元召喚勇者は無双したい ~女神に自重を強制されているんだが~

遊暮

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1話 チャンスなんだが

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 俺――神宮秋斗じんぐうあきとは、サブカルチャーを愛するごく普通の高校生だった。

 それが変わったのは高校一年の夏。
 夏休みに入った初日、学校に忘れ物を取りに行こうと、強い日差しを浴びながら歩道を普通に歩いていた俺は突如、足元に現れた魔法陣へと吸い込まれ――異世界へと召喚された。

 あの時は本当に驚いた。
 気がつくと白い空間にいるし、目の前にはありえないほどの美貌を持った女性がいて、自らを女神と名乗ったんだから。

 まあ幸い、そういった小説なんかも好きだった俺はすぐに状況を把握することができたし、常日頃からイメージトレーニングを欠かさなかったおかげで、混乱することは無かった。
 落ち着いてゆっくりとあの女神様の巨にゅ……豊満な胸を鑑賞しながら説明を聞き、便利なチートも貰って無事異世界へと召喚された俺は、魔王討伐をその召喚した王国に頼まれてやることになったんだ。

 それから二年間、様々な困難を乗り越え、誰にも負けることがなくなった俺は右翼曲折あって魔王と仲良くなり、俺を召喚した王国と魔王が治める国は平和条約を結んで世界に平和が訪れた。

 そこまでは良かったんだ。
 忙しかった日々から解放された俺は念願の美少女ハーレムを作るためにそれまでお世話になった各国を渡り歩いてナンパ連続失敗記録を更新しながらも善行を積み重ね、日本で得た知識を惜しみなく披露して世界がより豊かになるように奔走した。

 途中、邪神が復活して世界がピンチになった時もあったが、それは些細なことだろう。
 だって弱かったし。
 いや、違うのだ。召喚される前はただの一高校生だった俺が、命がけの戦いをそうすんなりと受け入れることができる筈が無い。
 というか怪我をするのも嫌だ。
 だから安全マージンを大きくとって修行しまくっていたら、いつの間にか邪神をワンパンできるまでに強くなってしまっただけなんだ。

 だが、強くなりすぎた俺を各国は恐れた。
 その力が自国に向けられることを懸念した各国は協力し、俺と仲の良かった女神まで利用して俺を元の世界に送り返したのだ。
 ……送り返す前にアイツらが何か喚いていた気がするが、多分気のせいだろう。

 うん。

 俺は決して悪いことはしていない筈だ。
 流石に戦争で死んだ人達を全員俺好みの美少女にして生き返らせたのは不味かったとは思うがそれくらいだろう。
 ……あっ、そういえば王城を勝手に一夜で遊園地に改造して一般公開したのも怒られたっけ。
 あー、あれも……そういえばあの時も怒られたような…………とにかく、俺の圧倒的な力を恐れたから送り返されたのだ。

 結局、元の世界に帰った俺にできることは無かった。
 魔法を使える元になる魔素も無いから異世界に再び行くことはできないし、残った身体能力を持ってしても精々殴って空間を割ることくらいしかできない。つまり、打つ手が無くなったのだ。

 俺は泣いた。
 召喚された時と同じ時間、場所に戻され、年齢も召喚前に戻っていたとしても、何の慰めにもならなかった。
 ルールによって縛られた元の世界は窮屈で仕方がなかったし、念願のハーレムなんて日本では認められてすらいないのだ。
 動物の耳と尻尾が生えたモフモフ獣人もいないし、耳の尖った美形ぞろいのエルフや種族全員が合法ロリショタのドワーフもいない。
 一時期は絶望してこの世界を滅ぼしてやろうかとも思ったが、虚しくなるのでやめた。

 だから今、目の前のチャンスを逃すわけにはいかない。
 元の世界に送り返されて一年、諦めかけていた俺に垂らされた蜘蛛の糸。

「きゃあっ! 何なのコレ!」

「おいおい、これってまさか……」

「………魔法陣?」

「――出られないだとっ!」

「な、一体何なんだよこれはぁ!」

 通学途中、前方を歩いていた他校の生徒達の足元に現れたのは何十にも折り重なった巨大な幾何学模様を見た俺は、全力でそこに向かってダッシュしていた。
 騒ぐ生徒達は、パニックになって俺には気付いていない。その間にも、魔法陣の青白い光はだんだんと強くなっていく。

 間に合わない。
 このまま走ってあの魔法陣に貼られたバリアを破壊するのには時間が足りないことを瞬時に判断した俺は、体内に残していた最後の魔力を使う。

「うおおぉおおおおおおおおおお!!!!」

 俺の姿が一瞬搔き消え、魔法陣の上に乗ったのと同時に、視界が光に塗りつぶされた。
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