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第2話(2) 『案内係』~勘違いしそう~
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戦闘士達を眺める2人に、ちょうど休憩中だった戦闘士の1人がこちらに気付いた。
「え、おい…あれセンリか?」
「ん?え?うお!マジだ!!」
波紋が広がるように次々にセンリに視線が集まり、訓練場がざわつく。
「話しかけられる前に逃げようと思ったけど無理そうだ」
「そうですね…」
あっという間に屈強な戦闘士達に囲まれ、危うくルナも潰されそうになるが、センリが「寄り過ぎ」とルナと戦闘士達の間に腕を回してくれたため無事だった。
「ほら、訓練に戻った戻った」
「そんなー!せっかくセンリさんがいんのに」
「手合わせしたいです~」
戦闘士の憧れ代表と言っても過言ではないので、皆がこうなるのも無理はない。
瞳をキラキラさせて見つめられ、センリも若干押されていた。
「あの!今は施設案内中ですので!」
「えー!ちょっとだけ!」
「大事なオリエンテーションです!」
「ルナちゃんそこをなんとか」
「なりませんー!」
センリの腕をとって、ルナは歩き出す。センリが乗り気なら見守るのも手だが、今は研修期間なのだ。
研修期間が終わるまでは同じ職場の仲間でも手合わせは避けた方が良いとルナは判断した。万が一があってはいけない。
ブーイングされても駄目ったら駄目なのだ。
「心配しなくても研修期間が終われば機会を設ける。ルナに文句を言うなよ」
センリがルナに連れられながら、そう周りに言いきった。
ルナの気遣いを察したような言い方に、不覚にもときめいてしまう。
先程からやることなすことが素敵なので己を律するのが大変だ。
「お、…はい」
「え、あれはそういうこと?」
なぜかやけに静かになって手合せを諦めてくれた戦闘士達から逃れたルナ達は、案内の続きに戻る。とはいっても後は案内がいるかどうかもわからない重要性もない所ばかりなので、すぐに終わってしまいそうだ。
「先程は急に引っ張ってすみませんでした」
「いや、助かった。ありがとう」
にこりと素敵な笑顔を返され、ルナの心臓はずっとやかましい。お願いだから、自分の顔がとても良いことを自覚してくれないだろうか。
顔が赤いことがバレないよう、半歩先を行って案内を続ける。
あらかた案内をし終わったところで、今度はこの時間が終わることがなんだか寂しく思えてしまった。
「これで施設内の案内はだいたい終わりました。細かいところは追い追いで」
「忙しいのにありがとう。わからないことがあったらルナに聞くから大丈夫」
「ほ、他の人にも聞かないと偏っちゃいますよ」
またもタラシ発言に襲われ、収まりかけた熱が再発しそうになる。
メディア越しに見るセンリはもっと壁が厚そうだったのに、実際はこんなにも親しみやすくて優しいだなんて思わなかった。
「ルナがいるときはルナに聞くよ。迷惑なら控えるけど…」
少し寂しそうな顔をするものだから、ルナは反射で首を振った。
「迷惑じゃないです!全く!ちっとも!」
「なら良かった。これからもいろいろ教えて」
今度は嬉しそうに笑うので、ルナは分かりやすく赤面してしまった。これから日々このような扱いを受けて大丈夫だろうか。
男性に対する耐性もほぼないというのに、センリはするすると懐に入ってくるので困る。
「こちらこそよろしくお願いします」
そういえば、センリは全く怖くないし、いつも関わりの薄い男性に感じるような後ろに引いていきたくなるような感覚も湧かない。
ルナは元々、男性が苦手だ。ノリが分からないし、グイグイ来られると怖くなって引いてしまう。
一度、2級戦闘士に強引に夜のデートに誘われかけてたまたま居合わせたクレースに助けられたこともある。
小柄で目をつけられやすいのか絡まれることも多いため、人通りの少ないところには極力行かないようにしているくらいだ。
「もし良ければだけど」
「はい」
「この地区にあまり詳しくないから美味しい店があれば教えて欲しい」
それは、もしかしてランチのお誘いだろうか。
「もしかして昼は作ってきてたりする?」
「あ、いえ。いつも近くのカフェでいただいてます」
自然と教えてしまっているのにも、自分自身に驚く。
「やっぱりここも食堂は混むんだな」
「はい、戦闘士優先だし、なかなかゆっくりできなくて」
社員食堂はもちろんあるが、だいたい戦闘士達で埋まるのと、良く言えば賑やかなので落ち着かない。
ドルキアネテスもそこは同じだったようだ。
「邪魔じゃなければ一緒に行ってもいい?クレースを頼ろうと思ったけど今日はもう戻ってきそうにないし」
ルナとしては歓迎なのだが、いつも一緒のライラの許可を得ないと、と言おうとして、後ろから肩を叩かれる。
「はぁい、お取り込み中ごめんなさい。ちょっとルナに用事で」
まさに今会いたかった人物No.1のライラがそこにいた。
センリはどうぞ、と促してくれたため、ありがたくライラに向き直る。
「話し中にごめん!」
「ううん、どうしたの?」
「今から出動命令で、昼過ぎまでかかっちゃいそうなの。だから今日は一緒にランチできなくて」
「そうなの?今からなんて…」
別段珍しいことではないが、まさかの今日とは。
「今日、限定サンドの日でしょ?送金しとくからお願い!!」
「うん、わかった。気を付けてね」
「ありがとーっ!大好き!」
ライラはルナをぎゅっと抱き締め、ルナとセンリに再度謝り風のように行ってしまった。
「いつも彼女と一緒に食べてるのか」
「そうなんです。たまに今日みたいな日もあるんですけど、お昼前から出動って大変ですよね」
「確かに。一番空腹になるな」
センリも覚えがあるのだろう。1級として事務長ながら応援や緊急要請で引っ張りだこだったであろう人だ。
「あの、1対1になっちゃいますけど、良ければカフェに案内しましょうか?」
「いいの?」
もちろん、と頷いて見せる。
ルナとしても、もう少しセンリと話をしてみたい気持ちもあった。
「じゃあ、また昼に。俺はこれからまた管理者と話をしてくるから」
「はい、また」
事務室の前で別れて、センリの姿が見えなくなってから胸を押さえて息をつく。鼓動が手に伝わるくらい打っていて、顔も少し熱が残っていた。
なんだか夢を見ていた気がする。
あのセンリとランチ。
やっぱり夢だろうか。そう思いながら扉を開けたルナには同僚の視線が集中し、そして質問責めにあった。
「どうだった!!?」
「なんか話した!!?」
どうだった、とはなんのことかわからないが、普通に案内しただけだと言うとそれぞれからなんだか納得がいかないような顔を返された。
皆センリのことが気になって仕方ないらしい。
「絶対にルナさんに気があると思ったんだけどな~」
「気…?え、え!?なんでですか…!?」
目が良く合ってない?とは言われても、気がある云々は飛躍しすぎなのではないか。
「え、どう見てもルナさんにだけ対応ちがくない?」
「うちらは話すとき以外目は合わないもんね」
「あんな優しげな笑顔は向けられないし」
口々に言われ、更に混乱した。
そういえば他の人にさっきみたいな対応をしているのを見たことがあっただろうかと思い返しそうになり、それで態度が違うことを確信してしまったら駄目な気がしてやめた。
「気のせいです!」
昼の時間までは興味津々な視線からなんとか乗りきったが、ランチでは普通な顔をしていられるだろうか、とひっそり考え、先が思いやられた。
「え、おい…あれセンリか?」
「ん?え?うお!マジだ!!」
波紋が広がるように次々にセンリに視線が集まり、訓練場がざわつく。
「話しかけられる前に逃げようと思ったけど無理そうだ」
「そうですね…」
あっという間に屈強な戦闘士達に囲まれ、危うくルナも潰されそうになるが、センリが「寄り過ぎ」とルナと戦闘士達の間に腕を回してくれたため無事だった。
「ほら、訓練に戻った戻った」
「そんなー!せっかくセンリさんがいんのに」
「手合わせしたいです~」
戦闘士の憧れ代表と言っても過言ではないので、皆がこうなるのも無理はない。
瞳をキラキラさせて見つめられ、センリも若干押されていた。
「あの!今は施設案内中ですので!」
「えー!ちょっとだけ!」
「大事なオリエンテーションです!」
「ルナちゃんそこをなんとか」
「なりませんー!」
センリの腕をとって、ルナは歩き出す。センリが乗り気なら見守るのも手だが、今は研修期間なのだ。
研修期間が終わるまでは同じ職場の仲間でも手合わせは避けた方が良いとルナは判断した。万が一があってはいけない。
ブーイングされても駄目ったら駄目なのだ。
「心配しなくても研修期間が終われば機会を設ける。ルナに文句を言うなよ」
センリがルナに連れられながら、そう周りに言いきった。
ルナの気遣いを察したような言い方に、不覚にもときめいてしまう。
先程からやることなすことが素敵なので己を律するのが大変だ。
「お、…はい」
「え、あれはそういうこと?」
なぜかやけに静かになって手合せを諦めてくれた戦闘士達から逃れたルナ達は、案内の続きに戻る。とはいっても後は案内がいるかどうかもわからない重要性もない所ばかりなので、すぐに終わってしまいそうだ。
「先程は急に引っ張ってすみませんでした」
「いや、助かった。ありがとう」
にこりと素敵な笑顔を返され、ルナの心臓はずっとやかましい。お願いだから、自分の顔がとても良いことを自覚してくれないだろうか。
顔が赤いことがバレないよう、半歩先を行って案内を続ける。
あらかた案内をし終わったところで、今度はこの時間が終わることがなんだか寂しく思えてしまった。
「これで施設内の案内はだいたい終わりました。細かいところは追い追いで」
「忙しいのにありがとう。わからないことがあったらルナに聞くから大丈夫」
「ほ、他の人にも聞かないと偏っちゃいますよ」
またもタラシ発言に襲われ、収まりかけた熱が再発しそうになる。
メディア越しに見るセンリはもっと壁が厚そうだったのに、実際はこんなにも親しみやすくて優しいだなんて思わなかった。
「ルナがいるときはルナに聞くよ。迷惑なら控えるけど…」
少し寂しそうな顔をするものだから、ルナは反射で首を振った。
「迷惑じゃないです!全く!ちっとも!」
「なら良かった。これからもいろいろ教えて」
今度は嬉しそうに笑うので、ルナは分かりやすく赤面してしまった。これから日々このような扱いを受けて大丈夫だろうか。
男性に対する耐性もほぼないというのに、センリはするすると懐に入ってくるので困る。
「こちらこそよろしくお願いします」
そういえば、センリは全く怖くないし、いつも関わりの薄い男性に感じるような後ろに引いていきたくなるような感覚も湧かない。
ルナは元々、男性が苦手だ。ノリが分からないし、グイグイ来られると怖くなって引いてしまう。
一度、2級戦闘士に強引に夜のデートに誘われかけてたまたま居合わせたクレースに助けられたこともある。
小柄で目をつけられやすいのか絡まれることも多いため、人通りの少ないところには極力行かないようにしているくらいだ。
「もし良ければだけど」
「はい」
「この地区にあまり詳しくないから美味しい店があれば教えて欲しい」
それは、もしかしてランチのお誘いだろうか。
「もしかして昼は作ってきてたりする?」
「あ、いえ。いつも近くのカフェでいただいてます」
自然と教えてしまっているのにも、自分自身に驚く。
「やっぱりここも食堂は混むんだな」
「はい、戦闘士優先だし、なかなかゆっくりできなくて」
社員食堂はもちろんあるが、だいたい戦闘士達で埋まるのと、良く言えば賑やかなので落ち着かない。
ドルキアネテスもそこは同じだったようだ。
「邪魔じゃなければ一緒に行ってもいい?クレースを頼ろうと思ったけど今日はもう戻ってきそうにないし」
ルナとしては歓迎なのだが、いつも一緒のライラの許可を得ないと、と言おうとして、後ろから肩を叩かれる。
「はぁい、お取り込み中ごめんなさい。ちょっとルナに用事で」
まさに今会いたかった人物No.1のライラがそこにいた。
センリはどうぞ、と促してくれたため、ありがたくライラに向き直る。
「話し中にごめん!」
「ううん、どうしたの?」
「今から出動命令で、昼過ぎまでかかっちゃいそうなの。だから今日は一緒にランチできなくて」
「そうなの?今からなんて…」
別段珍しいことではないが、まさかの今日とは。
「今日、限定サンドの日でしょ?送金しとくからお願い!!」
「うん、わかった。気を付けてね」
「ありがとーっ!大好き!」
ライラはルナをぎゅっと抱き締め、ルナとセンリに再度謝り風のように行ってしまった。
「いつも彼女と一緒に食べてるのか」
「そうなんです。たまに今日みたいな日もあるんですけど、お昼前から出動って大変ですよね」
「確かに。一番空腹になるな」
センリも覚えがあるのだろう。1級として事務長ながら応援や緊急要請で引っ張りだこだったであろう人だ。
「あの、1対1になっちゃいますけど、良ければカフェに案内しましょうか?」
「いいの?」
もちろん、と頷いて見せる。
ルナとしても、もう少しセンリと話をしてみたい気持ちもあった。
「じゃあ、また昼に。俺はこれからまた管理者と話をしてくるから」
「はい、また」
事務室の前で別れて、センリの姿が見えなくなってから胸を押さえて息をつく。鼓動が手に伝わるくらい打っていて、顔も少し熱が残っていた。
なんだか夢を見ていた気がする。
あのセンリとランチ。
やっぱり夢だろうか。そう思いながら扉を開けたルナには同僚の視線が集中し、そして質問責めにあった。
「どうだった!!?」
「なんか話した!!?」
どうだった、とはなんのことかわからないが、普通に案内しただけだと言うとそれぞれからなんだか納得がいかないような顔を返された。
皆センリのことが気になって仕方ないらしい。
「絶対にルナさんに気があると思ったんだけどな~」
「気…?え、え!?なんでですか…!?」
目が良く合ってない?とは言われても、気がある云々は飛躍しすぎなのではないか。
「え、どう見てもルナさんにだけ対応ちがくない?」
「うちらは話すとき以外目は合わないもんね」
「あんな優しげな笑顔は向けられないし」
口々に言われ、更に混乱した。
そういえば他の人にさっきみたいな対応をしているのを見たことがあっただろうかと思い返しそうになり、それで態度が違うことを確信してしまったら駄目な気がしてやめた。
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昼の時間までは興味津々な視線からなんとか乗りきったが、ランチでは普通な顔をしていられるだろうか、とひっそり考え、先が思いやられた。
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