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ルアナ・クリストフ
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「…広場についたら俺を探しにきた護衛たちに見つかって、そのまますぐに家に連れていかれたんだ。彼女にきちんとお礼をする間もなくあっという間だったから、それが心残りで…帰ってから父上に叱られたけどずっと彼女のことで頭がいっぱいだった……その後に貴女との顔合わせが…初めて会った時の貴女はとても可愛くて…すごくドキドキしたんだ……でもすぐに町で会ったあの娘の顔がちらついて、なんだかひどく悪いことをしてる気になった…それで形だけでも抵抗をと…言い訳にしかならないけど子供だったんだ…」
「本当にただの言い訳だな」
黙っているルアナの隣でノアが切り捨てる。
「……あの後きちんとお礼を言おうと今度は護衛も連れて町へ行ったんだけど、ついでとばかりに彼女が町を案内してくれてとても楽しかったんだ。…それで帰るときについ次の約束を…」
(幼い子供にとったらマナーを気にしてお茶会をするよりも、町を歩き回る方が楽しいでしょうね…きっと楽しいのは彼女といるからだとなって、私といるのが余計に憂鬱になったってところかしら…)
「それでも婚約者を蔑ろにして言い理由にはならないよ。君は自分の立場を理解するべきだった。子供の頃ならまだしも、成長した今となっては彼女と節度ある距離を保つべきだったし、それができなければ婚約解消なりするべきだったんだ。いくら身分は彼女が上だといっても相談くらいはできたはずだろう?それは君の怠慢だよ。それもしない君の行動はただの愚かの一言に尽きる」
「彼女からは俺の番の香りがしたんだ!」
ノアの厳しい言葉にジョエルはすぐさま言い返した。
「でも違った…だろう?」
「………あの頃はルアナ嬢からは何も感じなかった!」
「だから仕方ないと?本当に何も感じなかったのか?」
「………」
「もし私から香りがしたら貴方はどうしていましたか?」
いきなりの質問にジョエルはすぐに答えられない。
「彼女の後に気づいた場合、私が貴方を振り向かせるために騙したと思いませんか?過去に他国でそのような事件があったと聞きました。同じ香りという過去にない例より、そちらの可能性が先に浮かぶでしょう」
何か言いたそうにしているジョエルをおいて、ルアナは続ける。
「…私が香りを抑えた理由はもうひとつ。貴方の態度です」
「態度…?」
「そうです。貴方は最初から私にいい感情を持っていませんでした。あぁ今さら何も言わなくても大丈夫です…会う度に悪感情は伝わってましたから…そんな貴方が番だからと香りで私を好きになったところで、とても虚しいと思ったのです…これがなければ好意をもってもらえないのかと」
ルアナの思いをジョエルはただ無言で聞いている。
「だから私は貴方が私自身を好きになってもらえるように頑張ろうと思いました…まぁそれ以前に貴方の運命はすでにマノンさんでしたけど」
「違…「違いません」…っ」
ルアナはジョエルの言葉を直ぐ様遮る。
「あの瞬間まで貴方の運命は確かに彼女でした。だから彼女に拒否されても一緒にいたのでしょう?」
「………」
「この世界には運命の番なんてものがありますけれど、人の運命とはそれだけではないと思いますの。番ということを抜きにしてみてください……ジョエル様とマノンさんは、小説のような運命の出会いなのですわ。その時はただの出会いで終わったかもしれません。貴方には2日後【番】である私との出会いが待っていたのですから……でも五歳の貴方は私を拒絶しました。その瞬間私は貴方の運命の番ではなくただの政略結婚の相手となったのです」
「違う違う違う!!君こそが俺のっ─」
「拒絶し続けたのは貴方です」
「─っ」
「貴方が私に向き合おうとしてくれたのなら、私は貴方の番でいれたでしょう。でも貴方はそうしてくれませんでした。だから私は自分の香りを抑制した。この段階で私にとっても貴方はすでに番とは言えなくなったのかも知れませんわね……でも不思議ですわ」
「何が?」
ルアナの言葉にノアが反応する。
「だって私と彼女の香りが同じだから番と間違えたのはわかるわ。だってその香りが相手にとっての一番惹かれる香りってことですもの…でも私からしてみたらノア様とジョエル様の香りは違うわ」
「…確かに」
頷くノアとは反対に、ジョエルの顔が青ざめる。
「まさか…」
「そのまさかでしょうか…マノンさんは貴方が番ではないと最初から気づいていたと思いますわ。番を偽ることは犯罪ですけれど、彼女は自身が何かしたわけではないわ。貴方が恋をした彼女が、たまたま私と同じ香りだった。結果、何もしなくても彼女は貴方の運命の番になり得たのよ」
「本当にただの言い訳だな」
黙っているルアナの隣でノアが切り捨てる。
「……あの後きちんとお礼を言おうと今度は護衛も連れて町へ行ったんだけど、ついでとばかりに彼女が町を案内してくれてとても楽しかったんだ。…それで帰るときについ次の約束を…」
(幼い子供にとったらマナーを気にしてお茶会をするよりも、町を歩き回る方が楽しいでしょうね…きっと楽しいのは彼女といるからだとなって、私といるのが余計に憂鬱になったってところかしら…)
「それでも婚約者を蔑ろにして言い理由にはならないよ。君は自分の立場を理解するべきだった。子供の頃ならまだしも、成長した今となっては彼女と節度ある距離を保つべきだったし、それができなければ婚約解消なりするべきだったんだ。いくら身分は彼女が上だといっても相談くらいはできたはずだろう?それは君の怠慢だよ。それもしない君の行動はただの愚かの一言に尽きる」
「彼女からは俺の番の香りがしたんだ!」
ノアの厳しい言葉にジョエルはすぐさま言い返した。
「でも違った…だろう?」
「………あの頃はルアナ嬢からは何も感じなかった!」
「だから仕方ないと?本当に何も感じなかったのか?」
「………」
「もし私から香りがしたら貴方はどうしていましたか?」
いきなりの質問にジョエルはすぐに答えられない。
「彼女の後に気づいた場合、私が貴方を振り向かせるために騙したと思いませんか?過去に他国でそのような事件があったと聞きました。同じ香りという過去にない例より、そちらの可能性が先に浮かぶでしょう」
何か言いたそうにしているジョエルをおいて、ルアナは続ける。
「…私が香りを抑えた理由はもうひとつ。貴方の態度です」
「態度…?」
「そうです。貴方は最初から私にいい感情を持っていませんでした。あぁ今さら何も言わなくても大丈夫です…会う度に悪感情は伝わってましたから…そんな貴方が番だからと香りで私を好きになったところで、とても虚しいと思ったのです…これがなければ好意をもってもらえないのかと」
ルアナの思いをジョエルはただ無言で聞いている。
「だから私は貴方が私自身を好きになってもらえるように頑張ろうと思いました…まぁそれ以前に貴方の運命はすでにマノンさんでしたけど」
「違…「違いません」…っ」
ルアナはジョエルの言葉を直ぐ様遮る。
「あの瞬間まで貴方の運命は確かに彼女でした。だから彼女に拒否されても一緒にいたのでしょう?」
「………」
「この世界には運命の番なんてものがありますけれど、人の運命とはそれだけではないと思いますの。番ということを抜きにしてみてください……ジョエル様とマノンさんは、小説のような運命の出会いなのですわ。その時はただの出会いで終わったかもしれません。貴方には2日後【番】である私との出会いが待っていたのですから……でも五歳の貴方は私を拒絶しました。その瞬間私は貴方の運命の番ではなくただの政略結婚の相手となったのです」
「違う違う違う!!君こそが俺のっ─」
「拒絶し続けたのは貴方です」
「─っ」
「貴方が私に向き合おうとしてくれたのなら、私は貴方の番でいれたでしょう。でも貴方はそうしてくれませんでした。だから私は自分の香りを抑制した。この段階で私にとっても貴方はすでに番とは言えなくなったのかも知れませんわね……でも不思議ですわ」
「何が?」
ルアナの言葉にノアが反応する。
「だって私と彼女の香りが同じだから番と間違えたのはわかるわ。だってその香りが相手にとっての一番惹かれる香りってことですもの…でも私からしてみたらノア様とジョエル様の香りは違うわ」
「…確かに」
頷くノアとは反対に、ジョエルの顔が青ざめる。
「まさか…」
「そのまさかでしょうか…マノンさんは貴方が番ではないと最初から気づいていたと思いますわ。番を偽ることは犯罪ですけれど、彼女は自身が何かしたわけではないわ。貴方が恋をした彼女が、たまたま私と同じ香りだった。結果、何もしなくても彼女は貴方の運命の番になり得たのよ」
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