ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

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第2章 

18.新しい命

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「いや~、サタンくんがアイアンゴーレムを倒すだなんてね~。ビックリだよ」

 ウォータールーの人気カフェで、ローラはベリーのタルトを頬張る。

 ローラの休日、街を案内してもらう名目で俺が誘ったのだ。

「行くなって言われていたのに、無視する格好になっちゃったしな。一応、お詫びだよ」

「気にしなくていいよ。それより、本当にご馳走になっていいの? このお店、なかなかのお値段だよ?」

「報酬が、たんまり入ったからな! それこそ、気にすんな、だ!」

「うん!」

 ローラは、また一口、タルトを口に運ぶと幸せそうに笑った。

 カフェを出ると、小物やアクセサリーを並べている露店を見たり、武器や魔道具を扱っている店を覗いたりした。
 屋台で、串に刺さった唐揚げっぽい食べ物と、オレンジっぽい果実のフレッシュジュースを購入。
 噴水前の広場で、玉乗りしながらジャグリングをしたり、パントマイムを披露する大道芸人たちを見物した。

「う゛っ、う゛ぅうう……!」

 背後から呻き声。 

「ドサッ!」
 
 何かが落ちる音が響いた。

 振り返ると、お腹の大きな女性がうずくまっていた。
 
 買い物の帰り道に産気づいたのだろう。 

 紙袋から、ジャガイモや人参が飛び出し、路上に転がっていた。

「おい! 大丈夫か?」

「う、産まれる……」

「救急車を呼べ! 早く!」

「キュウキュウシャって……なに?」 
 ローラが不安そうな目で俺を見る。

(そうだ、ここは異世界だ。そんなもの、あるわけがない)

「家と病院、どっちが近い? そこまで頑張れそうか?」

「駄目……もう産まれそうです……」

 俺は覚悟を決めた。

「お湯をじゃんじゃん持ってきてくれ! それから清潔なタオルや布も!」

 街の人が、一斉に動く。

「女性の方は手を貸してほしい! 男の俺が……その……見ちゃいけないだろうから」

「魔導士様、この婆にも手伝わせておくれ。孫を取り上げたことがある。力になれるよ」

「心強い! お願いします!」

「へその緒を切るための、清潔なハサミも持ってきておくれ!」 
 老婆が街の人に指示を飛ばした。 

 ローラは散らばった野菜を拾い集めて袋に戻すと、ハンカチで妊婦さんの顔の汗を拭いて、声をかけていた。

「がんばって! 絶対、無事に産まれます! サタンくんは、凄い魔導士だから安心してください!」

(いや……俺、魔王なんですが)

「さあ、男どもは下がった下がった!」
「通してください! お湯とタオルを持ってきました!」
「ハサミ、これを使ってください!」
「このシーツで、お母さんを囲って目隠ししましょう」

 女性たちがテキパキと動く。

「ほら、頭が見えてきたよ! もう少しだ……!」

「あ゛ぁああああああ!」

「おかあさん、がんばって!」 
 妊婦さんの汗を拭きながら、ローラが励ます。

 俺は、女性の頭の方からお腹に手をかざした。
「がんばれ! 支援魔法をかける。【体力強化】【痛覚無効】!」 

「おぎゃあ……おぎゃぁああああああ!」

「産まれた! 元気な男の子だよ!」 
 老婆が言う。

「「「うわぁああああああああ!!!」」」 
 大歓声が起こった。

「おめでとう~!」
「おかあさん、よく頑張ったね!」
「可愛い~♡ ちっちゃい♡ 可愛い~♡」 
 シーツの壁を作っていたご婦人たちが、口々に言う。

「魔導士様、お婆様、みなさん……ありがとうございます。本当に、ありがとうございます……!」

 産まれたばかりの我が子を抱きながら、女性は何度も何度も繰り返した。


  ◇


 【アストレア教・メーテス大聖堂】

 いにしえの魔法陣の前にニコラス教皇が立っている。
 手には門外不出の秘宝、勇者召喚の杖が握られている。

 魔法陣を挟む形でフランシスコ大司教を先頭に30名の司祭が整列し、勇者召喚の杖に魔力を送り続けていた。

「φΓξΔθαψηΘρζΓΔΨ……」

 古代語による、ニコラス教皇の詠唱が続く。
 宝杖ほうじょうから金色の粒子のような光が飛び散り始める。
 司祭たちは一段と強い魔力を送るべく力を振り絞る。
 
「……我らは女神メーティスの敬虔なる信徒にして宝杖を賜りし者なり。……女神メーティス、我らの願いを聞き届け給え!」

 ニコラウス教皇が杖を振り下ろすと、魔法陣が光を放った。
 その場にいた誰もが目を開けていられない程の強烈な光――
 
「「「……っく!!!」」」

 やがて、光は魔法陣に吸いこまれるように消えた。

 ニコラス教皇と司祭たちが目を開けた時、魔法陣の中央には、日本の高校の制服に身を包んだ長い黒髪の女性が立っていた。
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