たまたまアルケミスト

門雪半蔵

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065◇宝探し(5)

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「これって……石ころ? 黒い石ころにしか見えないんだけど」

 ミーヨが呆然としている。
 みんなで顔を寄せて、「それ・・」を確認する。

「「「「石だね」」」」

「でも、石でいいんじゃないんですか? 『石は丘に』が当たりだったんだから」

 最終問題に正解した後、ずっと無口だったドロレスちゃんが言う。

「「「「だね!」」」」

 みんな、さっくりと同意する。

「……」

 でも、少し気掛かりな事があるな。

「ところで、プリムローズさん。このまま行くと本当にお宝が出て来そうなんですけど――王家とは無関係な俺が」
「む。違う」

 俺の言葉は、ラウラ姫に途中で切られた。

「君はもう無関係じゃないだろう。第三王女ラウラ姫殿下の『愛人』が何を言ってる?」

 プリムローズさんが言うと、姫が頷いて笑った。

「うむ」

「「「あ、愛人!?」」」

 俺とミーヨとシンシアさんだ。ハモっちゃった。
 てか、より優雅に『いとびと』と呼んでほしいっス。

「でなきゃ、君に王家の秘宝探しなんて持ち掛けないよ。王家の一員のラウラ姫殿下の『陣営』である我々が秘宝探しをしても、問題はないさ」

 陣営ってなんだよ?
 選挙か? いつの間に、そんなくくりに。

「あのー、私とミーヨさんは?」
 シンシアさんの問いに、プリムローズさんが面倒くさそうに応じた。

「君らは殿下の愛人の愛人だから問題ない。細かい事は気にするな」
「うむ」
 ラウラ姫が気安く頷いた。

 いいのか? そっかー。

「いえ、あのー、私は『巫女見習い』なので、そんな関係では」
 黒髪美少女の困惑する感じとか……萌えるな!

「でも、シンシアさんは俺の初めてのひとですし」
「え? あ――っ、なんて事を言い出すんですか?」

 一瞬考え込んだけど、思い当たる節があったのだろう。シンシアさんが顔を真っ赤にして俯いた。

「……」

 あ、いけね。
 ミーヨが俺を睨んでる。

 俺は、落ち着いてその視線を受け止め、
「そして、ミーヨも俺の初めてのひとだし」
 そう言うと、
「わた、わたしも、そうだったよ」
 ミーヨが、おでこまで赤くなった。

 よし、全方位外交終了。
 人間って、こうやって大人になってくんだな……違うか。

 そこへ誰かやって来た。

「こっちにミーヨちゃんが来てるって本当……? あ、いたいた。ミーヨちゃん!」

 名前は知らないけれど、顔には見覚えがあるな。
 養老院ここで働いてる、炊事のおばちゃんの一人だ。

「あ、サーシュカジュシエンヌさん」
 ミーヨは人あたり良く、微笑んで言った。

 うん、覚えらんねー名だ。

「あ、ジン君も来てるね? またアレ頼んでいいかな?」

 サー……さんが俺を見つけて、寄って来る。

「えー、アレっスか?」
「ア・レ・よ」

 イヤ、俺の3倍以上の年齢の女性に、そんな風に言われてもな。

      ◇

 またしても話は脱線して、脇道に逸れる。

 養老院には、たくさんのお年寄りが暮らしてるけど、固い食べ物はウケ・・が悪い。

 みなさん、加齢で歯が無くなっていたり、あごの力が弱くて、上手に噛めなくなっているからだ。
 そんなこともあって、スウさんの工房では「柔らか白パン」を作ってここに納めているのだけれど……。

 人はパンのみにて生きるにあらず――

 原典は知らないけど、『地球』には、そんな言葉があるのを俺は知ってる。

 つまり、パン以外にもオカズがいるのだ。

 あれ? 原典の主旨から完全に外れた気がする。
 まあ、いいか。

 もちろん、オカズといっても、年頃の男の子が……って、そういうのもいいか。

 オカズとは、「副食」や「副菜」の事だ。
 ……ただ、こっちの方も、固いとウケが悪い。

 貴族の「ご令嬢」とはいえ、田舎の農村で育ったミーヨは、いろいろと詳しいらしく、ここの「まかないのおばちゃんたち」に調理方法について、いろいろと相談を受けていた。
 しかし、山菜の「アク抜き」だの「渋抜き」だのは知ってはいても、食べやすく柔らかく……というと難しいらしいので、俺に無茶ぶりしてきた。

 めんどかった俺は、『錬金術』で、それを行う事にしたのだった。

 養老院の食堂に隣接された厨房で、食材の野菜が山積みになった台の前で、俺は念じた。

(液体錬成。セルロース水溶液)

   チン!

 今回も、さくっと成功だ。

 植物なんて、固さの元になってる「食物繊維」のセルロースを抜けば、あとはフニャフニャ。これで「柔らか野菜」の出来上がりだ。

 あとは料理して、「おあがりよ!」だ。

 そう言えば、あれの○色先輩って「裸エプロン」だったな……男なのに。
 イヤー、それもえるわー。フニャフニャになるわ(笑)。

 それはそれとして、超古代文明の遺産(たぶん)である『守護の星』による物質の『再構築』――俺の『錬金術』は、「楽をしたがる」という傾向があるのが判っているので、原材料が「近く」にあれば、そこから調達するのは確定的。

 それを利用して、特定の物体『野菜』から特定の物質『セルロース』を引っこ抜くような『錬成』を行うと、結果としてお年寄り用の『柔らか食材』が誕生するのだった。

 これって、最初のうちは、あくまでもお年寄り用の食材軟化作戦だったので、出来た『水溶液』は考えなしにそのまま(下水に)流していた。

 しかし、ある時「たしかセルロースって、なんかとくっつくと凄い硬くなるんじゃなかったっけ?」と思い付き、しばらくして『なんか』がリグニンという物質だったのを思い出した。

 で、『ケモノ』が出る森の中にこっそり忍び込んで、どう見ても利用価値のなさそうな「木の切り株」のある区画で、『リグニン水溶液』を錬成つくり、セルロースと混ぜて、楯としても使える『なべのふた』を製作してみたのだ。

 型をとって圧力を加えたり、均等に乾燥させたり……といった試行錯誤はあったけど、製作は上手くいって、それは先日の事件で、楯として使う前に『人間大砲』の砲尾と俺の乗る台座として使用された。

 発射炸薬となったプリムローズさんの魔法『★空気爆弾☆』でもほとんど破損しなかったので、その強度と有用性は証明されたけど……植物繊維の密度が高くて、ミーヨが持つには重たいらしい。

 その軽量化のために、ものすごく軽くて同じ厚みの鉄の数倍以上の強度を持つという「セルロース・ナノ・ファイバー」を『錬成』しようと試みてはいるものの、こっちは全然性交……イヤ、成功していないのだった。

 なんでやろ?

      ◇

 いい機会だったので、幼い頃『魔法の天才』と呼ばれていたというプリムローズさんに相談してみた。

「『せるろーす』? 『かーぼん・なの・ちゅーぶ』じゃなくて?」
「イヤ、むしろそっちは絶対に無理だと思います」

 俺の『体内錬成』は、俺自身が『前世』もしくは今世で、見たり、触ったりしたものじゃないとダメだから、そんな『地球』の研究所レベルの物質は不可能だと思えるのだ。

 ただ、先日見たり触ったりした『魔法合金』の「ロリ○ンタイト」って、その正体はなんだったんだろう? って疑念も湧くけれども。
 ……イヤ、一応物質の名前だから伏せ字の必要ないか。「ロリマンタイト」だよ。

「ああ、でも『なのせるろーす』とか、食品にも使われてたって聞いた事はあるな」
「でしょう?」

 アイスクリームの「型崩れ防止」に入ってるヤツも、あるらしいのだ。
 と言うか、そもそもが「ナノメートル」単位にまで、細かく千切れたセルロース繊維の事なので、どこかしらで「体感」してるはずなんだけどな。

「でもまあ、考えられるのは、『この世界アアス』の『世界の理ことわりつかさ』に無いからじゃないの?」

「――と言うと? と言うか、そもそも『世界の理の司』ってなんなんスか?」

 ミーヨは厨房の手伝いに行ってるし、ラウラ姫は寝てる。シンシアさんは『癒し手』として具合の良くないお年寄りを診てる。
 ドロレスちゃんは……どこだろう?

「かつて『この世界』にあった超古代文明の遺産と推測される『世界の理の司』は、『いんたーねっと』のような『ねっとわーく』を張り巡らせて、世界に満ちている『守護の星』を動かして『魔法』を発動させるけど……その本体がどこにどういう風に存在してるか? については今のところ謎ね」

「……はあ」
 調べようがないのか……誰も調べようとしないのか。

「でも、いろいろな可否の『判定』や『判断』などを行っているところを見ると、その中核部分は『地球』で言う『人工知能』みたいなものじゃないかと推測されるわね。どうやら、人間の思考や感情まで読み取れるようだし」
「……はあ」

 『判定』とか『判断』って、他の生き物に対して殺傷能力のある攻撃的な『魔法』を発動させる事が出来ない――っていう『この世界』の『魔法』のルールの事だろうな。

 そんで、人間の思考や感情……って、どうやって読み取ってるんだ?

「そしてその中には、でっかい『でーたべーす』というか巨大な『らいぶらり』というか、知識と情報の塊のようなものを内包しているらしいのよ」

 プリムローズさんの水色の瞳に赤みがさして、紫色に見える。
 知的好奇心が刺激されてるんだろう。

「それはおそらく――今朝がた、お風呂の掃除中(……ぷっ)にあらわれた『全知神』の掌握するところじゃないか、と思えるんだけど……その知識から、さっき言ってたのが洩れ落ちている気がするわね」

 彼女の名誉のために言っておくけど、「……ぷっ」って●(気体)じゃないよ(笑)。「お風呂の掃除中」というところで、何がツボだったのかプリムローズさんが笑いを堪えられくなって、噴いたのだ。
 思い出し笑いってヤツだ。

「つまり、レシピの分からない料理は作れないと? 検索してもひっかからないと? 『全知神』のクセに知らないと?」
「そういう言い方も出来るだろうけど……君、また怒られるよ?」
 プリムローズさん自身も、半笑いだけどね。

 『この世界』の『魔法』を発動させているシステムの正式名称が『世界の理ことわりつかさ』だとすると、プリムローズさんが「決まり文句」みたいに言ってる『守護の星』ってなんだろ? 彼女はたいてい「『守護の星』よ! 『世界の理ことわりつかさ』に働きかけよ!」と言ってるので、文脈が合わない気がする。

 ついでなので、訊いてみよう。

「『守護の星』って『魔法』を使うと見える、キラキラした星ですよね? それって何なんス? 星占いとかじゃないっスね?」

 俺様の『錬金術』で、働きバチみたいに飛び回って、必要な元素を採って来るのが、ソレなハズだ。

 俺が言うと、プリムローズさんが端正な顔をしかめた。

「役割がいろいろあって、ややこしいのよ」
「……はあ?」

「役割が違うと『さいず』がぜんぜん違う。フツーの大きさのは『魔法』を発動させるとキラキラ光って見えるでしょう? でも、それよりも遥かに小さなものは、肉眼では見れない。その目では見えない極小の『守護の星』は、生き物が身を守るために体内に宿してたりするものなの。それって生物の免疫力に関わってたり、消化酵素みたいな働きもするらしいわよ」

 SFでよくある「ナノマシン」みたいだな。
 てか、そんなような話をミーヨから聞いたな……。

「ああ……おっぱい」
 ふと思い出して、つい呟くと、
「おっぱい!?」
 物凄い目つきで睨まれた。
 なので、慌てて弁明する。

「違うんです。前にミーヨから、赤ん坊の時に母親から初めて貰うおっぱいに『魔法』のもとになる何かが含まれてる――って言う話を聞いた事があって、それのコトかなあ、と」

「ああ、そう言う話ね? 確かにそうよ。びっくりした! ……ぼそぼそ(約束の事かと思ったわ)」

 最後になんか呟いてる。
 大丈夫、ソレはソレで忘れてないから!

「とにかく、その目に見えないくらいに小さなものが、『魔法』を発動させる時には、一種の信号波として体内から出て行くらしいの」
「……へー」

 電磁波の代わりかな?

 その目に見えないくらい小っちゃい『守護の星』で、目視可能な大き目の『守護の星』にコマンドを出して、『魔法』を『魔法』として発動させる、と。

 別々な名前で呼べばいいのに……さっき言ってた「ややこしい」ってコレか。

「人によって『魔法』の効果に強弱があるように思えるんスけど、どうしてなんスか?」

 イヤ、答えは想像がつくけれども(ニヤリ☆)。

「うん。『魔法』の強さは『守護の星』を『どれだけ沢山、遠くまで飛ばせるか?』にかかわって……何ニヤついてるんだ、君は?」
「……イヤ、なんでもないっス」

 やっぱ想像通りだった。
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