北の砦に花は咲かない

渡守うた

文字の大きさ
上 下
1 / 40
序章

1、彼女は騎士

しおりを挟む

 街を行き交う人がこちらを見ている。

「安心し給え! 私が付いているからな!」

 彼女は安心させるように腕の中の彼へ笑いかけた。
 燃えるように輝く長い赤髪が揺れる。
 細い身体を丸ごと掬われ、姫のように抱き上げられ、セスは目を回した。
 混乱した彼に、傍らから幼い声が掛けられる。

「大丈夫だよ、兄ちゃん。オレがついてるからね」

 好きな女性に抱え上げられ、弟に見守られ、彼は考える。どうしてこうなったんだっけ・・・・・・?

しおりを挟む

処理中です...