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安心させて 7
しおりを挟む────そうして。
敬吾はやや、後悔する羽目になったのだ。
「………うーん……。やっぱ参考にはなんないっぽいです」
「あはは、そっかそっか。ありがとう」
やたら真剣に考えてくれていたらしい敬吾が見た目にそぐわず可愛らしくて、柳田は微笑ましげに笑った。
達観したように見えるが等身大の、飾り気のない質らしい。
その実直さが嬉しかった。
「んー……でも尻込みされてたっちゃされてたんですかね。柳田さんが言っちゃうのもありなんじゃないですか」
「えっ!!?」
「俺言いましたよ、結局どうなんだよと思って」
「…………え……!!」
「………………?」
柳田があまりに赤くなるので、敬吾は少し首を傾げた。
単純な疑問を解消するのに、なぜそう恥じらう必要がある?
──とそこまで考えて──、
(あ………!!?)
──もしや自分はあの時相当に恥ずかしいことを言ったのではないかと、ようやく気づく。
「い………っいやいやなんだろ冷静にですよ?話し合いとして!」
「あ………っああ!そうだよね!だよね!!」
「はい!」
驚き過ぎて笑ってしまっている柳田の顔はまだ赤く、平常心を取り戻そうと必死で頷いていた。
敬吾も内心焦りつつ、どうにか冷静さを取り戻す。
──しかしそうなると、どう思われていたのだ、あの時。
逸があんなにも赤くなっていたのは、自分のせいか?
今更になってこんなことに気づくとは。
もう焦るやら恥ずかしいやらで赤面を隠せる気もせず、敬吾は諦めて冷たいドリンクで体内を冷やした。
柳田も同じように唇を濡らして頭を落ち着かせ、経験者の談をしっかりと頭に刻む。
「そっか…………」
「はい?」
「あ、ううん」
「………………?」
柳田の顔は未だ若干赤かったが、意を得たような瞳の焦点はかなりしっかりと結ばれているようだった。
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