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2章 リリスと闇の侯爵家
91 エリカの推察
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「そう、うまく妨害できたというわけね」
豪奢なオプスキュリテ侯爵家の一室。
エリカは私室で、影である二人の男女から話を聞いていた。
「お兄様にも気づかれずに、よくやってくれたと思うわ。
ありがとう」
エリカはソファーに座り、花柄の繊細な絵柄が描かれたティーカップの紅茶に口をつけ、目の前にいる二人に労いの言葉をかけた。
静かにカップを優雅な動きで皿にもどす。
男は街の住人、女は修道女の姿で恭しく礼をした。
エリカに分かりやすいようにどのように、妨害をしたか姿を現し伝えてくれる。
確かに、この姿ならば街に溶け込むことができただろう。
ダミアンお兄様は何も気づくことはなったと思う。
まさかこの屋敷から動けない妹が妨害してくるなんて考えてもないだろうから。
外にいけば監視もなく自由にやれるなんて考えているところも我が兄ながら愚かなことだと手で唇を隠しながら弧を描いた。
報告によると、ダミアンお兄様は薔薇姫を見つけることが出来たらしい。
さすが魔族の協力を得ているだけある。
それともダミアンお兄様の執着の強さがなせる業だろうか。
どちらにしても、今までしっぽも出さなかった薔薇姫を見つけたことはすごい。
夜の町並みをいきなり駆け出したダミアンお兄様の後を追うと、そこには存在感が希薄な人物がいたという。
ダミアンお兄様はそれはもう愛しげに声をかけ抱きしめていたらしい。
そこを金髪の少女が現れてリリスと名前を呼んだ。
少女はダミアンお兄様と薔薇姫を引き離そうとしたようだ。
その少女からダミアンお兄様は逃れようとして薔薇姫を抱き抱え駆け出した。
そこをこの二人はうまく妨害したようだ。
薔薇姫を自分の部屋に連れ去ろうとした所を封じることができた。
ダミアンお兄様が何か事を起こそうとする前に封じることができて、良かったとエリカは一息着くことができた。
「下がって大丈夫よ」
「「はい、お嬢様」」
エリカは二人を下げさせる。
静かな部屋で考え事をはじめた。
紅茶のカップを持ち上げ、また紅茶を含んだ。
美味しく感じるはずの紅茶は考え事のせいで味が不味く感じてしまう。
「…苦い」
実は昨日からダミアンお兄様はこの屋敷に帰ってきていた。
その後の様子もエリカは影とともに監視していた。
ダミアンお兄様は薔薇姫を見つけたというのに誰にも報告をしていないようだった。
本来ならば、お父様とお母様に報告するはずなのに…。
報告を怠っているのか、故意に隠蔽する気なのだろう。
でもきっと協力者である魔族の女は王子に伝えることだろう。
あの色気の塊でしかなさそうな女は、主人にも媚びを売ることだろう。
そうなるとあの王子達は動き出す。
そこから話が向かうとでも思っているのだろうか、自らの口で報告するのが筋だと思うのに。
見つけたことを報告しない兄の代わりに、私が兄ことを父上に報告しようとエリカは考えた。
ダミアンお兄様を庇ってもいいけれど、まだ薔薇姫に心酔しているようならば話は別だ。
薔薇姫に恋してるという真実を証拠と共に両親に伝えれば、薔薇姫探しにはダミアンお兄様は参加させてもらえなくなることだろう。
そう思うと胸がスッとした。
小さな頃から兄を奪う薔薇姫が嫌いだった。
いなくなってもなお兄の心を離さない。
「…早く地底にひっこめばいいのに」
エリカは憎々しげに呟いた。
あんなにも美しく優しげな婚約者が二人も迎えに来ているのに何が不満なのだろう。
魔族と言うだけで相手と目と目を合わせ話し合うことも出来ないなんて子供だわとエリカは心が冷えた。
ダミアンお兄様から”教育”されていても、話し合えば言葉がちゃんと通じる相手である事が分かるのに。
自らの役目から逃げ出すなんて令嬢としても終わっている。
それでも彼らは我が兄はあの子を愛するのだと思うと苦い味がまた口の中に広がった。
「さて、お兄様の様子を見てからお父様とお母様のもとへいきましょう。
好きなようにはさせませんよ、お兄様」
ソファーから立ち上がりエリカは部屋から出ていった。
机の上には白く湯気が上がる紅茶が残されていた。
豪奢なオプスキュリテ侯爵家の一室。
エリカは私室で、影である二人の男女から話を聞いていた。
「お兄様にも気づかれずに、よくやってくれたと思うわ。
ありがとう」
エリカはソファーに座り、花柄の繊細な絵柄が描かれたティーカップの紅茶に口をつけ、目の前にいる二人に労いの言葉をかけた。
静かにカップを優雅な動きで皿にもどす。
男は街の住人、女は修道女の姿で恭しく礼をした。
エリカに分かりやすいようにどのように、妨害をしたか姿を現し伝えてくれる。
確かに、この姿ならば街に溶け込むことができただろう。
ダミアンお兄様は何も気づくことはなったと思う。
まさかこの屋敷から動けない妹が妨害してくるなんて考えてもないだろうから。
外にいけば監視もなく自由にやれるなんて考えているところも我が兄ながら愚かなことだと手で唇を隠しながら弧を描いた。
報告によると、ダミアンお兄様は薔薇姫を見つけることが出来たらしい。
さすが魔族の協力を得ているだけある。
それともダミアンお兄様の執着の強さがなせる業だろうか。
どちらにしても、今までしっぽも出さなかった薔薇姫を見つけたことはすごい。
夜の町並みをいきなり駆け出したダミアンお兄様の後を追うと、そこには存在感が希薄な人物がいたという。
ダミアンお兄様はそれはもう愛しげに声をかけ抱きしめていたらしい。
そこを金髪の少女が現れてリリスと名前を呼んだ。
少女はダミアンお兄様と薔薇姫を引き離そうとしたようだ。
その少女からダミアンお兄様は逃れようとして薔薇姫を抱き抱え駆け出した。
そこをこの二人はうまく妨害したようだ。
薔薇姫を自分の部屋に連れ去ろうとした所を封じることができた。
ダミアンお兄様が何か事を起こそうとする前に封じることができて、良かったとエリカは一息着くことができた。
「下がって大丈夫よ」
「「はい、お嬢様」」
エリカは二人を下げさせる。
静かな部屋で考え事をはじめた。
紅茶のカップを持ち上げ、また紅茶を含んだ。
美味しく感じるはずの紅茶は考え事のせいで味が不味く感じてしまう。
「…苦い」
実は昨日からダミアンお兄様はこの屋敷に帰ってきていた。
その後の様子もエリカは影とともに監視していた。
ダミアンお兄様は薔薇姫を見つけたというのに誰にも報告をしていないようだった。
本来ならば、お父様とお母様に報告するはずなのに…。
報告を怠っているのか、故意に隠蔽する気なのだろう。
でもきっと協力者である魔族の女は王子に伝えることだろう。
あの色気の塊でしかなさそうな女は、主人にも媚びを売ることだろう。
そうなるとあの王子達は動き出す。
そこから話が向かうとでも思っているのだろうか、自らの口で報告するのが筋だと思うのに。
見つけたことを報告しない兄の代わりに、私が兄ことを父上に報告しようとエリカは考えた。
ダミアンお兄様を庇ってもいいけれど、まだ薔薇姫に心酔しているようならば話は別だ。
薔薇姫に恋してるという真実を証拠と共に両親に伝えれば、薔薇姫探しにはダミアンお兄様は参加させてもらえなくなることだろう。
そう思うと胸がスッとした。
小さな頃から兄を奪う薔薇姫が嫌いだった。
いなくなってもなお兄の心を離さない。
「…早く地底にひっこめばいいのに」
エリカは憎々しげに呟いた。
あんなにも美しく優しげな婚約者が二人も迎えに来ているのに何が不満なのだろう。
魔族と言うだけで相手と目と目を合わせ話し合うことも出来ないなんて子供だわとエリカは心が冷えた。
ダミアンお兄様から”教育”されていても、話し合えば言葉がちゃんと通じる相手である事が分かるのに。
自らの役目から逃げ出すなんて令嬢としても終わっている。
それでも彼らは我が兄はあの子を愛するのだと思うと苦い味がまた口の中に広がった。
「さて、お兄様の様子を見てからお父様とお母様のもとへいきましょう。
好きなようにはさせませんよ、お兄様」
ソファーから立ち上がりエリカは部屋から出ていった。
机の上には白く湯気が上がる紅茶が残されていた。
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