万永千年宇宙浮遊一万年後地球目指

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一万年後地球目指

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 万永 倫太郎は言った。
 
「1万年後の未来をこの目で見たい」と。
 
 側近たちはこの言葉に困惑しつつも、
 
「なぜ1万年後の未来を見たいのですか?」
 
 と聞くと、
 
「未来は誰しもの憧れだ。島を買った、宇宙にも行った。残りはなんだ?未来しかないだろう」
「ですが、なぜ1万年後なのですか?」
「私の苗字がミレニアムだからだよ。仮に千年後の未来を見たところで、すでに博識者たちが予想してしまっている。省エネ技術、再生可能エネルギーへの転換やら、中産階級が大半を占め、貧困層は一部にとどまるやら、IT革命のように細部を磨きあげて効率化するといった質的発展の仕方を辿るやら。そんな予備知識を備えた未来を見たところで、感動なんてしない。ただの答え合わせだ」
 
 万永はプレゼンをするかのように、淡々と千年後の未来について語り始めた。今に始まったことではない。島を購入するときも、宇宙に旅行するときも、万永は一度興味を持つと、その知識をひけらかしている。側近たちも慣れたように、頷きながら相づちを打つ。今回ばかりはその欲望を満たすことは不可能であろう。
 万永は自分の資産をすべてつぎ込んででも、1万年先の未来を渇望した。もちろん、インターネットで検索したらすぐ出るような知識だけでは、到底無理な話で合った。万永がまず始めに取り組んだことは、その知識に長けている者から情報を聞くことであった。そして、この日の夜に進化論の有識者であるマクバ博士が屋敷に訪れた。
 そびえ立つ門の前にマクバが立つと、それを待ち兼ねていたかのように門が開いた。マクバの目の前に現れた執事は深々と頭を下げ、手を屋敷の方に向けた。
 
「マクバ様。遠方から遥々ありがとうございます。こちらになります」
 
 そう言って、万永が待機している応接間へと案内した。
 マクバが応接間に入ると、座っていた万永は立ち上がり、手を差し伸べた。
 
「博士。よく来てくださった」
 
 差し出された手を握り、マクバはソファに腰を下ろす。執事はマクバに聞いた。
 
「お飲み物は何が宜しいですか?」
「じゃあ、水を頼むよ。常温で」
「かしこまりました」
 
 水が到着するまで待っていられない万永は、すぐに本題に入った。
 
「単刀直入に聞きますが、1万年先の未来に行くことはできますか?」
 
 執事はドアをノックし、マクバの前に水を置く。
 
「ありがとう」
 
 マクバはそう言って、一口含んでから言った。
 
「それは今すぐ見たいってことかね?」
「可能であれば、すぐにでも」
「アインシュタインの相対性理論は知っているかね?」
「聞いたことはあります」
「高速で移動する世界では、時間の進みが遅くなる。すなわち、光速で飛行往復をして地球に帰還すれば、未来を見られなくもない。まぁ1万年ともなると往復間で亡くなってしまうけどね」
「その理論だと、宇宙船がタイムマシンということかな?」
「そうだ。あと過去には戻れないこともデメリットだね」
 
 マクバはソファにもたれかかった。
 
「私を呼んだということは、科学的方法では不可能だと、貴方も思っているのでしょう」
 
 万永は頷いた。
 
「ええ。そのために博士を呼びました」
「宜しい。具体的に何を知りたいんだ?」
「終着点は結局のところ科学になりますが、その前段階で博士に聞きたい」
「ほう」
「コールドスリープで機能を眠らせることは可能ですか?」
 
 マクバは腕を組み、難色を示した。
 
「大前提だが、人間の脳は酸素なしで約5分間しか機能しないのだよ。もちろん、脳と身体の残りの部分が冷やされると、生化学的反応が遅くなり、酸素なしでも長時間耐えることができる。しかし再び身体が温まることで、血液が回復するにつれて、酸素との化学反応によって細胞へ損傷を与える可能性もあるのだよ」
「つまりは」
「1万年も冷凍していると、解凍したときに亡くなる可能性が極めて高いということだね」
 
 万永は深い溜め息を吐き、執事を呼び出した。
 
「ワインを。博士もどうですか?」
 
 マクバは頷いた。
 
「ありがたく、いただこう」
 
 2人の前に置かれたグラスに、赤ワインが注がれる。簡単なオードブルも置かれ、乾杯した後は簡単な雑談が行われた。マクバは香りを嗅いでから、ワインを含んだ。
 
「これは上等ですな」
「ええ、最高峰を揃えているので」
 
 マクバはグラスを置き、万永の目を見て言った。
 
「終着点は結局のところ科学。それは正解だね」
 
 万永はその言葉にグラスを置いた。
 
「方法があると?」
 
 マクバはニヤッと笑う。
 
「人間の進化にも限界がある。しかし、どうだ。科学は無限大ではないか」
 
 万永は黙って話を聞く。マクバは続けた。
 
「千年後の未来では、生体とAIの境界がなくなるだろう。それは、バイオテクノロジーやサイボーグ技術の発達によってね」
 
 万永はワインを勢いよく飲んだ。
 
「博士。結論を言っていただきたい」
「貴方が人類初の新たな知的生命体を作れば可能なのだよ」
 
 マクバが提示した可能とする方法は、ITの進化であった。
 
 万永はマクバと共に、生物工学の有識者であるアダムスに会った。
 
「やぁよく来てくださった」
 
 万永はアダムスに座るよう促し、さっそく本題に入る。結論から言うと、今の万永の記憶をデータ化し、マイクロ化にすることは可能である。
 
「ただし、それは1万年も保持される確証がない」
 
 アダムスは頷いて少しの間を空けてから言った。それはサイボーグ化も同様である。
 
「では、このサイボーグに記憶を埋め込み、コールドスリープさせるのはどうだろうか」
「酸素との化学反応による細胞への損傷は起こりえない」
「耐熱性、防水、腐食防止を備えているサイボーグを冷凍保存することで、機能を低下させることなく、解凍時に起動するであろう」
 
 それが万永、マクバ、アダムスの出した答えであった。
 サイボーグ技術の活用。人体にバイオニックな体を持つサイボーグが創り出され、その身体には耐久性や防水性、そして耐熱性が備わっていた。しかし、次の問題は記憶の保存だった。
 そこで、アダムスが提案をする。
 
「サイボーグの脳に、微細なデータストレージが埋め込まし、そこに記憶がデータ化するのはどうだろうか。そして、コールドスリープ技術を利用して、サイボーグを氷の中に封じ込めることで、機能の低下を最小限に抑えながら長期間保存することが可能だ」
 
 氷の中に閉じ込められたサイボーグは、時間を超える長い眠りにつく。その身体は氷の中で凍り付き、周囲の環境との化学反応から守られる。
 理論上は可能ということをアダムスの知人でもある機械工学の第一人者のマーチンに確認してもらう。パソコンを通じて、オンライン上で繋がると、マーチンは言った。
 
「話は理解した。これはあくまでも理論上だが、いくつか条件がある。微細なデータストレージの埋め込み、コールドスリープ技術の利用、そしてその手法だ」
 
 マーチンは順を追って説明する。
 
「サイボーグの脳に、ナノテクノロジーを用いて微細なデータストレージが埋め込まれることは可能だ。もちろん、これにより脳の活動や記憶がデータ化され、必要に応じてバックアップやアップデートも可能になる」
「次にコールドスリープだが、生命体を低温状態に保ち、サイボーグが氷の中に封じ込められる際には、この技術を利用して体の機能を停止させることが可能だ。低温状態によって、ウイルスや消耗、損傷や劣化が抑制される。これにより、サイボーグの機能が長期間にわたって維持される」
「サイボーグがコールドスリープに入る際には、特殊な容器に封入され、その容器が液体窒素や液体ヘリウムなどの冷却剤で満たされる。容器内の温度は摂氏マイナス数十度に保たれ、サイボーグの体温が徐々に冷却され、同時に容器内のガスや液体は適切な圧力で維持され、サイボーグの身体に適切な環境が可能となる。もちろん、データストレージには、耐寒性のある材料や暗号化技術が使われ、氷の中でも情報が保護される。これらの要素を組み合わせることで、長期間にわたってサイボーグを保存し、その機能や記憶を維持することが可能になる」
 
 万永はマーチンに確認する。
 
「つまりは可能ということかな?」
「理論上は可能だ。しかし、そのためにも微細なデータストレージ、サイボーグ、コールドスリープに入るための特殊な容器。断熱性、耐寒性、圧力調整機能、封密性、通信機能を備えている。それに場所と莫大なエネルギーが必要になる」
「そうか…」
 
 万永が何かを話す前に、マーチンが提案をする。
 
「もし私がそれをおこなうとすれば、一万年を待たずして、一万年を待つことを考えるだろう」
「どういうことですか?」
「そこにいるのはマクバ博士かな?」
 
 マクバは軽く会釈をする。
 
「相対性理論ですかな…」
「その通りだ。地上で一万年を待つのではなく、宇宙で待てばいいのです」
 
 万永は呟くように言う。
 
「ロケットの開発…」
「そして最も重要なのはタキオンだ」
 
 光速に近づくとエネルギーは無限大に近づき、速いほどエネルギーは小さくなる。光速を超える仮想的な物体といわれているタキオンがあるとしたら、エネルギーを最小限に収め、タイムマシンが完成する。
 万永は無人島を買い取り、そこを研究所とし、いくつかの分野に分かれて開発が始動した。
 まずはサイボーグであるが、それは人型ではなく最小限で起動できるように、卓球玉ほどのサイズの丸型サイボーグ。全方向を確認できるカメラを搭載し、断熱性、耐寒性、圧力調整機能、封密性、通信機能を備えるよう開発が進む。
 そしてデータストレージだが、こちらにも断熱性、耐寒性、圧力調整機能、封密性、通信機能を備え付けさせ、ナノサイズのチップを開発させる必要があった。
 コールドスリープで使われる容器もそうだ。すべてに断熱性、耐寒性、圧力調整機能、封密性、通信機を備え付けさせ、サイボーグを保管するために開発が進む。
 これらを用いて、今度は発車するロケットも開発しなければならない。そのために光速に耐えられるロケット本体が必要になる。
 水の屈折率は1.333なので、水中での光速は(3.00×10^8)/1.333=2.25×10^8m/s。真空では光速より遅い2.25×10^8m/sより少し速い荷電粒子が水中に入ると、水中では光速以上の速度となりチェレンコフ光というものを発する。
 相対性理論では『物体が加速した場合、その物体は光の速度を超えることはできない』としている。つまり、止まっているものや光よりも遅い速度で動いていたものが、加速しても光の速度を超えることはできないということ。では、最初から光の速度以上で動いているものであればどうなのか。科学者のジェニフャーこれは、相対性理論として矛盾していないと語っている。
 
「タキオンが光の10倍の速度を出すことができたとしたら、映画などに出てくる過去の自分への警告をメールで送るなんて可能だ」
 
 
 島では万永の資産がつぎ込まれ、未来の科学技術が飛躍的に発展し、巨大な加速器が開発されようとした。この加速器は、超高エネルギーの粒子を衝突させることで、極めて高いエネルギー状態を作り出す。これによって、空間そのものがエネルギーで満たされ、エネルギー場が変化していく。高エネルギー衝突実験によって、エネルギーの波が空間を通じて広がり、新たなエネルギー状態が生まれる。そしてそれを水中実験で行い、チェレンコフ光を発生させようとしていた。
 量子力学的なプロセスによって、空間のエネルギー場が変化する仕組みも考えられる。島では量子場理論や量子エンタングルメントの原理をさらに理解し、空間そのものが巨視的な量子効果を示すことを発見することに成功する。
 
「つまりはどういうことかな?」
「微小な量子のゆらぎが大きなエネルギー変化を引き起こし、空間のエネルギー場が変化することがあるんです。量子力学的なプロセスによって、エネルギー場の特定の領域が増幅されることで、タキオンなどの特殊な粒子が生成される可能性です」
「つまりは?」
「タイムマシンの実現が可能性ということです」
 
 計画はこうである。まず場所を島から宇宙へと拠点を移動させる必要があった。宇宙にて研究所を設け、そこでは島で開発したサイボーグにデータストレージを収納し、タキオンによって発生したチェレンコフ光を通って、宇宙空間に発射される。
 
「特殊容器とはもしかして…」
「ええ。ロケットそのものだ」
 
 発射されるロケットは必要最低限で小型化にし、その中にはサイボーグしか収納されず、中はコールドスリープ状態を保つことができる。
 このチェレンコフ光を使えば、摩擦抵抗のない宇宙空間では速度を落とすことなく、保つことができる。
 
「これを使えば、おおよそ発射されてから五百年程度で地球時間から五千年経過したことが可能だ」
 
 これまでの過程を踏まえ、小型で球状のサイボーグを作るためには、軽量でかつ耐久性がある材料を選択する必要と、断熱性能や耐寒性、圧力調整に適した材料も考慮することが不可欠である。
  サイボーグの製造プロセスは、選択した材料と設計に基づいて行われており、球状の外殻を作るために、精密な加工技術や3Dプリンティングなどの技術が使用された。すべてを踏まえ、過去の検証から高い強度と耐圧性に優れているアルミニウム合金が使用される。
 サイボーグに搭載されるカメラ、通信機能、圧力調整機能などを統合するために内部の回路設計やソフトウェア開発を終えると、テストと調整に移る。そして最終段階に入ると、封密性の確保を検証する。最小限のサイズであるため、封密性を確保することが重要であることは明らかだ。外部からの侵入や破損から内部機構を保護するために、適切なシールやケースが必要となる。
 それらの過程を完成したのが球体サイボーグだ。球体は透明のケースで持続浮遊しており、万永はそれを不思議そうにのぞき込んだ。
 
「これが…私の殻になるのか…」
「ええ。これが発射されてから千年後。万永様はこの球体で生き延びるのです」
「そうか…」
 
 万永は何とも感情にしがたい表情を浮かべる。これで一万年後の地球を見て、もし生命が生き続けていたとしても、自分はこの球体で生きていくしかない。もとはただ一万年後を見たかっただけだが、そうなれば欲も出てしまう。
 
「やはり私自身をコールドスリープすることは不可能なのか?」
「…そうですね。やる価値はあります」
 
 万永本体も今の研究技術を活かし、島の研究所内にコールドスリープをすることに決定した。それは発射されてから地球に帰還してからのことであるが。
 ここまでに技術を用いれば、万永自身をコールドスリープすること自体は難しくない。ただ懸念されることは一万年後までというエネルギーと設備だ。
 ロケットに関しては最初の発射さえ済ませてしまえば、基本的にエネルギーを抑えることができる。とはいえ、千年間はコールドスリープ状態を維持し、五百年後には力点を変換し、地球に帰ってくるようにしなければならない。コールドスリープ状態を解除するのにエネルギーは不要であるが。球体はコールドスリープ状態が解除されると、自動で起動するようシステムが作られているから。それでも千年間故障もなく、維持されるかは実際に試さないと難しいことであるが、理論上は可能であった。
 それを一万年間。万永本人をコールドスリープ状態にしなかればならない。莫大なエネルギーと施設が維持され続けなければ不可能であり、それ自体がほぼ不可能に近いことから答えは分かっていた。それでも万永は諦めることを知らない。
 
「百年周期で施設の…いや違う。五十年周期で私のクローンを作ればいいのだ」
 
 とんでもないことを言う万永。マクバは首を横に振った。
 
「それは生命の冒涜だ」
「サイボーグ化は違うというのか?」
 
 万永とマクバの口論は続き、最終的には計画当初から携わっていたマクバが離脱する形になってしまう。それでも万永は諦めない。それが万永であることは側近たちも重々承知であった。
 
 球体。それに万永の記憶が記録されているデータストレージを挿入する。そしてロケットというコールドスリープカプセルに入れると、あとは発射するだけである。
 
「タキオン始動。チェレンコフ光確認」
 
 緑の光が交差し、チェレンコフ光が出現されると、緑の縄のような円状のワープホールが完成される。
 
「万永様。発車準備整いました」
「うむ…」
 
 最後に万永がボタンを押せば、ロケットはワープホールを通過し、宇宙空間に放たれる。
 そしてカウントダウンは始まる。
 
『3』
 
『2』
 
『1』
 
「発射!」
 
 万永がボタンを押すと、球体はワープホールに向かって動き出し、一瞬でその場から消えていった。急いでモニターで確認すると、球体は宇宙空間に放たれ、二万キロ先の遥か彼方を浮遊していることが分かった。
 
「…感謝をする。ありがとう」
 
 万永は満足げに頭を下げると、研究所は歓喜に湧く。そして万永たちは地球へと帰還する。今度は万永自身をコールドスリープするために。

 一万年後の地球。想像できるだろうか。
 長い年月が経ち、人類の痕跡はほとんど見当たらない地球かもしれない。もしかしたら、自然の力が再び支配する中で、新たな生命や文明が芽生えているかもしれない。
 人間ではなく、きっと我々の知らない生命体。
 それが一万年後に生きている人間かもしれない。
 
 太古の遺跡は、今や巨大な地層となって地球の地殻を覆っている。都市や建造物は風化し、植物や岩石に覆われ、地球の表面は静かな自然の美に包まれている。
 人類の文明が成し遂げた技術の痕跡は、たとえば地下の岩層に刻まれた巨大な何かが残っているかもしれない。それらは今や忘れ去られた記憶の一部であり、今を生きる我々はそれを知ることもなく、誰かが今も解明しようと動いている。
 
 生命は驚くほど多様で、地球全体が豊かな生態系に覆われているかもしれない。生物はその環境に適応する能力がある。魚もそう。首の長いきりん、鼻の長い像もそう。我々人間も、もしかしたら二酸化炭素しかない世界で生まれていたら、二酸化炭素を取り込んで生きる生命体だったかもしれない。
 そのような古代の種が新たな進化を遂げ、地球のあらゆる角に生息している。それは人間だけではなく、動物、植物。全てに当てはまる。
 もしかしたら今と同様に大気は澄み切り、水は清浄で、生命の息吹が地球を満たしていることだってありえるのだ。ただそこには人間が絶滅しており、地球は再び自らのリズムに戻り、別の何かの生命が自然と共存しているかもしれない。
 ただそこには人類の遺産はまだ地球を支配していり、遺伝子組み換えされた植物や動物が、人間が去った後も繁栄し、新たな生態系を形成している可能性だってある。二足歩行、もしくは四足歩行のサボテンが生きていたっておかしくはない。
 そして今と同じように、誰かが何かの遺跡から発見された技術や知識を得ることで、新たな文明が興る手助けとなっていても不思議ではない。仮に人間が絶滅したとしても、間接的には地球上に生き続けており、新たな生命体と共存していることだってあり得る。
 
 つまりは想像したところで分からないのだ。しかし想像を超えるほど変容していることだけは、確実だろう。なぜそんなことが分かるのか?世界のIT技術は今もなお進化している。日本の産業を例に挙げれば簡単だろう。
 1880年における外商の取扱の比率は輸出80%、輸入93%であり、1890年には輸出89%、輸入75%となり日本側の取扱比率は上昇した。しかし依然として外商が主導しており、日本側としては輸出増加が目標だった。明治政府は幕府の財政であるおよそ800万石を引き継いだが、約300の諸藩は合計3200万石もの財政や軍事を保持し、独立していた。
 それゆえに分割されていた経済力を、廃藩置県によって中央集権化した。政府は富国強兵を掲げていたが、この富国と強兵のどちらを優先するべきか対立した。富国を優先する側は誰もが知っている目標を立てる。
 
『殖産興業』
 
 松方デフレ期を経た1880年代半ばから1890年にかけて、企業勃興といった設備投資の急増が会社資本で行われたが、1890年恐慌によって第一次企業勃興期は途絶えた。
 しかし商法の制定を経て、日清戦後には再び企業勃興が始まった。第二次企業勃興期では、日露戦後も多くの会社設立が行われた。資本主義を社会として確立させることに至った技術的経済的変革を何というか。わざわざ言う必要もないほど有名な革命。
 
『産業革命』
 
 
 そして日本の産業革命期は1880半ばから1910年頃までとされている。その指標のとらえ方として、国内産業として生産及び消賀に関する財が定着させることに重視する考え方や、主導産業による機械制大工業を定着させることに重視する考え方がある。
 また地域経済と産業革命ないし産業化との関連に着目する視角や、国際分業体制といった貿易を重視する見解もある。この見解を踏まえた上で、日本を支えた綿紡績業、製糸業はどうなったのか。
 戦前期日本所を主導する産業であり、消費財生産部門の中心として綿紡績業があった。製糸業は課題点でもある外貨獲得において、当該期の諸機械類を輸入するために必要な産業であった。
 1880年代半ば以降では大規模紡績工場が新設され、事業規模を拡大する企業が現れた。1890年には国産綿糸生産量が綿糸輸入量を超え、1997年には輸入量よりも輪出量が増え、条約改正の目標を達成したかに思われた。
 しかし1920年代まで紡績機械は輸入品を利用し、原料も輸入樽花に依存していたことから、産業革命期の紡績業の発展は輸入超過の手助けをしていたことになる。
 特に原料格花輸入に関して、中国格花からインド稲花に転換するとともに、日本商社がインドの相花産地へ直接買い付けに赴いたことが指摘され、買い付けた格花の日本への輸送では、国家的な利益保障を受けた日本郵積メーカーと繊維関係品を扱う商社の業界団体である紡績連合会と運賃割戻しの輸送特約契約を結んだ。
 このことから、安価な原料綿花の調達を可能とするために、メーカー、商社、海運業者、国家の協力が行われたことがわかる。
 1880年代以降の製糸業においては、生糸輸出のうち5割以上はアメリカに向けられた。1890年代の市場では日本生糸が5割程度のシェアを占めた。
 1890年代末には原料繭購入資金の融資を受け、経営規模を拡大し、蒸気力を利用した近代的製糸工場を設立された。製糸業では等級賃金制という制度が導入され、これは工場全体の賃金コストは変わらず、競争へのインセンティブを高めることで、糸質の向上に寄与したとされている。
 またこれは製糸女工の低貨金や、長時間労働を強制するシステムといった一面もある。その後、中国糸などとの競合で一時期比率を低下した時期もあったが、大規模製糸工祖における品質管理の強化により、1910年代では6割のシェアを超えた。
 機械工業を中心とした重化学工業の発展があった産業革命期だったが、1910年代の製造工業の構成における重化学の比率は2割を超える程度で停滞していた。第一次世界大戦期や欧米からの輸入途絶により、1920年では3割を超えたものの、1925年には大戦前の水準に戻るといった傾向が、化学工業や造船業で顕著に見られた。
 しかし、第一次世界大戦期における重化学工業化によって、移植産業関連部門の機械生産については技術的な向上は続いていた。また金属工業については大戦後も後退せず、生産は増加していった。1920年代後半期では電力業を中軸として重化学工業化が進展していった。
 需要面では、第一次世界大戦期における諸産業の発展と、都市化による電鉄業の発達が大きく、また供給面では1914年における猪苗代発電所の設立以降、大型水力発電と長距離送電の技術が確立され、電源開発が進行したことが大きい。
 しかし1920年代になると重化学工業化の限界は明らかとなった。1910年代における日本の粗鋼生産は急増してはいたものの、1920年当時ではアメリカの50分の1、イギリスの10分の1程度といった生産性であった。また1910年代から軍用トラックの生産が開始されるが、乗用車の生産進出には至らなかった。
 これを知ったアメリカは日本国内に自動車メーカーが自動車組立工場を建てると、1920年代の日本における乗用車市場はアメリカ系自動車メーカーに独占された。
 このときはアメリカ、イギリスより劣っていたことがわかる。今でこそ日本の技術は世界から注目を浴び、評価をされている。
 何が言いたいか分かるだろうか。たった百数十年でここまで国は発展を成し遂げられるのだ。つまりは我々に一万年後の地球がどうなっているのか。予測不可能である。
 万永を除いては。
 
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