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18 息を呑んで
しおりを挟む昼休み後、3限。教師の侵入によって昼休みは呆気なく途切れてしまう。戸が音を立てて開かれた途端、ボリュームが絞られる談笑。
生徒が大人と少しだけ壁をつくる瞬間だと、僕はなんとなく思う。
しかし。
「あーいじゃあ今から授業始めんぞー」
今日教室に入ってきた彼は、昼休みを断ち切ろうなどという意識は微塵もないようだった。
クラスの全員が息を呑んだのが分かった。飴仙人じゃないこともそうだけど、それ以上に目の前の大人の挙措に対して。
彼は前髪をアップにして結んでおり、いわゆる教師の風貌とはおよそかけ離れていた。年齢は27、8だろうか。
女子がしていてもおかしくない髪型であるが、彫りの深い横顔と垂れつつも切れ長な目尻によって寧ろその男性性が際立っている。
高身長で白衣を着崩しているので先生というよりはモデルみたいだった。
「……なんだ、やけに静かだな。もう少しお喋りしてても良いんだぜ」
ブラックコーヒーにも似た焦げ茶色の髪を掻きながら、その男は出席簿を広げて教卓に置いた。広げたままに、あ、忘れてた、と呟くと黒板に何やら書きつけ始める。左利きだった。
クラスの全員が彼の一挙手一投足に目を奪われた瞬間、
彼はちらりとこちらに流し目を寄越した。
思わずどきりとしたのはきっと僕だけじゃない。何でもない動作が目を惹く辺り、最近会った誰かに似ている──
『銀 朱里』
カラン、とチョークの転がる音。
「吉原先生が急に体調を悪くされた」
最初からそこに居る男が、唐突に現れたように思えてハッとした。存在のスイッチでも持っているかのようだった。彼がゆるりと頭を傾けると外ハネ気味の髪が少し揺れ、その揺れにすら目がいった。
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