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第3話(2) 『2人きりのランチ』~近づく距離~
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もう認めてしまっているが、ルナはセンリに惹かれている。だが、こんなにも素敵な人ならとっくの昔に恋人がいるだろう。
「今日は気楽に誘ったけど、もし見られたくない相手がいたらごめん」
不意にセンリがそう言い、伺うようにルナを見つめる。なんだか思考を読まれたかのような気分になり、少しだけ焦った。
「そんな人いないですよ!それに、ちょうど私も同じ心配をしたところで…」
普段のルナなら、というより、通常この手の質問は探られていると感じるはずだ。
しかしセンリの心配そうな表情と絶妙なタイミングのおかげで、ルナの頭はこれが純粋な心配なのだと判断した。
「俺もいないよ」
細まった発光緑の瞳に見つめられ、どきりと心臓が跳ねる。その時間は一瞬で、センリの気さくな笑顔で場の空気はすぐに軽くなった。
「ルナは気遣いもできるし面倒見が良さそうだから、きっといると思ってた」
「そう、ですかね?でも、それを言うならセンリさんだって絶対いると思ってました」
ルナの方が探ってしまっているような気がして、サンドだけにしておいて良かったと思った。なんだか胸がいっぱいになりそうだ。
「引かれるかもだけど、誰かとそういう関係になったことは1度もないよ」
「えっ、本当に?」
衝撃のニュースを聞いてしまった気がする。確かに、センリはスキャンダルもなにも、そういった噂は一切なかった。情報管理を徹底しているだけでいるだろうとは予想されていたが。
「遊んでそうに見える?」
「いえ、そういうわけじゃ」
「冗談。けど俺と関係が深い知り合いは皆、恋人がいる方が驚くだろうな」
本当に今までそういう人はいなかったのだろうか。それでルナとの距離感もバグっているだけだったり…と考えている間に、2人とも昼食を食べ終わる。戻る時間を含めてもまだ時間に余裕はあるため、もう少しゆっくりしても大丈夫だ。
「けど、いくら徹底してても一度も誰も見たことない恋人がいるって、無理があるよな」
「ふふっ」
ゴシップ誌の見出しにはよく、1級や有名な戦闘士のデート風景が抜かれている。それにセンリが出たことはないが、恋人でなくても無理やり抜かれるゴシップ界で誰にもバレずに、とは確かに無理があるかもしれない。
「幻の恋人の噂って聞いたときは、さすがに悪口言われてるのかと思ったし」
「あははっ…」
その少しズレた見出しは、あまりに想像の域を出ないためにネタとして話題になった記事の謳い文句だった。ルナも見たことがあるが、無理やりすぎる記事にコメディ臭まで感じたことを覚えている。
噂の張本人からすれば、さぞかし微妙な気分だっただろう。
「ルナが嫌じゃなければ、2人の時はもう少し砕けて接してほしい」
「え?」
急なお願いに、ルナは戸惑いを隠せない。と同時に、センリの表情が少し寂しげなのが、胸の片隅に引っかかった。
「名前も呼び捨てがいい」
「ええ…!?それはちょっと」
「試しに呼んでみて」
今度はいたずらっぽく笑うセンリに目が釘付けになる。場の空気をセンリに掌握されている自覚はあったが、全くもって嫌悪や不快感などはなかった。
「無理?」
「う…」
また寂しそうにルナの様子を伺うのがかわいくて、思わず目を逸らした。
なんだろう。これは口説かれているのだろうか。
そうじゃなかったらなんなのだ。もう。
「センリ…?」
「疑問系?」
勇気を振り絞って呼んでみたが、思った以上に声が上擦ってしまった。
センリは笑いながらも嬉しそうで、余計に心臓がうるさくなってしまう。
「い、いつもこうなんですか?」
「こうって?ああ、敬語もやめてみるか」
すごくすごく楽しそうで何よりなのだが、そろそろこちらの情緒に限界が来そうだ。
そんなルナの様子を見て、センリはまた優しげな笑みに戻る。
「ごめんごめん。ちょっと意地悪しすぎたな」
センリが携帯で時間を確認し、ルナもそろそろ休憩時間の終わりが来ることを思い出した。
「そろそろ戻るか」
「はい」
席を立ち会計をと思ったところで、センリが店員から受け取ったコードを端末で読み込んでいる光景が目に入った。
ルナの手にはライラの限定サンドが渡され、そのまま店を出かけようとするセンリを思わず呼び止める。
「あの!もしかしてお会計…」
言いかけたルナに、センリは口元へ人指し指を立てて手招きする。はっとして、ルナはセンリと共にカフェを出た。確かに店内で問答するのは迷惑だろう。
そのまま歩き出されてしまったため、ルナは急いで着いていく。
「私の分は払います」
「いいよ。今日だけ払わせて」
「でも、テイクアウトの分まで…」
言い募ろうとしたルナに、センリは綺麗な笑顔を返す。
「美味しい店教えてくれたし、その他諸々のお礼。こっちの地区は本当に詳しくないから助かった」
「そんな…こちらこそ、お話しできて楽しかったです」
これ以上の問答は野暮だと思ったルナは、軽く頭を下げた。
「ご馳走になってしまって、ありがとうございます」
「お互い様だけど、どういたしまして」
本当にいつの間にカードを渡していたのだろう。全く気付かなかった。なにもかもスマートすぎてずるい。
「またおすすめの店があれば教えてよ」
「はい、もちろんです。いっぱい食べれるお店もたくさんありますよ」
またさりげなく道路側を歩かれているし、本当に恋人がいたことはなかったのか改めて疑問に思う。
会社に戻るまでの間も会話は弾み、あっという間に着いてしまう。
エントランスでとても話を聞きたそうにこちらを見ている同僚と目が合ってしまったが、午後からはセンリも事務所にいるそうなので目立って何か聞かれることはないだろう。
「お2人でランチだったんですか!!」
「あらまー!!」
と思っていたが、そんなことはなかったらしい。
センリにもグイグイ迫る同僚達にヒヤヒヤしつつ、ルナはただランチを案内しただけだと説明するが、その程度では満足しない者達の勢いは止まらない。
「俺が迷子にならないよう着いてきてもらっただけだ」
「そうだったんですねえ」
「それならしばらくルナさんに案内してもらわないとですねえ」
ニヤニヤを隠しきれていない同僚に、ルナは頭を抱えた。隅の方でこちらを伺っていた強引男ことカールが視界に入ったが、見えないフリをする。
「名案だな。ならずっと迷子の設定で行くか」
「センリさんまで、のらないでください」
なんでもないような口調で動揺を隠して、ルナはデスクに戻った。隣からの好奇心溢れる視線からも耐え抜くべく、仕事に集中する。
センリは書類整理から仕事を始めようとしたようだが、クレースがセンリ用にガッツリと管理職の業務を残していたようで、低く文句を呟いていた。
「来たばっかりなのに、やっぱり元大企業の管理さんは優秀だね」
「本当に…」
クレースの席で既に周りに指示を出しているセンリに、周りは舌を巻いている。不明なことはすぐに聞いて一度で覚えてしまうし、書類の処理も早い。
電話対応だけはまだ研修期間なので他の職員に任せていたが、それを差し引いても次長の貫禄有り余る働きぶりであった。
「クレースが帰ってきたら皆で叱ってくれ。これは研修期間にさせることじゃない」
「アイアイサー!」
「今何か問題が起きてもクレースのせいにしろよ」
「もちろんです!隊長!」
早速ムードメーカーな職員達を見分けて場の空気を持っていくセンリを見て、流石だと思う。
事務長代理の年配職員はいるのだが、既にセンリに仕事を任せて使いっパシりに専念していた。彼もムードメーカーの一人であり、センリに対して「隊長」と懐いてみせている。
ドルキアネテスという大企業から移ってきたセンリに対して距離感を掴み損ねていた者達も、徐々に馴染み始めているようだ。
「アレクシオは安泰だ~」
同僚の呟きに頷きながら、ルナはチラリとセンリを見る。
「っ」
ちょうど目が合ってしまい、少し不自然に逸らしてしまった。顔が熱くなる感覚がする。
センリは早々に職場に馴染んでいるようだし、もうそんなにルナを頼ることもないはずだ。
そう思い、勝手に寂しくなってしまう。
無意識に、また話ができたら良いなとセンリのことを考えてしまうが、都度切り替えて仕事を進めた。
ルナが目を逸らした後も、センリがルナを見ていたことには気付かなかった。
_______
「え?センリさんの奢り?」
「そう、またお礼を言っておいて」
出動から帰還したライラが限定サンドを取りに来たので、しばし離席してルナとライラは事務室の前にいた。
限定サンドに喜びつつ、センリの奢りと知ってライラが驚いている。
「そっか。でもルナもありがとね。おかげで美味しいランチにありつけるー」
「どういたしまして。ライラこそお疲れ様」
相当空腹らしいライラは、ルナに短く別れを告げ去っていった。
そういえば、奢りのことは驚いていたがセンリとランチをしたことは特に追及されなかった。誰かから聞いていたのだろうか。
「ああ、外にいたのか」
「あ、センリさん」
事務所に戻ろうとしたところで扉が開き、センリと鉢合う。もう少しここにいればライラもお礼が言えたのになと思い苦笑した。
「もしかして限定サンド渡してた?」
「そうです。とても喜んでました。またお礼を言いますって」
「はは、無事にランチにありつけて良かったな」
また気さくに話しかけてくれることにふわりと喜びを感じる。
センリは今から管理者に報告に行くらしく、片手にタブレット型の端末を抱えていた。
来て3日目なのに仕事をしすぎではないだろうかと、今になって心配になる。
「じゃあ、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
なんだが少しやり取りが親しげになってしまい、気恥ずかしい。
「?」
ふとセンリを見ると、まだこちらを見ていた。何か用事が残っていたかと思っていると、センリの顔が少しだけルナの耳元に寄ってきて、心臓が跳ねる。
「呼び捨ての練習、しておいて」
それだけ言って、ひらりと手を振りながら去っていくセンリの背中を見届けたルナは困った。
顔が熱くて熱くて、中に戻れない。
本当に困ったが、この鼓動が恐怖やネガティブな感情でないことは確かだった。
「今日は気楽に誘ったけど、もし見られたくない相手がいたらごめん」
不意にセンリがそう言い、伺うようにルナを見つめる。なんだか思考を読まれたかのような気分になり、少しだけ焦った。
「そんな人いないですよ!それに、ちょうど私も同じ心配をしたところで…」
普段のルナなら、というより、通常この手の質問は探られていると感じるはずだ。
しかしセンリの心配そうな表情と絶妙なタイミングのおかげで、ルナの頭はこれが純粋な心配なのだと判断した。
「俺もいないよ」
細まった発光緑の瞳に見つめられ、どきりと心臓が跳ねる。その時間は一瞬で、センリの気さくな笑顔で場の空気はすぐに軽くなった。
「ルナは気遣いもできるし面倒見が良さそうだから、きっといると思ってた」
「そう、ですかね?でも、それを言うならセンリさんだって絶対いると思ってました」
ルナの方が探ってしまっているような気がして、サンドだけにしておいて良かったと思った。なんだか胸がいっぱいになりそうだ。
「引かれるかもだけど、誰かとそういう関係になったことは1度もないよ」
「えっ、本当に?」
衝撃のニュースを聞いてしまった気がする。確かに、センリはスキャンダルもなにも、そういった噂は一切なかった。情報管理を徹底しているだけでいるだろうとは予想されていたが。
「遊んでそうに見える?」
「いえ、そういうわけじゃ」
「冗談。けど俺と関係が深い知り合いは皆、恋人がいる方が驚くだろうな」
本当に今までそういう人はいなかったのだろうか。それでルナとの距離感もバグっているだけだったり…と考えている間に、2人とも昼食を食べ終わる。戻る時間を含めてもまだ時間に余裕はあるため、もう少しゆっくりしても大丈夫だ。
「けど、いくら徹底してても一度も誰も見たことない恋人がいるって、無理があるよな」
「ふふっ」
ゴシップ誌の見出しにはよく、1級や有名な戦闘士のデート風景が抜かれている。それにセンリが出たことはないが、恋人でなくても無理やり抜かれるゴシップ界で誰にもバレずに、とは確かに無理があるかもしれない。
「幻の恋人の噂って聞いたときは、さすがに悪口言われてるのかと思ったし」
「あははっ…」
その少しズレた見出しは、あまりに想像の域を出ないためにネタとして話題になった記事の謳い文句だった。ルナも見たことがあるが、無理やりすぎる記事にコメディ臭まで感じたことを覚えている。
噂の張本人からすれば、さぞかし微妙な気分だっただろう。
「ルナが嫌じゃなければ、2人の時はもう少し砕けて接してほしい」
「え?」
急なお願いに、ルナは戸惑いを隠せない。と同時に、センリの表情が少し寂しげなのが、胸の片隅に引っかかった。
「名前も呼び捨てがいい」
「ええ…!?それはちょっと」
「試しに呼んでみて」
今度はいたずらっぽく笑うセンリに目が釘付けになる。場の空気をセンリに掌握されている自覚はあったが、全くもって嫌悪や不快感などはなかった。
「無理?」
「う…」
また寂しそうにルナの様子を伺うのがかわいくて、思わず目を逸らした。
なんだろう。これは口説かれているのだろうか。
そうじゃなかったらなんなのだ。もう。
「センリ…?」
「疑問系?」
勇気を振り絞って呼んでみたが、思った以上に声が上擦ってしまった。
センリは笑いながらも嬉しそうで、余計に心臓がうるさくなってしまう。
「い、いつもこうなんですか?」
「こうって?ああ、敬語もやめてみるか」
すごくすごく楽しそうで何よりなのだが、そろそろこちらの情緒に限界が来そうだ。
そんなルナの様子を見て、センリはまた優しげな笑みに戻る。
「ごめんごめん。ちょっと意地悪しすぎたな」
センリが携帯で時間を確認し、ルナもそろそろ休憩時間の終わりが来ることを思い出した。
「そろそろ戻るか」
「はい」
席を立ち会計をと思ったところで、センリが店員から受け取ったコードを端末で読み込んでいる光景が目に入った。
ルナの手にはライラの限定サンドが渡され、そのまま店を出かけようとするセンリを思わず呼び止める。
「あの!もしかしてお会計…」
言いかけたルナに、センリは口元へ人指し指を立てて手招きする。はっとして、ルナはセンリと共にカフェを出た。確かに店内で問答するのは迷惑だろう。
そのまま歩き出されてしまったため、ルナは急いで着いていく。
「私の分は払います」
「いいよ。今日だけ払わせて」
「でも、テイクアウトの分まで…」
言い募ろうとしたルナに、センリは綺麗な笑顔を返す。
「美味しい店教えてくれたし、その他諸々のお礼。こっちの地区は本当に詳しくないから助かった」
「そんな…こちらこそ、お話しできて楽しかったです」
これ以上の問答は野暮だと思ったルナは、軽く頭を下げた。
「ご馳走になってしまって、ありがとうございます」
「お互い様だけど、どういたしまして」
本当にいつの間にカードを渡していたのだろう。全く気付かなかった。なにもかもスマートすぎてずるい。
「またおすすめの店があれば教えてよ」
「はい、もちろんです。いっぱい食べれるお店もたくさんありますよ」
またさりげなく道路側を歩かれているし、本当に恋人がいたことはなかったのか改めて疑問に思う。
会社に戻るまでの間も会話は弾み、あっという間に着いてしまう。
エントランスでとても話を聞きたそうにこちらを見ている同僚と目が合ってしまったが、午後からはセンリも事務所にいるそうなので目立って何か聞かれることはないだろう。
「お2人でランチだったんですか!!」
「あらまー!!」
と思っていたが、そんなことはなかったらしい。
センリにもグイグイ迫る同僚達にヒヤヒヤしつつ、ルナはただランチを案内しただけだと説明するが、その程度では満足しない者達の勢いは止まらない。
「俺が迷子にならないよう着いてきてもらっただけだ」
「そうだったんですねえ」
「それならしばらくルナさんに案内してもらわないとですねえ」
ニヤニヤを隠しきれていない同僚に、ルナは頭を抱えた。隅の方でこちらを伺っていた強引男ことカールが視界に入ったが、見えないフリをする。
「名案だな。ならずっと迷子の設定で行くか」
「センリさんまで、のらないでください」
なんでもないような口調で動揺を隠して、ルナはデスクに戻った。隣からの好奇心溢れる視線からも耐え抜くべく、仕事に集中する。
センリは書類整理から仕事を始めようとしたようだが、クレースがセンリ用にガッツリと管理職の業務を残していたようで、低く文句を呟いていた。
「来たばっかりなのに、やっぱり元大企業の管理さんは優秀だね」
「本当に…」
クレースの席で既に周りに指示を出しているセンリに、周りは舌を巻いている。不明なことはすぐに聞いて一度で覚えてしまうし、書類の処理も早い。
電話対応だけはまだ研修期間なので他の職員に任せていたが、それを差し引いても次長の貫禄有り余る働きぶりであった。
「クレースが帰ってきたら皆で叱ってくれ。これは研修期間にさせることじゃない」
「アイアイサー!」
「今何か問題が起きてもクレースのせいにしろよ」
「もちろんです!隊長!」
早速ムードメーカーな職員達を見分けて場の空気を持っていくセンリを見て、流石だと思う。
事務長代理の年配職員はいるのだが、既にセンリに仕事を任せて使いっパシりに専念していた。彼もムードメーカーの一人であり、センリに対して「隊長」と懐いてみせている。
ドルキアネテスという大企業から移ってきたセンリに対して距離感を掴み損ねていた者達も、徐々に馴染み始めているようだ。
「アレクシオは安泰だ~」
同僚の呟きに頷きながら、ルナはチラリとセンリを見る。
「っ」
ちょうど目が合ってしまい、少し不自然に逸らしてしまった。顔が熱くなる感覚がする。
センリは早々に職場に馴染んでいるようだし、もうそんなにルナを頼ることもないはずだ。
そう思い、勝手に寂しくなってしまう。
無意識に、また話ができたら良いなとセンリのことを考えてしまうが、都度切り替えて仕事を進めた。
ルナが目を逸らした後も、センリがルナを見ていたことには気付かなかった。
_______
「え?センリさんの奢り?」
「そう、またお礼を言っておいて」
出動から帰還したライラが限定サンドを取りに来たので、しばし離席してルナとライラは事務室の前にいた。
限定サンドに喜びつつ、センリの奢りと知ってライラが驚いている。
「そっか。でもルナもありがとね。おかげで美味しいランチにありつけるー」
「どういたしまして。ライラこそお疲れ様」
相当空腹らしいライラは、ルナに短く別れを告げ去っていった。
そういえば、奢りのことは驚いていたがセンリとランチをしたことは特に追及されなかった。誰かから聞いていたのだろうか。
「ああ、外にいたのか」
「あ、センリさん」
事務所に戻ろうとしたところで扉が開き、センリと鉢合う。もう少しここにいればライラもお礼が言えたのになと思い苦笑した。
「もしかして限定サンド渡してた?」
「そうです。とても喜んでました。またお礼を言いますって」
「はは、無事にランチにありつけて良かったな」
また気さくに話しかけてくれることにふわりと喜びを感じる。
センリは今から管理者に報告に行くらしく、片手にタブレット型の端末を抱えていた。
来て3日目なのに仕事をしすぎではないだろうかと、今になって心配になる。
「じゃあ、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
なんだが少しやり取りが親しげになってしまい、気恥ずかしい。
「?」
ふとセンリを見ると、まだこちらを見ていた。何か用事が残っていたかと思っていると、センリの顔が少しだけルナの耳元に寄ってきて、心臓が跳ねる。
「呼び捨ての練習、しておいて」
それだけ言って、ひらりと手を振りながら去っていくセンリの背中を見届けたルナは困った。
顔が熱くて熱くて、中に戻れない。
本当に困ったが、この鼓動が恐怖やネガティブな感情でないことは確かだった。
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