んだとばかりに部屋を出ていった。
全く…気が利くのか、利かないのか…
「やはり美味いな…あいつの入れる紅茶は…。」
窓から街の魔道具の灯りを展望し、そう呟く俺だった─。

───そう言えばヴィレは大丈夫だろうか。
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