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息子さんを僕にください 8
しおりを挟む──例に漏れず寿司をたらふく詰め込まれた逸は、風呂に入るのも一苦労だった。
やっとのことで逸がリビングに戻ってきた時、そこにいたのは敬吾だけ。
安心していいはずなのに、敬吾の実家のリビングで二人きり、という状況は──なんとなし緊張する。
「あれ………」
「父さんべろべろだから母さんと正志さんが寝かせてる。姉貴は、健太の夜泣き」
「そうなんですか」
ほんの少し残った大吟醸を舐めるように飲んでいる敬吾は僅かに赤らんでいて、微笑んでいるように見えた。
隣に座ってその頬に触れたい──が。
優子も桜も正志も、当然すぐに戻ってくる。
逸が大人しく敬吾の正面に腰を下ろすと、その胸中を知ってか知らずか敬吾は屈託なく笑った。
「……お前ほんと酒マシになったな」
「いやー、緊張してるからですよ」
「まだしてんの?」
「してますしてます」
当然でしょ、とでも言いたげに逸は苦笑する。
「敬吾さんのご両親と会って、一緒に酒飲むなんて………」
酔えるわけがない。
手が震えなかっただけでも驚きだ。
少々心細そうに視線を下げる逸を見て、一体この男はいつまで自分を崇め奉るつもりなのかと敬吾は思う。
──まあ、今日の日に緊張してしまうのは仕方がないことだろうからとりあえずは不問にするが。
「お前──」
「あーーやっと健太泣き止んだ!あっいっちーお風呂上がった?飲み直そー」
「あっ、はい」
逸が桜のためにワインの瓶を取ると、敬吾が「俺も風呂入ってくる」と立ち上がった。
「あっ、敬吾さんさっき何か──」
「ん?ああ……先に寝ればって言おうかと思ったんだけど」
「……………」
「えーーなにそれダメーーー」
むっと頬を膨らます桜を目の端で捉えながら、なんと言うタイミングの悪さなのかと──そしてそれなら敬吾に早く戻ってきてほしいと──嘆き半分祈り半分の、複雑な気持ちでさっさと行ってしまう敬吾を見送っていた。
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