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寸志の快感 14
しおりを挟む──その静寂の中、小さく破裂したように再開した逸の呼吸と、ぐっと脈打ち更に膨らんだ局部だけが滑稽に空気を揺らす。
「……敬吾さん」
堪えられずに逸が呼んでも敬吾は応えない。
ただ腿の感触で、逸の膝に肘を置き凭れ掛かったことだけは分かった。
その姿勢のまま、逸の腰の高さから敬吾は逸を見上げていた。
視界いっぱいに伝わる逸の興奮と歓喜は苦しげなほど。なんの戒めもなければとっくに捕らえられひん剥かれていただろう。そして、喉笛に心臓の上に喰らいつかれるのだ。
寸分の狂いなくその様は容易に想像できるのに、目の前の逸は今それもできず、狩り始めの踏み込みをどうにか堪えるように前屈みになって激しい呼吸を咬んでいた。
──良い眺めである。
……良い眺め、とは思うのだが、さてこの体をどうしたいかと言われると。
少々からかってやるのは大好きだが、逸がこうも本格的に興奮してしまっていると処置に困る。
泣きわめいてくれればまだ興が乗ることもあるだろうが。
「お前さ」
「はい……」
「今これ嬉しいの?」
「えっ」
間の抜けた声を出し首をひねりながら、逸は敬吾の本意を読みかねていた。
本意も何も、敬吾からすればそのとおりの意味でしか無いのだが。
その格好は嬉しいのかと。
「嬉しく……はない……ですよ?」
「そうなんだ。その割に嫌がんねえなと思って」
「いや、嫌がってはいたじゃないすか……でも敬吾さんが色々……してくれるんならまあ、興奮はしますって話」
「あー……」
そういえばそうだったか。
しかし今敬吾は、この無様な逸を前にして半ば納得してしまっているのである。
少々の嫉妬を感じたのは確かだが、人をここまでしておいて、未だ疑うということもないだろう。
「……敬吾さん?」
「え、あー、うん」
「……?」
「……………えーっとな」
しばし、敬吾が言葉を探す。
「…………どうしよう、別にやりたいことがない」
「えーーーーーー!!!!!!」
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