君は優しい見習い魔女様

笹本茜

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魔女見習いルラの『なんでも屋』

おまけ(ジン視点) 

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 ルラと出会ったのは、一年半ほど前。
 ルラはその頃から変わらず、頭のおかしいやつだった。
 紙を配り、『なんでも屋』の宣伝をしていた。
 しかし、当然そんなものを受け取る者は居なく、流石に可哀相だと思い、特に依頼もないが、紙を受け取った。
 それが俺らの始まりだ。
 
 すると、ルラはキラキラの目を輝かせながら迫ってきたのだ。
 
「一緒に『なんでも屋』やりませんか!?」
「は?」
「おねがいします! ビビッと来ちゃったんです!」
「いや、何が?」
「私の勘は当たるんですよ! 後悔はさせません! 一緒に『なんでも屋』をやりましょうよ」
「一度、落ち着いてくれ……そして、話を聞け」
「す、すみません。でも、間違いないんです! 貴方と『なんでも屋』を一緒にやったら、良いことが起こるんです!」
「なんだ、その宗教の勧誘みたいなのは」
「ち、違います! 私、星詠みが得意で! 予知は出来ないんですけど、勘がいいんです」
「それで?その勘とやらが、俺と『なんでも屋』ってヤツをやれといってるのか」
「はい! そうなんです!」
「はあ、馬鹿馬鹿しい」
「本当ですぅ……お試しからで良いので……お願いします!」
 
 ルラは俺が頷くまで、ずっと付き纏ってきた。
 当時、違うクラスだったのだがコチラの教室までやってきて、勧誘してきたのだ。

「あの! もう一度だけ考えてくれませんか!」 
 
 流石に鬱陶しくて、怒鳴ってやれば来なくなるかと思ったが、その必死さに押され、仕方がないからお試しで受けることにした。
 
「はあ、もう。仕方ねぇな、お試しだからな!」
 
 そう返事を返したときのルラの顔は花が咲いたような笑顔だった。
 その一瞬で世界が輝いて、俺の心には初めての暖かくて甘い感情が芽生えた。
 たったそれだけ。
 その笑顔だけで世界が変わったのだ。
 なんて単純なのだろう。
 俺も、ルラも。
 俺の返事であんなにも嬉しそうな笑顔を見せたルラも、その笑顔で落ちた俺も。
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