生きるのが下手すぎる僕と電柱

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生きるのが下手すぎる僕と電柱

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人間社会を生きるには、あまりにも僕は「下手」すぎる。
普通の人なら出来ることが、僕は総じて平均以下。
普通の人なら癒える心の傷が、僕は一生かかっても治せない。
普通の人なら出来る大切な人も、僕は一度だってできたことは無い。
「普通、普通、普通...、羨ましいなぁ、憧れるなぁ」
深夜2時頃、日本で大人気のアルコール9%の酒を片手にフラフラと徘徊する。
道行く疲れた顔のサラリーマンは死んだ顔でとぼとぼと帰路につき、ちょっとコンビニに行くのであろうノーメイクの女性はぎょっとした顔で距離を開けてくる。
そりゃそうだ、不審者だもん、僕、怖いよね。
「おかしいなぁ、一生懸命頑張ってるのになぁ、なんでなのかなぁ?」
クルクルと回りながら考える。
決して頑張ってない訳では無い、なんなら、他の人達より頑張ってるつもりだ。
僕は僕が普通より生きるのが下手なことを十分に理解している。
だから、他の人より頑張っているし、せめてできない分誠心誠意礼儀正しくしているつもりだ。
なのに、おかしなことにいつも僕は怒られ、人に迷惑をかけている。
「ねぇ、なんでだと思う?、今日だって目上の人にまともに敬語も話せない人に怒られたし、何故か僕より敬語を使えない人の方が皆に気に入られているよ」
「...?」
突然話しかけられ、電柱もどこか困惑しているように見える。
「...ねぇ、何か言ってよ」
「...しょうがないさ、お前は何をやってもダメな人間なんだ、認めな」
電柱らしい無機質な声で言う
「そんなのとっくに認めてるよ、とゆうか、認めた所で能力が上がる訳でもないし、生きやすくなる訳でもない、結局何の解決にもならないんだよ」
自分の能力の無さに気づけないほどの鈍感さがあれば、もっと生きやすいのにと思う。
「そうだな、お前は生きるのが下手なくせに繊細で、人の考えが何となく分かる、だからタチが悪い。周りを見てみろよ、同じく生きるのが下手な人でも、それに気づかず、のうのうと生きてるバカはいる」
「君、結構辛口だね、ていうか、勝手に心を読まないでよ」
「喋る電柱だぜ、心読むくらいできるさ」
「うるさい、どうせ僕の幻聴のくせに」
「それでも、話し相手がほしいんだろ?」
何も言い返せない。
「寂しいよなぁ、分かるぜ、お前みたいな奴と仲良くしてくれる奴なんて居ないよな、ましてや恋人なんて...」
「はは、そうだよ、さすがは僕の幻聴、よくわかってるじゃん」
ゴク、ゴク、ゴク...
僕がまだ辛うじて生きて入れているのは、この片手のアルコールのおかげである。
「ぷはぁぁ!、あああ!!小学生の頃は友達とかもいたんだけどなぁ!!」
「うるさいよ、それと飲みすぎ」
「皆どうしてるのかなぁ、きっと普通に暮らしてるんだろうなぁ」
「まぁ、お前よりは幸せに生きてるだろうな」
「電柱のクセに幸せとか分かるの?」
「あぁ?バカにしてるなお前、ていうか、お前は幸せを理解してんのかよ」
「そりゃそうさ、普通に生きて、仲間と遊んで、結婚して...」
「あぁあぁ、もういいもういい、分かったからもう話すな、そんな悲痛な顔で幸せを語られたら、見てるこっちまで苦しくなる」
ゴク、ゴク
「...空だ、もう無い」
「そうか、じぁお開きだな、帰って寝ろ」
「うん、そうするよ、死ぬほど寝たくないけど」
「寝ないと明日余計辛いのはお前だぞ、て、もう日は跨いでんのか」
「ねぇ...」
「ん?」
「明日も来てもいいかな?」
「あぁ、いいとも、俺は電柱だ、ご覧の通り一歩も動けねぇ、いつでも来ればいいさ」
「優しい幻聴だね」
「辛口だの優しいだの、コロコロと意見が変わるヤツだ」
「じぁ、バイバイ」
「あぁ、またな...」

「おい」
「ん?、なに?」
「死ぬなよ...」
「...うん、死なないよ」

空はもう明るくなり始めている、もうじき朝が来る。
薄ら明るい空の下、僕は重い足取りで家に帰った。
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