たまたまアルケミスト

門雪半蔵

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037◇新しい出会い(3)

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    ※下品な展開があります。苦手な方はご注意ください※




「む。オ・デコ? 聞き覚えのない家名だ。説明せよ、プリムローズ」
「はい、殿下」

 王女の問いかけに筆頭侍女が応えて、近寄って何やら耳打ちしてる。

「……」

 そんな主従を眺めながら、物凄く突っ込みたい気持ちに駆られてる。

 ――王女殿下はその妹のドロレスちゃんと、本当にそっくりだった。

 強気な印象の青い瞳。
 わしゃわしゃとした癖のある金髪。
 相貌も似ている。目元、鼻筋、口元――二人ともそっくりだ。

 お忍びで来ているんだろう。服まで同じような仕立ての庶民の夏着だった。

 ただし、体躯たいくだけが大きく……あまりにも大きく異なっている。

 てか、違い過ぎる。

 4歳年上で姉である王女様の方が、ドロレスちゃんよりも確実に一回り小さいのだ。

 なんというか、ちびっこいのだ。
 リトルでプチなのだ。
 ちみっちゃいのだ。
 ミニマムなのだ。

 『この世界』では「小さくて可愛いもの」を褒める時には、手のひらサイズでピンクのハート形をした「オトメナスみたい」と言う言い方をするけど、そんな感じだ。

 といっても、子供とか幼女には見えない。
 小柄なわりには、しっかりとした大人びたプロポーションなのだ。

 妹のドロレスちゃんは将来有望な美少女で、確実に美人か美女のどっちかに上位アッパークラスチェンジするに違いない逸材だけど、王女様もまたそうなのだ。
 ただ、極端なまでに小柄すぎるだけで。

 こうなるともうなにかの呪いか魔法で、こんなことになってるとしか思えない。
 いったん普通に成長してから、80%に縮小されたんじゃね? と言いたくなる。

 ……失礼すぎるから、絶対に口にはしないけれども。

 そんな事を考えていると、再び王女様が、すっと俺の前に寄って来た。
 なんか足さばきが特徴的だった。気付くといつの間にか近くに居る感じで、不意を突かれる。そう言えば、剣術を習ってるって言ってたか。

「私の侍女と共闘して『四ツ目の怪鳥』から街を守ってくれたそうだな。感謝する」

 そう言って王女は、礼儀正しく頭を下げた。
 日本の武道の、試合の前後のような一礼だった。

「……(困惑)」

 こんな時どんな顔すればいいのか分からないの――笑っちゃダメだろうしな。

「……(チラ)」

 いつの間にか、筆頭侍女だと言うプリムローズさんが近くにいた。
 そして、意図不明な目配せをしてくる。意図不明だ。

「…………(チラ)」
 ここはパン工房だから……絶対違うだろうな。

 それにしても、二人が並ぶと頭髪がカラフルだ。金と赤だ。

 お姫様が金髪で、その「お付き」っぽい人が赤毛ってコンビが登場するアニメって、いろいろあった気がするな。
 今朝方、赤毛のプリムローズさんが『魔法』で飛んでるところを見て、ふと思い出した『終末のイ○ッタ』のフ○ーネは微妙な髪の色だったけど……あれも金髪ブロンドだよな?

 他にも、『多○恋』とか。『銀○伝』は……違うな。
 あとは他には……とか思っていると、無言のままでいた俺に、プリムローズさんがフォローを入れてくれた。

「こちらはジン・コーシュ殿。『全知神』様より加護を与えられしお方」

 それ、黙ってて欲しい最重要機密なのに――あっさりとバラされた。

「まさに神に選ばれし『勇者』の如きお方です……(にやにや)」

 プリムローズさん?
 腹の底では、そんな事これっぽっちも思ってないでしょ? 顔見ると半笑いだし。

「そ、そうなんですか? 『全知神』様の加護とは、一体どのような?」

 『神殿』の『巫女見習い』だというシンシアさんが食いついてきた。

「俺に生命いのちの危機が及んだ時にのみ発動される神の御業みわざです。しかし……元々はそこにいる彼女(ミーヨ)が、俺の無事を願って祈ってくれたことによる、愛の奇跡の力なのです」

 とりあえず、適当な事を言っておく。
 うん、ウソはついてないし、真実はいちばん人の心に響くのだ――たぶん。

「……」無言で軽く驚く王女様。
「……」無言で軽く俺を睨む侍女殿。
「……」無言でパンを頬張る元王女様。
「……」無言で崇敬の目を向ける巫女見習い。
「……(いいなあ)」ボソッと呟くちょっとお茶目なパン屋さん。

 反応は様々だったけど、みんながそれぞれの表情でミーヨを見ると、
「……ジンくん」

 ミーヨがおでこまで蛍光ピンクに染まった。なんで蛍光色?
 俺が「愛の奇跡の力」とか言ったのが、そんなに恥ずかしかったのか?

「「「「……(憧憬)」」」」

 なんとなく、みんなに憧れの目を向けられる。

 ――よし、俺に対する評価と好感度が上がったところで、『旅人のマントル』を脱いで、『全知神』様の加護である『★不可侵の被膜☆』をみんなに見せてあげようっと。

 それはすなわち俺の皮膚! 俺様そのものなのだ。

「今、それをお見せしましょう!」

 俺は全裸になった。

「「「「「きゃ――――っ!」」」」」

 うん、大人気だ。まったく衰えるところを知らない人気だな(※誤解)。

 なんてゆーか、俺はこの時、寝不足気味だったので血液が下に下がってて、まともな思考が出来なかったのかもしれない。

 それがこの後、あのような椿事ちんじを引き起こすことになろうとは……。

      ◇

 俺は床に足を折りたたんで座らせられている。
 まるで罪人のように。

「なんで『正座』させられてるのか、理解してるよね?」

 プリムローズさんが、鬼のようだ。

「いえ、まったく。そもそも、全裸になることがダメだっていうのなら、産まれたばかりの赤ん坊はどうなるんですか? 『生まれる事が罪』なのですか? 人はみな生まれた時から原罪を背負わせられて生きていかなきゃならないんですか?」

 俺は足をもそもそさせながら自己の正当性を主張する。
 この体、うまく正座出来ないんだな。足が痛い。

「そんな! 『生まれる事が罪』なんて!」

 『巫女見習い』のシンシアさんが俺の言葉に衝撃を受けたようだ。
 どうでもいいけど、彼女、白い頬に紅がさして、目が潤んでるのは何故だろう? 風邪の初期症状かな?

「みんなお年頃なんだよ。あんなの見せられたら……ハアハア」

 スウさん、どうした? 動悸・息切れかな? めまいは平気かな?

「お兄さん、やることが豪快だよね。うちのお爺ちゃんだってあんなの丸出しにしないよ」

 ドロレスちゃんも頬が赤い。思春期か?

「む? あんなの? あんなのとは何だ?」

 王女様が不思議そうだ。特に動揺はないようだった。

「それは……ジンくんのおち」
「言わなくてもいい! ミーヨ、どうしてあなた、もっとちゃんと彼を躾けないの? 子供の頃からずーっとこうじゃないの?」

 プリムローズさんの怒りの矛先がミーヨに向かいそうだ。

「やめてくれ、ミーヨは悪くない。ついでに俺もぜんぜん悪くない」
「あんたは悪いだろう」

 決めつけられる。冤罪だ。全裸は正義だ。

「やっぱ、この体で正座とかムリ」
 もう足が痛いので立ち上がる。

「……ってそんな恰好で立たないで! 座りなさい。もう! 隠しなさい」
 プリムローズさんが慌ててる。

「プリムローズ」
「はい、殿下」

の者のあんなのだが、握ってみたいが、問題ないか?」

 王女殿下が平然と言う。

「はぁぁあああ? いえ、なりません、殿下。そんなものを……あっ」

 プリムローズさんの制止を振り切って、王女殿下の小さな手が俺様の(以下略)。




 ※これ以降、映像が途切れ、音声のみとなります。ご了承ください※




「うむ! 剣のつかのようだ。握りやすく、抜きやすい」
「……殿下。おやめください。ソレは剣では……」

「うむ、この柄頭つかがしら、このひっかかりがいいな。素晴らしい。我が剣の柄をこのカタチにしよう。抜刀速度たちゆきが上がるに違いない。試してみよう」
「おやめください、殿下!」

「はッ!」
「あっ」

「はッ!」
「ううっっ」

「はッ!」
「うあっっ」

「「「「……うっわああああ」」」」

「うむ。素晴らしい! この反りもまたいいな。我が『居合』の技も一段上に行けよう。この長さならば、抜刀後も両手で握れるし。良いな、これは」
「――殿下。ぷーくすくす。アカン、おもろい」

「む、なんだこのヌメりは? 手が滑る。もっと強く握るべきか」
「くうっっ」

「「「……うっわああああ」」」

「……ああっ、女王様」
「む、私は第三王女だ」

「くっくっくっくっ」
「プリちゃん、笑ってないで止めてあげて! ジンくん……もう、そろそろ」
「はあ……はあ……」

「うむ、もう一度。抜刀してみよう」
「……もう、むりです」

「はッ!」
「…………う」

「「「「「「あっ!」」」」」」








   花が、咲イタヨ。








「栗の花?」

 その呟きは、誰の声だったろう?

 薄れゆく意識の中で、たしかにそんな声が聞こえた……。
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