元召喚勇者は無双したい ~女神に自重を強制されているんだが~

遊暮

文字の大きさ
6 / 14

5話 牢屋と自重スキルなんだが

しおりを挟む
 水滴の落ちる音が、この薄暗く狭い部屋にやけに響く。
 ジメジメとした空気を肌で感じつつ、俺はボンヤリと目の前の鉄格子を眺めていた。

「……どうしてこうなった……」

 召喚されたのが一時間前。高笑いして逃げ出そうとしたのが三十分前。そして壁に埋まってたところを魔法で助け出され、その後拘束されてここにぶち込まれたのが十分程前である。

 もう一度言おう。

「どうしてこうなったんだあぁあああああああああ!!」

「うるさいぞ!」

 あ、看守さんすみません。




 怒った看守さんに平謝りし、再び静寂の戻ってきた牢獄内で俺は思わず深いため息を吐いた。

 ちなみに俺の現在の格好は両腕を手錠で壁に開くようにして固定され、吊り上げるような体勢である。上半身の制服はさっき来たむさいオッサンに無残にも剥ぎ取られ、足枷には大きな鉄球付きという徹底ぶり。

 …………拷問の準備は完璧みたいです。

「イヤだあぁあああああああああ!!!!」

「だからうるさいと言ってるだろ!」

 ……すみません。

 さて、そろそろこうなった原因を考えよう。
 今の俺に必要なのは迅速な状況把握なのだ。このままでは本当に打ち首になってしまう。

 とはいえ、もう何となく分かっている。
 拳を振れば世界を砕き、一声上げれば死すら逃げる。歩く最悪、じゃなくて、災厄と言われた俺がこうして捕まっていること自体が、如実に現状を表していると言える。

 試しに手錠に繋がれた鎖を思いっ切り引っ張ってみる。ジャラりと金属同士が擦れ合う音が響くだけで、当然のように千切れる様子は無い。
 体内の魔力を探ってみる。この世界に来て多少は回復しているが、万全には程遠い。何より、魔力を溜める器がかなり小さくなっている気がする。これでは、この魔封じの枷を力技で外すことはできないだろう。

「……はぁ……」

 再びため息吐く。

 この不調の原因を知る方法は――ある。
 それもすっごく簡単に。

 以前俺が召喚された異世界、インスーアには、『ステータス』という概念があった。見れば、ゲームみたいに自分のスキルなどの情報が分かるという異世界モノ定番のシステムだ。
 アイネから聞いた話を信じるならば、このヴァイツにもステータスは存在している。

 ……見るのが少し怖いが、このまま大人しく処刑を待つわけにもいかない。

「……よし、――ステータスオープンッ!」

 別に声に出す必要は無いのだが、これは気分を出すためだ。看守さんが残念な人を見る目で見てくるが、気にしない。
 掛け声と同時に、青い半透明のウィンドウのようなものが俺の目の前に出現した。

----------------------------------------------------------
[名 前]:神宮秋斗
[種 族]:人族?
[スキル]:自重 Lv.5
----------------------------------------------------------

「………………は?」

 これ……だけ?
 俺の努力の結晶である数百種類もあったスキルは?
 というか、ステータスには攻撃力や防御力などの能力値を数値で表されていたし、何よりレベルがあった。
 当然、レベル、全ての能力値ともにカンストしていた俺のステータスが、こんなたかが三行で終わる筈がない。

 そして何より――

「【自重】スキルって何だよ……」

 名前からして、嫌な予感しかしない。
 俺は震える指で、ステータスにある【自重】の文字をタップした。

----------------------------------------------------------
《自重》 Lv.5
全ての能力値が大幅に下がり、全スキルが封印される。
スキルレベルが高くなる程制限は大きくなり、スキルレベルは<慈愛神>アイネの気分によって変動する。
----------------------------------------------------------

「うっそだろおぉおおおおおおおおおおおお!!!!」

 むしろ何もスキルが使えない分一般人より弱くなるじゃないか!
 自由に異世界を満喫しようと思ってたのに……。
 間違いなく女神アイネの仕業だろう。
 今度会ったら絶対にお仕置きしてやる。……このまま死んだら会えるかな。

「おい、いい加減に――こっこれはエルザ様! 失礼しました!」

 看守さんが怒るのを聞き流しながら、俺がアイネにどんな復讐をしてやろうか考えていると、鉄格子の前に複数の人の気配を感じた。
 暗闇の中、ランタンの光に照らされたそこに立っていたのは、微妙な表情の姫様と、同じく困惑した様子の俺以外の召喚者達。
 そして――

「アキトさん……」

 呆れた顔をして俺を見る憎っくき女神の姿だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...