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褒めて伸ばしてー閑話休題ー 16
しおりを挟む風呂場まで運んでも敬吾は目を覚まさなかった。
少し考えて湯の張っていない浴槽の中に座らせ、シャワーで体を流してやる。
髪も戻してやりたいが、剥離剤を使ったら洗わないわけにも行くまい。
寝ている人間にそれをするのはあまりに剣呑で、結局目を瞑ることにした。
丁寧に体を流すうち、今日は何の跡も付けていないことに気がついた。
当然のように鎖骨に口づけ赤く跡を残してやると満足げに逸が笑う。
気を取り直して、シャワーを流しつつたっぷりと体を撫でる。
足の先まで粗方流し終えて、後回しにしていた問題に直面した。
「……不可抗力だよなあ」
また自分がおかしな気を起こさないとも限らないが──
「……がんばろ」
緩く閉じた敬吾の腿の間に手を滑らせる。
が、比較的きちんと座らせたので接地面が広く、さすがに難易度が高かった。
このまま座面の角度を緩くしようかとも考えるが、頭など打ったらと考えると恐ろしい。
「…………………」
──不可抗力だ。
一旦シャワーを止め、敬吾の背中を起こして逸が背後に座り込む。
その狭さに畳まれていく敬吾の脚を、片方持ち上げて開かせ膝を浴槽の縁に掛けた。
敬吾を起こしてしまいそうなほど心臓が暴れている。
「……ごめんなさい」
静かにシャワーを流しながら、それが流れていく先へ逸の指も伝う。
手探りに指先を食い込ませると敬吾の顔が傾いだ。
「…………っ?ん、」
「……敬吾さん?」
「………………」
逸が指を進めると、敬吾の背中が微かに張り詰める。
それでも咎められることはなく、逸はぬるついた自分の不始末をゆっくりと掻き出した。
「………っん、ふ……、」
「敬吾さん……?」
「……ゃ、ぁ…… ──あっ、」
(……………やばい)
小さく掠れてはいるが、意図的に堪えられていない喘ぎは素直で可愛らしい。
また熱が下っていくのを感じつつ、逸は指を動かすのをやめた。
敬吾の呼吸が落ち着き、逸もほっと詰まった息を逃がす。
──ほんの悪戯心で、逸は指を埋めたままにシャワーを置き、胸の先端を撫でた。
「ぁんっ……」
「!!」
弾けて溶けてしまいそうな声と一緒に指が締め付けられ、逸は心臓が爆発したかと本気で危惧する。
そして、完全に勃起していた。
「だ………ダメだダメだこれ以上はほんとマズイ」
それ以上の処理を諦め名残惜しく指を抜き、敬吾の体温を感じたまま、体の隙間に腕をねじ込んで握り込む。
敬吾の首すじを食み、舐め上げながら扱き上げて、満足する頃には赤い跡が幾重にも増えてしまっていた。
──通話を切り、端末の表示を落としてリビングのドアを開ける。
敬吾はよく眠っているようだった。
夕餉時から抱きに抱いてもう深夜だ。
自分はこのまま寝ずとも問題無さそうなほど満ち足りてしまっているが、敬吾は──
(疲れたよなあ……………)
指の背で頬を撫でながら、枕に沈んだその横顔を見つめる。
(だから、毎日は、きつい……)
敬吾の言葉が脳裏を過る。
己の今日の荒ぶりようを鑑みるにそれはひしひしと真に迫って胸に滲みた。
いくらなんでも毎回毎回今日のように貪ってはいないが──
敬吾と自分の体力差に開きがある。その上。
(ネコってすげえ感じるって言うもんな…………)
男の感覚の範疇を踏み外すほどに。
そこを顧みることができなかったのももちろんなのが、そんなことは瑣末に感じてしまうほど今日はやり過ぎた。
非常に、非常に気持ちは良かったし敬吾も恐らくそうだとは思うのだが。
床に膝をついて見本のような土下座をし、畏まって逸もベッドに入った。
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